著者
酒井 昭
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.294-301, 1983
被引用文献数
1

ツツジ属植物の約75種の原種と栽培品種を用いて, これらの冬の耐寒性を調べ, ツツジ属植物の耐寒性の特性を明らかにした.<br>1. 耐寒性の低いツツジ属植物では, 葉, 花芽, 栄養芽, 靱皮組織, 木部の間の耐寒性の差は少なかったが, 耐寒性の高いツツジ属植物では, これらの間に著しい差が認められた. 葉, 栄養芽, 茎の靱皮組織の耐寒性は花芽や木部より著しく高く, -60&deg;Cの凍結にも耐えるものがあった. しかし花芽の小花は-35&deg;C以下の温度に耐えるものはなかった.<br>2. シャクナゲのなかで耐寒性が特に高かったのは, 日本のハクサンシャクナゲ, エゾムラサキツツジ, 合衆国の<i>R. catawbiense</i> で, それらの花芽は-30&deg;Cの温度に耐えた. 花芽が-25&deg;Cまたはそれ以下の凍結に耐えるシャクナゲの大部分はポンティクム系に属する. また, 耐寒性の高い栽培種の大部分は<i>R. catawbiense</i>か<i>R. carolinianum</i> のいずれかを片親とする交雑種である. アザレア系では, 北米の東部に自生する<i>R. viscosum</i>, <i>R. arborescens</i> や中国東北区から朝鮮半島に分布するクロフネツツジの耐寒性が特に高かった. 日本に自生するツツジ類の多くは-20~-25&deg;Cの低温に耐えた.<br>3. ツツジ属植物の氷点下の温度に対する適応戦略は, 組織, 器官によって異なり, 葉, 栄養芽, 茎の靱皮組織など細胞外凍結, 花芽の小花はおもに器官外凍結,木部の放射組織は過冷却で氷点下の温度を耐える.<br>4. ツツジ属植物の耐寒性は, 年温度差が大きく, しかも冬の寒さが厳しいところに自生しているものほど耐寒性が高い. それに対して年温度差が少なく, 冬の寒さが厳しくない, 東ヒマラヤ, 雲南西北高地のシャクナゲの耐寒性は低い.
著者
寺分 元一
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.245-250, 1970

材料には短日下で育苗した貝塚早生の3~5葉の苗を使用して実験を行なつた。<br>1. タマネギ苗の底盤下部より生長点を摘除し, 短日下で川砂中で培養し, 20日以上経過すると, 葉しよう基部は肥厚したが, これは葉しよう柔細胞の大きさが増したためで, 糖の蓄積の結果ではなかつた。<br>2. 底盤部より切り離された各葉は川砂中に葉ざしし, 短日下で20日培養すると, 葉しよう基部は著しく肥厚したが, 若い葉での肥厚は劣つていた。このような肥厚は葉しよう柔細胞の容積が増加したためで, 糖の蓄積は認められなかつた。<br>また暗黒下での葉ざし, または葉身を2/3切除して葉ざしを行なつた場合, 葉しようは肥厚しなかつた。<br>3. 生長点摘除と日長処理とを組み合した場合, 長日では短日の場合よりさらに肥厚が著しかつた。<br>また長日, 短日両条件下で葉身の伸長は生長点摘除によつてほとんど行なわれなかつた。
著者
水野 進 谷口 保
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.207-214, 1972 (Released:2007-07-05)
参考文献数
16
被引用文献数
1

11月27日の収穫果を, 関係湿度80~90%のもとで, 20°, 10°, 6°および2°Cの各温度において, 貯蔵中ならびに出庫後の呼吸, 成分の変化につき検討した.1. 腐敗は20°C, 60日(2月上旬), 10°, 6°C, 120日(4月上旬), 2°C, 160日(5月中旬) 頃より急激に増加する. また20°, 10°Cでは果皮の乾燥がはげしく, 腐敗病も6°C以下と異なり, 果軸周辺部に軸ぐされ病の現われるものが多かつた.2. 貯蔵中の呼吸量は, 低温ほど少なく, しかも入庫1日間 (20°Cでは3日間) に急減し, その後腐敗果の増加期まで一定していた.3. 6°C以下の低温では, ビタミンCの消耗が非常に少なく, ついで糖, 減少の多いのは酸であつた. また腐敗率の高い20°C, 81日, および10°C, 150日では健全果でも, ビタミンC量, 糖量も著しく減少していた.4. 2°Cに貯蔵した場合, 4月中旬より低温障害の兆候のある果実が目立ち, アルコール系揮発物質の発生とこれに伴うCO2発生量が増加した.5. 各温度より20°Cに移した場合, 7~12時間で呼吸上昇のピークに達し, また低温ほどピーク量は大であつたが, 86日程度の貯蔵であれば, 2°Cという低温でも3日後には呼吸量が正常に復していた. これに対し, 150日貯蔵の各区の呼吸量は, 出庫1日目に86日貯蔵の約2倍の高い呼吸量を示すとともに, その後減少を続けるのみであつた.6. 温度較差の高い, すなわち貯蔵温度が低いほど, 出庫後の果汁成分の消耗ははげしく, とくにビタミンC, 酸の減少は著しかつた.7. 果実温を徐々に上昇させるじゆん化を行なうと, 呼吸の急上昇を起こらず, 腐敗率, 果汁各成分の減少率とも小さかつた.
著者
小林 省蔵 大河原 敏文 斉藤 渉 中村 ゆり 大村 三男
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.453-458, 1997-12-15
参考文献数
21
被引用文献数
2 20

細胞融合により3倍体を作出する目的で, '十万'ウンシュウ, '大三島'ネーブルオレンジおよび'トロビタ'スイートオレンジの珠心起源カルスのプロトプラストとクレメンティンの半数体 (No. 1およびNo. 2)の葉肉起源のプロトプラストを, 3組合せ (ウンシュウ+半数体No. 1, ネーブルオレンジ+半数体No. 2およびスイートオレンジ+半数体No. 1) で電気的に融合させた.得られた植物体の根端細胞の染色体数調査を行ったところ, 2倍体 (2n=18) と3倍体 (2n=27) が混在したが, いずれの組合せにおいても3倍体が存在した. これら植物体についてRAPD法により雑種性を調査したところ, 3倍体はいずれも両親に特異的なバンドの両方を含んでおり, 体細胞雑種個体であることが確認された.
著者
郭 信子 上田 悦範 黒岡 浩 山中 博之
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.453-459, 1992 (Released:2008-05-15)
参考文献数
9
被引用文献数
2

ウンシュウミカンをポリエチレン包装し, エチレンあるいはCO2処理, エチレン除去剤あるいはCO2除去剤封入処理を行い, 20°, 8°, 1°C貯蔵中における異臭および異味の生成を調べた. 対照区として有孔ポリエチレン包装を行った.1.食用時に感じる異臭は有孔区について官能検査により測定したところ, 20°Cでは15日, 8°Cでは1か月後に感じられた.2.異臭の原因物質であるdimethyl sulfide(DMS) の果実空隙中の濃度は20°Cにおいてすべての貯蔵区で15日貯蔵後最高値になった。8°Cでは有孔区とCO2吸収区において徐々に増加した. 1°Cではどの処理区もDMS濃度は低かった.3.CO2吸収剤を封入すると, 20°および8°CではDMS濃度は有孔区ならびに他の密封区に比べて大きくなった. 1°Cではその効果はあまりみられなかった.過マンガン酸カリウム系エチレン吸収剤を封入すると,20°CではDMSも吸収し, 空隙中のDMS濃度を低くした.4.貯蔵開始時に100%CO2処理すると各温度区とも食味の劣化が速く, 腐敗も速く起こった. エチレン処理区もやや食味の劣化と腐敗果の発生を促進した.他の処理区では果実貯蔵中食味は徐々に劣化した. 果汁のエタノール濃度はCO2処理区およびエチレン処理区で急増した.
著者
伊東 卓爾 岩田 隆 緒方 邦安
出版者
園藝學會
雑誌
園芸學會雜誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.223-230, 1972
被引用文献数
3

前報で, むきエンドウおよびソラマメが, 外観的にも食味の点でも低温要求度が強く, 収穫当日から0&deg;C付近の低温下で貯蔵する必要のあることが判明した. 本実験は, 食味からみた品質変化の実態と品質低下に関する成分的要因について調査したものである.<br>エンドウおよびソラマメは収穫後, ただちに, 有孔ポリエチレン袋詰めとし貯蔵した. 温度処理区は, 1&deg;C, 6&deg;C, および20&deg;Cを基本とし, 冷蔵遅延区, 冷蔵解除区, 変温区などを設けた.<br>1. エンドウの食味について対比較嗜好試験を行なつたところ, 20&deg;Cでは1日で明らかな食味の低下がみられた. 6&deg;Cでも食味低下はかなり急速であつた. 冷蔵遅延区, 1&deg;C貯蔵から20&deg;Cへの昇温, 変温 (1&deg;C〓6&deg;C) などはいずれも食味の低下を早めた. ソラマメでもほぼ同様の傾向を示した.<br>2. エンドウおよびソラマメともに1&deg;C貯蔵では, 貯蔵前半において全糖含量の増加の傾向がみられた. これに対して20&deg;Cでは貯蔵後1日で1/4~1/2に激減し, 6&deg;C, 10&deg;Cでも数日のうちに急減した. 初期の低温を少し緩和した区 (6&deg;C2日&rarr;1&deg;C), 冷蔵を遅らせた区 (20&deg;C1日, 2日&rarr;1&deg;C) では一たん減少した糖が, 1&deg;Cに変温されると漸次回復した. 冷蔵を中断した区 (1&deg;C11日&rarr;20&deg;C, 25&deg;C) では昇温後1日で急激に減少した. 変温区 (1&deg;C〓6&deg;C) では初期は1&deg;Cと6&deg;Cの中間の値を示したが漸次6&deg;Cに近づいた.<br>3. 中性および酸性アミノ酸含量を測定したところ, エンドウおよびソラマメともに, アラニン&bull;グルタミン酸区分&bull;パリンなどが多く含まれていた. 20&deg;C区ではほとんどのアミノ酸に急激な減少がみられた. アラニンの例では, 20&deg;C2日でエンドウでは1/12, ソラマメでは1/5となつた. 1&deg;Cでは減少の速度はかなり抑制されたが, 6&deg;Cでは不十分であつた.<br>4. ソラマメ切片に, Sucrose-U-<sup>14</sup>C および Alanine-U-<sup>14</sup>C を吸収させ20&deg;Cに保つと, アルコール不溶残さに急速にとり込まれた. 前者はでん粉, 後者はたんぱく質に変わるものと思われる. この変化の速度は, 前述の全糖, アラニンの減少とほぼ一致した. アルコール可溶性区分にもある程度とり込みがみられた.<br>2. 20&deg;Cでは急速に硬化が起こり, 食味の低下を招いた. 1&deg;Cではかなり長期にわたつて硬化を押えることができる. カード&bull;メーターによる測定値は, エンドウでは食味とかなり平行した結果が得られたが, ソラマメでの相関性はよくなかつた.<br>6. エンドウおよびソラマメの急激な食味の低下は, 糖およびアミノ酸含量の減少ならびに硬化の三要因によるところが大きいと思われる. これを防ぐには, 収穫直後からできうる限りの低温処理が必要である.
著者
吉田 義雄 土屋 七郎 定盛 昌助
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.96-102, 1963 (Released:2007-05-31)
参考文献数
14

1959~61年の3か年にわたつて, リンゴ20品種および31 F1実生を交配親として, 167組み合わせの交配を行なつたところ, 結実不良の組み合わせが認められた。また交配組み合わせにより3枚子葉を有する実生の発現が異なるのがみられた。1. Golden Delicious とYellow Newtown のF1であるG. Y-53, G. Y-44 の戻し交配では偏父性不親和を示し, さらに相互不結実であつた。2. M. W-107×M. W-30, J. W-50×J. W-32, J. G-84×J. G-51, R. D-329×R. D-125の如く両親の同じF1実生同志の交配において不結実を示す組み合わせがあつた。3. Red Gold (G. D)×J. G-51, 恵 (R. J)×J. G-51の如く, 片親の同じF1実生同志の交配においても, 不結実を示す組み合わせが認められた。4. 両親の異なるF1実生あるいは品種の交配では, いずれも結実が良好で交配不親和性は認められなかつたが, R. J-259×Red Gold (G. D) は2年連続結実不良であつた。5. Early Red Bird は♀の場合いずれの組み合わせでも結実が悪く, 〓の場合はいずれも結実が良好であり, 交配不親和とはおもむきが異なつた。6. 実生幼植物時代に3枚の子葉をもつ個体の発生割合は, 組み合わせによつて異なり, とくに王鈴が♀の場合に高かつた。
著者
井上 弘明 高橋 文次郎
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.487-501, 1990
被引用文献数
11

1980~&prime;88年にわたり, 静岡県沼津市西浦久連の山田寿太郎氏園に栽培されている&lsquo;Zutano&rsquo;, &lsquo;Bacon&rsquo;およびFuerte&prime;を用いて, 結実習性や収量構成要因について調査した.<br>1. 果実は3品種とも6月下旬から8月中旬にかけて急速に肥大し, その後は8月中旬よりゆるやかとなるS字型生長曲線を示した. 種子の生長は6~10月までみられ, 11月以降は緩慢となった.<br>2. 落花(果)には3品種ともに二つの波相がみられた. 第1次波は大部分が花で落下し, 5月上旬から6月上旬まで, 第2次波は幼果で落下し, 5月下旬から7月下旬であった. 花に比べて幼果の落下数は少なかった.<br>3. 枝の伸長は1番枝, 2番枝ともに5月中旬から急速に行われ, 6月下旬以降は緩慢となった.<br>4. 落葉波相には二つの山がみられ, 第1次波は5月中旬から6月中旬に, 第2次波は8月中旬から9月下旬であった.<br>5. 花房は無限花序と有限花序に分かれ, その比率は&lsquo;Zutano&rsquo;では無限花序が高く, &lsquo;Bacon&rsquo;や&lsquo;Fuerte&rsquo;では隔年または2年ごとにそれらが交互に変化した.<br>6. 結果部位を8型に分類した. 3品種とも発育枝に生ずる枝と着花枝に生ずる枝は, 隔年ごとに交互に入れ代わって結実を繰り返した. 枝の種類では夏枝や1番枝の結実分布比率が高く, 結果母枝では頂芽や第2節の比率が高かった.<br>7. 全開花数に対する結実比率は0.038%以下であったが, &lsquo;Fuerte&rsquo;, &lsquo;Zutano&rsquo;, &lsquo;Bacon&rsquo;の順に高かった. 収量は隔年ごとに異なり, とくに, 低温の年は結実数および収量が少なく, 果実も小さかった.<br>8. 花芽は1~2月の最低気温(-2.5&deg;~-3.5&deg;C)の遭遇時間が長くなるほど枯死するものが多かった.<br>9. わが国のアボカド栽培の障害は, 厳寒期の最低気温と開花時の低温であり, その対策としては栽培地の選択, 耐寒性品種と台木の選抜&bull;育成が重要と考えられる.
著者
上野 敬一郎 野添 博昭 坂田 祐介 有隅 健一
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.409-417, 1994 (Released:2008-05-15)
参考文献数
13
被引用文献数
1 1

鹿児島県下で, 新しい系統と思われる2種類のLycorisが見出された. これら両系統は著者らの諸特性調査により, 同一起源の雑種, つまりL. traubiiとL. sanguineaの交雑により生じたものであると推定されている. 本報はこれら両系統の成立を実証するため,人為的な交雑を行い, 両親種とこの2系統のLycoris(L. sp. AおよびB) ならびに得られた交雑実生にっいて形態学的, 細胞学的な観察から比較検討を行うとともに, 両種の分布ならびに開花期の調査も併せて行った.L. traubii×L. sanguineaおよびL. sanguinea×L. traubiiの交雑における結実率は, それぞれ7.3%および30.1%であった. 正逆双方の交雑で得られた実生の形態は, 両親種の中間的形質を示し, 実生の出葉期,葉の光沢, 葉先の形および葉長/葉幅比などの形態的特性は, L. sp. AおよびBとそれぞれ一致していた.また, 交雑実生の染色体数ならびに核型は, 異数体や部分的に染色体欠失を生じた個体も存在したが, 基本的にはL. sp. AおよびBとそれぞれ一致する5V+12R型と4V+14R型であった.L. sanguineaおよびL. traubiiの分布ならびに開花期を調査した結果, 九州の中~南部にかけて秋咲き性のL, sanguineaが存在することを見出し, 特にL. sp. AおよびBが濃密に分布する鹿児島県山川町成川で,開花期が完全に一致するL. sanguineaとL. trattbiiが同所的に分布する事実をつきとめた.以上の結果からこの2系統のLycorisは, 秋咲きのL. sanguineaと9V+4R型のL. traubiiとの自然交雑により, 鹿児島県薩摩半島南部, おそらくは山川町成川で誕生したものであろうと推断した.
著者
萩屋 薫
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸學會雜誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.165-173, 1952
被引用文献数
1

1. すの發現機構を明かにするため大根の品種間に於けるすの發現の難易性を調査し, それに關連を有する形質を檢討したるに大要次の如き結果を得た。<br>2. すの發現は一般に早生でT/R率の降下が早い品種ほど著しく, 晩生で根部の肥大がおそい品種にはすが入り難い。<br>3. 内部形態的に見ると根肥大に伴う組織的變化が早く柔組織が發達しその細胞も大形であるような品種にはすが入り易く之と反對の傾向を持つた品種ではすが入りにくい。<br>4. 根肥大の晩い品種は一般に根に澱粉を有し又可溶性物質の含量も高いが, すの入る早太りの品種は澱粉無く糖を有し, 可溶性物質の含量も低い。<br>5. すの發現はいずれの品種に於てもT/R率が最低を示す時期にあたる。この時期には根の組織の充實度が最も低下する。<br>6. すの分布状態は品種によつて異なるが, それは主として根身内の通導組織の分布状態が品種により異なるためと考えられる。<br>7. すの發現は根の生長が旺盛で葉の同化能力以上に急激に根肥大が行われるため充實が之に伴わず起るものと考えられる。<br>8. 根の肥大は早くてもその充實がよい時無のような品種はすが入り難い。之には地上部の同化能力が大なることが少くとも1原因となると考えられるが, 何れにしてもこの種の品種は耐鬆性大根の育種上に意義を持つものと考えられる。
著者
萩屋 薫
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸學會雜誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.68-77, 1958
被引用文献数
2

1. The present studies were carried out to investi-gate the heredity of the occurrence of pithy tissue, and that what correlation would be seen between its occurrence and the other physiological characters shown in the descendants of varietal hybrids in radish.<br> 2. When the growth of 20 F<sub>1</sub> hybrids crossed among 7 varieties, differing in easiness of the occur-rence of pithy tissue, was examined, it was found that the characteristic of the parents were fairly conspicuously inherited to F<sub>1</sub>, in such characters as eaf number, leaf weight, root weight, T/R ratio, concentration of soluble matter in root sap, size of xylem parenchyma cell of root, content of starch in root, etc. In these cases, the greater part of the F<sub>1</sub> combinations surpassed the average of parents in many characters, but in comparing with the parents which retained heavier root weight, the F<sub>1</sub> combinations superior to the parents were not so many.<br> 3. Such a definite tendency as the F<sub>1</sub> is much easier or harder of the occurrence of pithy tissue than the parent varieties, could not be found, and in any combination the F<sub>1</sub> showed the resembling average value of the parents on its occurrence, and the influence of the vigor of hybrid on the occurrence of pithy tissue was not recognized.<br> 4. The occurrence of pithy tissue in varieties of F<sub>1</sub> and their parents was highly correlated with the concentration of soluble matter in root and size of xylem parenchyma cell of root, and slightly with content of starch in root, but there could not be found distinct correlation with root weight and T/R ratio. Those results indicate the possibility of breeding such lines as resistant to the occurrence of pithy tissue regardless early growth or rapid growth of corpulency of the root. For this purpose it must be suitable to use as the parents such va-rieties as &ldquo;Eichin&rdquo; and &ldquo;Tokinashi&rdquo; of which the capacity of assimilation of the top is great and the roots become fully replete.<br> 5. In the individual investigation of the growth of the F<sub>2</sub> which were produced from 3 combinations, in which the &ldquo;Eichin&rdquo; was crossed with other va-rieties differring in easiness of the occurrence of pithy tissue, a remarkable segregation of all cha-racters has been observed in every combination. The occurrence of pithy tissue of the individual F<sub>2</sub> was correlated with concentration of soluble matter, size of xylem parenchyma cell, and content of starch in root, but had no relation to the root weight or T/R ratio with one exception, as in F<sub>1</sub> generation.<br> 6. These facts reconfirmed the author's consider-ations, as it was described in the last report, that the occurrence of pithy tissue may be ascribed to, the abrupt corpulency which does not catch up the-fullness of roots, and also that its occurrence in F<sub>1</sub> and F<sub>2</sub> was highly correlated with the physiological-characters shown in the previous reports, even when the inheritance was utterly disturbed and genes were recombined by means of the varietal crossing as in this investigation.<br> 7. The inheritance of the occurrence of pithy-tissue may not be due to the existence of special-factors which directly determine its occurrence, but rather it may be indirectly inherited to the-descendants in accompany with the inheritance of many other characters such as responsible to pro-voke the unbalanced growth of the root corpulency, . as mentioned above.<br> 8. In breeding of resistant varieties to the occur-rence of pithy tissue, it is necessary to select the. resistant individuals from the young mother plants as accurately as possible as in case of selecting the-ones in their maturing stage. As an effective method to achieve this purpose it is suggested that selection of the individuals which contain high percentage of soluble matter
著者
小机 ゑつ子 水野 進
出版者
園藝學會
雑誌
園芸學會雜誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.435-441, 1989

タケノコ先端部 (A区分) 及び基底部 (D区分) の各組織切片に D-グルコース-U-<sup>14</sup>C 及びシキミ酸-G-<sup>14</sup>Cを取り込ませ3, 6, 9, 21時間反応させたのち, 各画分に取り込まれた<sup>14</sup>Cの活性を測定し, タケノコに多量に含まれるチロシンの合成及び利用について検討した.<br>1. タケノコ組織に取り込まれたグルコース-U-<sup>14</sup>CはA区分では全活性の11.4% (3時間後) から13.6%(9時間後), D区分では16.4% (3時間後) から52.5% (9時間後) がアルコール不溶性残渣に移行した. アミノ酸画分へは9時間後にA区分で4.1%が, D区分で12.8%が取り込まれた.<br>2. グルコース-U-<sup>14</sup>Cはすべてのアミノ酸へ取り込まれたが, 最も活性の高いのがアラニンであり, 次いでr-アミノ酪酸, グルタミン酸であった. チロシン及びフェニルアラニンに取り込まれた活性はアミノ酸画分に対して各々0.6~7.8%及び0.7~4.8%であった.<br>3. 取り込まれたシキミ酸-G-<sup>14</sup>Cの総活性のうちA区分では反応時間を通して約20%が, D区分では約10%がアミノ酸画分に移行し, その他の画分への移行はわずかであった.<br>4. シキミ酸-G-<sup>14</sup>Cはチロシン及びフェニルアラニンに効率良く取り込まれ, 21時間後には総活性の12%(A区分) から8% (D区分) がチロシンに, 同様に10% (A区分) から6% (D区分) がフェニルアラニンに取り込まれた.<br>5. リグニンアルデヒドへの移行はグルコース-U-<sup>14</sup>Cの場合, 9時間後に総活性の0.36% (A区分) から0.98% (D区分) が, シキミ酸-G-<sup>14</sup>Cでは21時間後に0.82% (A区分) から2.15% (D区分) であった.<br>6. シキミ酸G-<sup>14</sup>Cからホモゲンチジン酸へ取り込まれた<sup>14</sup>Cの活性は非常に少なく21時間後で総活性の0.1から0.2%であった.<br>7. 本実験結果よりタケノコ組織に存在するチロシンの生成はグルコース及びシキミ酸を前駆体とするシキミ酸経路によるものと推定される.
著者
小机 ゑつ子 水野 進
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.719-722, 1989
被引用文献数
4

孟宗竹のタケノコを用いて, HGA含量に及ぼす収穫時期, 大きさ, 栽培地ならびに貯蔵の影響について調べた.<br>1. 収穫時期別の調査では, 1987年3月25日の初収穫から約2週間の間に収穫されたタケノコにHGA含量が多く (111.2~248.0&mu;g/100gFW), 最盛期以後のタケノコでは低い値 (36.8~12.3&mu;g/100gFW) であった.<br>2. 重量別ではL級 (900g程度) タケノコのHGA量は73.5&mu;gであったが, 小さくなるほど増加し, 特にSS級では114.2&mu;gと最も多かった.<br>3. 貯蔵中の変化については, 1&deg;C貯蔵では経時的に減少し, 当初の75.5&mu;gから9日後には32.2&mu;gになった. 20&deg;C貯蔵では2日後まではほとんど変化せず, その後は減少した.<br>4. 産地間の比較では, 含量にかなりの差異が認められた.
著者
兵藤 宏 池田 典代 長谷 彰 田中 邦明
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.196-199, 1983 (Released:2007-07-05)
参考文献数
14
被引用文献数
3 5

バナナ果肉中のアルコール脱水素酵素の活性は, 追熟に伴って, エチレンの生成や呼吸の増大と共に, 著しく増大した. それに遅れて果肉中のエタノール含量は顕著に増加した. バナナ果肉のアルコール脱水素酵素の最適pHはアセトアルデヒドのNADHによる還元では7.5,一方エタノールのNAD+による酸化は9.5であった.またpH 7.0では, アセトアルデヒドの還元の速度がエタノールの酸化の速度より15倍も速かった. これらのことはバナナ果肉中では, アルコール脱水素酵素はエタノール生成の方向に有利に働いていると考えられる.バナナ果肉は, 追熟に伴い, 解糖系による糖の分解が促進される. 特にフルクトース1, 6-二リン酸の増加が著しい. ピルビン酸デカルボキシラーゼの活性はほとんど変化はみられなかった. したがって追熟に伴う果肉中のエタノールの増加は, アルコール脱水素酔素の活性増大が大きな起因をなしていると考えられる.
著者
田村 美穂子 田尾 龍太郎 米森 敬三 宇都宮 直樹 杉浦 明
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.67, no.3, pp.306-312, 1998-05-15 (Released:2008-01-31)
参考文献数
24
被引用文献数
24 41

カキ属(Diospyros)のカルスを用いてゲノムサイズおよび倍数性を決定した.カキ(D. kaki Thunb.)9品種およびカキ以外の12種のカキ属(Diospyros)植物の葉原基由来カルスの核DNA含量をフローサイトメーターを用いて測定した.核DNA含量が既知のニワトリ赤血球およびタバコと比較することで6倍体のカキ品種のゲノムサイズは5.00-5.24 pg/2Cであり, 9倍体品種は7.51-8.12 pg/2Cであることが明らかとなった.また6倍体のD. virginianaのゲノムサイズは5.12 pg/2Cであり, 4倍体のD. rhombifoliaは3.76 pg/2Cであった.他の2倍体の種のゲノムサイズはD. montanaを除いて1.57-2.31pg/2Cであった.D. montanaは2倍体であるが, そのゲノムサイズは4倍体と同程度の3.48 pg/2Cであった.D. montanaを除くカキ属植物の倍数性とゲノムサイズの間には強い一次相関が認められ, ゲノムサイズより倍数性の推定が可能であるものと考えられた.本研究ではカルス細胞を用いた染色体観察法も検討し, カキ'宮崎無核'の染色体数は2n=9x=135, '次郎'とD. virginianaの染色体数は2n=6x=90, D. rhombifoliaは2n=4x=60, その他のカキ属植物の染色体数は, 倍数性が未知の4種を含めて2n=2x=30の2倍体であることを示した.この倍数性は, D. montanaを除いてフローサイトメトリーから推定した倍数性と一致した.
著者
江口 庸雄 市川 秀男
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.13-56, 1940 (Released:2007-05-31)
参考文献数
18
被引用文献数
1 1
著者
山家 芳子 堀 裕 竹能 清俊
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.383-387, 1992
被引用文献数
10

栽培バラ, 品種インスピレーションとノイバラの種子発芽阻害におけるアブシジン酸 (ABA) の関与を調べた. 25&deg;C, 連続白色光照射下で, 果皮に包まれた種子 (単果) はまつたく発芽しなかったが, 単果から摘出した種子は高い発芽率を示した. 一度分離した果皮を一緒におくと摘出種子の発芽率は低下した. このとき, 単果, 種子, 種子+果皮から発芽床の水に溶出したABAを酵素イムノアッセイで定量したところ, ABA含量は単果で最も高く, 種子で最も低かった. 底部に多数の穴を開けた発泡スチロール製の平底容器に単果を並べ, 容器をビーカー中の蒸留水の表面に浮かべ,スターラーで水を攪拌して, 好気的な条件の下で単果を水洗したところ, 単果の発芽率は著しく高まった.このとき, 水に活性炭を加えると発芽率はさらに高まったが, poly-N-vinylpyrrolidone (ポリクラーAT) を加えても効果はなかった. このような活性炭を使ったリーチングによる単果の発芽率の改善は, 5&deg;Cで行ったときに顕著であった. これらの結果から, バラ単果の発芽は果皮に存在するABAによって阻害されており,活性炭を使ったリーチングは, 果皮からABAを効率よく溶出することによって発芽を促進したものと考えられる.
著者
早田 保義 田部 敏子 近藤 悟 井上 興一
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.67, no.5, pp.759-766, 1998-09-15 (Released:2008-01-31)
参考文献数
19
被引用文献数
7 13

土壌水分の異なる処理区を設け, 土壌水分の違いがミニトマトの生育, 特に果実の糖集積に及ぼす影響と糖集積の要因について調査した.灌水量を強く控えた強乾燥区(pF2.9)では, 葉や果実の水分含量が低下するとともに, 1株当たりの全乾物重が減少した.1株当たりの器官別乾物重の割合は, 強乾燥区で, 葉や根の割合が低下し, 果実の割合が高まる傾向がみられた.果実の糖含量は, 土壌水分を低下させるに従い増加した.組成別では, 全処理区でブドウ糖および果糖の割合が高く, ショ糖の割合が低かった.果実の水分含量は強乾燥区で低下するものの, その割合は小さく, 果実糖度上昇における濃縮効果の影響は, ミニトマトでは少ないと判断された.果実の全窒素および水溶性タンパク態窒素含量は多湿区が高く, 強乾燥区では低い値であり, 糖含量とは逆のパターンとなった.果実のデンプン含量は強乾燥区と多湿区で蓄積量に差はなく, 果実糖度の上昇との関連性が薄いと判断された.果実の食味を示す糖/酸比は, 土壌水分の抑制が強まるに従い, 高くなる傾向を示した.
著者
浅尾 俊樹 北澤 裕明 伴 琢也
出版者
園藝學會
巻号頁・発行日
vol.73, no.3, pp.247-249, 2004 (Released:2011-03-05)

8種の葉菜類の自家中毒物質を探索するために水耕葉菜類に用いた活性炭に吸着された物質をGC-MS法で分析した。その物質は乳酸、安息香酸、m-ヒドロキシ安息香酸、p-ヒドロキシ安息香酸、バニリン酸、アジピン酸およびコハク酸であった。同定された物質の中で、顕著に生育抑制を引き起こす物質を探るため各葉菜類の苗を使ったバイオアッセイを行った。その結果、パセリではアジピン酸、セロリでは乳酸、ミツバでは安息香酸、p-ヒドロキシ安息香酸およびコハク酸、レタスではバニリン酸、葉ゴボウではコハク酸、シュンギクでは安息香酸、m-ヒドロキシ安息香酸およびコハク酸、チンゲンサイでは安息香酸およびp-ヒドロキシ安息香酸、ケールでは安息香酸、p-ヒドロキシ安息香酸およびアジピン酸が生育抑制を顕著に引き起こす物質として認められた。