著者
丸山 卓郎 代田 修 川原 信夫 横山 和正 牧野 由紀子 合田 幸広
出版者
[日本食品衛生学会]
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.44-48, 2003-02-25
参考文献数
7
被引用文献数
11

マジックマッシュルームは,幻覚性物質であるサイロシンおよびサイロシビンを含有するキノコである.最近,これらのキノコ類は日本において麻薬原料植物として規制対象となった.他方,同キノコ類は多種にわたる上,粉末状態で流通する場合もあり,形態学的な手法では同定が難しい場合が多い.本研究では,遺伝子情報を基にした同キノコ類の同定法開発を目的として,国内流通品のrRNA遺伝子の内部転写スペーサー (internal transcribed spacer, ITS) 領域を解析し,その結果を基に国内流通品を6種に分類した.次いで,解析結果を標品およびデータベース中の塩基配列と比較することにより,流通品の基原種を明らかにした.さらに,LCを用いサイロシン含量を調べた結果,<i>Panaeolus cyanescens</i> が最も高い数値を示し,<i>Amanita</i> 属の2種では検出されなかった.
著者
安藤 芳明 亀山 邦夫 唐島田 隆
出版者
Japanese Society for Food Hygiene and Safety
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.16, no.4, pp.258-263_1, 1975
被引用文献数
4

グリシンは5%の高濃度においてもボツリヌスA, B, E各型菌芽胞の発芽を完全に阻害することはできないが, 発芽後の outgrowth をE型に対しては2%で, AおよびB型に対しては5%で完全に阻止した. 複雑な培地 (BHIおよびTPG) における培養実験の結果では, 生育を完全に抑制するグリシンの濃度は, E型菌ではpH 6.0において0.5%, pH 7.2において2%であるが, AおよびB型菌では培地のpHに関係なく5%であった. グリシンと市販許可濃度以下の亜硝酸ナトリウムまたはソルビン酸との併用による相乗効果はほとんど認められなかった.
著者
杉本 直樹 黒柳 正典 加藤 貴史 佐藤 恭子 多田 敦子 山崎 壮 棚元 憲一
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.76-79, 2006-04-25 (Released:2008-08-04)
参考文献数
12
被引用文献数
4 17

天然ガムベースとして使用されるサンダラック樹脂は,既存添加物名簿収載品目リストに「ヒノキ科サンダラック(Tetraclinis articulata (VAHL.) MAST.)の分泌液からエタノール抽出により得られたもので,主成分はサンダラコピマール酸である.」と記載されているが,成分組成について十分に検討されていない.そこで,サンダラック樹脂中の主要成分について検討し化合物1, 2, 3を単離し,スペクトルデータよりそれぞれサンダラコピマール酸,サンダラコピマリノール,4-エピデヒドロアビエチン酸と同定した.また,サンダラック樹脂製品中のサンダラコピマール酸をHPLCにより定量した結果,含有量は11.6%であった.
著者
伝川 祐子 川井 英雄 細貝 祐太郎
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.31, no.6, pp.532-536_1, 1990-12-05 (Released:2009-12-11)
参考文献数
6
被引用文献数
1 1

水道水10件及びミネラルウォーター30件のトリハロメタン (THM) など低沸点有機ハロゲン化合物 (VHHs) を溶媒抽出し, ガスクロマトグラフで測定した. 総THMは水道水は3.7~64.6ng/ml, ミネラルウォーターではN. D.~36.4ng/mlの範囲で, 水道水の規制値を超えるものはなかった. 総VHHsは水道水とミネラルウォーターとがそれぞれ4.2~64.6ng/ml, N. D.~36.4ng/mlの範囲で, その主体はクロロホルムであった.
著者
山本 敦 斎藤 行雄 松永 明信 牧野 正雄
出版者
Japanese Society for Food Hygiene and Safety
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.36-41_1, 1987

くん製品中の酸化防止剤 (BHA, BHT) をガスクロマトグラフィー (GC) で分析する際, 共存物質により分析の妨害を受けることがある. 今回これらの物質の単離と構造決定を行った. いかくん製品からの抽出物は分取クロマトグラフィーにより, 妨害物質としての3つの化合物を単離することができた. これらはGC/MS, NMRの結果, 2,6-dimethoxyphenol 及びその同族体であることが判明した. これらの化合物はくん製品中に香気成分として含まれるものであり, GCでくん製品中の酸化防止剤を分析する場合には十分注意を要する.
著者
仲谷 正 清水 充 山野 哲夫
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.51-56, 2016-04-25 (Released:2016-05-20)
参考文献数
17
被引用文献数
3

和歌山県紀州灘沿岸部で採取されたキタマクラ2試料を,皮,筋肉,内臓に分割し,各組織におけるテトロドトキシン(TTX),および麻痺性貝毒(PSTs)の含有量について調査した.TTXおよびPSTsが,定量下限以上で検出された部位は,皮のみであり,筋肉および内臓では,検出限界未満(ND)または検出限界以上定量下限界未満(tr)であった.定量下限以上で検出されたPSTsは,サキシトキシン,およびデカルバモイルサキシトキシンの2成分のみであった.両試料における皮中TTXの含有量は11,000および13,000 ng/g (35および41 nmol/g)で,PSTsの含有量は168および460 ng/g (0.63および1.72 nmol/g)であった.また全毒量(TTX+PSTs)に対するTTXおよびPSTsのモル比(mol%)は,TTXで98.2および96.0%あり,PSTsで1.8および4.0%であった.キタマクラの毒の主成分は,TTXであるが,微量のPSTsも含有していることが,今回の調査結果よりわかった.
著者
谷口 忠敬
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.11, no.6, pp.455-458, 1970-12-05 (Released:2010-03-25)
参考文献数
8
被引用文献数
1 1

魚貝類から分離したウェルシュ菌 (辺野喜の基準) の耐熱性あるいはHobbs型と, 生化学的性質とくにサリシン発酵能との関係を検討し, つぎの結果を得た.1) 分離ウェルシュ菌198株のうち48株はサリシン発酵陽性であった. 耐熱性 (100°, 60分) 株では分離15株のうち11株がサリシン発酵陽性であった. また同発酵陽性株の検出率は加熱 (80°, 20分) 検体分離株中で高く (65%), 無加熱検体分離株中で低かった (16%).2) サリシン発酵陽性分離株のHobbs型に対する一致率は25%にすぎなかったが, 同発酵陰性分離株のそれ (13%) に比べると高かった. Hobbsの各抗原型とサリシン発酵能との関連は見られなかった.
著者
芳野 恭士 中村 好志 池谷 拓速 清 友美 井上 亜矢 佐野 満昭 富田 勲
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.104-108_1, 1996-04-05 (Released:2009-12-11)
参考文献数
14
被引用文献数
7 14

加工方法の違う茶葉の熱水抽出物及びその溶媒分画について, う蝕性レンサ球菌 Streptococcus mutans に対する抗菌作用を検討した. 緑茶及び紅茶の熱水抽出物は, S. mutans に対し, ウーロン茶やプーアル茶のそれより強い抗菌作用を示した. 緑茶及び紅茶の酢酸エチル分画とn-ブタノール分画, 更に紅茶の水溶性非透析性分画で, S. mutans に対する強い抗菌作用がみられた. 緑茶の酢酸エチル分画及びn-ブタノール分画にはカテキン類が, 紅茶の同分画にはカテキン類の他にテアフラビン類や没食子酸が検出された. 紅茶の水溶性非透析性分画には, ポリフェノール類とエステル型の没食子酸が検出された.
著者
河村 葉子 井之上 浩一 中澤 裕之 山田 隆 米谷 民雄
出版者
[日本食品衛生学会]
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.13-17, 2001-02-25
参考文献数
10
被引用文献数
2 24

ビスフェノールA (BPA) 含有量が高かったコーヒー及び紅茶飲料の相当缶を検討したところ, いずれもエポキシ樹脂コーティングに原因があったが,サイドシームや底蓋部でBPA濃度が極めて高かったり, 胴部がやや高いため缶全体の残存量が高いなど原因部位は様々であった. 水60及び95℃, 20%エタノール, <i>n</i>-ヘプタンではBPAは溶出しなかったが, 水120℃30分間では35~124ng/mL溶出した. 相当缶のBPA溶出量は材質中の残存量とほぼ一致し, 缶入飲料のBPA含有量とも近い値であった. BPAの移行は, コーティング中のBPA残存量と飲料の加熱条件に依存することが示された. 一方, 改良缶ではコーティング中のBPA量が大幅に減少しており, 溶出量は1/10以下に低減された.
著者
川崎 近太郎 永納 秀男 飯尾 利弘 近藤 雅臣
出版者
Japanese Society for Food Hygiene and Safety
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.11, no.3, pp.155-160, 1970-06-05 (Released:2010-03-25)
参考文献数
21
被引用文献数
6 9

過酸化水素の細菌菌体内酵素におよぼす影響を大腸菌および腸炎ビブリオを用いて検討した. 過酸化水素処理菌体の各種酵素活性は低下し, とくにAldolaseおよびAconitate hydrataseの活性が強く阻害されていた. その活性阻害度は殺菌効果と同様に過酸化水素濃度のみでなく菌体量にも関連することが明らかとなった.これらの結果から, 過酸化水素は菌体内の特定酵素を阻害するのでなく, 酵素系全般に影響を与えることが明らかとなった.また, 無細胞抽出液および粗酵素を過酸化水素処理した際, 抽出菌の種類には関係なく酵素タンパク量に対する過酸化水素量の比に比例して, 酵素阻害がおこることが観察された.過酸化水素の芽胞菌体におよぼす影響を枯草菌芽胞を用いて検討した. 枯草菌芽胞は, 400mg H2O2/mg SporeNで80°, 30分の加熱処理で完全に死滅し, その際, 多量のDPAを菌体外に流出した. また, 過酸化水素処理をすると芽胞殼成分中にシステイン酸が検出され, その内層成分に質的, かつ量的に大きな変化が認められた.
著者
中桐 裕幸 佐久間 修三 小若 雅弘
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.413-416_1, 1995-06-05 (Released:2009-12-11)
参考文献数
4

市場において開栓したビールから昆虫が発見されることがある. 熱処理されたビールから発見された場合には, カタラーゼ活性の有無で昆虫が製造工程中に混入したか開栓後に混入したかを判断している. しかしながら, この判定方法は生ビールに対しては精度が低く, 実用にならない. そこで生ビールに対しての判定方法を検討した結果, 昆虫に含まれるコリンエステラーゼ活性の残存度により, 混入後の経過日数を推定する方法を開発した. コリンエステラーゼ活性は昆虫の個体間のばらつきが少ない. またこの方法はホモジナイザー, 分光光度計, 遠心分離機等の機器類, 及び簡単な試薬さえあればすぐに測定できる簡便性も備えている.
著者
岡村 保 松久 次雄
出版者
Japanese Society for Food Hygiene and Safety
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.6, no.4, pp.382-385, 1965
被引用文献数
6

筆者らは紙巻タバコのフッ素量を測定した結果, 意外に多量のフッ素がタバコ中にあることを知った. しかもそれが, 煙となって大半が吸煙されると考えられるのでかくれた煙害として再検討されるべきではないかと思われる.
著者
堀江 正一 石井 里枝 小林 進 中澤 裕之
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.234-238, 2002-08-25 (Released:2009-04-30)
参考文献数
7
被引用文献数
3 4

LC/MSによるフグ毒テトロドトキシン(TTX)の分析法を検討した.TTXは高極性物質であることから,イオン化にはエレクトロスプレーイオン化法(ESI)を採用し,ポジティブモードとした.LC条件は,カラムにTSKgel ODS 80Ts (25 cm×2 mm i.d.),移動相には5 mmol/L HFBA-メタノール(99 : 1)を用い,流速は毎分0.2 mLとした.検出には,プロトン化分子[M+H]+を用い,結果をより確かなものとするために水脱離イオン(m/z 302.1)も同時にモニターした.本法の検出限界は1 μg/gであり,無毒とされる10 MU/g (2.2 μg/g)レベルの分析が可能であった.
著者
神蔵 美枝子 義平 邦利 合田 幸広
出版者
Japanese Society for Food Hygiene and Safety
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.40, no.6, pp.455-459_1, 1999-12-05 (Released:2009-12-11)
参考文献数
13
被引用文献数
3 5

食用赤色104号 (R104) 中の2種の副成色素 (P1, P2) を単離し, 各種機器分析を用い構造決定を行った. その結果, P1は, R104のキサンテン部の2位, 7位の臭素が脱離した4′,5′-ジブロモ-4,5,6,7-テトラクロロ-3′,6′-ジオキシドスピロ [イソベンゾフラン-1(3H),9′-[9H] キサンテン]-3-オン, P2は, 7位の臭素が脱離した2′,4′,5′-トリブロモ-4,5,6,7-テトラクロロ-3′,6′-ジオキシドスピロ [イソベンゾフラン-1(3H),9′-[9H]キサンテン]-3-オンであることが判明した. 更に, HPLCを用い市販R104 (4社9試料) 中の混在量を調べた. その結果, すべての試料でP2が検出され, 0.08~5.21%の混在量であった. 他方, P1は, 5試料で検出されず, 最大検出値は, 0.06%であった.
著者
吉田 綾子 今井田 雅示
出版者
Japanese Society for Food Hygiene and Safety
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.21, no.4, pp.288-293_1, 1980
被引用文献数
5

エビを亜硫酸塩類溶液に浸漬し漂白を行うと, ホルムアルデヒド (FA) が生成することを確認し, 漂白条件と生成量の関係, エビ中に含まれるトリメチルアミンオキシド (TMO) とFA生成の関連性などについて検討した. FA生成量は亜硫酸濃度と共に増加し, 1.5%以上で一定となった. 1.5%溶液での処理を繰り返すと, さらにFAが生成した. エビを透析した外液をTLCにより分画し, TMOが存在する画分からのみ, FAが生成することを確認した. 透析液に亜硫酸水を加えるとFAが生成し, FA生成とTMOの減少との間には量的な相関関係が見られた. このことから, TMOがFA生成の要因であると考えられた.