著者
佐々木 隆宏 田原 正一 坂牧 成恵 貞升 友紀 牛山 慶子 門間 公夫 小林 千種
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.60, no.6, pp.176-182, 2019-12-25 (Released:2020-01-23)
参考文献数
9
被引用文献数
1

既存の透析法および直接抽出法を用いてチューインガム中の3種甘味料の定量値を比較したところ,透析法では直接抽出法に比べ,一部の製品でアスパルテームの定量値が顕著に低値であった.一方,直接抽出法はガムベースが器具に付着する点で操作が煩雑であった.そこで,ガムベースを透析チューブ内にとどめたまま抽出が完了可能な透析法の条件を変更し,定量値が改善可能か試みた.その結果,透析液に60%メタノールを用いて室温で24時間,または恒温振とう水槽中(50℃)で2時間透析する方法を開発した.本法は,3種甘味料のいずれも直接抽出法と同程度の良好な値を得ることが可能であった.
著者
森 哲也 佐藤(長尾) 清香 岸野 かなえ 難波 豊彦 工藤 由起子
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.60, no.6, pp.183-186, 2019-12-25 (Released:2020-01-23)
参考文献数
10
被引用文献数
1

迅速かつ安価なDNA抽出法であるアルカリ熱DNA抽出法を食品中の腸管出血性大腸菌の検出のためのリアルタイムPCRにおいて評価した.牛レバー,牛ひき肉,豚スライス肉,チーズ,レタス,カイワレ大根,トマトおよびホウレンソウでのstx遺伝子とO抗原遺伝子検出において,アルカリ熱DNA抽出物は高感度の検出(102~104 CFU/mL)を示し,これはプロティナーゼK溶菌とシリカメンブレンによる精製工程を含む市販DNA抽出キットと同等の検出感度であった.アルカリ熱抽出とキットでのDNA濃度と純度には違いがあったが,リアルタイムPCRの感度は同様であった.これらの結果から,アルカリ熱DNA抽出法は,リアルタイムPCRでの食品分析にとって有用な方法であることが示された.
著者
渡邊 美咲 野口 実華子 橋本 多美子 吉田 精作
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.60, no.6, pp.159-167, 2019-12-25 (Released:2020-01-23)
参考文献数
28
被引用文献数
2

室内に常在する有機リン系難燃剤(PFRs)の精白米への室内汚染について実態把握をするため,大阪近郊の64例の一般家屋において,1週間室内に静置した精白米へのPFRs汚染を調査した.2015年(37家屋)は6種類のPFRsを,2016年(27家屋)は10種類のPFRsを調査した.精白米はアセトン–ヘキサンによりホモジナイズ抽出し,ヘキサン–アセトニトリル分配で脱脂後,GC-FPDで定量した.2015年では調査した37例中35例からPFRsが検出され, 2016年では27例全例からPFRsが検出された.検出最高値はTCEPで160 ng/g,TCIPPで500 ng/g,TBEPで430 ng/gであった.検出された各PFRsの濃度比は各家屋で異なっていた.家庭で保存中の精白米16例の分析では,保存方法に関係なく,10例からPFRsが検出された.市販玄米16例の分析では,12例からPFRsが検出され,玄米の流通,保存過程での汚染が考えられた.
著者
小田 隆弘 古田 宗宜 稲益 建夫
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.47, no.5, pp.237-241, 2006-10-25 (Released:2008-08-04)
参考文献数
10
被引用文献数
1 1

飲み残して密栓し室温放置したペットボトル飲料が破裂し,けがをする事故が増加しているため,飲み残しペットボトルの膨張・破裂の危険性について検討した。女子大学生145名を使ってオレンジ果汁ペットボトル飲料の飲み残しを調製させ密栓して25℃で10日間保管した結果,何も食べずに飲んだ飲み残しでは145本中9本(6.2%)にボトルの膨張が認められたが,キムチを食べながら飲んだ場合は144本中99本(68.8%)にボトルの膨張が認められた。膨張したボトル58本に衝撃付加試験を行ったところ4本が激しく破裂した。また,ペットボトルの膨張が起こりやすい飲料は,酸乳飲料や果汁飲料などの酸性飲料であり,それらの飲料の飲み残しペットボトルの膨張を引き起こす微生物は主にCandida 属酵母であることが分かった。
著者
辻 澄子 小川 俊次郎 柴田 正 伊藤 誉志男
出版者
Japanese Society for Food Hygiene and Safety
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.14-18_1, 1989-02-05 (Released:2009-12-11)
参考文献数
6
被引用文献数
1 1

食品中のホウ酸を直接, 2-エチル-1,3-ヘキサンジオール (EHD) でキレート抽出した後, 非水条件下でクルクミン発色によるホウ酸の簡易迅速定量法を確立した. 試料中のホウ酸は酸性下で5%EHD含有のヘキサン-酢酸ブチル (4:1) 溶液で抽出した. 抽出液の一定容量にクルクミン氷酢酸溶液及び濃硫酸を加えて発色させた後, 過剰のプロトン化クルクミンを水で分解し, アセトンで希釈して比色定量を行った. 殻付き冷凍えび, 塩蔵くらげ, 寒天, 牛乳, 豆乳及びワインにホウ酸を10,100及び500μg/g添加したときの回収率はいずれも97.0%以上であった. 検出限界は0.3μg/gであった.
著者
朝倉 敬行 北村 真理子 石川 孝明 飯田 智成 中里 光男 安田 和男 根本 了
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.60, no.5, pp.127-133, 2019-10-25 (Released:2020-01-17)
参考文献数
9
被引用文献数
3

LC-MS/MSを用いた畜産物中のジルパテロールの分析法を開発した.試料から,n-ヘキサン存在下のアセトニトリルで抽出し,ODSミニカラムおよびSCXミニカラムによる精製を行い,LC-MS/MSにて測定した.6種類の畜産物に0.01 mg/kgとなるようジルパテロールを添加して回収率を求めたところ,真度87.0~99.4%,併行精度2.4~6.3%であった.本分析法における定量限界値は,0.01 mg/kgであった.
著者
水本 俊行 中野 扶佐子 西﨑 雄三 増本 直子 杉本 直樹
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.60, no.5, pp.134-143, 2019-10-25 (Released:2020-01-17)
参考文献数
25
被引用文献数
5

われわれは1H核定量NMR(1H-qNMR)で純度決定された化合物のHPLCピーク強度に基づく相対モル感度(RMS)を利用したヒハツ抽出物(LPE)中のpiperine類の定量法を考案した.Piperineを単一基準物質とした場合のpiperanine,chavicine,isopiperine,isochavicineのRMSは0.3693,1.138,0.9164,1.277であった.RMSを利用したHPLC/UV(RMS法)によるLPE中のpiperine類の定量値と,1H-qNMRや絶対検量線法との定量値の相対誤差は2.01%以下であった. RMS法を用い,piperine異性体の合計定量値を光異性化前後で比較した相対誤差は2.84%であった.RMS法によるLPE錠剤中のpiperine類の定量値は606 μg/gで,各成分の2施設間差は0.600~4.00 μg/gであった.
著者
舘野 真奈 山本 裕美 青木 奈穂 佐藤 吉朗
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.60, no.5, pp.151-153, 2019-10-25 (Released:2020-01-17)
参考文献数
8
被引用文献数
1

食品にはオフフレーバーと呼ばれるにおいが感じられることがある.これはヒトの体に直接影響を及ぼすことはないが食品の品質を著しく低下させるものであり,食品にとって重要な問題である.ある食品のにおいが他の食品に移行する場合などがよく知られた例である.われわれは,これまで紙パックオレンジジュースの香気成分であるリモネンが未開封の状態で紙パック牛乳ににおい移りするという研究を続けてきた.その際にリモネンとは全く異なる匂いが牛乳から感じられる例が確認されていた.これは,オレンジジュース由来ではないことも確認できた.匂いの質としてはハロゲン系フェノールのような匂いであった.今回は,この匂い成分を明らかにすることを目的に研究を進めた.その結果,このオフフレーバー成分が2-ヨード-4-メチルフェノールであることが判明した.
著者
片岡 洋平 渡邉 敬浩 白政 優子 松田 りえ子
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.146-151, 2012-06-25 (Released:2012-06-30)
参考文献数
14
被引用文献数
3 3

市場に流通するタコ,イカ,ハマグリ,アサリおよびチョコレート中のカドミウム濃度の実態を調査した.食品中の金属に関する試験法の妥当性評価ガイドライン(食安発第0926001号)に従って妥当性を確認した方法により,分析を行った.調査した40試料の海産食品中,31試料から本調査で設定した定量下限の1/2濃度となる0.025 mg/kgを超えるカドミウムが検出されたが,Codexが定める基準値(2 mg/kg)を超過した試料はなかった.全調査試料中の最大濃度は,タコでは0.19 mg/kg,イカでは0.18 mg/kg,ハマグリでは0.38 mg/kg,アサリでは0.16 mg/kgであった.またチョコレートでは,30試料中21試料から0.025 mg/kg以上のカドミウムが検出され,最大値は0.54 mg/kgであった.
著者
鈴木 淳 村田 理恵 諸角 聖 村田 以和夫 佃 博之 小島 隆樹 富樫 哲也
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.41, no.6, pp.353-356, 2000-12-25 (Released:2008-01-11)
参考文献数
10
被引用文献数
3 1

近年, 魚介類の生食を原因とする寄生虫症が増加してきた. そこで, 都内で流通しているシラウオを対象に, 横川吸虫メタセルカリアの寄生状況を調査した. その結果, 4産地のシラウオにメタセルカリアの感染が認められ, 特に, 茨城県霞ヶ浦産のシラウオは感染率が平均88%, 1尾当たりの最大感染数が314個体と高い値であった. 一方, 他産地のシラウオの平均感染率はいずれも10%以下と低率であった. したがって, 本吸虫の感染症防止対策として, 生食用シラウオの産地表示を明確にし, 本吸虫の寄生率が高い産地のシラウオについては, 加熱調理用とすることが必要と考えられた.
著者
植松 洋子 平田 恵子 飯田 憲司 斉藤 和夫
出版者
Japanese Society for Food Hygiene and Safety
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.23-29_1, 2000-02-25 (Released:2009-12-11)
参考文献数
13
被引用文献数
8 8

缶詰食品及びレトルト食品 (共に水産加工食品) 中に缶詰の内面コーティングや包装材から溶出したビスフェノールAジグリシジルエーテル (BADGE), そのダイマー及びトリマー, ビスフェノールFジグリシジルエーテル (BFDGE), 3つの環よりなるノボラックグリシジルエーテル (3-ring NOGE), BADGE・2HCl付加物などのBADGE関連化合物を, 順相のHPLCにより分析した. BADGEは缶詰食品26試料中12試料から, 最高0.9mg/kg検出された. ダイマー及びトリマーを合わせた最高値は15mg/kgに達した. BFDGE及び 3-ring NOGE も4試料から合計で最高6.9mg/kg検出された. また, BADGE・2HCl付加物が2試料から検出された. 更にレトルト食品2試料中1試料からBADGEが1.1mg/kg, そのダイマーが1.2mg/kg検出されたが, これらはプラスチックフィルムやアルミニウム箔を貼り合わせるのに使用した接着剤から溶出したものと考えられる.
著者
市川 富夫 辻 啓介 萩原 清和 津田 明子 山中 優美子
出版者
Japanese Society for Food Hygiene and Safety
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.44-48, 1986-02-05 (Released:2009-12-11)
参考文献数
13
被引用文献数
1 1

スクアレンを多量に含有する深海産サメ肝臓エキスが健康食品として市販されているが, 根拠となる作用機作については明らかにされていない部分が多い. スクアレン経口投与ウィスター系ラットの体重変化, 血清及び肝臓中の脂質濃度を測定した. 0.1ml及び0.5mlのスクアレンを41日間投与したとき, 体重増加量はコントロールに比べて小さかった. 血清中ではHDL-コレステロールの減少と過酸化脂質 (チオバルビツール酸反応陽性物質値=TBA値) の増加が認められ, 肝臓ではトリグリセリド, リン脂質, TBA値の増加が見られた. 0.1ml, 0.5ml投与時における見かけの吸収率は50%前後であった. 肝臓中のスクアレン量は投与量に比例して増加した. 以上のことからスクアレンは吸収され, 体内において脂質代謝に影響を与えていることが推測された.
著者
坂本 美穂 蓑輪 佳子 岸本 清子 中嶋 順一 鈴木 仁 守安 貴子 深谷 晴彦 斉藤 貢一
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.96-107, 2019-08-25 (Released:2019-08-30)
参考文献数
36
被引用文献数
2

LC/Tribrid Orbitrapを用いて強壮系健康食品中のphosphodiesterase-5 (PDE-5)阻害薬および構造類似体を迅速かつ確実に同定できる分析法を開発した.液体クロマトグラフの移動相に5 mmol/Lギ酸アンモニウム含有0.1%ギ酸溶液(pH 3)および0.1%ギ酸含有アセトニトリル溶液を使用し,C18カラムでPDE-5阻害薬および構造類似体を分離した後,higher-energy collisional dissociationおよびcollision-induced dissociationの2種類の解離法を用いて複数のMS/MSおよびMS3スペクトルを同時に取得した.本分析法を市販強壮系健康食品および個人輸入医薬品105検体に適用したところ,いずれの検体からもPDE-5阻害薬および構造類似体を検出することができた.さらに,検体から検出された3種類のPDE-5阻害薬の構造類似体と15種類のPDE-5阻害薬および構造類似体の不純物について,本分析法を用いて構造を推定した.本法は強壮系健康食品中に含まれるPDE-5阻害薬および構造類似体の迅速かつ確実な同定および構造推定に有用な方法である.
著者
大門 拓実 齋藤 恭子 髙橋 邦彦 濱田 佳子
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.68-72, 2019-06-25 (Released:2019-08-07)
参考文献数
7
被引用文献数
1

著者らは迅速性,選択性,汎用性を勘案し,通知法で採用されている加熱抽出法の原理でサイクラミン酸の抽出を行い,抽出液を固相カラムで精製せず,希釈するのみでLC-MS/MSを用いて測定する分析法について,30種類の食品試料を対象に0.5 μg/gの添加濃度で妥当性確認を実施した.その結果,真度85.0~106.6%,併行精度1.7~9.4%,室内精度4.1~9.7%であり,試験したすべての試料は満足のいく評価となった.本方法は,さまざまな食品中のサイクラミン酸の迅速な検査法として有用であることが示された.
著者
中川 由紀子 神田 真軌 林 洋 松島 陽子 大場 由実 小池 裕 永野 智恵子 関村 光太郎 大塚 健治 笹本 剛生 橋本 常生
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.52-60, 2019-06-25 (Released:2019-08-07)
参考文献数
16
被引用文献数
1

畜水産食品中の抗真菌薬15剤,抗寄生虫薬2剤およびその他の動物用医薬品3剤のLC-MS/MSによる高感度な一斉分析法を開発した.薬剤の分解を抑制するため,対象食品に50%エタノールを加えてホモジナイズをした調製試料から,アセトニトリルを用いて薬剤を抽出した.抽出液をアルミナNカラムに通液して精製し,得られた試験溶液を全多孔性オクタデシルシリル化シリカゲルカラムで分離しMS/MS測定を行った.これらにより,食品由来成分の影響を受けやすく分析が困難とされる魚介類にも適用可能となった.畜水産物8食品において妥当性評価を実施した結果,選択性は十分で,真度70.2~109.3%,併行精度18.0%以下,室内精度18.7%以下となり,ガイドラインの基準に適合した.定量下限値は,3 ng/gに設定可能と考えられた.
著者
久保田 晶子 藤井 良昭 加賀 岳朗 西村 一彦 上野 健一
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.61-67, 2019-06-25 (Released:2019-08-07)
参考文献数
17
被引用文献数
2

食品中の不揮発性アミン類分析法として,試料からヒスタミン,チラミン,プトレシンおよびカダベリンを5%トリクロロ酢酸溶液で抽出し,強陽イオン交換カラムInertSep MC-1を用いて精製した後,フルオレスカミンで誘導体化し,HPLC-FLで定量,LC-MS/MSで確認する方法を検討した.検討した分析法を用いて,生鮮魚介類,魚介加工品および発酵食品計11食品に不揮発性アミン類を100 mg/kgで添加し,添加回収試験を行った結果,真度81~100%,併行精度0.4~3.1%の良好な結果が得られた.これらの結果から,本法は食品中の不揮発性アミン類分析法として有用と考えられた.
著者
阿部 裕 木嶋 麻乃 山口 未来 伊藤 裕才 六鹿 元雄 穐山 浩 佐藤 恭子
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.38-44, 2019-06-25 (Released:2019-08-07)
参考文献数
11
被引用文献数
2

国内の市販ポリ塩化ビニル(PVC)製おもちゃに使用されている可塑剤の実態を明らかにするため,2014年度に購入したPVC製おもちゃ約500検体の可塑剤を調査した.その結果,テレフタル酸ジ(2-エチルヘキシル)(DEHTP)など15種類の可塑剤が検出された.その種類は2009年度に購入した試料の調査と大きく変わらなかった.おもちゃからの検出率はDEHTPが最も高く,指定おもちゃでは60.3%,指定おもちゃ以外では73.7%であり,2009年度の調査と比べいずれも20ポイント以上高い値であった.指定おもちゃにおいて使用が禁止されている6種類のフタル酸エステル類(PAEs)は引き続き使用されていなかった.一方,指定おもちゃ以外からは6種類のうち4種類が検出され,検出率は2.8~15.5%であったが,2009年度の調査と比べ10~26ポイント低い値であった.一方,試料あたりの可塑剤総含有量の平均値は2009年度の調査に比べて低い値であった.このように,現在国内で流通するPVC製おもちゃに使用されている主な可塑剤はDEHTPであり,可塑剤の使用量は減少していることが明らかとなった.
著者
西野 由香里 下島 優香子 森田 加奈 井田 美樹 福井 理恵 黒田 寿美代 平井 昭彦 新藤 哲也 貞升 健志
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.45-51, 2019-06-25 (Released:2019-08-07)
参考文献数
14
被引用文献数
3

食肉から分離された大腸菌における薬剤耐性の動向を把握するために,2011~2017年に東京都で流通した鶏肉,牛肉,豚肉,鹿肉および猪肉から分離された1,115株の大腸菌について,14薬剤の薬剤感受性試験を行った.その結果,14薬剤すべてに感受性であったのは,鶏肉由来株の18.7%(135/721株),牛肉由来株の77.0%(117/152株),豚肉由来株の47.6%(89/187株),鹿肉由来株の100%(28/28株),猪肉由来株の92.6%(25/27株)であった.14薬剤の中では,テトラサイクリン(TC)に対して耐性の株が多く,鶏肉由来株の56.7%(409/721株),豚肉由来株の40.6%(76/187株)が耐性であった.鶏肉由来株では,国産由来株の4.9%(25/506株),輸入由来株の23.7%(51/215株)がセフォタキシム(CTX)に耐性であった.国産鶏肉由来株のCTX耐性率は,2012年(10.6%,17/161株)よりも2016年(0.9%,1/111株)と2017年(0.8%,1/121株)で有意に低かった.本調査の結果から,食肉由来大腸菌株のTC耐性率が高いこと,鶏肉由来株では,輸入由来株の方が国産由来株よりもCTXへの耐性が高いことが示された.