著者
横田俊平 黒岩義之 大西孝宏 中島利博 中村郁朗 西岡久寿樹
出版者
医薬ジャーナル社
雑誌
アレルギー・免疫 (ISSN:13446932)
巻号頁・発行日
vol.25, no.6, pp.786-793, 2018-05-15

HPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチン接種後に多彩な症状を呈する副反応症例の解析により,症候学的に,① 生命機能,② 高次脳機能・辺縁系,③ 感覚機能,④ 運動機能の4つの機能の恒常性の破綻が推定され,HPVワクチンのL1抗原とアジュバントによる視床下部・脳室周囲器官の病変が原因と推定された。一方,ASIA(Autoimmune/inflammatory syndrome induced by adjuvants)症候群は,アルミニウム塩,シリコンのアジュバント作用に由来し,自己免疫疾患はアジュバントによる慢性刺激が原因であると推定された。いずれも症候を詳細に検討する余地が残されており,今後,一般的症候との差異を明らかにする必要がある。
著者
横田 俊平 黒岩 義之 西岡 久寿樹
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.288a-288a, 2015 (Released:2015-10-25)

ヒト・パピローマウイルス(HPV)は一般的な感染因子であり,子宮頸部基底細胞への感染は部分的には癌発症の契機になる.子宮頸癌を予防する目的でHPVワクチンが開発され(CervarixとGardasil),約340万人の若年女性に接種が行われた.しかし,HPVワクチン接種後より全身痛,頭痛,生理異常,病的だるさ・脱力・不随意運動,立ちくらみ・繰り返す便秘・下痢,光過敏・音過敏,集中力低下・計算力と書字力の低下・記憶障害などを呈する思春期女性が増加している.「HPVワクチン関連神経免疫異常症候群(HANS)」と仮称し,当科外来を受診した51例の臨床症状の把握とその体系化を行った.すべての症例は,HPVワクチン接種前は良好な健康状態・知的状態にあり,接種後,全例が一様に一連の症候の重層化,すなわち,疼痛性障害,不随意運動を含む運動器機能障害,感覚障害,生理異常,自律神経障害,高次脳機能障害と進展することを確認した.このように幅広いスペクトラムの疾患の記載はこれまでになく,これらの症候を同時に呈する中枢神経障害部位についての検討をすすめ,「視床下部 下垂体病変」と捉えられることが判明した.病態形成にはミクログリアが関わる自然免疫,HPVワクチン抗原のペプチドと特異なHLAが関わる適応免疫の両者が,強力なアジバントの刺激を受けて視床下部の炎症を繰り返し誘導していると考えている.治療にはramelteon(circadian rhythmの回復),memantine(シナプス伝達の改善),theophylin(phosphodiesterase inhibitorの抑制)を用い対症的には対応が可能となったが,病態に根本的に介入できる薬剤はいまだ手にしていない.
著者
黒岩 義之 平井 利明 横田 俊平 鈴木 可奈子 中村 郁朗 西岡 久寿樹
出版者
日本自律神経学会
雑誌
自律神経 (ISSN:02889250)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.185-202, 2019 (Released:2019-12-27)
参考文献数
50

脳室周囲器官と視床下部は恒常性維持器官であり,自律神経,概日リズム,神経内分泌(ストレス反応),情動・記憶・認知,感覚閾値・疼痛抑制,歩行・運動,神経代謝・神経免疫(熱エネルギー代謝,老廃物排出,自然免疫・腫瘍免疫)を制御する.血液脳関門を欠く有窓性毛細血管が密集する感覚性脳室周囲器官が感知した信号(光,匂い,音,電磁波,レプチン,グレリン)は視索前野,背内側視床下部を経て,休息型視床下部(摂食行動抑制中枢)と活動型視床下部(摂食行動促進中枢)に伝達される.心理ストレス情報は扁桃体から,概日リズム情報は視交叉上核から視床下部に入り,視床下部からオレキシン,バゾプレシン,オキシトシンが分泌される.視床下部症候群(脳室周囲器官制御破綻症候群)の背景疾患として,ヒトパピローマウィルスワクチン接種関連神経免疫症候群,慢性疲労症候群,脳脊髄液減少症,メトロニダゾール脳症,化学物質過敏症,電磁過敏症などがある.
著者
西岡 和恵 小泉 明子 瀧田 祐子 佐々木 和実
出版者
一般社団法人 日本皮膚アレルギー・接触皮膚炎学会
雑誌
日本皮膚アレルギー・接触皮膚炎学会雑誌 (ISSN:18820123)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.35-46, 2016-01-31 (Released:2016-04-28)
参考文献数
10

症例1:65歳,男性。冷感タオル接触の頚部から体幹前面に瘙痒性紅色皮疹。貼布試験結果からは冷感タオルに含まれていたメチルクロロイソチアゾリノン(以下MCI)によるアレルギー性接触皮膚炎で,メチルイソチアゾリノン(以下MI),オクチルイソチアゾリンオン(以下OIT)に交差感作なし。症例2:53歳,女性。4ヵ月前より顔面に瘙痒性紅色皮疹。貼布試験結果からは美容液マスクに含まれていたMIによるアレルギー性接触皮膚炎で,MCI,OITに交差感作あり。症例3:53歳,女性。3ヵ月前から顔面,頭部の瘙痒性紅色皮疹。皮膚炎軽快後,美容液マスクを使用し再発。パッチテスト結果からは美容液マスクに含まれていたMIによるアレルギー性接触皮膚炎でMCIに交差感作あり。症例4:60歳,女性。4ヵ月前より顔面に瘙痒性紅色皮疹。貼布試験結果からは美容液マスク,化粧水に含まれていたMIによるアレルギー性接触皮膚炎。
著者
西岡 常夫
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.18, no.6, pp.447-454, 1975-09-01 (Released:2016-03-16)

和文タイプライタの発展過程,現状,将来の問題点を解説した総合展望。まず和文タイプの機能および機構とその具備すべき要件を解説し,ついでその発展過程を大正4年の1号機から現在まで概観する。和文タイプと使用者とのインタフェイスの面を特に取りあげ,文字数,文字盤,活字,文字配列が各メーカ・各機種により多種多様であることを示し,その標準化の困難さを指摘する。最後に和文タイプが清書・植字機械に止まっている現状から,情報システムの入力機械として脱皮すべきことを強調する。
著者
西岡 千文 杉田 茂樹 山中 節子
出版者
国公私立大学図書館協力委員会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
vol.109, pp.2007, 2018-08-31 (Released:2018-09-07)

本稿では2018年2月にカリフォルニア大学サンディエゴ校,同ロサンゼルス校,カリフォルニア工科大学,南カリフォルニア大学の大学図書館で実施したインタビュー調査に基づき,米国の大学図書館でのオープンアクセスならびに研究データ管理の支援について報告する。
著者
西岡 敦子
出版者
一般社団法人 日本繊維製品消費科学会
雑誌
繊維製品消費科学 (ISSN:00372072)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.332-338, 2013-04-20 (Released:2017-06-30)
参考文献数
20

現代では,「化粧は女性がするもの」とされている.しかし,自分を美しく見せたい,他人に良く思われたいという気持ちで化粧をする女性がいるのであれば,同じ気持ちで男性が化粧をしても良いのではないか.男性の化粧行動に対して,周囲の違和感がない環境になれば,生きやすいと感じる男性も出てくるのではないか. そこで,日本の男性の化粧行動の経緯を概観し,今後の男性の化粧行動について個人の意識,意見も踏まえて考察した. 男性は化粧をするものではないという意識が広がり始めたのは明治時代である.その後,男性用化粧品,男性用エステ,男性向け美容雑誌,化粧をした男性有名人の影響,眉を整えたスポーツ選手の活躍で,男性の化粧に対する周囲の意識は徐々に変化していった.化粧をしたい,また,普段からしているという男性や,男性にも化粧をして欲しいという女性も存在していることもわかった.今後,男性の化粧行動も受け入れられていく可能性は大いにあるだろう.しかし,男性の化粧行動が受け入れられたとしても,現在,成人女性に対して存在する,化粧をして当たり前であり,すべきであるという社会風潮が男性にも広まってはならないと考える.
著者
小林 宏行 武田 博明 渡辺 秀裕 太田見 宏 酒寄 享 齋藤 玲 中山 一朗 富沢 麿須美 佐藤 清 平賀 洋明 大道 光秀 武部 和夫 村上 誠一 増田 光男 今村 憲市 中畑 久 斉藤 三代子 遅野井 健 田村 昌士 小西 一樹 小原 一雄 千葉 太郎 青山 洋二 斯波 明子 渡辺 彰 新妻 一直 滝沢 茂夫 中井 祐之 本田 芳宏 勝 正孝 大石 明 中村 守男 金子 光太郎 坂内 通宏 青崎 登 島田 馨 後藤 元 後藤 美江子 佐野 靖之 宮本 康文 荒井 康男 菊池 典雄 酒井 紀 柴 孝也 吉田 正樹 堀 誠治 嶋田 甚五郎 斎藤 篤 中田 紘一郎 中谷 龍王 坪井 永保 成井 浩司 中森 祥隆 稲川 裕子 清水 喜八郎 戸塚 恭一 柴田 雄介 菊池 賢 長谷川 裕美 森 健 磯沼 弘 高橋 まゆみ 江部 司 稲垣 正義 国井 乙彦 宮司 厚子 大谷津 功 斧 康雄 宮下 琢 西谷 肇 徳村 保昌 杉山 肇 山口 守道 青木 ますみ 芳賀 敏昭 宮下 英夫 池田 康夫 木崎 昌弘 内田 博 森 茂久 小林 芳夫 工藤 宏一郎 堀内 正 庄司 俊輔 可部 順三郎 宍戸 春美 永井 英明 佐藤 紘二 倉島 篤行 三宅 修司 川上 健司 林 孝二 松本 文夫 今井 健郎 桜井 磐 吉川 晃司 高橋 孝行 森田 雅之 小田切 繁樹 鈴木 周雄 高橋 宏 高橋 健一 大久保 隆男 池田 大忠 金子 保 荒川 正昭 和田 光一 瀬賀 弘行 吉川 博子 塚田 弘樹 川島 崇 岩田 文英 青木 信樹 関根 理 鈴木 康稔 宇野 勝次 八木 元広 武田 元 泉 三郎 佐藤 篤彦 千田 金吾 須田 隆文 田村 亨治 吉富 淳 八木 健 武内 俊彦 山田 保夫 中村 敦 山本 俊信 山本 和英 花木 英和 山本 俊幸 松浦 徹 山腰 雅弘 鈴木 幹三 下方 薫 一山 智 斎藤 英彦 酒井 秀造 野村 史郎 千田 一嘉 岩原 毅 南 博信 山本 雅史 斉藤 博 矢守 貞昭 柴垣 友久 西脇 敬祐 中西 和夫 成田 亘啓 三笠 桂一 澤木 政好 古西 満 前田 光一 浜田 薫 武内 章治 坂本 正洋 辻本 正之 国松 幹和 久世 文幸 川合 満 三木 文雄 生野 善康 村田 哲人 坂元 一夫 蛭間 正人 大谷 眞一郎 原 泰志 中山 浩二 田中 聡彦 花谷 彰久 矢野 三郎 中川 勝 副島 林造 沖本 二郎 守屋 修 二木 芳人 松島 敏春 木村 丹 小橋 吉博 安達 倫文 田辺 潤 田野 吉彦 原 宏起 山木戸 道郎 長谷川 健司 小倉 剛 朝田 完二 並川 修 西岡 真輔 吾妻 雅彦 前田 美規重 白神 実 仁保 喜之 澤江 義郎 岡田 薫 高木 宏治 下野 信行 三角 博康 江口 克彦 大泉 耕太郎 徳永 尚登 市川 洋一郎 矢野 敬文 原 耕平 河野 茂 古賀 宏延 賀来 満夫 朝野 和典 伊藤 直美 渡辺 講一 松本 慶蔵 隆杉 正和 田口 幹雄 大石 和徳 高橋 淳 渡辺 浩 大森 明美 渡辺 貴和雄 永武 毅 田中 宏史 山内 壮一郎 那須 勝 後藤 陽一郎 山崎 透 永井 寛之 生田 真澄 時松 一成 一宮 朋来 平井 一弘 河野 宏 田代 隆良 志摩 清 岳中 耐夫 斎藤 厚 普久原 造 伊良部 勇栄 稲留 潤 草野 展周 古堅 興子 仲宗根 勇 平良 真幸
出版者
Japanese Society of Chemotherapy
雑誌
日本化学療法学会雜誌 = Japanese journal of chemotherapy (ISSN:13407007)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.333-351, 1995-07-31
被引用文献数
2

新規キノロン系経口合成抗菌薬grepafloxacin (GPFX) の内科領域感染症に対する臨床的有用性を全国62施設の共同研究により検討した。対象疾患は呼吸器感染症を中心とし, 投与方法は原則として1回100~300mgを1日1~2回投与することとした。<BR>総投与症例525例のうち509例を臨床効果判定の解析対象とした。全症例に対する有効率は443/509 (87.0%) であり, そのうち呼吸器感染症432/496 (87.1%), 尿路感染症11/13 (84.6%) であった。呼吸器感染症における有効率を疾患別にみると, 咽喉頭炎・咽頭炎19/22 (86.4%), 扁桃炎17/18 (94.4%), 急性気管支炎53/58 (91.4%), 肺炎104/119 (87.4%), マイコプラズマ肺炎17/19 (89.5%), 異型肺炎5/5, 慢性気管支炎117/133 (88.0%), 気管支拡張症48/63 (76.2%), びまん性汎細気管支炎17/19 (89.5%) および慢性呼吸器疾患の二次感染35/40 (87.5%) であった。<BR>呼吸器感染症における細菌学的効果は233例で判定され, その消失率は単独菌感染では154/197 (78.2%), 複数菌感染では22/36 (61.1%) であった。また, 単独菌感染における消失率はグラム陽性菌48/53 (90.6%), グラム陰性菌105/142 (73.9%) であり, グラム陽性菌に対する細菌学的効果の方が優れていた。呼吸器感染症の起炎菌のうちMICが測定された115株におけるGPFXのMIC<SUB>80</SUB>は0.39μg/mlで, 一方対照薬 (97株) としたnornoxacin (NFLX), onoxacin (OFLX), enoxacin (ENX) およびcipronoxacin (CPFX) はそれぞれ6.25, 1.56, 6.25および0.78μg/mlであった。<BR>副作用は519例中26例 (5.0%, 発現件数38件) にみられ, その症状の内訳は, 消化器系18件, 精神神経系13件, 過敏症3件, その他4件であった。<BR>臨床検査値異常は, 490例中49例 (10.0%, 発現件数61件) にみられ, その主たる項目は, 好酸球の増多とトランスアミナーゼの上昇であった。いずれの症状, 変動とも重篤なものはなかった。<BR>臨床効果と副作用, 臨床検査値異常の安全性を総合的に勘案した有用性については, 呼吸器感染症での有用率422/497 (84.9%), 尿路感染症で10/13 (76.9%) であり, 全体では432/510 (84.7%) であった。<BR>以上の成績より, GPFXは呼吸器感染症を中心とする内科領域感染症に対して有用な薬剤であると考えられた。
著者
山内 昌和 西岡 八郎 江崎 雄治 小池 司朗 菅 桂太
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.93, no.2, pp.85-106, 2020-03-01 (Released:2023-02-19)
参考文献数
60
被引用文献数
1

本稿の目的は,沖縄県の合計出生率が本土よりも高くなるメカニズムを解明することである.分析では,筆者らが独自に実施した質問紙調査や,政府統計の1つである第4回全国家庭動向調査等を資料として,沖縄県と本土の出生行動を比較した.その結果,沖縄県の合計出生率が本土よりも高いのは,沖縄県に特有の文脈効果の影響,具体的には,多くの子どもを持つことを望ましいとする価値観,結婚前に子どもを授かることへの寛容さ,家系継承が父系の嫡出子に限定されるという家族形成規範の3つの家族観が出生行動に影響を及ぼし,沖縄県の有配偶女性の子ども数が多くなるからであった.考察では,沖縄県における3つの家族観の内実にゆらぎがみられること,所得水準や待機児童などの出生に関連する沖縄県の社会経済状況が本土より劣位にあることを踏まえ,沖縄県の合計出生率が今後低下して本土の水準に近づく可能性があることを論じた.
著者
岡 寛 小山 洋子 中村 満行 松本 美富士 西岡 久寿樹
出版者
一般社団法人 日本臨床リウマチ学会
雑誌
臨床リウマチ (ISSN:09148760)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.45-50, 2014-03-30 (Released:2015-05-30)
参考文献数
18

線維筋痛症(Fibromyalgia:FM)は,全身に広範囲な痛みを主訴とする原因不明の疾患で,本邦に推定で200万人以上存在する.痛みの強さの評価は,従来Visual Analog Scale(VAS),Numeric Rating Scale(NRS)等によって行われてきたが,これらは主観的である.痛みを定量化できれば痛みの認知療法となり治療は格段に進化すると考えられる.昨今,痛みを定量的に評価できる痛み定量化システム(Pain Vision®)がニプロ社より実用化され,患者の持つ痛みを客観的に評価される事が可能になった. 我々はACR1990の分類基準を満たすFM患者83人の痛みを,現在のNRSとPain Vision®で測定し,比較検討した.その結果,Pain Vision®によるFM 患者の男性閾値は9.35±2.64μA(平均±SD),女性閾値は7.93±2.30μAであったが,FM の女性で閾値の低い集団が一定の割合存在した.Pain Vision®による痛み度は男性649.91±312.94,女性688.08±526.65,と男女ともに著明な高値を示し,FM 患者の痛み度は対照群の関節リウマチ(Rheumatoid arthritis:RA)患者の痛み度346.23±335.82より有意に高かった(P<0.0001).さらにFM 患者の女性では痛みの閾値が低く,疼痛知覚過敏との関連が示唆され,これに対して,RA患者では,閾値の低下はなかった.NRSの平均は,FM患者5.7±2.0とRA患者5.5±2.2では差がなかったが,FM患者ではNRSスコアが高いほど,痛み度が高い傾向が認められた(P=0.0177). Pain Vision®による痛み度の測定は,FM患者の痛みの病態を知るうえで,優れていると考えられる.
著者
西岡 佑一郎 楠橋 直 高井 正成
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.251-267, 2020 (Released:2020-08-04)
参考文献数
118

化石記録と分子系統の結果が一致しないという問題は今に始まった話ではないが,近年,哺乳類の現生目の起源と放散が中生代なのか,新生代なのかという点が多く議論されてきた.哺乳形類の起源は2億年以上前であり,中生代のジュラ紀から白亜紀にかけて,ドコドン類との共通祖先群から単孔類,有袋類,有胎盤類に繋がる狭義の哺乳類が分岐したと考えられている.化石記録に基づくと,有胎盤類に含まれる現生目の多くが新生代の古第三紀初頭(6000万~5000万年前)に出現しており,未だ白亜紀からクラウン・クレードの確実な化石は発見されていない.これは有胎盤類が古第三紀初頭に爆発的に放散したという仮説を支持しているが,一方で白亜紀/古第三紀境界(約6600万年前)から有胎盤類の放散時期までの時間があまりに短すぎるという批判もある.最近の研究では,有胎盤類のクラウン・クレード(異節類やローラシア獣類など)の起源が白亜紀,目レベルでの放散が暁新世に起きた可能性が示されており,現状ではそれが化石記録と分子系統の折り合いをつける最適な解釈であろう.