著者
福田 直子 湯川 智行
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.505-509, 1998-12-05
被引用文献数
2

ソラマメの在来種を含む41品種を用いて積雪条件が異なる2ヵ年にわたり, 越冬前の生育特性と雪害程度を調査し, 品種の耐雪性との関連について検討した.雪害による枯死葉面積率と枯死株率をもとに供試品種は耐雪性強, 中, 弱の3品種群に分類できた.耐雪性強品種群は新潟市近郊の在来種とその突然変異品種の2品種, 耐雪性中品種群は原産地や育成地が西日本中心に分布する35品種, 耐雪性弱品種群は海外から導入された品種および鹿児島県の在来種の4品種であった.それぞれの品種群は原産地や育成地に共通性が認められ, 品種の耐雪性と育成環境との間に関連が示唆された.越冬前の生育特性と品種の耐雪性との間には密接な関係が認められた.耐雪性弱品種は花芽分化の時期が早く分化葉位が低いために越冬前に花芽の顕著な発育が認められたことから春播き型の品種であると考えられる.一方, 耐雪性強品種群は花芽分化の時期が遅く, 越冬前の花芽の発育ステージは初期段階であった.また耐雪性に関わる形態的特徴として, 耐雪性の強い品種は越冬前の草丈, 節間長, 茎葉生重が小さく, 茎葉乾物率が高い特性をもっていた.
著者
コリイ A.
出版者
日本作物學會
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.428-431, 1980

供試した10品種の中で6品種は光周期に不感応で,2品種は弱い感光性があり,2品種は強く反応した. これらの10品種はすべて西アフリカの主要な作期および二期作において使用されている. 強感光性品種を二期作において早く植えると,日長が長くなることによる過剰生長から回避できる. 西アフリカにおいては,感光性品種も非感光性品種も両作期において長日による遅延なしに作付可能である. 二期作における一般的な開花遅延はむしろ低温に起因するようにみえる.
著者
福嶌 陽 太田 久稔 横上 晴郁 津田 直人
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.87, no.1, pp.43-52, 2018-01-05 (Released:2018-01-19)
参考文献数
20
被引用文献数
1

東北地域における水稲19品種を,1950年以前に育成された品種 (Ⅰ群品種),1980年以前に育成された品種 (Ⅱ群品種),1980年以降に育成され,現在,普及している品種 (Ⅲ群品種),東北農研が育成した最近の主食用品種 (Ⅳ群品種),東北農研が育成した最近の飼料用品種 (Ⅴ群品種) に分類し,その特性を少肥移植栽培において比較した.稈長は,Ⅰ群品種で長く,Ⅱ群品種,Ⅲ群品種で中程度,Ⅳ群品種,Ⅴ群品種で短かった.一方,少肥移植栽培における収量には,品種群による明確な差異は認められなかった.これらのことから,東北地域の水稲品種における収量の歴史的増加の要因としては,施肥量が増加し,それに伴い稈長がやや短く耐倒伏性がやや優れたⅡ群品種,Ⅲ群品種が普及したことが挙げられた.形質間の関係をみると,穂数が少ない品種は,葉身幅が広く,節間直径が太く,1穂籾数が多く,千粒重が重いという関係が認められた.しかし,稈長は,他の形質と密接な関係は認められなかった.これらのことから,品種育成の歴史の中で,稈長が短くなることによって,必然的に変化した形質は少ないと推察された.玄米の外観品質 (品質)・食味に関しては,Ⅰ群品種,Ⅱ群品種は,様々な品質・食味の品種が混在しているのに対して,Ⅲ群品種,Ⅳ群品種は,いずれも品質・食味が優れていると推察された.以上の結果をもとにして,東北地域における水稲品種育成の今後の方向性について論じた.
著者
渡邊 朋也
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.76, no.1, pp.124-127, 2007 (Released:2009-07-03)
参考文献数
6

植物各器官の連結状態およびそれらの生長規則をL-systemの文法により記述し,前回報告した3次元デジタイザを利用して収集した形態情報,生理的生育情報と併せて,3次元「仮想植物」を作成する手順を紹介する.
著者
黒田 栄喜 玖村 敦彦
出版者
日本作物學會
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.623-627, 1989
被引用文献数
2 1

近接した日の間にみられる水稲個葉の光合成速度 (CER) の変動とその生理的基礎, 並びに, 葉面光強度および気孔伝導度 (g<SUB>s</SUB>) の2要因がCERに及ぼす効果の相互関係について検討した。(1) CERの日による変動; (i) 圃場条件下で, 数日間連続して, 午前のほぼ同じ時刻に, 飽和光下で同一葉のCERを測定したところ, その値は日によって異なり, この期間の最大値と最小値の開きは5~10 mg CO<SUB>2</SUB> dm<SUP>-2</SUP>h<SUP>-1</SUP>に達することが認められた。(ii) CERの日による変動はg<SUB>s</SUB>のそれと並行的であった。(iii) g<SUB>s</SUB>の日による変動は蒸発計蒸発速度と密接な関連を示し, この値が大きい日にはg<SUB>s</SUB>が小さいという傾向がみられた。(2) 葉面光強度とg<SUB>s</SUB>のCERに及ぼす効果の相互関係; (i) 連続した数日間においていろいろな時刻に測定した同一葉位の葉のCERと葉面光強度およびg<SUB>s</SUB>との関係を検討したところ, 両要因の効果には相互作用が存在することがわかった。すなわち, (ii) 弱光下ではCERはg<SUB>s</SUB>に無関係に, ひとつの光-光合成曲線であらわされた。(iii) 光飽和点はg<SUB>s</SUB>が大きいほど高かった。(iv) 強光下ではCERは光強度に影響されずg<SUB>s</SUB>の増大に伴い増加した。
著者
稲田 勝美
出版者
CROP SCIENCE SOCIETY OF JAPAN
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.37-44, 1977-03-30 (Released:2008-02-14)
参考文献数
15
被引用文献数
3 4

作物の光合成における分光反応曲線が葉色や栽培条件によってどの程度変化するかを明らかにするため, 緑色程度の異なる葉, 緑色葉と紫色葉, ならびに異なる光質下で発育した葉について作用, 吸収率および量子収率スペクトルを比較した. 栽培法, 植物令などの違いによって生じた緑色程度の異なる葉の比較には水稲, トウモロコシ, ダイズ, トマト, ナス, ウンシュウミカンおよびチャを用いた. 単位入射エネルギーに対する作用スペクトルの相対値は, 500~650nm の波長帯においていずれも淡緑葉の方が濃緑葉よりも低く(第2, 3図), 波長 560nm に対する 435nm の作用比と 560nm における吸収率との間には種間の場合と同様の負の相関が認められた(第4図). 緑色葉と紫色葉の比較はハボタン(緑葉に白色斑入りのある品種と暗紫葉に紅紫色斑入りのある品種)およびシソ(青ちりめんと赤ちりめんの2品種)について行った. 紫色葉では緑色葉で明らかに見られる緑色域での吸収率低下が全く認められず, この緑色域において作用ならびに量子収率が著しく低下することが明らかにされた(第5, 6図). 紫色葉の緑色域における光合成効率の低下はアントシアニンによる緑色光の選択的吸収に帰せられる. 青色, 赤色および中性(灰色)の塩ビフィルムを被覆して得た異なる光質(第1図)下で水稲を育て, 新たに伸長した葉の光合成を比較した. 作用スペクトルの相対値は 600nm 前後の波長帯で多少差が認められ, 青色区で最も高く, 中性区はこれに次ぎ, 赤色区で最も低かった. しかし, 吸収率および量子収率スペクトルには明らかな差を認め難く, 光質適応の存在を確認するには至らなかった(第7図). 以上の結果から, 光合成の分光反応曲線は葉の特性とくに葉色によって変化するが, その変化の幅は紫色葉のような特殊な色を呈する葉を除けば種間でみられる差異と同程度であると考えられる.
著者
三十尾 修司
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.78, no.2, pp.275-283, 2009 (Released:2009-05-22)
参考文献数
3
被引用文献数
1 1
著者
続 栄治 島崎 敦 ナイバルレブ ロサバティ ウルカラ 富山 一男
出版者
CROP SCIENCE SOCIETY OF JAPAN
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.195-200, 1995-06-05 (Released:2008-02-14)
参考文献数
14
被引用文献数
10 9

サトイモは宮崎県における主要な作物であり, 需要の増加と共に生産量も増えている. これに伴い栽培農家ではサトイモの連作障害の発現が問題となってきている. 本研究ではサトイモの連作障害の実態を調査すると共に, 連作土壌の理化学性, 土壌線虫, およびサトイモ由来の生長抑制物質について分析・調査した. サトイモを5年連作すると地上部の乾物重および塊茎収量は著しく低下し, 初年度作に比べ地上部乾物重において50%, 塊茎収量においで59%それぞれ低下した. サトイモ連作区と輪作区における土壌について分析した結果, 両者間に土壌の理化学性および線虫数について明瞭な差異は認められなかった. サトイモ地上部(茎葉)およびその連作土壌を水ならびにメタノールで抽出し, その抽出液について生理活性を検討した結果, これらの抽出液はダイコンならびにカブの初期生育を著しく抑制することが認められた. 以上の結果から, サトイモの連作障害はサ卜イモ由来の生長抑制物質と密接に関連しているものと推察した.
著者
箕田 豊尚
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.79, no.1, pp.62-68, 2010 (Released:2010-02-12)
参考文献数
15
被引用文献数
3 5

埼玉県の農業試験場の畑圃場において1951年から1996年まで45年にわたり同一条件で栽培されたコムギ「農林61号」の収量に対する生育期間の気象条件の影響を検討した.その結果,播種期から成熟期までの平均気温と収量は有意な負の相関関係にあり,相関係数は1%水準で有意であった.そこで,生育の全期間を出穂期までとそれ以降に分けて調べたところ,播種期から出穂期までの平均気温と収量は負の相関関係にあり,相関係数は5%水準で有意であったが,出穂期以降の平均気温は収量に影響していなかった.一方,播種期から成熟期までの降水量と収量には有意な相関はみられなかった.このうち,播種期から出穂期までの降水量と収量には有意な相関関係がみられなかったが,出穂期から成熟期までの降水量と収量は負の相関関係にあり,相関係数は5%水準で有意であった.このことから,埼玉県において,コムギ「農林61号」は,播種から出穂までの平均気温が上がるほど減収する傾向にあること及び出穂期以降の降水量が増加することにより減収する傾向にあることがわかった.
著者
白土 宏之 伊藤 景子 今須 宏美 大平 陽一 川名 義明
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.89, no.3, pp.185-194, 2020

<p>水稲の無コーティング種子代かき同時浅層土中播種栽培に適した播種後水管理を明らかにするために,耐倒伏性の強い水稲品種「萌えみのり」を用いて,播種後水管理が苗立ちや収量等に与える影響を検討した.秋田県にある東北農業研究センター大仙研究拠点圃場において,2013〜2017年に水管理処理として,湛水区,湛水後落水区 (7日湛水後5〜7日落水),短期落水区 (播種後7〜8日落水),長期落水区 (播種後12〜13日落水) の4水準を設け,苗立ちや収量等を調べた.苗立率は長期落水区が湛水区と湛水後落水区より多い傾向が見られた.生育や収量,品質は処理間で大きな違いはなかったが,倒伏程度は湛水区が短期落水区より大きかった.2014〜2016年に秋田県内の現地圃場2箇所で,水管理処理として,湛水後落水区 (8日湛水後3〜12日落水) と落水区 (8〜15日落水) の2水準と,対照として鉄コーティング直播区を設け (2014年を除く),苗立ちや収量等を調べた.同じ白化茎長で比較すると,所内試験と同様に落水区が湛水後落水区より苗立率が高い傾向が見られ,生育,倒伏程度,収量,品質は落水区と湛水後落水区に大きな違いは見られなかった.本栽培法は鉄コーティング直播より初期の葉齢が大きく,苗立率や収量等は同程度であった.以上より,本栽培法では播種後12日間程度落水するのがよいと考えられた.また本栽培法は鉄コーティング直播と同程度の実用性が認められた.</p>
著者
森田 茂紀
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.69, no.4, pp.554-557, 2000-12-05 (Released:2008-02-14)
参考文献数
46
著者
松尾 和人 吉村 泰幸
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.84, no.1, pp.1-8, 2015 (Released:2015-02-23)
参考文献数
41

遺伝子組換え作物は,米国を筆頭に,全世界の27か国,約1.75億haで栽培されている.中でも除草剤に耐性を有する遺伝子組換え作物は,その有用性から,1996年の大規模栽培の開始後急速に普及したが,その結果,新たな懸念が発生した.一つは除草剤に抵抗性を持つ雑草の出現であり,もう一つは搬送中の種子のこぼれ落ちによる遺伝子組換え作物の野生化である.除草剤耐性作物には,グリホサートとグルホシネートに耐性を持たせたものがほとんどであるが,このような特定の除草剤を頻繁に使用することにより,除草剤に抵抗性を持つ雑草が出現した.その発生は,米国をはじめ遺伝子組換え作物の栽培が盛んな国々で報告され,抵抗性抑止の提言や農家の意識調査など,多くの有用な研究や報告がなされている.また,油糧等の原材料として作物を輸入する複数の国で,野外で生育しているセイヨウナタネ等の遺伝子組換え作物の報告例がある.これまでの調査では,自然環境下で,除草剤耐性遺伝子組換えセイヨウナタネが,普通のセイヨウナタネと比べ競合性において優位性を持たないと判断されている.新たな遺伝子組換え作物の非生物的ストレス耐性品種や多くの形質がスタックされた品種に対しても,その有用な技術を長く使用するためには,過度に依存せず,これまでに培われてきた機械的な除草方法や栽培学的な手法も取り入れ,除草剤抵抗性作物を利用した持続的な雑草管理技術を開発していくことが重要である.
著者
高橋 一典 松田 智明 新田 洋司
出版者
CROP SCIENCE SOCIETY OF JAPAN
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.47-53, 2001-03-05 (Released:2008-02-14)
参考文献数
27
被引用文献数
4 4

炊飯に伴うデンプンの糊化についての基礎知見を得るため,1998年産コシヒカリ,きらら397およびタイ米(インド型長粒種,単一銘柄)を供試して,米粒中のデンプン粒の糊化過程を経時的な微細構造の変化として走査電子顕微鏡により詳細に追跡した.炊飯開始後10分(炊飯釜内中央部の温度45.0℃)でコシヒカリではアミ口プラスト包膜の表面から分解が開始された.炊飯開始後15分(51.3℃)には,炊飯開始前に長径で約3~4μmであったデンプン粒は約4.5~5μmに膨潤し,精白米の第1層目の胚乳細胞内のデンプン粒で,表面から繊維状の糊が伸展した.網目状の構造はデンプン粒の表面から内部に向かって形成が進行した.アミ口プラスト内のデンプン粒は互いに網目状構造で融合し,一体化して多孔質の糊となり不定形化した.炊飯開始後20分(98.5℃)には,コシヒカリの米粒の表層部では,きらら397やタイ米と比較して網目の拡大した微細骨格構造が形成された.アミ口プラスト単位で一体化した不定形の糊状構造は,炊飯開始後25分(98.5℃)には,さらに胚乳細胞を単位として一体化するのが認められた.炊飯に伴うデンプン粒の膨潤と網目状構造および不定型の糊状構造の形成は,米粒の表層部ほど早く始まり中央部では遅かった.網目の大きさは米粒の表層部で大型化し,中央部では小型であった.本観察からデンプン粒の糊化とは「緻密」な構造体であるデンプン粒が,その主成分であるアミロペクチンの分子内に氷分子を取り込み,膨潤し,分子密度の低下した構造体に変化することであると考えられた.
著者
佐藤 亨 宮内 英治 杉本 秀樹
出版者
CROP SCIENCE SOCIETY OF JAPAN
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.305-310, 1988-06-05 (Released:2008-02-14)
参考文献数
12
被引用文献数
1 1

サトイモの3つの型, 子イモ用品種(石川早生, 女早生), 親子イモ兼用品種(赤芽), 親イモ用品種(台湾芋)を圃場栽培し, 乾物生産およびイモ肥大特性を調査した. 1. 品種間で個体生長量に大差がみられた. イモ重の推移では, 子イモ用品種では, 子・孫イモの肥大が目立ち, 赤芽では親・子イモが, 台湾芋では親イモの肥大が生育末期まで続いた. 2. 乾物生産速度とイモ生産速度との関係は, 生育の前半と後半に分けられ, とくに, 赤芽と台湾芋では生育後半にイモ肥大によって乾物生産速度が高められた. 3. イモ生産速度と葉面積指数との関係は, 赤芽と台湾芋で葉面積指数が高くなることによってイモ生産速度が高まることが示唆された.
著者
鬼頭 誠 山城 美代 道山 弘康
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.89, no.2, pp.87-97, 2020

<p>本研究は,ソバのリン吸収特性を明らかにし,沖縄の国頭マージにおいてソバの子実収量が黒ボク土より低かった原因を探ることを目的とした.リン無施肥区において,赤玉土およびバーミキュライトで栽培したソバは,前報のリン無施肥の黒ボク土で栽培した場合と同様に植物体乾物重および子実重ともに著しく減少することが明らかになった.低リン環境では開花から収穫までの根の乾物重増加が大きくなるために収穫期の根の乾物重が高リン環境より重くなることが明らかになった.この根の生長の促進は生育後期の養分の吸収を促進するものと考えられた.また,子実のリン含有率は概ね2.5 g/kg以上に保たれるように吸収されていることに対して,葉と茎ではリン含有率だけでなくリン含有量も開花期から収穫期にかけて減少し,葉と茎からは子実へリンが再移行していることが考えられた.以上の2つのソバのリン吸収の特性から,ソバの低リン抵抗性が獲得されていることが考えられた.Al型難溶性リン施肥では生育および収量の抑制が小さかったが,Fe型難溶性リン施肥では生育および収量が著しく抑制された.よって,ソバはAl型難溶性リンをある程度吸収できるが,Fe型難溶性リンの吸収は困難であるために,根系発達とリンの再移行性はあるものの国頭マージにおいて黒ボク土より収量が低かったことが示唆された.</p>
著者
中津 智史 奥村 理 山木 一史
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.76, no.3, pp.416-422, 2007 (Released:2007-08-10)
参考文献数
22
被引用文献数
2 4

道内の主要なコムギ8品種(秋まきコムギではホクシン, タイセツコムギ, ホロシリコムギ, キタノカオリ, きたもえとチホクコムギ, 春まきコムギでは春よ恋とハルユタカ)について, 主として麺帯の明るさ(L*)とゆで麺の硬さ(切断抵抗値)の面から, 中華麺への加工適性を評価するとともに, 市販の中華麺用粉と比較をおこなった. 麺帯のL*は品種間差が大きく, タンパク含有率の高い春まきコムギでは製麺後のL*の低下程度が大きく, タンパク含有率の低いホクシン, タイセツコムギ, ホロシリコムギ, きたもえとチホクコムギはL*の低下程度が小さかった. 一方, キタノカオリと市販中華麺用粉は春まきコムギと同程度のタンパク含有率にもかかわらずL*の低下程度が小さい特徴を有していた. 小麦粉の灰分含有率はL*と有意な負の相関が認められたが, アミロ値とL*との相関は判然としなかった. ゆで麺の抵抗値と小麦粉のタンパク含有率との間には高い正の相関が認められ, 春まきコムギとキタノカオリと市販中華麺用粉が高い抵抗値を示した. 道産コムギ品種の特徴として, チホクコムギ, タイセツコムギ, ホクシン, きたもえの秋まきコムギ5品種はL*が高いが抵抗値が低く, 逆に春よ恋やハルユタカの春まきコムギ2品種は麺の抵抗値が高いがL*が劣っていた. 供試した8品種の中で中華麺適性の最も高いと考えられたのはキタノカオリで, ゆで麺の抵抗値が最も高くL*も比較的高かった. 同一地域で収穫されたホクシンにおいて, タンパク含有率が高いほど麺帯のL*は低下したが, ゆで麺の抵抗値は高まった.
著者
杉本 秀樹 佐藤 亨 西原 定照 成松 克史
出版者
CROP SCIENCE SOCIETY OF JAPAN
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.605-610, 1989-12-05 (Released:2008-02-14)
参考文献数
17
被引用文献数
5 5

本実験は, 尿素の葉面散布がダイズの湿害軽減に有効か否かを明らかにするために行ったものである。ポット栽培したダイズ (タマホマレ) を供試し, 開花期に湿潤 (地下水位5~7 cm), 湛水 (地上水位2~3 cm) ならびに適湿の各区を設け, 1%尿素液を葉面散布した。土壌の過湿処理は7日間, 葉面散布は14日間それぞれ継続した。湿潤ならびに湛水区では, 散布により葉身の窒素含有率が増加して光合成速度が高まり, 乾物生産が増大した。また, 莢数と百粒重が増加して子実収量も増大した。特に, 湿潤区では散布により, これらは対照区 (適湿・無散布) とほぼ同様の値となった。一方, 適湿区では散布効果は小さかった。以上の結果, 開花期のダイズは地下水位が5~7 cm程度の過湿条件におかれても, 尿素の葉面散布により障害をほぼ回避でき, また7日間湛水条件におかれたような場合でも, 散布により障害がある程度軽減されることが示唆された。