著者
横尾 宗敬 松尾 平 岩佐 俊吉
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸學會雜誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.235-243, 1962
被引用文献数
1

モモの整枝を行なう際に, 主枝の間隔をあけて出すと下部主枝が優勢になりやすく, 3本の主枝を均斉に作るのは容易でない。従つて, この原因を明らかにし, 主枝形成のよい方法を見出すために1955年から1961年までこの研究を行なつた。<br>1. 主枝間差の判定には, 主枝間最大差% (3主枝間断面積最大差/3主枝総断面積&times;100) を算出して行なつた。<br>2. 主枝間隔をあけて出した場合には, 下の方の主枝が大きくなるが, 車枝の場合は必ずしも下の方から出た主枝が大きくなるとは限らず, 主枝間差も少ない傾向があつた。<br>3. 第2年目には主枝の大きさの順位の変つたものがあり, 第2主枝が大きくなる傾向があつた。深耕してあるものは第1主枝の大きいものの割合が少なくなり, 主枝間差の顕著に回復するものもあつたが, 無深耕のものは依然として第1主枝の大きいものの割合が多かつた。<br>4. 定植前細根を切去したものは主幹の下の方からの枝が多く伸び, 上の方からの枝は少なかつた。断根しなかつたものは関係が逆であつた。<br>5. 台木を実生し居接をかけて直根の発達した樹では主枝間差を非常に少なくすることができた。<br>6. 遅植, 追肥, 断根の処理から, 主枝間差の原因として, 発根が遅れ, ある時期以後根が急激に伸び, これが栄養供給の不均衡を起こすことが考えられ, その後の試験の結果, 3月下旬移植したものはその後2か月位は根が動かず, その後急激に伸長を始め, 6月下旬に大部分の根が動くのを認め, これを7月初旬からの急激な主枝間差の発現の大ぎな原因と考えた。<br>7. 実生台木に居接したモモの直根は, その年の終りまでは明らかに認められたが, 2年目の終りには側根の発達が著しく, 認められなくなつていた。<br>8. 深耕を行ない実生台木に居接し, 整枝した場合にも, 下部主枝優勢性は現われる。しかし, 満足な主枝形成のためにはこの方法が唯一の方法と思われる。<br>9. 土壌条件の悪い場合には, 2本主枝にし, これから1本ずつ亜主枝を出すようにして, 4本主枝を出す整枝が合理的ではないかと考えられる。
著者
岡本 五郎 大森 直樹
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.521-529, 1991
被引用文献数
3 7

ブドウ'ピオーネ'では,胚珠の受精率が低いために有核果が着生しにくい.この原因を探るために,開花約1週間前の小花を培養し,培地の無機塩,ホルモンおよび雌ずいの抽出物の添加濃度が胚珠の発育と受粉後の花粉管生長に及ぼす影響を調査した.有核果が多く着粒する'マスカット&bull;オブ&bull;アレキサンドリア'を比較の対照とした.<BR>NitschあるいはMS培地の無機塩濃度,Nitschの培地の窒素濃度を高めると,両品種とも子房の発育は促されたが,胚のうの発育と受粉後の花粉管伸長は抑制された.この傾向は特に'ピオーネ'で著しかった.1~10ppmのGA, BA, NAAを添加すると, 子房の発育は影響されなかったが,'ピオーネ'雌ずい内での胚のうの発育と花粉管伸長が抑制された.'ピオーネ'雌ずいの水抽出物を培地に加えると,両品種とも子房および胚のうの発育は影響されなかったが,花柱内への花粉管伸長が著しく抑制された.<BR>以上のことから,'ピオーネ'の小花は窒素栄養の供給が豊富であると,胚のうの発育と花粉管の生長が抑制される.'ピオーネ'の雌ずいに多く含まれる花粉管生長阻害物質は,無機物質やホルモン様物質とは異なるものと思われる.
著者
武田 敏秀 島田 武彦 野村 啓一 尾崎 武 土師 岳 山口 正己 吉田 雅夫
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.21-27, 1998-01-15
参考文献数
16
被引用文献数
2 21

アンズの系統分類にRAPD分析法を適用した.DNA多型を効率的に検出するために, 5種類の代表的な品種を供試して, 225種類のオペロンプライマーについてスクリーニングを行い, 各系統間で複数のDNA多型を示す有効な18種類のプライマーを選抜した.次にこれらのプライマーを用いてアンズ33品種・系統と近縁の野生2種の分類を試み, 検出されたRAPDsをもとにクラスター分析と数量化理論第三類を用いてデータの解析を行った.その結果, 本実験で供試したアンズ(Prunus armeniaca)の品種・系統は中国西部からヨーロッパにかけて分布する"西方品種群"(A)と中国東部, 日本などに分布する"東方品種群"(B)の2群に大別された.しかしながら, 近縁野生種のP. sibiricaとP. brigantina, 中国の西部から北部に分布し, 諸特性が不明である'白杏', およびスモモとアンズの自然交雑種とされる'仁杏'はこれらの群に属さなかった.また, 中国の品種はA群およびB群の両方に属し, 遺伝的変異が大きいことから日本アンズ, ヨーロッパアンズの祖先種である可能性が高いと推察した.
著者
塚本 洋太郎 田中 豊秀
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.147-154, 1964

1. 前報にひき続き電照下のキクに対し, NAAとジベレリンその他の植物調節物質の単独または混合散布を行ない, キクの発蕾に対する抑制効果を調べた。抑制栽培用の品種, ディセンバー•キングを使用した。NAAと混用した植物調節物質はジベレリンのほかにアスコルビン酸, チアミン, トリプトファンであつた。栄養素である尿素も使用した。別に10月咲の品種, 新東亜を用いてNAA, ジベレリン, アスコルビン酸, トリプトファンを短日処理開始後に散布し, 開花に対する抑制効果を調べた。<br>2. 無散布では発蕾抑制のあらわれる最低照度は8~12luxであつた。NAA 50ppmを散布すれば約2luxの電照下でも抑制できた。<br>3. NAA 100ppm散布により40luxの電照と同程度に発蕾を抑制することができたが, 生長抑制が著しかつた。NAA 50ppm散布は生長に対する抑制作用が小さく, 2~3luxの電照との組合せにより40luxと同程度の抑制が認められた。<br>4. アスコルビン酸は発蕾に対して抑制的であつた。NAA 25ppmとアスコルビン酸50ppmの混合液散布は低照度においてNAA 50ppmと同程度発蕾を抑制した。チアミンにもその傾向が認められたがアスコルビン酸ほど明らかでなかつた。<br>5. 新東亜を使用した実験でトリプトファン100ppmおよび200ppm散布は開花を抑制した。しかしアスコルビン酸との混合液散布は新東亜の開花に対しても, ディセンバー•キングの発蕾に対しても抑制の作用が認められなかつた。<br>6. ジベレリン50ppm散布は発蕾に対し抑制的であつた。NAAとジベレリンの50ppm混合液散布はNAA50ppm散布に比べ著しく発蕾を抑制した。NAAとジベレリンとの間に相助作用のあることを示している。花の品質には影響なかつた。<br>7. NAA 25ppmと尿素1%の混合液散布はNAA 50ppm散布と同程度発蕾を抑制する傾向がみとめられた。<br>8. この実験からキクの電照抑制栽培において, 設備不じゆうぶんによる照度の不足はNAAとジベレリンとの50ppm混合液散布により, 12luxの低照度でも発蕾を抑えることが可能であるといえる。
著者
斎藤 隆 高橋 秀幸
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.51-59, 1987 (Released:2007-07-05)
参考文献数
10

ウリ類の花の性分化の生理的機構を解明する一助として, キュウリの側枝基部節に雌花の発現しやすい生理的要因を明らかにすることを目的として, 本来雌花の発現しやすい側枝基部節の花の性を人為的に制御し得るか否かを検討した.1. 側枝基部節における雌花発現状態‘相模半白’,‘夏埼落3号’,‘大利根1号’,‘彼岸節成’ の4品種について, 主茎上第15節までに発生した全側枝の第5節までの節位別雌花発現率をみると,‘彼岸節成’では全節雌花節となり, 他の3品種でも側枝の第1節で雌花発現はかなり安定していたが, 第2節以上の節位で雌花発現は急激に低下した. 次に, 側枝上第1節の雌花発現率を主枝上における側枝の発生節位別にみると,‘彼岸節成’ ではすべての側枝でその第1節は雌花節であったが, 他の3品種では主茎上第2~3節の低節位に発生した側枝で低い雌花発現率を示した.2. 主茎の摘心処理が側枝上第1節の雌花発現に及ぼす影響‘大利根1号’ を用い, 第3葉展開初期に実体顕微鏡下で可能な限り上節位で茎頂部を摘除し, 主茎上第9~12節で摘心した. 摘心部直下から5節までに発生した側枝の第1節の雌花発現状態をみると, 無摘心区ではすべて雌花節となったが, 摘心直下に発生した側枝では全く雌花の発現がみられず, すべて雄花節となり, 側枝の発生節位が摘心部位から離れるほど雌花発現率は高まった.3. 主茎の摘心部位及び摘心時期が側枝上第1節の雌花発現に及ぼす影響‘夏埼落3号’ を用い, 肉眼で可能な限り早期に第5,10, 15節を残して主茎の摘心処理を行った. 各摘心区とも摘心部直下の節位に発生した側枝の第1節の雌花発現率は低下した. また, 第5, 10, 15節摘心可能時に, すべて第5節直上で時期を変えて主茎を摘心した場合, 摘心部直下の節位に発生した側枝の第1節の雌花発現率は摘心時期の早いほど低下した.4. 主茎上の摘葉処理が側枝上第1節の雌花発現に及ぼす影響‘夏埼落3号’ を用い, 第1葉のみ, 第6葉のみ, 第1,4, 7, 10葉を残して他の葉は葉身長1cm以下で摘除し,各摘葉処理区とも第10節分化直後に第10節以下を残して主茎を摘心した. 第1葉または第6葉のみを残して摘葉した区で雌花発現率が低下する傾向を示した.5. 生長調整物質施与が側枝上第1節の雌花発現に及ぼす影響‘大利根1号’ を用い, 第3葉展開初期にGA4+7 30ppmまたはAgNO3 200ppmを散布し, 主茎上第6~12節に発生した側枝第1節の雌花発現状態をみると, GA区では高節位の側枝でわずかに雌花発現率が低下し, AgNO3区では各節位の側枝とも雌花発現率が著しく低下した.6. 摘心処理と生長調整物質施与の組み合わせが側枝上第1節の雌花発現に及ぼす影響‘夏埼落3号’ を用い, 可能な限り早期に第5, 10, 15節で摘心し, 摘心処理直後と10日後の2回, GA3 20ppmまたはCEPA 30ppmを散布した. 各摘心区において, GA3施与は摘心処理によって低下した摘心部直下の側枝第1節の雌花発現をさらに低下させ, CEPA施与は逆に摘心処理による雌花発現の抑制とは拮抗し, 雌花発現を高めた.
著者
島村 和夫 三善 正道 平川 利幸 岡本 五郎
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.422-428, 1987 (Released:2007-07-05)
参考文献数
21
被引用文献数
3 3

ユスラウメ台及び共台 (寿星桃) の‘山陽水蜜桃’を王幹形で育て, ほぼ成木期に達した6年生及び8年生時に新梢, 根, 果実の生育を比較調査した.1. ユスラウメ台では10cm以下の新梢の比率が共台よりも高く, これらは着葉密度が高く, 伸長が5月中に停止した. 20cm以上の新梢は共台の方がユスラウメ台より多く, これらは6月以降も伸長を続けた.2. ユスラウメ台の新根生長は4月下旬から5月上旬にかけて活発で, 6月中旬にはほとんどが褐変し, 白根は消失した. 共台の新根生長はユスラウメ台より約1か月遅く始まり, 7月中旬まで多くの白根がみられた.3. ユスラウメ台の果実は硬核期中も活発に肥大を続け, 共台よりも大果となり, 4~5日早く完熟した. 果汁の糖度は1983年はユスラウメ台の方が高かったが, 6月下旬から7月上旬に降雨が続いた1985年は共台の方が高かった.4. 以上のように, モモの主幹形仕立にはユスラウメ台が適していると考えられるが, 共台でも幼木期から積極的に着果させ, 夏季せん定を十分行うなど樹勢安定を図れば, 主幹形で栽培することは十分可能であると思われる.
著者
田附 明夫 崎山 亮三
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.62-68, 1986
被引用文献数
9 11

1. ガラス室で栽培したキュウリの幼果を植物体に付けたまま果実チェンバーに入れ, 果実周囲の温度を5~30&deg;Cの一定温度とする処理を行い, 果実温度が果実の体積生長に及ぼす影響を調べた.<br>2. 果実体積の相対生長率 (RGR) は約5&deg;Cで0となり, 高温ほど高い値となった. RGRの果実温度と果実体積に対する重回帰を各栽培時期について品種別に計算すると, いずれも重相関係数が高かった. RGRは果実温度及び果実体積とそれぞれ正, 負の偏相関を有した. その重回帰式は体積が等しい果実では. RGRが果実温度に対してほぼ直線的に関係することを示した. しかし, RGRのアレニウス&bull;プロットは12&deg;C付近に屈曲点を持つ直線で表され, 果実生長がこの温度を境に質的に異なる可能性が示唆された.<br>3. RGRのQ<sub>10</sub>は15~30&deg;Cの範囲では季節にかかわらず約2であったが, 春のRGRは冬の値より, その範囲のいずれの温度においても高かった. これらの結果を説明するため, RGRの季節間差は果実に流入する師部液の糖濃度の季節間差によってもたらされ, また, 果実温度は果実に対する師部液の流入速度を決定するという仮説を示した.<br>4. 供試した2品種間でRGRの温度反応には差が認められなかった.
著者
新居 直祐
出版者
園藝學會
雑誌
園芸學會雜誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.160-170, 1980
被引用文献数
2 11

カキ果実 (品種富有) の肥大生長を解析するために, 果径と果実重の生長速度及び相対生長率の季節的変化並びに果柄部維管束の発達過程について調査を行った.<br>生長速度からみて, カキ果実の肥大生長は2重のS字曲線を描いた. 第1期生長期 (開花期~8月上旬) では果径肥大の生長速度の上昇とピークに達する時期が, 果実重より数週間早く, また生体重増加の生長速度が乾物重増加のそれより約1週間早かった. 第1期の果径生長期には, 果実の水分含有率が高まり, 7月中&bull;下旬の果実生体重の増加期には乾物率の低い期間が続いた. なお, 開花直後の2週間は乾物率の高い期間があったが, これはこの時期, 果肉中に占めるタンニン細胞の密度が高いことと関連していた.<br>第2期の生長停滞期には, 果実は乾物率が高まった. また種子重並びに種子の乾物率は, 顕著に増大した.<br>第3期生長期では, 果実は急速に肥大して果実重が増大するとともに, 乾物率も増加を続けた.<br>果径肥大の生長速度は第1期が第3期より高く, 生体重については第1期と第3期でよく類似し, 乾物重では第3期で顕著に高かった.<br>6月から7月の果実発育の初期には, 種子と果実重との間に高い正の相関関係がみられたが, 1果実中に含まれている種子数別にみた果実の肥大曲線には著しい相違はみられなかった.<br>果径と果実重の開花後の相対生長率 (RGR) のピークは開花後数日間にみられ, その後しだいに低下し, 第3期にわずかに高まった.<br>果柄径の肥大は第1期で著しく, 8月中旬まで肥大が続き, その後はほぼ一定となった. 果柄部横断面の維管束の発達状況をみると, 開花約1か月前にすでに維管束の分化がみられたが, 道管, 師管の発達程度はまだ小さかった. その後開花期にかけて道管数, 道管径並びに師管, 随伴細胞の分化, 発達も著しくなり, これらの生長は開花4週目ごろまで顕著であった. 果実生長の第2期には維管束の発達も停滞する傾向がみられたが, 果実生長の第3期になるころより再び木部, 師部の発達がみられるようになり, 果実の肥大生長とよく対応していた.
著者
高橋 郁郎 花澤 政雄 染矢 泰
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸學會雜誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.92-98, 1937

遺傳質の平等な樽植又は鉢植の温州蜜柑樹を用ひ, ボルドウ合劑及石灰硫黄合劑撒布が, 蜜柑の品質に及ぼす影響を試驗し, 大要次の如き成績を知り得た。<br>1. ボルドウ合劑の撒布は, 蜜柑の着色を遲延せしめ, 其の濃度を淡くし,特に果梗部附近の色を不良ならしむ。<br>2. 石灰硫黄合劑の撒布は, 蜜柑の着色を促進し, その色を濃厚ならしむ。<br>3. ボルドウ合劑の撒布は, 果皮の割合を増し, 果皮と果肉の間に緩みを生ぜしめ, 果汁中の酸を増し, 糖分を減じて品質を損す。<br>4. 石灰硫黄合劑の撒布は, 果皮の割合を減じ, 其の質を脆くし, 果皮を果肉に密着せしめ, 果汁中の酸を減じ, 糖分を増し, 品質を上進す。<br>5. 果汁の酸の變化は, 初夏よりも秋期の撒布に多く, 糖分量の相違は初夏の撒布と秋期のそれとの間に大差なく, 撒布囘數多き程著しきを見た。<br>6. コロイド銅劑の使用は, ボルドウ合劑の如き不良影響無きを認めた。本試驗の詳細なる記載は「靜岡縣の柑橘」昭和12年5月號及び6, 7月號に連載する。
著者
杉山 信男 岩下 浩太郎 久我 芳昭
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.78-85, 1981
被引用文献数
2 2

そ菜の生育に対するカリ施肥の効果と葉中カリ濃度及びナトリウム濃度との関係を明らかにするため, 1/2,000aワグナーポットで, 硫酸カリの施用量を0gから8gまでの6段階, 硫酸ナトリウムの施用量を0, 4,40gの3段階に変えて, キャベツとインゲンを土耕した. それとともに, 1/5,000aワグナーポットで, 培養液1<i>l</i>中のカリとナトリウムの合計量を4me一定とし, その比率を5段階に変えて, ハツカダイコン, キャベツ, インゲンを砂耕した.<br>1. キャベツとインゲンの土耕実験において, カリ施用量が不十分なために生育が低下し始める区 (硫酸カリ4g区及び8g区のどちらと比べても地上部重に差が認められる区) は, ナトリウムの施用量に関係なく, 硫酸カリ0.5g区であった.<br>2. インゲンでは, ナトリウムの施用量に関係なく, 最大葉カリ濃度 (およそ50me) によって, カリ施用量が不十分なために生育が低下した区とそうでない区とを区分できた.<br>3. インゲンでは, 最大葉におけるカリ濃度とナトリウム濃度の和は最大葉カリ濃度とほぼ同じ値だったので, カリ施用量が不十分なために生育が低下した区とそうでない区とは, カリ濃度とナトリウム濃度の和 (およそ50me) によっても区分できた.<br>4. キャベツでは, 最大葉カリ濃度によっても, 最大葉におけるカリ濃度とナトリウム濃度の和によっても, カリ施用量が不十分なために生育が低下した区とそうでない区とを区分できなかった.<br>5. インゲンの砂耕実験で, 培養液中のカリ含量が0me及び0.5meの区では, 対照区 (4me区) に比べると, 最大葉カリ濃度もカリ濃度とナトリウム濃度の和もともに低く, 生育も劣った.<br>6. ハツカダイコンとキャベツの砂耕実験で, 培養液中のカリ含量が, それぞれ, 0meと0me及び0.5meの区では, 最大葉におけるカリ濃度とナトリウム濃度の和は高いのに生育が低下した. これらの区の最大葉カリ濃度は, ハツカダイコンで25me以下, キャベツで45me以下であった.<br>7. キャベツの土耕実験で, 最大葉カリ濃度が45me以下となった場合を除けば, カリ施用量が不十分なために生育が低下した区とそうでない区とは, 最大葉におけるカリ濃度とナトリウム濃度の和 (およそ85me) によって区分できる (第3表, 第4表).
著者
塩崎 雄之輔 菊池 卓郎
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.827-832, 1992
被引用文献数
1 3

リンゴ'ふじ'/マルバカイドウの開心形樹 (栽植距離9m&times;9m, 栽植密度123本/ha) 12樹について, 5年生から24年生までの20年間にわたって, 収量と葉面積指数, 新梢長等のいくつかの樹体特性について測定を行った. 10年生以降, 樹高は3.5~4.0mに維持され, 樹冠はもっぱら水平方向に拡大した. 樹冠占有面積率および葉面積指数 (LAI) は20年生まで増加を続け, 前者は約70% (1樹当たり約55m2), 後者は約2.0に達し, 以後ほぼ一定になった. 収量 (1ha当たり)は樹冠占有面積率およびLAIの増加に伴って増加した.LAIとそれに対応する収量 (1ha当たり) は, 1.0で約20t, 1.5で約35t, 2.0で55t以上であった. 樹冠占有面積の増加に伴い, 樹冠占有面積当たり収量と単位葉面積当たり収量の増加が認められた. これは樹冠が扁平で樹冠内部に光線がよく透入するように枝が配置されていることに加え, 樹冠占有面積当たりspur数の増加と平均shoot長の減少とが大きく寄与していることが示唆された.
著者
曹 萬鉉 山本 昌豊 松原 幸子 村上 賢治
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.713-722, 1997 (Released:2008-05-15)
参考文献数
10
被引用文献数
1

高収量•高品質のトウガラシ新品種を生育する目的で,日本在来種および韓国のF1品種を供試し,親品種と比較しながら品種間雑種の収量,果実のアスコルビン酸含量およびカプサイシノイド含量を調査した.1.日本の固定種間のF1雑種はいずれも親品種より高収量であり,特に'カリフォルニア•ワンダ-(CW)'を片親とした場合,-果重が大きく果数も多く,高収量であった.2.アスコルビン酸は,胎座より果皮に多く含まれていた.アスコルビン酸含量は,品種間差異は少なく,収穫時期による差が大きかった.いずれの品種でも,9月に最も含量が多かった.果実の発育に伴うアスコルビン酸含量の経時的変化を調べたところ,開花4~5週間後まではどの品種,F1雑種も増加したが,その後も緩やかに増加する品種と,ほとんど増加しないかむしろ減少する品種があった.3.カプサイシノイドは,果皮より胎座に高濃度で含まれていた.胎座のカプサイシノイド含量は,'八房などの辛味品種では1000mg/100gDW以上で,一方,辛味のない品種の°CW'と状見甘長では,カプサイシノイドはほとんど含まれていなかった.辛味のない品種と辛味品種のF1雑種のカプサイシノイド含量は,正逆交雑により大きな差が見られた.果実の発育に伴うカプサイシノイド含量の経時的変化では,どの品種でも開花2~3週間後に急激な増加が起こり,5週間後で最大となり,その後は徐々に減少した.カプサイ噛シノイド含量の最大となる時期は,果実の大きさが最大となる時期とほぼ一致していた.
著者
松井 鋳一郎 中村 三夫
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.222-232, 1988
被引用文献数
12

<i>Cattleya</i> とその近縁のラン科11属の種の花被組織における色素分布および花被表皮細胞の形状を調査し, 花被の表色との関係を考察した.<br>1. 供試した68種は, 花弁の表皮と柵状および海綿状組織におけるカロチノイドとアントシアニンの分布の違いから9群に分類できた. 黄色花は花弁にカロチノイドがあるが, <i>Cattleya</i>(C.) <i>dowiana</i> や <i>Laelia</i> (<i>L</i>.)<i>flava</i>などでは柵状&bull;海綿状組織にのみあり, <i>L. harpophylla</i>や <i>L. cinnabarina</i> などでは表皮細胞にも含まれていた.<br>赤色花には, カロチノイドおよびアントシアニン両者ともにあり, <i>Sophronitis coccinea</i> や <i>L. milleri</i> ではカロチノイドが表皮および柵状&bull;海綿状組織に, アントシアニンは表皮にのみあった. <i>L. tenebrosa</i> の褐色の花弁ではアントシニンは柵状海綿状組織にあった.赤紫色花はアントシアニンが表皮にのみあるか, 柵状海綿状組織にあるか, その両者にあるかによって3群に分けられた. <i>Cattleya</i> はこの花色の代表的な属であるが, 多くの種ではアントシアニンは柵状&bull;海綿状組織にあった. <i>C. intermedia</i> var. <i>aquinii</i> や <i>C. leopoldii</i>の花弁着色部分やスポットには表皮細胞にもあった.<i>Laelia</i> の濃紫赤色花は表皮および柵状&bull;海線状組織ともにアントシアニンを含み, 淡紫赤色のものでは表皮にはなかった.<br>2. 供試した種は Hunter 表色法によって3群に分けられた. 花弁にカロチノイドのみを含む, 黄色ないし橙色花は色相(b/a)が0.47以上に, カロチノイドとアントシアニンが共にある赤色花は0.47_??_b/a>-0.13に,アントシアニンのみを含むいわゆるカトレア色の紫赤色花は-0.13_??_b/a>-1.0にあった.<br>カロチノイドを含む花弁では, カロチノイドが多いと明度が高くなった. アントシアニンのみを含む花弁や唇弁では, アントシアニンが多いと明度が低くなった.<br>3. 花弁と唇弁の上面表皮細胞は種によって大きさおよび形に変異がみられた. 属を同じくする種ごとにみると変異は連続的であり, 小さいものは四角で, 光沢のある花にみられ, 大きいものはビロード状を示す花にみられて長三角形であった. 表皮細胞の大型化と四角形から長三角形への変化は進化の方向を示すものと思われ,<i>C. labiata, L. purpurata</i> や <i>Brassavola digbyana</i> などのように鑑賞価値が高く, 花径の大きな花の表皮細胞は, それぞれの属内では最大で長三角形であった.
著者
市村 一雄 小田 雅行
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.67, no.3, pp.341-346, 1998-05-15 (Released:2008-01-31)
参考文献数
23
被引用文献数
3 4

市販の植物多糖である寒天, アガロース, セルロース, ジェランガム, ペクチン, アルギン酸ナトリウムおよびデンプンの浸漬液がレタスの根の伸長に及ぼす影響を調べたところ, 寒天の促進効果が最も大きかった.寒天による根の伸長促進効果はキュウリ, ダイコン, イネ, ホウレンソウ, トマトおよびネギと比べて, レタスで最も大きかった.それに加えて, レタスでの促進効果は変動が小さく, 取り扱いが容易であったため, 以下の実験にはすべてレタスを用いた.根の伸長は寒天抽出液によっても促進された.寒天抽出液に含まれる無機イオンと同じ組成に調製した溶液は寒天抽出液より根の伸長促進効果は小さかった.これより, 寒天抽出液に含まれる根の伸長促進物質は無機イオンとは異なる物質であると考えられた.寒天抽出液をSephadex G-25カラムおよびBio-Gel P-2カラムを用いて分画したところ, 根の伸長促進活性は低分子領域の数画分に認められた.これらの活性画分をShodex C18カラムで分画したところ, グルコースより早く溶出した.これらの結果より, 寒天に含まれる根伸長促進物質は数種類存在しており, これらはいずれも低分子で, 親水性の高い物質であると示唆された.
著者
賈 惠娟 岡本 五郎
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.223-225, 2001-03-15
参考文献数
9
被引用文献数
5

モモ'白鳳'果実の皮, 果肉あるいは果実全体から発散される揮発成分をヘッドスペース法で定量し, 併せて施肥濃度の影響も調査した.モモの香りの主成分であるlactone類は, 皮よりも果肉に高濃度で存在し, 適濃度の施肥をした果実に最も多かった.他の揮発成分のアルデヒド, アルコール, エステルは, 青臭さを与えるが, 果肉より皮の方が濃度が高く, 施肥区の中では高濃度区の方が高かった.果実全体から発散される揮発成分の量は, 皮や果肉に比べてわずかであった.果実1個の皮と果肉中に含まれる揮発成分の分布をみると, lactone類は97&acd;98%が, 他の揮発成分は86&acd;89%が果肉中に存在した.
著者
苫名 孝
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸學會雜誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.117-124, 1961

1.リンゴ品種紅玉の貯蔵果実について窒素含量および採収時期の差異がジョナサン・スポットの発生に及ぼす影響を調査した。<br> 2.スポットの発生の多い個体は一般に果皮および果肉に窒素を多く含んだ。特にこの関係は施肥試験においても認められ,燐酸欠除・窒素多用区では葉内および果肉内の窒素含量が最も多く,スポットの発生が著しかつた。<br> 3.また,一般に,比較的早期の採収果にスポットの発生率が高かつた。特にスポット発生の多い燐酸欠除・窒素多用区でもこの傾向は強く,10月末の採収果にはほとんど発生しなかつた。<br> 4.紅玉果実の生長に伴なう窒素含量の分布および消長をみた。その結果,種子の発育期を終り果実の最大容積増大期に入ると,特に果肉内の窒素含量(絶対量)は急増した。
著者
入船 浩平 森本 裕介 内浜 正美
出版者
園藝學會
雑誌
園藝學會雜誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.72, no.6, pp.511-516, 2003
参考文献数
22
被引用文献数
9

シンテッポウユリ鱗茎由来のカルスを用いて,パーティクルガン法により遺伝子導入を行った.プラスミドPAct1-F(イネ由来アクチン1遺伝子プロモーターにβ-glucuronidase(uidA遺伝子)をもつ)を導入しGUS発現により導入条件の至適化を行った.この至適条件に基づきカルスヘプラスミドpDM302 (イネ由来アクチン1遺伝子プロモーターにPhosphinothricin acetyltransferase (PAT)(bar遺伝子)をもつ)を導入し,ビアラフォスによる耐性カルスの選抜をおこなった.得られた耐性カルスを再分化に導き,遺伝子導入約6か月後に耐性株165株を得た.この耐性株から67株についてDNAを抽出しPCRに供した.その結果,導入遺伝子を持つ株が15株において確認された.さらにこの内,3株を用いて導入遺伝子のPAT活性による除草剤耐性試験を行った.
著者
酒井 昭
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.248-260, 1978 (Released:2007-07-05)
参考文献数
32
被引用文献数
4 6

亜熱帯, 暖帯, 温帯および亜寒帯性の約180種類の主要花木および緑化樹の冬の休止中の枝の耐凍性を測定した. 採集した枝はあらかじめ人工的に寒さにさらし耐凍性を充分に高めてから測定した.1. アジアおよびアメリカの亜熱帯に自生しているものは凍結に耐えないものが多かった. たとえ凍結に耐えたとしても-3~-5°Cていどであった.2. 暖帯性の樹種は常緑樹も落葉樹も-8~-18°Cの凍結に耐えるものが多かった. これらの大部分のものは札幌 (平均年最低気温: 約-20°C) では越冬が困難である.3. 温帯性の樹種は-20~-30°Cの凍結に耐えるものが多く, 大部分のものが札幌で植栽されている.4. 一般に花芽は葉芽より耐凍性の低いものが多かった.5. 花木類のある場所での植栽の可能性は, その植物がそこでの平均年最低気温までの凍結に耐えるか否かが一つの指標になりうるものと思う. 得られた耐凍性の値は花木類の植栽可能範囲を推定したり, また, 耐寒性育種の基礎資料として役立つものと思う.