著者
垣渕 和正 藤目 幸擾
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.385-392, 1994 (Released:2008-05-15)
参考文献数
11

キャベッ, カイラン, コールラビ, ケール, コウサイタイ, パクチョイ, サイシン, ダイコンを供試し,花芽の発育過程, とくに花弁原基の分化と発育について走査型電子顕微鏡を用いて観察した.1.供試したすべての種類において, 花芽発育段階は, 未分化期, 膨大期, 花芽原基分化期, がく片分化期, 雄ずい•雌ずい分化期, 花弁伸長前期, 花弁伸長後期の7段階に分けられた.2.すべての種類について, 花弁原基は雄ずい原基とほぼ同時に分化することが確認された. 特にサイシンの花弁と外輪雄ずいは内輪雄ずいより早い時期に分化していた.3.分化直後の花弁原基は他の花葉原基に比べて極めて小さく, 分化後の発育がしばらくの間停止しており, その発育開始は雄ずいと雌ずいよ•り遅れていた.4.以上の結果, 供試した8種•20品種のアブラナ科蔬菜の花芽では外輪から, がく片, 花弁および雄ずい, 雌ずいの順に分化していると判断された.
著者
本杉 日野 奥藤 健 片岡 大輔 鳴尾 高純
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.71, no.3, pp.335-341, 2002-05-15 (Released:2008-01-31)
参考文献数
25
被引用文献数
9 14

組織培養により増殖したブドウ台木'Gloire de Montpellier'('Gloire', Vitis riparia Michx), 'Rupestris St. George'('St. George', V. rupestris Scheele)および'Couderc 3309'('3309', V. riparia×V. rupestris)においてコルヒチンによる染色体倍加処理を行った.コルヒチン処理個体より選抜した系統の幼葉についてフローサイトメトリーによる染色体倍加の確認を行った.得られた4倍体の葉においては元の2倍体台木に比較して気孔が大きく, その分布密度が低くなった.発根培養時において, 3種類の台木の4倍体の根はすべてもとの2倍体台木より短くなった.シュート長においては'Gloire'および'St. George'の4倍体でもとの2倍体より小さくなったが, '3309'では倍数性による差異がなかった.馴化期間において4倍体台木の新梢, 節間および根の長さは元の2倍体台木より短くなった.ガラス温室に搬出後の生育においても4倍体台木では元の2倍体に比べ新梢生長は顕著に小さくなったが, 茎径および比葉重は大きくなる傾向が認められた.4倍体台木では太く短い根をもつため, 元の2倍体台木と比較して非常にコンパクトな形態の根系となった.
著者
岡本 五郎 山本 恭子 島村 和夫
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.251-258, 1984 (Released:2007-07-05)
参考文献数
16
被引用文献数
5 4

4倍体ブドウの巨峰系品種の中で, ‘巨峰’及び‘ピオーネ’の果房には多くの無核小粒果が混入するが, これに比べて‘紅瑞宝’, ‘紅伊豆’, ‘レッド•クイーン’, ‘ハニー•レッド’ではより多くの有核果が着粒し, 無核果の混入は少ない. このような無核果の着生原因を知るために, 各品種の花器の完全性と胚珠への花粉管の伸長を比較した.‘巨峰’及び‘ピオーネ’では, 胚珠の形態的異常や胚のうの未発達が他の品種より多くみられた. 生殖核と栄養核のない花粉も両品種で特に多かったが, 寒天培地上での発芽能力とは一定の関係がなかった. 子房内に伸長した花粉管の数は, いずれの品種でも子房組織の中央部または下部で著しく減少したが, ‘巨峰’と‘ピオーネ’ではその減少が特に著しく, 胚珠へ到達する花粉管も極めて少なかった.これらのことから, ‘巨峰’及び‘ピオーネ’で有核果の着生が少ないのは, 胚珠の発達が十分でないこと, 及び花粉管の子房内組織での生長が不活発であるために胚珠が不受精になりやすいことが原因であると考えられる. これらの品種では, 不受精に終った子房の多くがそのまま生長を続けて無核果になるものと思われるが, その機構は不明である.
著者
岩堀 修一 高橋 和彦
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.299-302, 1963 (Released:2007-05-31)
参考文献数
4
被引用文献数
1 1

1. トマト福寿2号苗を用いて, 第1花房第1花が開花のとき, 40および45°Cそれぞれ1, 3, 6, 15時間高温処理を行なつた。2. 収量からみると40°C 1時間区は対照区と差がなかつた。それ以外の区では減収し, その程度は処理温度が高いほど, また処理時間が長いほど著しかつた。3. 人工発芽床による花粉の発芽試験の結果, 成熟花粉の発芽は, 40°C 1時間区でも非常に不良であつた。4. おのおのの蕾への高温の影響をみると, 開花8~9日前ごろの蕾が高温に対して最も弱く, 40°C 1時間でも障害をうけた。これと花粉発芽試験の結果から, 40°C 1時間程度の処理でも高温障害が現われると思われる。
著者
細田 浩 岩橋 由美子 與座 宏一
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.69, no.4, pp.512-516, 2000-07-15 (Released:2008-01-31)
参考文献数
17
被引用文献数
2 3

カットレタスの褐変に及ぼすネギ類搾汁液の影響を調べ, 以下の結果を得た.1. カットレタスをネギ類の搾汁液に短時間浸漬すると貯蔵中のカットレタスの褐変が抑制され, 特にタマネギとニンニクの搾汁液の変色抑制作用が強かった.2. タマネギの搾汁液へのカットレタスの浸漬時間は3分間で十分な変色抑制効果を示した.3. タマネギの品種比較では試験した11品種中'北もみじ86'の変色抑制作用が最も強かった.部位別の比較では可食部全体に変色抑制作用が認められたが, 中心部ほど作用が強い傾向があった.4. タマネギ搾汁液を加熱した時の変色抑制作用の低下はわずかであったが, タマネギを加熱した後で磨砕, 搾汁した搾汁液には変色抑制作用がなく, カットレタスの変色を抑制する成分はタマネギの磨砕, 搾汁過程で酵素作用によって生成する成分であろうと推測した.
著者
宮城 耕治
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.254-260, 1956-03-31 (Released:2008-12-19)
参考文献数
16
被引用文献数
2 1

Poor germination of carrot seeds is an important problem for both seedmen and carrot growers. The author tried to elucidate what factors are the causes of the poor germination in the carrot seed production. Control of number of umbels per plant by pruning resulted in the increase in seed weight and seed size, bnt did not improve germinability of seeds. When the umbels were harvested separately, the germinability of seeds in the first order umbels was highest, that in the second order umbels next, and that in the third order the lowest. But in the seeds grown under glass, difference was scarecely found among the seeds in the umbels of different orders. In order to clarify the effect of rainfall during seed maturing, carrot plants grown in one foot diameter clay pots were transferred into the glasshouse at different stages of seed development, from flowering to firm brown seed stage. Rainfall at the flowering stage often made the flowers sterile and that at the ripening stage lowered the seed germinability. Early flowering plants produced seeds of higher germinability than late flowering ones did. Judging from these results, the seed germinability in the third order umbels, which flower latest, is decreased by rainfall and high temperature at their ripening stage. For the purpose of improving the germinability of carrot seeds, therefore, it is advisable to prune off the umbels so as to leave only the umbels of the second order in such cases as in the variety “Kuroda” in Kyushu.
著者
山岸 博 舘石 充 寺地 徹 村山 誠治
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.526-531, 1998-07-15 (Released:2008-01-31)
参考文献数
17
被引用文献数
11 14

日本のハマダイコン3系統, 栽培ダイコン8品種および野生種R. raphanistrum 3系統の合計61個体を用いてRAPD分析を行い, 品種・系統内の個体間変異を調査すると共に, クラスター分析によってハマダイコンと他の2種類のダイコンとの関係を推定した.RAPD分析のためのPCRは7種類の10塩基プライマーを用いて個体単位で行った.PCRの結果, 供試個体間で多型を示す73の増幅断片を得たので, これらの断片の有無に関する類似比を, 全個体間1830組合せで算出した.栽培ダイコンは, '小瀬菜, チベット系ダイコン'の2つの在来品種を除き, 80%以上の高い品種内個体間類似比を示した.これに対して, ハマダイコンは70%弱, R. raphanistrumは50∿73%と低い系統内類似比を示し, 集団内での個体間変異が大きいことが示唆された.しかしながら, これら2つの野生ダイコンとも他の系統のハマダイコン又はR. raphanistrumの個体との類似比は系統内のそれに比べて明らかに低かった.個体間類似比を用いたクラスター分析の結果, 一部の例外を除いて同一の品種・系統に属する個体は, 各品種・系統特有のクラスターに含まれた.供試したハマダイコン3系統は, まず3系統で1つのクラスターを形成し, その後多くの栽培ダイコンが含まれるクラスターとの間で大きいクラスターを形成した.栽培ダイコンのうち'時なし'と'みの早生'の2品種は他の大部分の栽培ダイコンとハマダイコンが形成する大きいクラスターには含まれなかった.またR. raphanistrumはハマダイコン, 栽培ダイコンのいずれとも異なる位置を占めた.これらのことから, 日本のハマダイコンは, 野生種R. raphanistrumとは異なり, 栽培ダイコンに遺伝的に近縁な一群の野生ダイコンであることが示唆された.しかしハマダイコンの成立に直接関与したと考えられる栽培ダイコンは, 今回の調査では見出されなかった.
著者
/ 藤目 幸擴 / 寺林 敏 奥田 辺幸 伊達 修一 Nobuyuki Okuda Shuichi Date
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.73, no.4, pp.312-318, 2004-07-15 (Released:2008-01-31)
参考文献数
12
被引用文献数
1 2

オクラ(Abelmoschus esculentus)の花芽形成に及ぼす日長の影響を調べるため,春季と秋季の2回,8品種を供試して実験を行った.実験期間中の自然日長区の日長は春季では14.16~14.29,秋季では11.07~12.17時間であった,短日区は自然日長を10時間に制限し,長日区では自然日長の日没前に蛍光灯(3μmo1・m-2・s-1)によって,16時間日長とした.春季実験で'Clemson Spineless'どEmerald'は,自然日長区と長日区に比べて短日区では低節位に,また処理開始後早期に出らいしたノClemson Spineless' どEmerald'における,短日条件による花芽形成促進効果は,低温による生長抑制のためか秋季実験では顕著でなかった. 'Benny','Gulliver','夏のめぐみ','Star Debut','Star Light'と'翠星五角'は,ロ長の長短と季節に関わらずほぼ同一の節位に花芽を形成し,出らい時期もほぼ同じであった.春季実験の短ロ区と秋季実験の全処理区で花芽形成は連続して起こった.一方,春季実験の自然日長区,長日区の'ClemsonSpineless','Emerald', 'Benny','Star Debut'ど翠星五角'では,栄養生長への逆転が起こった.以上の結果から,'Clemson Spineless','Emerald','Benny','Star Debut'ど翠星五角'は花芽形成に対して短日要求性を示した.一方, 'Gulliver','夏のめぐみ'と'Star Light'は,花芽形成に対して中性の要求性を示した.
著者
久保田 尚浩 宮向 真由美 山根 康史 小林 昭雄 水谷 房雄
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.68, no.5, pp.927-931, 1999-09-15 (Released:2008-01-31)
参考文献数
22
被引用文献数
3 3

ブドウの芽の休眠打破に効果のあるニンニクについて, その有効成分を検討するため, 'マスカット・オブ・アレキサンドリア'と'巨峰'の挿し穂に対するニンニクの抽出物と揮発物の休眠打破効果を調査した.市販のガーリックオイルとニンニク磨砕物を挿し穂の切り口に塗布したところ, そのいずれにおいても発芽が著しく促進された.しかし, 凍結乾燥したニンニクからの抽出物および市販のニンニク粉末をラノリンで混和して塗布したところ, 休眠打破の効果は全く認められないか, 極めて小さかった.磨砕したニンニクを煮沸すると, 煮沸しない場合と比較して, 上澄み液, 沈殿物ともに休眠打破の効果が低下した.挿し穂をニンニク磨砕物および市販のガーリックオイルで気浴処理したところ, 塗布処理に比べて効果は小さいものの, いずれの気浴処理でも発芽が促進された.これらのことから, ニンニクに含まれるある種の揮発性物質がブドウの芽の休眠打破に有効であると推察された.ニンニク揮発性物質の休眠打破効果は, 11月のようなブドウの芽の休眠が深い時期ほど大きく, 休眠が浅くなるにつれて低下した.
著者
石井 孝昭 松本 勲 シュレスタ Y. H. ワモッチョ L. S. 門屋 一臣
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.556-558, 1998-07-15
参考文献数
8
被引用文献数
10

カンキツ園に生息する草を4月上旬と7月上・中旬に採取し, それらの草の根におけるVA菌根(VAM)菌の感染状態を観察した.その結果, 春草ではスイバ, カモジグサ, ハコベ, クサフジ, ホトケノザおよびウマゴヤシ, 夏草ではヒメムカシヨモギ, イヌビユ, ギョウギシバ, ガズノコグサ, ツユクサ, カタバミおよびメヒシバにおいて, 70%以上の菌根感染率を示した.また, 春草のハコベ, クサフジおよびホトケノザにおいてはVAM菌胞子が根中に多数形成されていた.しかし, イヌタデ, ギシギシおよびスギナでは感染がみられなかった.
著者
後藤 丹十郎 高谷 憲之 吉岡 直子 吉田 裕一 景山 詳弘 小西 国義
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.70, no.6, pp.760-766, 2001-11-15
参考文献数
19
被引用文献数
5 5

根域制限によって生じるキクの生育抑制が, 養水分ストレスの軽減によってどの程度まで解消できるかを明らかにするため, 連続給液式の水耕法と1日の給液頻度を異にした点滴灌水式の培地耕を用いて根域制限と養水分ストレスに対する品種'ピンキー'の反応を調査した.連続給液水耕では, 茎長, 節数は定植25日後においても根域容量(10∿1000ml)による差が生じなかったが, 葉面積, 地上部・地下部乾物重は根域容量が小さいほど抑制された.最も抑制程度が大きかった葉面積には定植10日後から影響が認められ, 定植25日後には根域容量10mlで根域容量1000mlの約70%となった.S/R比は根域容量の減少に伴って大きくなったが, その差は比較的小さかった.点滴給液した培地耕において, 根域容量30mlで給液頻度が少ない場合には, 定植14日後から茎長に差が認められたが, 8回では28日後においてもほとんど差が認められなかった.根域容量が小さいほど定植35日後の地上部の生育は劣ったが, 根域容量30および100mlでは給液頻度が8回以上の場合, 1および3回と比較して抑制程度はかなり小さくなった.地下部乾物重は給液頻度に関わらず根域容量が大きくなるほど重くなった.S/R比は給液頻度1回および3回では根域容量による影響がみられずほぼ一定であったが, 8回および13回では根域容量が小さくなるほど大きくなった.以上のように, 養水分を十分に与えることによってキクの生育抑制を軽減することができたことから, 根域制限による植物体の生育抑制の最大の要因は, 養水分ストレス, 特に水ストレスであると推察された.100ml以下の根域容量で栽培されるキクのセル苗や鉢育苗においては, 養水分供給頻度を高めることによって, 養水分ストレスが回避され, 生長が促進されると考えられる.
著者
小林 章 岡本 五郎
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.31-35, 1967 (Released:2007-07-05)
参考文献数
18
被引用文献数
7 6

1. Muscat of Alexandria の比較的強勢な新梢につき, 開花1~3週間前に基部の5葉または10葉を残して摘心をすると, 花粉の発芽率が高まるとともに着粒も良好になつた。この場合に葉分析をすると, 両摘心区ともに花房付近の葉内にB含量がとくに増大した。2. 摘心をするかわりにホウ素の葉面散布 (ホウ酸0.2%) を行なうと, ホウ素は枝梢内に多量に吸収されるとともに, 結実歩合が著しく増大した。3. 葯に含まれるアミノ酸と糖をペーパークロマトグラフィーによつて分析した結果は, 摘心区およびホウ素散布区において proline および alanine が多く存在した。4. 無処理区に比べて, 摘心区およびホウ素散布区では葯中の全糖量が明らかに増大した。ただし, 摘心区では sucrose が増大し glucose はやや増加する程度であるが, ホウ素散布区では sucrose が消失し glucose がいちじるしく増大した。
著者
今西 英雄 植村 修二 園田 茂行
出版者
園藝學會
雑誌
園芸學會雜誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.483-489, 1986
被引用文献数
2

1. くん煙あるいはエチレン処理により休眠打破を促した球茎と無処理の球茎とを用いて, 発芽試験, 球茎最上腋芽における葉の分化及び底部における根の出現の推移より, 球茎の休眠の様相を明らかにすると共に, これらの球茎を異なる時期より低温処理に移し, いつから低温感応が可能であるかを調べた.<br>2. 室温下に貯蔵された無処理の球茎では, 8月31日に最上腋芽で葉の分化が再開し, 引き続いて根の出現が認められ, この段階の球茎を14&deg;C下で置床すると速やかな発芽がみられた. これに対し, 無処理球に比べエチレン処理球では2週間, くん煙処理球ではほぼ6週間,より早い時期に同じ状態に達することが認められ, 両処理, とりわけくん煙処理による顕著な休眠打破効果が確かめられた.<br>3. このように休眠程度の異なる球茎を種々の時期より, 10&deg;C湿潤5週間の低温処理に移したところ, 低温処理終了時における発芽及び花芽分化は共にくん煙処理球で最も進み, エチレン処理球, 無処理球の順であった.これらの低温処理球の開花をみたところ, くん煙及びエチレン処理球ではそれぞれ8月17日, 8月31日低温処理開始において全個体開花し, 完全な低温感応が認められたが, 無処理球では最も遅い9月14日の処理開始でも開花率が86%にとどまった.<br>4. これらの結果, 低温処理開始可能時期は室温下に貯蔵した球茎の最上腋芽における葉の分化再開時期よりも2週以上遅く, 根の突起がほぼ全個体で認められた時期に一致することが確かめられた.
著者
鳥潟 博高 小林 喜男 菅沼 広美
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.145-151, 1988
被引用文献数
3 1

愛知県郷東町名古屋大学附属農場 (北緯35°, 年平均気温14.7°) で, ペカン5品種サクセスネ (Succes), ネリス (Nelies), シュライ (Schley), スチュアート(Stuart), カーチス (Curtis) を栽培し, 開花, 結実を調査し下の結果を得た.<br>1) 1ペカンの雄花は2年生枝に直接腋生し, 雌花は, 今年生新梢に頂生することを示した.上記5品種の毎年の開花期は5月下旬~6月上旬であり, 成熟期は11月であって, 雌果の成熟には154~182日を要し, 同地の無霜期間中に成熟することを明らかにした.<br>2) 開花調査の結果, サクセスは毎年開花が早く雌雄同熟か雄花先熟であった. ネリス, シュライ, スチュアート, カーチスの4品種は開花がやや遅く, 雌雄同熟か雌花先熟であった. 受粉, 結実調査の結果サクセス, スチュアート及びネリスは自家結実性のあることを示したが自然状態で充分な受粉が行なわれるか疑問であった.<br>また, 日本の山野には <i>Carya</i> 属植物がないので, 主要品種の雌花の recipient stage に花粉の shedding が行なわれる様な受粉樹の植栽がなければ結実が望めないことを指摘した.<br>3) 3ペカン5品種の100粒重はネリスが最も重く約600g, 次いでサクセス, シュライ, スチュアートで580~595g, ヵーチスは290gで最も軽量であった. 可食部率はネリス39%で最も小さく, シュライ55%で最も大きかった.
著者
池田 英男 大沢 孝也
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.159-166, 1983
被引用文献数
7 17

水耕培養液中のNO<sub>3</sub>とNH<sub>4</sub>の濃度並びに比率がそ菜の生育, 葉中N成分及び培養液のpHに及ぼす影響を検討した. 実験1では, キュウリ, レタスなど10種を供試して, 培養液中のNO<sub>3</sub>/NH<sub>4</sub>比がme/lで3.0/0~0/3.0 (低Nシリーズ) と12/0~0/12 (高Nシリーズ) の各7区を設けた. また実験2では, レタス, キャベッなど4種を供試して, NO<sub>3</sub> (1~24me/l)シリーズ, NH<sub>4</sub> (1~12me/l) シリーズ, NO<sub>3</sub>4me/l+NH<sub>4</sub> (1~12me/l) シリーズ, NO<sub>3</sub>12me/l+NH<sub>4</sub> (2~12me/l) シリーズの計20区を設けた. 実験1, 2ともに培養液のpHは毎日1回測定して, その都度6.0に調節し, 原則として3週間栽培した.<br>NO<sub>3</sub>施用の場合に比べて, NH<sub>4</sub>施用では一般に葉中NH4-N濃度が高く, 生育は阻害された. しかし少量のNO<sub>3</sub>の併用により葉中NH<sub>4</sub>-N濃度は低下し, NH<sub>4</sub>害は軽減あるいは防止された. またNO<sub>3</sub>4あるいは12me/lにNH<sub>4</sub>を併用した場合には, NO<sub>3</sub>のみを施用した場合よりも生育は明らかに促進された.<br>葉中NO<sub>3</sub>-N濃度は, 培養液中のNO<sub>3</sub>濃度が高まるにつれて高くなった. また低Nシリーズでは, いずれの葉菜も培養液中のNH<sub>4</sub>の比率が高まるにつれて葉中NO<sub>3</sub>-N濃度は低下したが, 高Nシリーズではハクサイ,ホウレンソウなどNO<sub>3</sub>を優先的に吸収するそ菜では,培養液中のNH<sub>4</sub>の比率が高まっても葉中NO<sub>3</sub>-N濃度の低下はほとんど認められなかった.<br>培養液のpHはNO<sub>3</sub>のみを施用すると上昇し, NH<sub>4</sub>のみでは著しく低下した. 両N併用の場合, キュウリ, レタスなどNH<sub>4</sub>を優先的に吸収するそ菜では, 培養液中のNO<sub>3</sub>とNH<sub>4</sub>の比率にかかわりなくpHは低下した. 一方, トマト, ホウレンソウなどNO<sub>3</sub>を優先的に吸収するそ菜では, 両Nの比率が適当な値の場合には, 実験期間中培養液のpHはあまり変化しなかった.
著者
長島 時子
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.231-241, 1985
被引用文献数
1 1

キエビネ, カ&bull;エルメリ及びトクサランの3種のランを供試し, 胚珠形成及び受精後の種子形成過程を組織学的に観察するとともに, 種子形成過程と種子発芽との関係を追究した.<br>1. 子房の大きさは, いずれのランにおいても, 受粉すると急速に増加した. 子房の大きさは, キエビネ及びトクサランでは受粉後50日ごろに, カ&bull;エルメリでは同60日ごろにそれぞれ一定値に達した.<br>2. 種子及び胚の大きさは, いずれのランにおいても, 受精すると急速に増大した. 種子の大きさは, キエビネ及びトクサランでは受粉後80日ごろに, カ&bull;エルメリでは同60日ごろにそれぞれ一定値に達した. 胚の大きさは, キエビネでは受粉後95~100日ごろに, カ&bull;エルメリでは同65~70日ごろに, トクサランでは同87~90日ごろにそれぞれ一定値に達した.<br>3. 胚珠形成は, キエビネでは受粉後43~45日ごろに, カ&bull;エルメリでは同35~37日ごろに, トクサランでは同30~31日ごろにそれぞれ完了した. 重複受精は, キエビネでは受粉後48~50日ごろに, カ&bull;エルメリでは同40~41日ごろに, トクサランでは同34~35日ごろにそれぞれ行われた. 胚のうは, キエビネ, カ&bull;エルメリ及びトクサランのいずれにおいてもそれぞれ5~6個が観察された. 受粉から胚発生完了までに要する日数は, キエビネでは95~100日, カ&bull;エルメリでは65~70日, トクサランでは87~90であった.<br>4. 胚発生の様相はキエビネ, カ&bull;エルメリ及びトクサランのいずれにおいても同様であった. すなわち, いずれにおいても4細胞期ではA<sub>2</sub>型であり, 4細胞期以降の胚発生過程はE型 (<i>Liparis pulverulenta</i> 型) に類似していた. また, いずれのランにおいても胚は主としてca細胞から形成された.<br>5. 受精後の胚乳核は, キエビネ, カ&bull;エルメリ及びトクサランのいずれにおいても3~5個が観察された.また, いずれにおいても胚柄の存在が観察された.<br>6. 種子の発芽能力は, キエビネ及びトクサランでは8細胞期 (前者では受粉後70日ごろ, 後者では受粉後55日ごろ) 以降に, カ&bull;エルメリでは前胚の4細胞期以前(受粉後45日ごろ) にそれぞれ認められた. なお, いずれにおいても胚発生完了前後において発芽率が最も高かった. 培地としては, MS培地及びKC培地に比較して, H培地が優れていた.
著者
森 源治郎 今西 英雄 坂西 義洋
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.387-393, 1991
被引用文献数
1

1.露地栽培株の茎頂における生殖生長への転換は10月上&bull;中旬で, 年内に花被形成段階まで進んだ後,発育を停止した. 翌年の4月中&bull;下旬に発育を再開し,花芽は5月中&bull;下旬に雌ずい形成期, 7月上旬に花粉形成期に達し, 7月下旬に開花した.<BR>2.7月1日から25&deg;Cに保った株では戸外株と同様2か月後においても花芽は未分化であったが, 150および20&deg;Cに移すと分化が認められた.<BR>3.小花原基形成期~花被形成期に達した後雌ずい形成期までの発育, 雌ずい形成期に達した後花粉形成期までの発育, さらに花粉形成期に達した後開花までの発育は, ともに25&deg;Cの高温で早められた. しかし,花粉形成期後の高温は開花時の花茎長および小花数を減少させた.<BR>4.促成を目的とした加温栽培のうち, 最も早く開花がみられたのは11月下旬からの加温 (最低20&deg;C) 開始で, 自然開花期より約2か月早い5月下旬に開花した. さらに加温中, 長日 (16時間) を与えると, 9月中旬からの加温開始が最も早く, 4月中旬に開花させることができた.
著者
蛭田 正
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸學會雜誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.294-304, 1935

1. 筆者は關東州に於て, マンシウズミ外3種砧木に接木せる苹樹の根群比較調査を試みたれば, 茲に其結果を發表せんとす。<br>2. 苹樹の根群は其砧木に依つて個有の形質を現はす。<br>3. T-R率はマンシウズミを砧木とせるもの最も高く1.5, 次はマルバカイドウ砧のものが0.9オホバズミ及コバズミ砧のものは0.7前後なり。<br>4. マルバカイドウ及マンシウズミ砧木の苹樹は深根性にして最深部は2m60cmに達するも, オホバズミ及コバズミ砧木の苹樹は淺根横張性にして,僅かに1mに達するものあるのみなり。而してマルバカイドウ砧苹樹は最も深根性なるも, 深層に達する根量及分布範圍狹く, 且全細根量少きため, 養水分吸收上, 又は寒氣及乾燥抵抗力の點より見ればマンシウズミ砧苹樹が遙かに優るものと認む。<br>5. 苹樹砧木價値よりみれば4種の内マンシウズミが最も優れ, 次はマルバカイドウにして, オホバズミ及コバズミは矮性を目的とする場合の外價値無し。
著者
小机 信行 水野 進
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.231-235, 1989
被引用文献数
7

本研究は発芽バレイショの部位別のPGAの測定及びわが国の代表的調理用品種のバレイショ ('男爵'及び'メークイン') を1°C, 8°C及び20°C暗黒下に貯蔵し, 貯蔵に伴う発芽状況を調査するとともに皮層部及び髄質部のα-チャコニン及びα-ソラニンの消長を調査したものである.<br>1. 発芽バレイショ ('メークイン') を4部位に分けそれぞれの部位におけるPGA含量を測定したところ,最も多いのが発芽伸長部及び発芽周辺部の皮層部であることがわかった. なお, 髄質部についてはα-チャコニンが極く微量検出されたにすぎず, α-ソラニンについては痕跡程度であった.<br>2. '男爵'及び'メークイン'を1°C, 8°C及び20°C下に貯蔵し, 発芽の状況を調査したところ, 'メークイン'の方が'男爵'より少し休眠期間が短かった. なお,両品種とも20°C貯蔵では20日後に発芽伸長が認められた. 1°Cでは貯蔵120日後まで発芽伸長は抑制された.<br>3. 両種バレイショの貯蔵中のPGA含量の変化を調べたところ, '男爵'は'メークイン'と比較するとPGA含量は少ないが両品種とも発芽伸長とともに増加することがわかった. なお, 1°Cの低温下で発芽伸長の抑制された期間内でも皮層部組織でPGAの蓄積現象が認められた. 一方, 髄質部では両品種ともPGAは検出されなかった.