著者
河内 伸夫
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.43-53, 1976-01-01 (Released:2008-12-24)
参考文献数
31
被引用文献数
1

中国山地の穿入蛇行の分布,蛇行の波長と流域面積との関係,穿入蛇行の成因,地質との関係を検討したが,結果は以下のようである. 1) 穿入蛇行には侵蝕平坦面自体を刻むタイプと,侵蝕平坦面の境界付近に発達するタイプがあり,前者は掘削蛇行ないし生育掘削蛇行を示しており,侵蝕平坦面上の自由蛇行より受け継がれた可能性が高い.後者は一般に生育蛇行を示し,必ずしも自由蛇行から受け継がれたと考える必要はない. 2) 穿入蛇行の波長と流域面積との関係は,欧米とほぼ同じであるが,穿入蛇行と自由蛇行の波長の関係は,中国山地に気候変化による明白な無能河流がないことを示す. 3) 古生層地域と花崩岩地域の穿入蛇行を比較すると,谷幅,攣曲度とも一般に前者の方が小さく,またより規則的で滑らかな彎曲を描いている.
著者
高橋 春成
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Ser. A (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.57, no.11, pp.781-790, 1984-11-01 (Released:2008-12-25)
参考文献数
17
被引用文献数
2 1

In recent years, wild boar farms have appeared in various areas in order to produce their flesh. Although wild boars have been treated mainly as vermin or game, such new domestication is also considered to be one of the biogeographical themes. The author made a preliminary study of these phenomena in Japan through questionnairing. New domestication of wild boars is divided into two forms such as raising of wild boars and raising of ino-buta (hybrid between wild boar and pig). The former has developed since around 1975 when hunting number of wild boars began to decrease in spite of increasing demand for their flesh. The latter has been introduced to improve fleshy substance in pig since around 1970 and to solve problematic factors on number of litter and fattening term in raising of wild boars. With regard to operation, there are three types such as individual operation, group operation and entrusting. Less than 50 head of wild boars are raised in individual operation, but there are some large scale raising in group operation and entrusting. Especially, entrusting is thought to be one of the effective systems that make security of labor and land for enlarging a scale. Generally, operators give assorted feed for pig keeping to wild boars from the view point of facility and reduction of labor. In raising of wild boars, potatoes, cereals, edible herbs, grass, nut, and bone and scraps of fish and chicken are often supplied in order to improve the quality of flesh. Excrementitious matter is utilized as manure almost all. The distribution of wild boars is as follows. There are two courses in the trade of wild boars. One is the trade of little wild boars to those who wish to keep them or want to keep more wild boars. The other is the trade of fattened one as flesh or mating. Main destinations of flesh are restaurants, hotels, and wholesale stores of flesh of wild boars. In the trade of ino-beta, fattened one is shipped for flesh, and little one is scarcely dealt with. Although new domestication of wild boars for flesh is an interesting attempt, there are some problems to be solved such as insufficiency of labor and land for enlarging a scale, techniques of raising, unbalanced connection between producer and consumer, and fluctuations of market prices.
著者
水野 一晴
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Ser. A (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.127-153, 1990-03-01 (Released:2008-12-25)
参考文献数
28
被引用文献数
4

カール内の植物群落は,地形,微気象(消雪時期,受光量,風など),地表面構成物質の性状と安定性など多くの環境要因の相互作用を受けて成立している.群落の空間的分布に対し,地形はこれらの要因の中でもっとも主導的な役割りを果たしている.地形と植生の間には次のような関係がある.1)カール内では,多くの地形がある程度定まった位置に形成されている.このため,カール内では地形の形態(凹凸)とその地形が一般に形成される位置(斜面方向)によって,消雪時期が特定化され,消雪時期の差が植物の生育期間や嫌雪性などの要因を通して群落の分布に影響を及ぼす.したがって,地形によって分布する群落が限られる.2)ただし,崖錐のように,形成される場所が不定の地形の場合,その地形の斜面の向きや場所によって風の強さや受光量に差が生じ,その結果,消雪時期,ひいては植生が多様になる.3)地形が消雪時期-植生に及ぼす影響については,(a)その形態(凹凸)がとくに重要な場合と,(b)その地形の占める位置(斜面方向)がとくに重要な場合があるが,(a)の場合は凹型・凸型斜面,(b)の場合は平滑斜面であるのが一般的である.4)地形は地表面構成物質の分布と性状に影響を及ぼし,この違いが土壌水分や地表の安定度などの要因を通して,群落の分布に影響を及ぼす.
著者
坂口 慶治
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.21-40, 1974-01-01 (Released:2008-12-24)
参考文献数
8
被引用文献数
2 1

丹波高地東部の由良川中流域に生じた廃村3例をとりあげ,それらの比較研究によって,廃村化の過程と機構を解明しようと試みた. ここは,太平洋・日本海両斜面を流れる諸河川の源流域とは対照的に,近距離指向離村の性格が著しく,集団離村もその一環として実現したものと考えられる. 3廃村についてみれば,それらの立地環境,とくに隔絶性の強弱が廃村化に重要な影響を及ぼしたことが判明した.すなわち隔絶性が強ければ,生活利便指向性の上層先行型近距離離村が生じ,耕地保留離村が多いために耕地が荒廃しやすく,それによって廃村化が促進される.これに対し,隔絶性が弱ければ,経済指向性の下層先行型遠距離離村が生じ,集落はさほど動揺しないけれども,他面では村外者の耕地所有率が高くなりがちである.このような傾向が強まった場合は,経済変動による一斉的な耕地放棄が生じて,廃村化を促す.そしてこれらの荒廃過程は,集落形態や所有耕地の分布形態と密接に関わりあっており,また,各村落のコミュニティ形態との間にも強い関連性が認められる.
著者
石黒 直子
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論. Ser. A (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.74, no.7, pp.415-423, 2001-07-01
参考文献数
30

長野県中部に位置する諏訪湖で起こる御神渡りは宗教的に重要な現象であったため,その記録は550年以上にわたりほぼ途切れることなく継続する.そしてこの記録は冬季の気候復元のための貴重なデータとして注目されてきた.本研究では,この記録を使用するのに際し,重要な問題となるデータの均質性にっいて,・データソースの歴史的変遷の観点から検討を行った.その結果,諏訪大社管轄の記録の中でも,データソースの変化に伴い内容に相違がみられた.とくに,15~17世紀にかけての御神渡りの観測基準が現在と異なり,氷の割れる音を聞いて観測していた可能性が示唆された.さらに近年の気象観測データに基づいた解析から,諏訪大社と諏訪測候所による結氷日の観測基準が異なることに由来する,両者の結氷日の質的な違いを明らかにした.これらの違いに留意してこのデータを使用することによってより精度の高い気候復元が可能になるであろう.
著者
田中 恭子
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.55, no.7, pp.453-471, 1982-07-01 (Released:2008-12-24)
参考文献数
22
被引用文献数
5 3

第2次世界大戦以前に都市化が終了した中野区中央3・4丁目と,大戦前・後にまたがって都市化が進行した武蔵野市西久保の2地区において,都市化に対応した農民の土地供給形態と,その後,現在に至るまでの旧農民の土地所有と土地利用の変遷を比較した.戦前の住宅は主に借地上に建設されたため,中野区の農民は耕地を貸宅地に転換し,宅地地主となった.ところが,武蔵野市の場合,中野区と同様に終戦までに宅地地主に転じた農民も存在したが,終戦後も農業を継続していた約半数の農民は, 1960年前後から土地を切り売りしはじめ,やがて種々の不動産経営を展開するようになった.現在,両地区とも農業生産は消滅し去った市街地となっているが,旧農家の貸地上に宅地化が進展した中野区では高層・高密度化が進み,一方,武蔵野市では今なお旧農家が所有する駐車場などの土地がオープン・スペースを提供している.つまり,第2次世界大戦の前・後で農民の土地供給が貸地から土地売却へと変質した結果,戦前の都市化地域と戦後の都市化地域では市街地の土地利用パターンも著しい対照を呈するようになった.
著者
中川 清隆
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Ser. A (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.20-36, 1984-01-01 (Released:2008-12-25)
参考文献数
45

大気上限から宇宙空間へ射出される地球出放射を,地上気象要素から推定する公式を理論的に誘導した.その結果,地球出放射は地上気温での黒体放射に比例し,その比例定数は地上の水蒸気圧,二酸化炭素濃度,オゾン全量,雲頂高度,圏界面高度の関数であることが明らかにされた.誘導された公式によって推定される地球出放射の緯度分布は,気象衛星からの実測値とよい一致を示した.この公式の誘導によって,いわゆる熱平衡気候モデルにおいても,大気組成の変化に伴う気候変化が議論できるようになった.フィードバックを一切有さず,地上気温以外のパラメータを固定したきわめて単純化された最小エントロピー交換気候モデルにより,二酸化炭素倍増 (300PPmv→600PPmv) の影響を推定したところ,北半球平均で0.75°Cの昇温が予測された.
著者
鹿野 忠雄
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.11, no.12, pp.1027-1055, 1935-12-01 (Released:2008-12-24)
参考文献数
4
著者
水谷 武司
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Ser. A (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.208-224, 1989-03-01 (Released:2008-12-25)
参考文献数
20
被引用文献数
3

自然災害や戦災を被った都市の人口減少の規模,被災者の他地域への移動の様式,および災害後の人口回復の時間経過を,主として年ごとの人口統計値を使用して調べた.被災都市の人口減少数は,外力の強度および破壊域の空間規模を示す値である家屋全壊・全焼数のほぼ1.25乗に比例する.関東震災による被災者の各道府県への移動数は,ほぼ入口に比例し,被災地からの距離に反比例している.すなわち重力モデルが適合する.災害後の入口変化は,災害直後の人口を初期値として人口に比例した増加率で増加する部分と,災害によって減少した人口の未回復部分に比例した増加率で増加する部分,との和で示されるものとして導いた式(粘弾性モデル)によってよく説明できる.人口回復の速度は,レオロジー等で使われている“遅延時間”によって表わすことができ,戦災後の大都市におけるそれは4-5年である.
著者
山元 貴継
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Ser. A (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.73, no.12, pp.855-874, 2000-12-01 (Released:2008-12-25)
参考文献数
56
被引用文献数
1 3

本研究は,韓国の地方.市郊外地域の日本統治時代における空間的変容を,土地利用や土地所有状況の観点から分析した.地籍資料に加えて聞き取りを活用した分析の結果は,以下のように要約される.変化の大部分は,川沿いの低地や山沿いの緩斜面に展開した田畑に限定された.近隣居住の韓国人個人の所有が多かった農地は, 1920年代中頃にはインフラ用地として一部が朝鮮総督府所有などに,1930年代末からは都市部居住の韓国人個人所有の宅地に転換された.後者の時期に日本人地主は,郊外地域にまで居住しっっ農地や一部の山林をも所有するに至った.一方で,山林の中でもとくに稜線上は,一部「国有」林の払い下げのほかは,ほぼ特定氏族の墳墓を抱いた山林として顕著に残され,現在までも細長く農地や宅地を取り囲む景観を維持している.この稜線部に対する新規地主の土地獲得は,当時からの住民に対しより強い衝撃を与えており,特別な意識の存在が指摘された.
著者
新井 祥穂
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Ser. A (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.74, no.1, pp.35-52, 2001-01-01 (Released:2008-12-25)
参考文献数
19

本稿は広域行政組織の分析を通じて,小規模町村が事務実施でどのような困難に直面しているかという点の理解を目指す.具体的には長野県日義村および四賀村を澤び,それらが加盟する広域行政組織の活動や運営を調査した.小規模町村は,課せられる事務が増大・複雑化する中,役場組織の規模の小ささと短期間での人事異動とにより,役場内では,事務実施の遂行に必要な職員の専門知識を育成することが難しくなっている.そこで事務実施のプラン設計など,より多くの専門知識が要請される過程は広域行政組織に外部化され,隣接市町村の担当職員や県地方事務所職員とともに担われている.とりわけ,技術職採用職員(県地方事務所)のイニシアティブは,広域行政組織における小規模町村の専門知識の取得に重要な役割を果たしている.以上よりこれまであまり指摘されてこなかった小規模町村の課題として,事務実施のための専門知識の取得が挙げられよう.
著者
ニザム・ ビラルディン
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Ser. A (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.74, no.1, pp.19-34, 2001-01-01 (Released:2008-12-25)
参考文献数
26

農村改革以降の新彊ウイグル自治区における食糧確保問題の背景を考察し,グルジャ県を事例に食糧増産対策と当面の課題について検討した.新彊ウイグル自治区では, 1980年代から綿花を中心とした換金作物の作付面積が増加してきた反面,食糧作物の作付面積は減少してきた.さらに, 1990年代半ばには,同自治区は中央政府によって中国最大の綿花生産地およびテンサイ生産地に指定され,綿花,テンサイなどの換金作物作付面積の拡大に拍車がかかった.新彊ウイグル自治区政府は食糧を確保するため,各県の食糧自給を強化する一方,食糧生産の基地となるべき県に対して食糧供給力の増大を求あた.同自治区の主な食糧生産基地県であるグルジャ県では,「五統一」政策によって食糧生産の増大が図られている.しかし,この「五統一」政策は,食糧作物の耕作地の確保に貢献し得るものの,従来からの食糧販売問題を一層深刻化させる可能性があることも否定できない.食糧販売問題の解決策としては,穀物を中心とした作目構成を改善し,野菜,果樹などの作付拡大を図りつつ,穀物を含む農産物の共同販売体制を整備することが必要である.
著者
酒川 茂
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Ser. A (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.74, no.2, pp.83-99, 2001-02-01 (Released:2008-12-25)
参考文献数
35
被引用文献数
2

横浜市のコミュニティハウスは,公立小中学校の余裕教室を活用して設置された小規模生涯学習施設である.本稿の目的は,学校との複合施設でいかに生涯学習が展開されてきたのかを,利用者の構成,施設の選択理由および評価についての調査を通して明らかにすることである.利用者の主体は中学校区内に居住する成人女性や高齢者で,施設を選択した最大の理由は自宅に近いことであった.各館ではさまざまな自主事業が実施され,事業への参加を契機にサークル活動を始めた者も多く,職員による支援事業が生涯学習活動の展開に大きな力を果たしてきた.これらの活動には学校設備も積極的に利用されている.学校側がコミュニティハウスの設備や機能を利用する事例は乏しいが,利用者と児童生徒・教員の間に連携も芽生えっっある.複合施設の利点を活かすためには,支援事業をさらに充実させ,学校との連携を進める必要があろう.
著者
佐藤 ゆきの
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Ser. A (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.74, no.2, pp.63-82, 2001-02-01 (Released:2008-12-25)
参考文献数
32
被引用文献数
5

阿蘇北麓の小国町では,第二次世界大戦後かっての共有牧:野にスギ植林が積極的に行われた.それにより,多くの農家が戦前までは社会的地位の象徴であったスギを所有するようになり,「スギの町」との住民の認識が強められた.その一方で, 1960年代以降共有牧野の一部にクヌギ植林が展開されていく.クヌギが植林された背景には,まずシイタケ栽培のほだ木としての経済的価値の高まりがあった. 1960年代半ば,放置された牧野ではすでにクヌギの二次林化が進行していた.住民は,クヌギの経済的価値の高まりによって,その植林を主体的に選択したと認識している.しかしそこには,伝統的な生業の慣行と知識によって形成された広葉樹への意識や評価も大きく作用していることがうかがえる.こうした小国町の住民の生業活動選択の背景を分析するにあたっては,自然・政治・経済・社会的条件と住民の環境観との相互作用の考察が不可欠である.このよう一な小国町の住民の環境観は,近年の木材価格の下落や地域共同体の縮小などの中で,短期的な採算にとらわれずスギ・クヌギ林の維持・管理を続けさせる背景ともなっている.
著者
滕 艶
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Ser. A (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.74, no.3, pp.158-176, 2001-03-01 (Released:2008-12-25)
参考文献数
85
被引用文献数
1

本稿の目的は,中国農村地域の小城鎮を対象とした研究に関するこれまでの成果を中国の国内研究を中心に整理し,本課題に関する研究の特色と動向を明らかにすることである.方法としては, 1980年代初頭から現在までの小城鎮に関する研究文献に,小城鎮開発をめぐる動向を加味し,中国の国内研究を中心に,時期別に整理する.そして,研究の内容と特色を考察し,小城鎮研究の問題点と今後の地理学的課題を提示する. 考察の結果,小城鎮研究について時期区分をすることができた.また,小城鎮に関する概念の多様性,農村の都市化の役割,開発要因,町づくり研究ならびに政府各部門の共同研究,モデル鎮実験の研究などの動向と内容を明らかにした.今後の課題として,集落範囲と属性などに着目した小城鎮概念の整理,小城鎮における労働力資質とその教育の改善に関する研究ならびに中国全地域を対象とする小城鎮研究とその定量分析などの必要性を指摘した.
著者
田中 博
出版者
学術雑誌目次速報データベース由来
雑誌
地理学評論. Ser. A (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.1-14, 1997-01
参考文献数
8
被引用文献数
5

A numerical simulation was carried out to examine the mechanism of summertime ice formation at the Ice Valley in Milyang, Korea. The Ice Valley's ice is different from ordinary perennial cave ice in that the ice is formed at the surface of the talus, exposed to hot air during summer, and disappears during winter. The talus consists of sedimentation of large boulders about 100cm in diameter along the mountain slope and has sufficient open space between the boulders for cold air to penetrate during winter.<br> The author attempted to simulate the Ice Valley's ice based on a theory of convective ice formation. This theory explains ice formation by an effective drainage flow of cold air penetrating into the talus during winter, since the air temperature above is colder than the temperature of the talus. The wintertime ice may be preserved by the extremely stable stratification of the air within the talus until the next summer.<br> A numerical model was developed based on a system of the equation of motion for air, the continuity equation for air, and the thermodynamic energy equation for both air and talus. The physical processes considered in the model are: 1) buoyancy; 2) Rayleigh friction, 3) adiabatic heating; 4) Newtonian cooling; 5) diffusion of air; and 6) thermal conduction of the tales. The governing equation is integrated in time by controlling the air temperature from -5&deg;C in winter to 25&deg;C in summer to examine the ice distribution and the stream function in the talus.<br> The result of the simulation appears to support the theory of convective ice formation under suitable model parameters. We confirmed that cold air can penetrate deep into the talus to form ice in winter and that the wintertime ice is preserved untill the next summer. During winter, the penetration of the cold air starts from the top region of the talus, a moderate downward motion occurs inside the talus, and an upward motion dominates along the slope of the talus surface. Conversely, in summer a descending motion along the talus slope develops to create a typical cold air flow, as observed. A moderate ascending motion is induced inside the talus to compensate for the strong cold air descending motion. The Ice Valley's ice melts fast at the region of the warm air intake at the foot of the talus slope. Hence, the coldest region appears slightly above the foot of the talus slope, which is consistent with observations.<br> It was found in this study that the ice itself plays an important role in preserving wintertime coldness owing to its abundant solidification heat. Without the existence of ice, rocks in the talus alone are inadequate to maintain the freezing temperature during summer because of its their specific heat capacity. The results of this study suggest that the moisture supply from the underground water table at the bottom of the talus is a necessary condition to form the Ice Valley's ice.
著者
鈴木 秀夫
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.35, no.5, pp.205-211, 1962-05-01 (Released:2008-12-24)
参考文献数
6
被引用文献数
32 23

資料としては,もっとも密度の細かい区内観測所を使用し,方法としては,気候は毎日の天気現象の綜合であるという定義にできるだけ忠実に,日本の気候区分を行なった.その結果,寒帯・中緯度気候帯,裏日本気候区・準裏日本気候区・表目本気候区,多雨区・少雨区の組み合せによって9つの気候区を認め,とくに境界線に注意して区分した。
著者
高橋 日出男
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Ser. A (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.74, no.4, pp.217-232, 2001-04-01 (Released:2008-12-25)
参考文献数
21
被引用文献数
2

本研究では,梅雨季 (6・7月) の日本における「雨の降り方」の地域性と年乏の差異(「陰性」・「陽性」梅雨)を知るために,梅雨季総降水量に対する日降水量の階級別の寄与にっいて検討した.日本全体を大きく二分する場合,総降水量に対して上位階級(大きい日降水量の階級)の寄与が大きい地域には,九州地方,中国地方西半,四国~東海地方南岸,および中部山岳域西部が該当する.西日本であっても,南西風に対して山地風下にあたる地域では,風上側に比べて上位階級の日降水量の寄与は相対的に小さいことなど,大地形との対応が認められる.総降水量に対して下位あるいは上位階級の日降水量の寄与が大きい場合を,それぞれ「陰性」あるいは「陽性」梅雨と考えるならば,両者の判別は極端な少雨年を除き可能であると考えられ,同程度の総降水量であっても「陰性」・「陽性」それぞれの場合が認あられる.また,「陰性」・「陽性」いずれの場合であっても,平均状態に認められる「雨の降り方」の基本的な地域性は維持されている.