著者
山浦 由郎 中村 和夫 石原 祐治
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.110-115_1, 1997-04-05 (Released:2009-12-11)
参考文献数
13
被引用文献数
1 2

長野県内で1970年から1994年までの25年間に発生したきのこ中毒を統計学的に解析した. 中毒は1972年及び1987年を除いて毎年発生し, 年平均約5件の発生, 20人の中毒者があった. 原因きのこの種類別ではカキシメジ, クサウラベニタケ, ツキヨタケの3種のきのこで, 全きのこ中毒事例の約70%を占めていた. 毒きのこを発現する特徴的な中毒症状別に分類した場合, 発症率は胃腸障害型きのこ, 入院率は神経系症状型きのこ, 死亡率はコレラ様症状型きのこでそれぞれ最も高かった.
著者
佐藤 常雄 溝井 理子 木村 凡 藤井 建夫
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.173-178_1, 1996-08-05 (Released:2009-12-11)
参考文献数
13
被引用文献数
2 2

イカ塩辛白作り (1試料) 及び赤作り (2試料, A, B) を試作し, その熟成中のヒスタミン (Hm) 量, Hm生成菌数及びHm分解菌数の消長を調べた. その結果, イカ塩辛熟成中のHm蓄積量は白作りで0.2~5.4mg/100g, 赤作りで0~1.0mg/100gと両者とも微量であった. また, Hm生成菌は赤作りAの熟成7日目にのみ確認されたが, その数も少なく3.0×101/gであった. Hm分解菌については, 白作り及び赤作りAともに熟成初期に確認されたが, その数は102/g程度とHm生成菌と同様に少なかった. Hm生成菌として Acinetobacter をイカ塩辛より分離したが, この細菌は今までにHm生成の報告のないものであった. またこの属の細菌は, イカ塩辛中に存在するHm分解菌としても数多く検出された.
著者
宮崎 仁志 阿部 政夫 麻野間 正晴 永井 祐治 中島 正博 宮部 正樹
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.233-239_1, 1997-08-05 (Released:2009-12-11)
参考文献数
13
被引用文献数
4 8

厚生省から通知された魚肉中の一酸化炭素 (CO) の分析法 (通知法) には, (1) 多量 (300g) の試料が必要, (2) 操作中にCOの損失がおこる, という問題点がある. そこで, これらの点を改善した簡易分析法を検討した. 凍結 (又は生鮮) 試料約100gをミンチにし, その10gを直接バイアルに採取して10%硫酸を加え, 40℃で5分間加温した. 更に室温で15分間振とうしてCOを遊離させ, GC-FIDで定量した. 本法は, 分析操作中のCOの損失が少なく, 操作が簡便で, 少量の試料にも適用できる. 本法における定量限界は, 通知法と同じ2μg/kgであった. 本法により, テラピア10試料のCO濃度を測定したところ, 通知法による測定値の0.9~1.7 (平均1.3) 倍の値であった.
著者
武田 由比子 河村 葉子 山田 隆
出版者
Japanese Society for Food Hygiene and Safety
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.266-271_1, 1998
被引用文献数
7

アルミホイル片を酸性21種類, アルカリ性6種類の食品から調製した溶液へのアルミニウム移行は, 酢類, 梅干し類, アルカリ性食品で多かった. 酸性食品では, 95℃30分でぽん酢, レモン酢及び梅干し漬汁10.02~13.83μg/cm<sup>2</sup>, りんご酢, かぼす酢, ワインビネガー6.85~3.11μg/cm<sup>2</sup>, 果汁及び乳製品0.66~0.92μg/cm<sup>2</sup>であった. 穀物酢は0.20μg/cm<sup>2</sup>と低く, 4%酢酸の約200分の1であった. アルカリ性食品では, 95℃30分でこんにゃく煮汁13.72~16.24, しらたき煮汁88.03~107.4, 中華麺煮汁10.55~10.97μg/cm<sup>2</sup>と高かった. 食塩は溶出を高めるが, 糖, タンパク質, アミノ酸及び脂肪は溶出抑制の傾向があり, 特にタンパク質, アミノ酸類は4%酢酸95℃30分の溶出を10%以下に抑えた.
著者
小畠 満子 外海 泰秀 小林 加代子 伊藤 誉志男
出版者
Japanese Society for Food Hygiene and Safety
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.19-29_1, 1987
被引用文献数
1

魚介類から分離した酵母 <i>C. sake</i>, <i>C. lipolytica</i>, <i>Cr. laurentii</i>, <i>Tr. cutaneum</i>, <i>Tr. pullulans</i> と細菌 <i>Alcaligenes</i> sp., <i>B. subtilis</i>, <i>P. fluorescens</i>, <i>S. epidermidis</i> を滅菌サバ, エビ, イカの各々に単独接種し, 5°, 15°25°で2週間培養した場合の腐敗過程を観察し, pH及び揮発性塩基窒素を測定した. 供試酵母菌株の中では <i>C. lipolytica</i> による腐敗作用が最も強く, 25°培養では2日目から軟化し始め, 7日目にはアンモニア臭とネトが発生した. pHは著しく上昇し, VBNも極めて高い値を示した. 他の4菌種の酵母にも程度の差はあったが, 供試細菌菌株と同様な腐敗現象が認められた. <i>C. lipolytica</i> と <i>P. fluorescens</i> の腐敗力は類似していた.
著者
小林 千種 中里 光男 山嶋 裕季子 大野 郁子 河野 美幸 安田 和男
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.139-143, 2001-04-25 (Released:2009-03-25)
参考文献数
6
被引用文献数
13 15

RI-HPLC及びパルスドアンペロメトリック検出イオンクロマトグラフィー(PAD-IC)による広範囲の食品に適応可能なスクラロースの分析法を作成した.試料に 10% NaCl 含有 0.01 mol/L HCl を混和して透析膜に充てんし,0.01 mol/L HCl を透析外液として用い,24時間透析を行った.透析外液を Bond Elut ENV カートリッジに負荷して濃縮及びクリーンアップを行い,試験溶液を作製した.従来の前処理方法と比較して夾雑物の影響がなく,RI-HPLC及びPAD-ICの両分析法に適用することができた.両分析法のスクラロースの定量値はほぼ一致した.試料からの添加回収率は 88% 以上得られ,定量下限は前者で10 μg/g,後者で1 μg/g であった.
著者
久保倉 洋子
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.7-13_1, 1983-02-05 (Released:2009-12-11)
参考文献数
18

低温流通生肉のより適切な生菌数測定法を確立し, 合わせて生菌数に及ぼす各種要因の影響を解析する目的で, 冷蔵, 冷凍生肉 (牛, 豚, 鶏カット肉各40例) の生菌数を, 3種の試料接種法, すなわち, 塗抹法 (培地温度5°) 及び混釈法 (培地温度50°及び60°) と, 6種の培養温度 (7°,25°,30°,32°,35°,37°) とを組合わせた培養法で求め統計処理を行った. 1) 接種法別にみた生菌数は, いずれの培養温度とも塗抹法で最も高く, また, 培養温度別にみた生菌数は, いずれの接種法とも25°培養で最も高かった. 従って, 塗抹, 25°培養法で最も多い生菌数が得られた. 2) この方法で得られた生菌数は, 食品衛生検査指針による35°培養法で得られた生菌数よりも有意 (p≦0.01) に多かった. 3) 25°とその他の培養温度で得た生菌数の間に有意 (p≦0.05またはp≦0.01) の相関関係がみられた. 4) 生菌数に影響する要因としては, 生肉の流通様式 (冷蔵, 冷凍) が最も重要で, 次いで肉種, 培養温度, 接種法の順であった.
著者
深田 剛毅 小松 郁子 鳥井 昭美 都築 廣久 田代 昌士
出版者
Japanese Society for Food Hygiene and Safety
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.227-231_1, 1993-06-05 (Released:2009-12-11)
参考文献数
10

クロコウジカビに対するピラゾール誘導体21種の抗かび性とそれら化学構造との関連性を検討した. なお, 抗かび性は初期効力とその持続性で評価し, 比較化合物には4-クロロ-m-クレゾール (1) を用いた. その結果, ピラゾール骨格自体 (2), 及び3, 5-ジメチル体 (4) などの16種類のピラゾール誘導体には抗かび性は全く認められなかったが, 2種類のフェニル誘導体: 3-メチル-5-フェニル体 (11), 3, 5-ジメチル-4-フェニル体 (21) と3種類の含硫誘導体: 3-アミジノチオメチル-5-メチル体 (13), 3-メチル-5-ピラゾイルメチル-N, N-ジメチルジチオカルバメイト (14) 及び3, 5-ジメチル-4-α-チオフェニル体 (22) には抗かび作用が発現し, フェニル基と含硫基による置換効果が観察された. そこで, 化学構造と活性相関性についても議論した.
著者
八並 一寿 越後 多嘉志
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.310-313_1, 1992-06-05 (Released:2009-12-11)
参考文献数
21
被引用文献数
3 8

市販いわし糠漬け20試料について, 不揮発性アミン含量の実態を明らかにし, さらに水分, pH, NaCl, VBNについても同時に測定した. 水分, pH, NaCl, VBNの平均値及び標準偏差値は, それぞれ43.9±4.3%, 5.28±0.13, 12.2±2.4%, 57.4±25.1mg/100gであった. 糠漬け中の不揮発性アミン量の平均値及び標準偏差値は, プトレシン (Put) 74.3±121.0μg/g, カダベリン (Cad) 7.8±7.5μg/g, ヒスタミン (Hm) 368.3±421.6μg/g, チラミン (Tym) 213.3±271.1μg/g, スペルミジン (Spd) 4.3±6.5μg/gであり, HmとTymの含量の高い試料が多かった. VBNが80mg/100g以上の試料では, Putを100μg/g以上, Hmを500μg/g以上, Tymを400μg/g以上含むものが多く, VBNが40mg/100g以下の試料では, 不揮発性アミン含量の低いものが多かった.
著者
荻本 真美 植松 洋子 鈴木 公美 樺島 順一郎 中里 光男
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.50, no.5, pp.256-260, 2009-10-25 (Released:2009-11-07)
参考文献数
22
被引用文献数
5

着色を目的とした既存添加物中の有害重金属である鉛,カドミウム,水銀およびヒ素の汚染実態を調査したところ,15品目40試料中8試料から何らかの有害元素が検出された.その内訳は,鉛が1試料(2.8 μg/g),水銀が8試料(0.1~3.4 μg/g),ヒ素が2試料(1.7,2.6 μg/g)であった.EUやJECFAの規格と比較したところ,ラック色素1試料からJECFAで食品添加物一般の提案値である2 μg/gを超える2.8 μg/gの鉛が,カカオ色素3試料からEUの規格値である1 μg/gを超える1.2~3.4 μg/gの水銀が検出された.
著者
寺田 久屋 鈴木 晃世 田中 治夫 山本 勝彦
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.347-354_1, 1992-08-05 (Released:2009-12-11)
参考文献数
12
被引用文献数
6 6 7

セミミクロHPLCを用いカテキン5種類 (エピガロカテキン, エピガロカテキンガレート, エピカテキン, エピカテキンガレート, カテキン) とメチルキサンチン3種類 (テオフィリン, テオブロミン, カフェイン) の同時定量法を検討した. 試料からの抽出溶媒として40%エタノールを用い, 精製に Sep pak C18を利用し, HPLCには内径2.1mmの Inertsil ODS-2カラムを使い, 検出はUV 207nmで行った. 茶浸出液, 抹茶アイスクリーム, 抹茶煎餅, 抹茶ゼリー及びウーロン茶抽出物入りキャンディーについて行った添加回収実験の結果, カテキン類では, 回収率が83.2~120.4% (変動係数0.4~9.4%), メチルキサンチン類では, 回収率が53.0~106.4% (変動係数0.8~11.0%) であった. 定量限界は, 高感度分析が要求される加工食品において, いずれの物質とも0.1μg/gであった.
著者
福原 克治 松木 容彦 南原 利夫
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.208-212_1, 1985-04-05 (Released:2009-12-11)
参考文献数
18
被引用文献数
3 4 3

HPLCによる食品中のテオブロミン, テオフィリン及びカフェインの同時分析法を確立した. これらの精製を行うため, 茶及びインスタントコーヒーについては蒸留水で抽出した後, さらにクロロホルムに転溶した. また, ココア及びチョコレートについては蒸留水と四塩化炭素を用いることにより, 簡便に油脂の除去と同時に抽出を行うことができた. HPLCの測定条件は, カラムにFLC-ODSを, 移動相に水-アセトニトリル (150:10) を用いた. 本法によるこれらの食品からの回収率は88~92%であった.
著者
菰田 太郎 白石 慶子
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.5, no.4, pp.336-340, 1964-08-05 (Released:2010-03-01)
参考文献数
13
被引用文献数
1 1

市販クン液18種について, 有害性成分であるフェノール類, メタノール, 重金属, ヒ素および有機酸について試験を行なった. フェノール類はフェノールとして, 国産品16種の場合は0.008~0.675%, 米国製品2種の場合は2.42, 15.88%と高い含量を示した. ホルムアルデヒドは0.6~450mg%, メタノールは0.007~1.600%の範囲であった. 亜鉛は17種の試料のうち15種に認められ, 鉛およびヒ素等に比べてその含量も高く, 最高値50ppm, 平均値14ppmを示した. 鉛は試料の半数に含まれ, 最高値14ppm平均値2ppm. ヒ素は18種の試料のうち14種に含まれ, 最高値4ppm, 平均値1ppmを示した. 有機酸は酢酸として0.1~6.3%であった. なお, 3, 4-ベンツピレン等の発がん性物質については目下試験中である.以上の試験結果により, 現在市販されているクン液にはフェノール類, メタノール, ホルムアルデヒド, ヒ素, 重金属類等が含まれているので, クン液について成分規格および使用基準の法的規制をすることが望ましい.
著者
田中 健治 小林 秀誉 永田 忠博 真鍋 勝
出版者
[日本食品衛生学会]
雑誌
食品衛生学雑誌 = Journal of the Food Hygienics Society of Japan (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.63-66, 2004-04-25
被引用文献数
15

米はマイコトキシン汚染の少ない穀物である.ところが,1998年には,台風で倒伏し水に浸かったイネがあり,この米は褐色に着色していた.この年は,国内ではムギの赤かび病が大発生した年でもあったので,この米についてトリコテセン系マイコトキシンの抽出を行い,分析した.定性は,GC/MSで,定量はGC-ECDで行った.その結果,デオキシニバレノール (DON),フザレノン-X (Fus.-X),ニバレノール(NIV)のトリコテセン系マイコトキシンが検出された.米でのDONの汚染は報告されているが,現在著者の知る限りでは,Fus.-Xの汚染報告は初めてである.
著者
長谷川 真由美 山崎 薫 馬場 修
出版者
[日本食品衛生学会]
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.370-373, 2013

ヒトデ粉末摂取の影響を観察するために,ヒトデ粉末入り飼料をラットに摂取させ,67日間観察した.体重増加,脂質代謝にかかわる生化学値ならびに肝機能に関する酵素の活性を測定し,安全性について検討した.1.ヒトデ粉末摂取による体重変化には有意な差は認められなかった.2.臓器重量にヒトデ粉末摂取による影響は観察されなかった.3.ヒトデ粉末摂取は,今回の実験では脂質代謝,肝機能,タンパク質栄養に影響を認められなかった.
著者
笠原 義正 伊藤 健
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.167-172, 2009-08-25 (Released:2009-09-10)
参考文献数
7
被引用文献数
3 13

LC/MS/MSを用いてツキヨタケおよびその食中毒原因食品に含まれるilludin Sの定量法を開発した.試料をメタノールで抽出し,Oasis HLBを用いて精製し,LCのカラムにはInertsil ODS-3を使用し,移動相には0.1%ギ酸-メタノール(7 : 3)を用いた.MS/MSの条件はESIポジティブモード,測定はMRMモードで行った.本法では他のキノコに添加した場合のilludin Sの回収率は84~94%で,検出限界は0.08~0.10 μg/gであった.食中毒原因食品からilludin Sの測定は可能であり,食中毒食品を想定したキノコ汁についてはilludin Sの回収率は74.8%であった.本法はツキヨタケおよび食中毒原因食品中のilludin Sの分析に有用な方法である.