著者
中村 善行 藏之内 利和 石田 信昭 熊谷 亨 中谷 誠
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.76, no.4, pp.576-585, 2007-10-05
参考文献数
24
被引用文献数
4 4

サツマイモ蒸切干(干しいも)は伝統的なサツマイモ加工品で,茨城県,静岡県など東日本の一部地域では重要な地域特産品の一つとなっている.しかし近年,安価な外国産品の輸入が増加し,国内産地を維持するうえで品質向上が急務となっている.そこで,蒸切干片の中央部が白色不透明化して硬くなり,商品性が失われる重大な品質低下障害である中白の原因を究明するべく,品種や栽培条件の違いに基づく障害の発生機作を検討した.本障害は,蒸切干用主力品種「タマユタカ」,でん粉原料用品種「ハイスターチ」などのでん粉含有率の比較的高い品種で発生しやすく,低でん粉品種「沖縄100号」や低糊化温度品種「クイックスイート」などでは発生が少なかった.また,MRI画像解析などから,供試したいずれの品種でも蒸煮塊根組織の中白部分は正常部分に比べて水分含量が低いことが判明した.一方,「タマユタカ」塊根の正常部分と中白発生予測部分との間にはでん粉含有率,可溶性糖類含量および糖化酵素β-アミラーゼの活性に顕著な差異は認められなかったが,「ハイスターチ」塊根の中白部分ではでん粉蓄積の不足した細胞群が観察された.さらに,「タマユタカ」では,塊根肥大期の土壌乾燥によって収穫した塊根の含水率が低下すると中白の発生が顕著になった.以上の結果から,中白障害の発生には塊根におけるでん粉の糊化不良や蓄積不足が関与しており,「タマユタカ」においては,土壌乾燥に伴う塊根の水分低下が蒸煮時のでん粉糊化不良を招き,障害の発生が助長されると考えられる.
著者
佐藤 庚 稲葉 健五 戸沢 正隆
出版者
CROP SCIENCE SOCIETY OF JAPAN
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.207-213, 1973-06-30 (Released:2008-02-14)
参考文献数
16
被引用文献数
15 22

A japanica rice (var, Norin-17) was used to test the effects of high temperature treatment (day-night, 35-30°C) from young panicle formation to maturity upon the ripening and the distribution of assimilates, and upon the pollens and anthers. 1) More than 20 per cent sterility occurred when treated just before and after flowering, being progressively decreased as the time of treatment was apart from flowering stage. In general, a larger amount of carbohydrate and nitrogen remained in the straw of the plant which exhibited a higher sterility. The plant with the greatest sterility treated at flowering stage produced grains of the greatest 1000-kernel-weight, being greater than the control. 2) The pollens of plants treated just before and during were smaller in size and stored starch abnormally, often being deficient of inclusions. Besides, the plants had a greater number of anthers which did not open at flowering. These may be related to the high sterility. 3) The plants treated at one or two weeks before flowering produced grains of smaller 1000-kernel-weight, due to smaller grain size especially in its length, although the sterility did not increase by the treatment. In such a plant, more nitrogen and available carbohydrate remained in the straw than the control plant. 4) The grains of plant which was treated under high temperature at several stages during the ripening period decreased in weight, but their sterility did not increase. Grain weight was smallest in the plant treated at 6 to 16 days flowering stage, mainly due to a decrease in grain thickness, and became progressively greater as the time of treatment went away from those period. The sum of TAC(total available carbohydrate)content of panicle and straw was decreased by the high temperature treatment, but more of it remained in the straw of the plants with smaller grains. Nitrogen accumulation did not change significantly by the treatments.
著者
山本 晴彦 岩谷 潔
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.75, no.1, pp.73-81, 2006-01-31
参考文献数
27
被引用文献数
4

2004年台風15号は, 9月19日には九州の西海上を通過し, 夜半から翌朝にかけて強い勢力を維持しながら日本海を北東に進み, 青森県の津軽半島に上陸した後, 根室の南東海上で温帯低気圧に変わった.台風の通過時に伴い相川(佐渡市), 酒田, 秋田でそれぞれ38.3m/s, 39.6m/s, 41.1m/sの最大瞬間風速を観測し, 台風通過時には著しい少雨傾向にあった.このため, 海塩粒子が海からの強風により飛散して稲体に付着し, 通過時の少雨により塩分が洗い流されずに強風により出来た傷から侵入して細胞を脱水させる潮風害が東北・北陸地方の日本海沿岸で発生した.海岸からの距離と1穂当たりの塩分付着量(mg/穂)の関係には高い負の相関関係が認められ, 海岸付近では2.7〜3.2mgの塩分が1穂に付着し, 海岸から離れるにつれて付着量は減少し, 約1kmでは2〜2.5mg, 10kmでは0.5mg前後まで激減した.台風15号による農業被害は, 秋田県, 山形県, 新潟県(台風16号・18号を含む)でそれぞれ180億円, 102億円, 72億円で, その中でも水稲の被害額が3/4を占めた.水稲収量の平年比は, 秋田県象潟町での9.0%をはじめ, 県南部沿岸の本荘由利地域, 新潟県の佐渡市で大きく低下した.また, 潮風害の影響が顕著であった新潟県の佐渡地域では規格外が19.8%, 秋田県本荘地域でも11.1%に達し, 品質の低下が顕著に現れた.
著者
Guiamet Juan Jose Nakayama Fermin
出版者
日本作物學會
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.p35-40, 1984-03

ダイズ品種Williamsを第1本葉展開時以降短日下 (自然光9時間) で栽培し, 開花始めより次の処理を行った. A-実験終了時まで短日のまま, B-実験終了時まで長日 (低照度3時間補光), C-子実肥大始めまで長日, D-子実肥大始めより肥大中期まで長日, E-子実肥大中期より実験終了時まで長日, F-子実肥大始めより実験終了時まで長日. 処理Aが生理的成熟期に達したとき実験を終了し, すべてを収穫した. 主茎頂端の生長はBとCで延長された. 一方, これらの処理では, 着莢節あたり莢数の両方が増加する結果, 個体あたり莢数および種子数が対象 (A) よりも有意に大となった. 収穫時では, 茎, 葉柄, 葉身の乾物重およびSLWのすべてがBで最大であった. C, DおよびFの葉柄, 葉身乾物重およびSLWもまたAより大であった. 平均一粒重は長日で減少し, Bが最小を示した, 子実生長率は長日により減少した. 莢の成熟と葉の老化はB, C, DおよびFで遅延した.
著者
森田 茂紀 豊田 正範
出版者
日本作物學會
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.217-223, 2000-06-05
参考文献数
28
被引用文献数
3

メキシコ合衆国バハ・カリフォルニア州のゲレロ・ネグロで, 日本政府とメキシコ政府の共同事業として, メキシコ沙漠地域農業開発プロジェクト(以下, プロジェクト)が実施された.プロジェクトの目的は, 沙漠地域で野菜と果樹を点滴灌漑栽培するための技術を開発し, 移転することであった.プロジェクトの圃場の土壌と, そこで用いられる灌漑水は, いずれもpHと塩類濃度が高いという問題を持っているため, 作物の耐塩性に関する問題は重要な課題である.そこで本研究では, 耐塩性の問題を研究していくための基礎的なデータを得るために, 根から吸収されて茎葉部へ転流される様々なイオンについて検討した.すなわち, プロジェクトで重要な作物であるトウガラシとメロンについて, 成熟期の出液中に含まれているイオンの分析を行なうとともに, 出液速度を測定した.露地栽培したトウガラシでは出液中のイオン濃度に昼夜で差があったが, 出液速度も昼頃にピークを持つ山型の日変化パターンを示した.一方, 畝立マルチ栽培のメロンでは, イオン濃度も出液速度も昼夜に関係なくほぼ同じレベルであった.そこで, 出液速度を考慮して検討したところ, 耐塩性に関係しているナトリウムイオンの濃度は出液速度が大きいと低く, 出液速度が小さいと高いことが明らかとなった.なお, 土壌のイオン濃度も場所によって異なっていたため, バックグラウンドとして土壌成分を基準にした比較も行なった.以上のように, 出液成分に着目したアプローチによって, 作物の耐塩性を研究するために基礎的データが得られるが, 出液速度や土壌条件を考慮して解析する必要があることが明らかとなった.
著者
杉本 秀樹 雨宮 昭 佐藤 亨 竹之内 篤
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.71-76, 1988-03-05
被引用文献数
7

水田転換畑で栽培したダイズ(タマホマレ)の生育各期における土壌の過湿処理が, 乾物生産と子実収量に及ぼす影響について調査した. 処理は花芽分化期, 開花期および登熟中期にそれぞれ8-10日間, 畦間に5-8cmの深さに水を溜めて行った. 乾物生産と子実収量に及ぼす過湿処理の影響は, 生育時期が早いほど著しかった. 花芽分化期処理では主茎の伸長, 葉面積の拡大, 乾物重の増加が著しく抑制されるとともに, 莢数, 稔実莢歩合が低下することによって減収した. 開花期処理では, 栄養器官の生長抑制は軽減されたが, 莢数が低下することによって減収した. さらに, 登熟中期処理では, 黄葉期と落葉期が早められた結果, 乾物生産が減少して, 粒重の低下という形で減収した.
著者
中村 聡 後藤 雄佐
出版者
CROP SCIENCE SOCIETY OF JAPAN
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.324-329, 1996
被引用文献数
5

外観で容易に判断できる葉位齢(葉身が前の葉の葉鞘から抽出し終わった時点ごとに, 抽出を完了したばかりの葉の葉位で表す個体の齢)を用いて, スイートソルガムの茎基部(地表面付近)の第3節間から第10節間までの伸長を解析し, 非伸長節間(1cm未満)と伸長節間(1cm以上)との伸長様式を比較した. 晩生のシロップソルゴー2号(S2)と早生のハイシュガーソルゴー(HI)を, 第4葉から第14葉の各葉身がちょうど抽出完了するごとに20個体ずつサンプリングし, 節間位ごとの節間長を調査した. 第3節間から第6節間はすべて非伸長節間, 第9, 10節間はすべて伸長節間であったが, 第7, 8節間は, 非伸長節間と伸長節間が混在していた. タイムスケールに葉位齢を用いて, 非伸長節間と伸長節間の伸長様式を解析した結果, 次のようにまとめられた. 伸長節間(第n節間)は, 葉位齢n+2頃に急速に伸長し, 葉位齢n+3から葉位齢n+4にかけての時期にほぼ伸長が終わった. この伸長様式は, 前報での第10節間から第19節間までの伸長様式と同様であり, 品種の早晩によらず普遍的な伸長様式であると考えられた. 一方, 非伸長節間では, 両品種とも第n節間は葉位齢n+1から葉位齢n+2頃にかけて増大し, 葉位齢n+3頃に最終長に達する伸長様式を示した. 以上から, 非伸長節間の伸長様式も葉位齢によって把握することが可能となった. また, 非伸長節間の伸長と伸長節間の伸長とは質的に異なり, この違いは介在分裂組織の形成の有無によるものと推察された.
著者
柏木 孝幸 廣津 直樹 円 由香 大川 泰一郎 石丸 健
出版者
日本作物學會
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.76, no.1, pp.1-9, 2007-01-05
参考文献数
70
被引用文献数
3 16

イネにおいて倒伏は収量や品質を低下させ,生産者の作業効率を低下させる栽培上最も重要な障害である.倒伏は倒れ方から湾曲型,挫折型,転び型の3つに分類され,その中で湾曲型倒伏がコシヒカリ等の栽培で最も多く生じる.湾曲型倒伏は穂を含む植物体上位部の重さや風雨等の外部の力により稈が湾曲することにより発生する.「短稈化」,「強稈化」及び「下位部の支持力強化」が湾曲型倒伏に対する抵抗性のターゲットである.これまでの倒伏抵抗性の育種では主に短稈化がターゲットとされてきた.一方で短稈化のみで倒伏抵抗性を向上させていくにはいくつか問題がある.収量性の観点から考えると,草丈を下げる短稈化には限界が生じる.さらに抵抗性を向上させるには短稈化以外に強稈化及び下位部の支持力強化をターゲットとして育種を進めて行くことが必要である.本総説では,近年の分子・遺伝生理学的な研究の成果を中心に湾曲型倒伏に対する抵抗性に関する研究成果をまとめ,倒伏抵抗性向上に向けた研究の方向性を論じる.
著者
古屋 忠彦 松本 重男 嶋 正寛 村木 清
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.1-7, 1988-03-05
被引用文献数
2

ダイズの成熟異常個体が発生する過程を明らかにする一環として, 成熟異常個体の出現頻度の高い寒地品種(ナガハジロと刈系73号)と出現頻度の低い暖地品種(オリヒメ)を用い, 地上部諸器宮の成熟および稔実莢の登熟経過について比較調査した. 主茎葉の落葉(成熟)経過についてみると, オリヒメは各葉位で落葉が早く, 収穫期にはすべて落葉した. ナガハジロと刈系73号の成熟異常個体では下位葉の落葉は遅く, 頂葉から2〜3枚の葉の落葉が著しく遅延した. 成熟正常個体と成熟異常個体とにおいては, 特に成熟に伴う茎の水分減少経過に差異が認められ, 茎の水分含有率の高い品種ほど葉の落葉が不完全で個体の成熟・枯死も遅延した. また, 稔実莢の登熟経過にも大きな差異が認められた. すなわち, オリヒメでは開花日の異なる各英ともほぼ揃って, 短期間に登熟を完了した. 一方ナガハジロと刈系73号では, いずれの開花日の莢においても莢の登熟日の変異は大きく, 最初の登熟莢の出現から最後の登熟莢まで10〜14日も要した. このように成熟正常個体では, 莢実の成熟に伴ってすみやかに地上部諸器官が枯死したのに対して, 成熟異常個体では, 程度の差はあるものの, とくに茎の成熟が遅延したが, 個々の稔実莢の登熟日数は品種本来の登熟期間を示した. 以上の結果から, 今後, 著者らは, 成熟に伴いダイズ構成器宮(葉, 葉柄, 茎, 根, 莢殻, 子実)の成熟が同調的に進行する(オリヒメ)現象を成熟整合, 非同調的に進行する(ナガハジロ, 刈系73号)現象を成熟不整合と呼称する.
著者
柴田 和博 佐々木 一男 島崎 佳郎
出版者
日本作物學會
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.267-274, 1973-09
被引用文献数
2

Growing the rice plants under various conditions of some possible combinations of daytime air-temperatures (A_D : 26, 20 and 14℃), the daytime water-temperatures (W_D : 26, 20 and 14℃), the nocturnal air-temperatures (A_N : 20, 14 and 8℃), the nocturnal water-temperatures (W_N : 20, 14 and 8℃) and the number of days of treatment (P : 3, 6 and 9 days), the authors examined their main effects and interactions on the heading date. The rice variety "Eiko" was used. The daytime was settled for eight hours from 9.00 a.m. to 5.00 p.m. and the night-time was settled for sixteen hours from 5.00 p.m. to 9.00 a.m. of the next day. The water was kept four cm. in depth above the soil surface in pots. The experimental design was 3^5 factorial in 81 units (1/3 replicate) with one block and defining contrasts 1=A_DW_DA_NW_<N^2>P. The results were summarized as follows; 1. At the fourth leaf stage (T_1; the transplanting time), the main effects of W_D, W_N and P were significant at 0.1% level and all the other were not significant (table 2). And regardless of the difference of W_N, it was inferred that W_D of 21℃ hastened the heading date (fig. 1-T_1(P_3)). 2. At the seventh leaf stage (T_2; about ten days before the differentiating stage of first bract primordia), the main effects of A_D, W_D, A_N and W_N and the two-factor interactions of A_D × P, A_N × W_N and A_N × P were significant. The contour lines of each date of heading based on W_D and W_N were almost straight and parallel with the line of mean water-temperature for nine days treatment (fig. 1-T_2 (P_3)). On the other hand, the contour lines of each date of heading based on A_D and A_N were curved. And regardless of the difference of A_N, it was inferred that A_D of 20℃ hastened the heading date (fig. 2-T_2 (P_3)). Moreover, T_2 was considered to be the most sensitive stage to temperature, because the heading date and the total leaf number on the main stem were most variable by both air- and water-temperature among all the treatment stages. 3. At the stages of nine leaves (T_3; the differentiating stage of first bract primordia) and ten leaves (T_4; the middle differentiating stage of primary branch primordia), the main effects of each factor and their interactions were similar to those of T_2, but the strengths were weaker than those of T_2 (table 2, 3 and 4). 4. At the thirteenth leaf (flgg leaf) stage (T_5; the stage of reduction division of pollen mother cells), the main effects of A_D, A_N and P and the two-factor interaction of A_N × P were significant greatly (table 2). The contour lines of each date of heading based on A_D and A_N were almost straight and parallel with the line of mean air-temperature (fig. 2-T_5 (P_3)).
著者
杉本 秀樹 佐藤 亨
出版者
CROP SCIENCE SOCIETY OF JAPAN
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.39-44, 1999
被引用文献数
6

夏季における新ソバ供給と水田の高度利用を目的にした, 西南暖地における夏ソバ栽培技術の確立に関する研究の一環として, 播種期の違いが夏ソバの生育ならびに収量に及ぼす影響について調査した. 普通ソバ品種キタワセソバの種子を, 愛媛大学農学部内の雨よけビニルハウスに設置したポットに3月中旬から6月初旬まで10日ごとに播種した. 播種期が遅くなるほど開花数は増加したが, 結実率の著しい低下により粒数が減少し, さらに千粒重も低下して子実重は減少した. 特に, 開花始~成熟期における日最低気温の平均値が17.5℃を越えると結実率は顕著に低下した. したがって, 西南暖地における夏ソバの播種は, 遅霜の心配がなければできるだけ早く, かつ開花始~成熟期における日最低気温の平均値が17.5℃を越えない時期までに終える必要があることが明らかになった. さらに, 瀬戸内地域においては遅霜と梅雨入り時期ならびに上記臨界温度を考慮すると, 播種期は3月下旬から4月中旬に限定されること, 4月中旬までに播種すれば収穫は6月初旬となり, 初夏には新ソバの供給ができるばかりでなく, その後作に水稲はもちろんダイズ, 飼料作物などの栽培も可能となり, ソバを水田における輪作体系に組み込むことができることも明らかになった.
著者
ウデイン S.M.モスレム 村山 盛一 石嶺 行男 続 栄治 原田 二郎
出版者
CROP SCIENCE SOCIETY OF JAPAN
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.747-753, 1995
被引用文献数
14

木酢液・木炭混合物(サンネカE)が夏植サトウキビの乾物生産および根の生育に及ぼす影響を明らかにするために, サトウキビ品種NCo310を供試し, サンネッカE施用量を0(対照区), 200, 400および800kg/10aの4水準設定して5反復で実験を実施した. その結果, サンネッカE施肥により茎重, 茎長, 茎径, 糖含量等のサトウキビの収量構成要素が増大した. サンネッカE施用区におけるCGR, NARおよびLAIは対照区より高い値を示し, CGRとNARおよびLAIの相関は有意であった. 原料茎収量, 葉糖収量および全乾物重もサンネッカE区が対照区よりそれぞれ13-24%, 19-31%および14-20%増加した. また, 原料茎収量, 蔗糖収量および全乾物重の最高値は400kg/10aサンネッカE区で得られた. サンネッカE区の根系の分布は水平方向, 垂直方向とも各分布域における根重密度はサンネッカE区が高かった.
著者
後藤 雄佐 中村 聡 酒井 究 星川 清親
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.473-479, 1994-09-05
被引用文献数
2

スイートソルガムの生長の解析法を確立するために, 疎植区(100 cm×50 cm)と密植区(50 cm×20 cm)とを設け, 節間の伸長と肥大とを調べた. 供試品種は早生のSucrosorgo 301 (S 301)と晩生のSucrosorgo 405 (S405). 収穫物の中心となる茎は, 伸長した節間の集合体であり, 収穫物からその個体の生長を解析するためには, どの節間がいつ頃伸長・肥大したものかを推定できなくてはならない. すなわち, 外観から測定できる個体の齢と内部での節間の生長との関連性を把握する必要がある. そこで, 葉身が抽出完了した時点ごとに, その葉位で個体の齢を表し(葉位齢と呼んだ), 節間の伸長・肥大との関係を調べた. 葉位齢を用い第9節間〜第12節間の伸長過程を基に概念的な節間伸長の生長曲線を描いた. すなわち, 第n節間(IN n)は葉位齢n+1頃から急激な伸長を始め, 葉位齢n+2頃に最も急速に伸長し, 葉位齢n+3〜n+4頃に伸長が終わった. 節間伸長への栽植密度の影響は, 伸長の速度として認められた. 節間の太さについては, 同じ節間位で比較すると, 両品種とも疎植区のほうが密植区より常に太かった. 節間の肥大は, 一つの生長曲線にはまとめられなかった. 最も単純化した場合, 栽植密度によって異なる2つの生長曲線にまとめられた. INnは, 葉位齢nくらいまでは栽植密度の影響を受けずに肥大したが, 密植区は葉位齢n+1くらいから肥大速度が鈍り, 葉位齢n+2くらいで最大径となった. ところが疎植区は, 葉位齢n+5くらいまで肥大が続き, 最大径は密植区を上回った.
著者
Guiamet Juan Jose Nakayama Fermin
出版者
日本作物學會
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.p299-306, 1984-09

熟期の異なるダイズ品種, McCall (00), A-100 (I), Williams (III), Forrest (V), Ransom (VII) および Alamo (IX) を供試して, 開花以後の長日に対する反応の差異を調べた. 材料を開花まで短日下(自然光9時間)で育て, 開花後そのまま短日条件を続けたと区と, 長日条件(短日区の暗期に3時間の低照度補光)にした区とを設け, 比較した. 長日は, A-100 を除くすべての品種で栄養生長を促進したが, Williams では頂端生長の促進, Forrest, Ransom, Alamo では分枝数の増加によるものであった. 後者の場合, 長日下で発生した分枝には花がつかず, ニ次三次の分枝が生長した. 長日は, すべての品種, とくに Williams, Forrest, Ransom において生殖生長期間を延長させた. これら3品種と Alamo では長日により開花数が増加したが, 熟期の遅い品種ほどその程度は小さく, 脱落する花器の割合は高くなった. その結果, 成熟期における長日区の莢数と種子数は, McCall, Williams, Forrest および Ransom では増加したが, 花器の脱落が著しかった Alamo では減少した. 一方, 粒大は McCall を除いて長日により減少した. 長日区の子実収量は, 結局, Williams でのみ増加し, Alamo では短日区の約25%にすぎなかった.
著者
阿部 淳 根本 圭介 胡 東旭 森田 茂紀
出版者
CROP SCIENCE SOCIETY OF JAPAN
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.572-575, 1990
被引用文献数
5

水稲根系の形成について研究していく場合, 個体間あるいは株間で1次根の分布を比較する必要があるが, 従来有効な手法が開発されていなかった。これは1次根の伸長方向 (GDPR) の分布がどのようなものであるか, 必ずしも明らかではないためである。したがって, 異なる標本間におけるGDPRの分布の差を検討するには, 分布の形についての前提を必要としないノンパラメトリック法の利用が妥当と考えられる。本研究では, 同一条件下で栽培した3品種, すなわち, 南京11号 (A), 土橋1号 (B), および, 無芒愛国 (C) の代表株について, Kolmogorov-Smirnov two sample testを用いて, GDPRの分布の差の検定を行なった。この方法では, 各標本の累積相対度数分布 (Sn(x)) を求め, 2標本間のSn(x) の差の最大値が, 棄却値D<SUB>α</SUB>より大きい場合には, 「2つの標本のGDPRは有意水準αで互いに異なった分布を持つ」と判定する。ヒストグラムではBがAとCとの中間型のGDPRの分布を示すようにみえたが, 検定の結果, AのみがB, Cとは有意に異なったGDPRの分布を持つことが明らかとなった。このことは, 従来, 統計学的手法による厳密な解析にはなじみにくかった水稲1次根の形質についての検討に, ノンパラメトリック法が有効であることを示唆するものである。
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.81, no.4, pp.456-457, 2012 (Released:2012-10-31)
参考文献数
2
著者
柴田 和博 佐々木 一男 島崎 佳郎
出版者
日本作物學會
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.401-408, 1970-12
被引用文献数
1

Growing the rice plants under each condition of some possible combinations of the daytime air-temperatures (A_D: 26,20 and 14℃), the daytime water-temperatures (W_D: 26,20 and 14℃),the nocturnal air-temperatures (A_N: 20,14 and 8℃), the nocturnal water-temperatures (W_N:20,14 and 8℃) and the number of days of treatment (P: 3,6 and 9 days) at each stage of growth, the autliors examined their main effects and interactions on the percentage of sterile grains. The daytime was settled for eight hours from 9.00 a.m. to 5.00 p.m. and the night-time was settled for sixteen hours from 5.00 p.m. to 9.00 a.m. of the following day. The depth of water was kept in four cm. above the soil surface in pots. The experimental design was 3^5 factorial in 81 units (1/3 replicate) with one block and defining contrasts 1=A_DW_DA_NW_N^2P. The results were summarized as follows; 1. At the differentiating stage of first bract primordia (T_3), all the main effects and their two-factor interactions were not significant (table 4). 2. At the middle differentiating stage of primary branch primordia (T_4), only the main effect of A_D was significant at 5% level. However, that was not considered to be important because the differences of the percentage of sterile grains among them were smaller than 3%(tables 3 and 4). 3. At the stage of reduction division of pollen mother cells (T_5), the main effects of A_D, A_N and P and all of their two-factor interactions were significant at 0.1 or 1% levels. Moreover, the effects of W_D, W_D × A_N and W_D × W_N were also significant at 5% level. The contour lines of each pefcentage of sterile grains based on A_D and A_N were straight and parallel with the line of mean air temperature for three day treatment (fig. la). On the other hand, the contour lines for six and nine day treatments were curve together (fig. 1b-c). 4. At the head emergernce stage (T_6), the effects of A_D, A_N, P, and A_N × P and A_N × P were significant at 0.1% level. However, for three day treatment, A_D and A_N didn't affect the percentage of sterile grains. For six and nine day treatment, A_D and A_N were effective and their contour lines of each percentage of sterile grains were curve (fig. 2b-c). 5. The optimum ranges between A_D and A_N to minimize the percentage of sterile grains for each mean air-temperature were found in all the cases in which the contour lines were curve. The lower the mean air-temperature became, the bigger the optimum range between A_D and A_N became in most cases. Moreover, the optimum combinations of A_D and A_N to minimize the percentage of sterile grains were found to be about 24-20℃ in all cases (fig. 1〜2).
著者
古畑 昌巳
出版者
CROP SCIENCE SOCIETY OF JAPAN
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.84, no.4, pp.418-425, 2015
被引用文献数
2

本研究では国内外138品種・系統のイネを供試して,乾田直播栽培における低温乾燥土中出芽性および出芽関連形質について評価を行った.その結果,低温乾燥土中播種条件における出芽速度と播種後35日目の出芽率および初期生育量との間には高い正の相関関係が認められた.この出芽速度と嫌気発芽条件での鞘葉の伸長速度との間には有意な相関関係は認められず,低温乾燥土中出芽性の良否に嫌気発芽条件での鞘葉の伸長性は寄与していないことが示唆された.また,この出芽速度と発芽速度との間には有意な正の相関関係が認められ,発芽の遅速が出芽の遅速に影響し,最終的な出芽・苗立ち率および初期生育量が異なることが示唆されたことから,早期の発芽が乾田直播栽培の出芽・苗立ち向上にとって重要であると考えられた.