- 著者
-
川島 眞
- 出版者
- 公益社団法人 日本皮膚科学会
- 雑誌
- 日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
- 巻号頁・発行日
- vol.123, no.8, pp.1527-1536, 2013-07-20 (Released:2014-10-30)
近年,癌治療における分子標的薬の使用頻度の増加に伴い,その副作用としての皮膚障害への対応が課題となってきている.そこで,分子標的薬による癌治療に随伴する皮膚障害に対する皮膚科医の診療実態や意識についての現状を把握し,今後の課題について考察することを目的として,全国の皮膚科医を対象とした調査を行った.対象と方法:2011年12月~2012年1月に医療従事者向けポータルサイト「CareNet」会員である皮膚科医を対象とし,二度にわたるインターネット調査を行った.結果:分子標的薬に起因する皮膚障害の診療経験の確認を目的とした一次調査で,その診療経験は,勤務医で88.5%(154/174名),開業医で61.0%(61/100名)であった.より広く診療経験者を対象とし,改めて診療の実態や意識を確認することを目的とした二次調査において,診療頻度は開業医では年間5例以下が85%を占めたが,病院勤務医では年間10例前後が多かった.また,病院勤務医では患者の9割近くが他科からの紹介で受診していたが,開業医では自発的受診が7割近くを占めた.治療においては,ステロイド外用剤,テトラサイクリン系抗生物質内服,保湿外用剤を主に使用する医師が大半である一方,抗菌外用剤を主に使用する医師も一定数いることが明らかとなった.皮膚科医のほとんどが,癌診療科・施設との早期からの連携が必要であると認識し,分子標的薬による皮膚障害に対し,主体的に取り組むべきと考えていることが示された.考察:分子標的薬による皮膚障害に対し,多くの皮膚科医が既に取り組んでいる実態が明らかとなった.一方その診療において,癌薬物治療専門科・施設との連携は手探りともいえる.癌患者の治療を支援する観点から,分子標的薬による癌治療に随伴する皮膚障害の有効な治療方法の確立,また,それを実施するため,皮膚科医はその重要な役割を認識し,研鑽を重ねるとともに,癌薬物治療専門科・施設との密な連携に取り組む必要があると考えた.