著者
森㟢 仁美 東 江里夏 竹中 基 室田 浩之
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.130, no.9, pp.2069-2075, 2020-08-20 (Released:2020-08-21)
参考文献数
16

68歳,男性.登山中にオオスズメバチのものと思われる土中の巣を踏み,スズメバチに約50カ所を刺され,アナフィラキシーショックとなった.ドクターヘリが要請され,刺傷約1時間半後にアドレナリン筋注等でショック状態を脱した.刺傷約3時間半後に救急搬送され,救急科より当科を紹介された.刺傷部には紅斑および皮下出血を認め,肝障害,腎障害を認めた.刺傷約15時間後に急速に横紋筋融解症と多臓器不全を生じ,他院に転院し集学的治療が行われたが,刺傷約36時間後に多臓器不全で死亡した.ハチ刺症で臓器障害を来した報告例を検討し,刺傷数や刺傷部の所見,クレアチンキナーゼ値などが重症化の指標となりうると考えた.
著者
有川 順子 檜垣 祐子 高村 悦子 川島 眞
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.112, no.8, pp.1107-1110, 2002-07-20 (Released:2014-12-27)
被引用文献数
1

眼瞼を含む顔面の皮疹が高度で,顔面へのステロイド外用量が5g/月程度のアトピー性皮膚炎患者25人を対象とし,経時的に眼圧の測定を行い,ステロイド外用療法の眼圧への影響を検討した.その結果,開始時に1人(4%)で軽度の眼圧上昇を認めた以外は,7カ月~2年8カ月の観察期間中,眼圧の上昇は認めず,前述の1例ではその後眼圧がさらに上昇することもなかった.より多数例での検討を要するものの,今回の検討からは,顔面へのステロイド外用療法はミディアムクラス5g/月程度の使用量では眼圧上昇の原因にはなりにくいと考えられた.
著者
八代 浩
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.123, no.14, pp.3067-3076, 2013-12-20 (Released:2014-10-30)

皮膚超音波検査は取扱いが容易であり,多くの診療に役立つ情報が人体に無侵襲で得られる.皮膚超音波は僅かな基礎知識さえ身に付ければ,ダーモスコピーと同様に明日からでも使える.本稿では皮膚超音波検査の基本的な原理と扱い方を解説し,実際の画像を多く見ることによって,主な皮膚・皮下病変・血管の超音波所見をマスターする.特に基本である解剖学的Bモード所見と血流を評価するドプラモードの所見の取り方を中心に解説する.
著者
夏秋 優
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.121, no.10, pp.2043-2048, 2011-09-20 (Released:2014-11-13)

植物や動物による接触皮膚炎には主に刺激性とアレルギー性がある.刺激性接触皮膚炎の主な原因として植物ではヒスタミンなどを含むイラクサ,シュウ酸カルシウムの針状結晶を含むアロエ,動物では体液にペデリンを含むアオバアリガタハネカクシ,カンタリジンを含むアオカミキリモドキやマメハンミョウなどの昆虫類が挙げられる.アレルギー性接触皮膚炎の原因としては,ウルシオールを含むウルシ類やウルシオール類似のマンゴールを含むマンゴー,ギンゴール酸などを含むギンナン,プリミンを含むサクラソウ類,アラントラクトンを含むキク科植物が代表的である.
著者
浅田 秀夫
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.130, no.13, pp.2683-2688, 2020-12-20 (Released:2020-12-20)
参考文献数
3

帯状疱疹は,体内に潜伏感染していた水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)が再活性化して生じる疾患で,高齢者に好発する.神経痛様の痛みが先行し,小水疱を伴った浮腫性紅斑が片側性に知覚神経分布に一致して出現する.皮疹治癒後も疼痛や感覚異常が長期間残ることがある(帯状疱疹後神経痛:PHN).できるだけ早期に抗ヘルペスウイルス薬の全身投与を開始することが治療の基本となる.PHNには通常の鎮痛薬は無効であり,神経障害性疼痛の治療を行う.
著者
須賀 康
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.126, no.11, pp.2077-2083, 2016-10-20 (Released:2016-10-20)
参考文献数
18

本邦におけるシワの改善治療の1つとして,機器を用いた治療が簡便で安全性も高いため大きな支持を得ている.いずれの機器においても,ラジオ波,近赤外線,レーザーなどのエネルギー源を使って真皮内部に局所的に熱を発生させ,その生体反応により老化したコラーゲンに熱収縮・熱凝固を起こし,線維芽細胞が活性化して創傷治癒機転,再構築が誘動できると考えられている.1回の施術による効果は短期で局所的なものとなるが,定期的,継続的に施術することにより,小ジワ~中等度のシワであれば改善が期待できる.
著者
古川 福実 船坂 陽子 師井 洋一 山本 有紀 米井 希 松永 佳世子 秋田 浩孝 上田 説子 薄木 晶子 菊地 克子 幸野 健 田中 俊宏 林 伸和
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.118, no.3, pp.347-356, 2008

Chemical peeling is one of dermatological treatments for certain cutaneous diseases or conditions or aesthetic improvement, which consists of the application of one or more chemical agents to the skin. Chemical peeling has been very popular in medical fields as well as aesthetic fields. Since scientific background and adequate approach is not completely understood or established, medical and social problems have been reported. This prompted us to establish and distribute standard guideline of care for chemical peeling. Previous guidelines such as 2001 version and 2004 version included the minimums for the indications, the chemicals used, their applications, associated precautions, and postpeeling care and findings. The principles were as follows :1) chemical peeling should be performed under the control and the responsibility of the physician. 2) the physician should have knowledge of the skin and subcutaneous tissue and understand the mechanism of wound-healing. 3) the physician should be board-certified in an appropriate specialty such as dermatology. 4) the ultimate judgment regarding the appropriateness of any specific chemical peeling procedure must be made by the physician in light of all standard therapeutic ways, which are presented by each individual patient. Keeping these concepts, this new version of guidelines includes more scientific and detailed approaches from the evidence-based medicine.
著者
赤井 容子 赤松 浩彦 李 秀萍 伊藤 明 Christos C. Zouboulis 朝田 康夫
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.104, no.5, pp.647, 1994 (Released:2014-08-12)

リノール酸(C18:2cis9,12),パルミチン酸(C16)の皮脂腺の増殖に及ぼす影響を,ヒトの顔面より分離した皮脂腺を組織片培養して得られた培養脂腺細胞を用いて検討した.その結果,リノール酸は濃度依存性に培養脂腺細胞の増殖を促進し,一方,パルミチン酸は濃度依存性に増殖を抑制することがin virtoで判明した.面皰において,正常皮膚に比べてリノール酸の割合が減少し,パルミチン酸の割合が増加しているという事実より,この結果は,これらの遊離脂肪酸が面皰形成過程において,皮脂腺の増殖に影響を及ぼしている可能性を示唆するものと考えられた.
著者
夏秋 優
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.129, no.12, pp.2493-2501, 2019-11-20 (Released:2019-11-20)
参考文献数
28

ダニ媒介性感染症のうち,マダニが媒介する日本紅斑熱,重症熱性血小板減少症候群,ダニ媒介性脳炎,ライム病,そしてツツガムシが媒介するつつが虫病について,疾患の概要と診断のポイントなどを述べた.これらは四類感染症に指定されており,適切な診断と対応を要する重要な疾患である.皮膚科医が初期対応をする機会が多く,正確な知識と判断が要求される.
著者
氏原 真弓 石黒 洋明 小玉 肇 西谷 皓次 池田 政身 北村 嘉男
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.112, no.9, pp.1229-1240, 2002-08-20 (Released:2014-12-27)

症例は48歳,女性.約13年間.甲状腺機能亢進症のためプロピルチオウラシル(PTU)を服用していた.300mg/日にて開始して4年後の冬に,感冒様症状に続いて喀血を伴う呼吸困難と高度の貧血を来し,次いで突発性難聴も生じた.尿潜血,便潜血,RA-test陽性,抗核抗体陽性を認めた.甲状腺機能が正常化してPTUの投与が中止されたところ,これらの症状は消失した.その後甲状腺機能亢進症状が再燃しPTUの投与が再開されたが,150mg/日以上服用すると,上強膜炎あるいは強膜炎が出現した.数年前から紫斑が下腿に出没し,嗄声も出現した.1.5年前より300mg/日に増量されたところ,貧血が次第に進行し,不明熱,多関節痛および小腸出血を来した.下肢には環状およびび漫性の紫斑,打ち傷様紫斑が生じた.病理組織像で真皮全層の細動静脈,毛細血管および真皮深層の小動脈にleukocytoclastic vasculitisを認めた.プレドニゾロン30mg/日よりの漸減療法にて,紫斑の新生はなくなり,多関節痛,筋痛も激減したが,尿潜血は続き,15mg/日で経過観察中に血痰が出現した.Myeloperoxidaseに対する抗好中球細胞質抗体(MPO-ANCA)は406EU/mlの高値を示した.PTUの投与の中止により全ての症状が消失し,MPO-ANCAが低下したことより,PTUによるANCA関連血管炎と診断した.これまでに報告された抗甲状腺薬によるANCA関連血管炎45例を検討したところ,皮疹は44%で見られ,手指や下肢の有痛性紅斑,丘疹,潰瘍および下肢の広範な紫斑が主な皮膚症状であった.半月体形成性糸球体腎炎や肺出血を伴うことが多く,microscopic polyangiitisと同様の病像を呈した.PTU等抗甲状腺薬による血管炎には,全身性のANCA関連血管炎とIII型アレルギーが推測される皮膚のleukocytoclastic vasculitisがある.PTUは選択的に好中球に集積され,好中球のMPOにより非常に反応性の高い物質に代謝されるため,それが好中球の核や細胞質の構成成分の構造に変化をもたらし,抗核抗体やANCAが産生されるようになると推察した.
著者
今泉 明子 古山 登隆
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.126, no.11, pp.2085-2093, 2016-10-20 (Released:2016-10-20)
参考文献数
17

最近,エイジングに対する治療は関心が高く,その中でも注目されている治療のひとつにシワ治療が挙げられる.シワ治療の中でも注入療法は,安全かつ短時間で効果を得られる満足度の高い治療といえる一方で,満足度を上げるためには適応が大切である.注入療法において適正な治療を行うためには,老化のメカニズム,薬剤の基礎的知識はもとより,実際の治療に関わる解剖学的構造,治療の特性などを理解する必要がある.ここでは,皮膚科医にとって必要な注入に関する知識と明日から診療に役立つ安全な手技を紹介する.
著者
野澤 茜 大谷 道輝 松元 美香 大谷 真理子 山村 喜一 成谷 さやか 杉浦 宗敏 内野 克喜 江藤 隆史
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.121, no.7, pp.1421-1426, 2011-06-20
参考文献数
17
被引用文献数
1

アトピー性皮膚炎の治療における保湿剤の塗布時期は,入浴直後の角層中水分量が多い時期が効果的と考えられているが,連用した詳細な報告はない.そこで,保湿剤を連用した際の入浴後塗布時期と保湿効果の関係について検討した.健常成人8名を対象に40°C,20分間入浴の1分後と1時間後にヘパリン類似物質含有製剤,白色ワセリンおよび尿素軟膏を2週間塗布し,角層中水分量を試験前および開始後に測定した.角層中水分量はいずれの保湿剤でも,入浴の1分後と1時間後の間に有意差は認められなかった.これらのことから,保湿剤の塗布時期は入浴直後と1時間後で差がなく,患者が毎日好きな時間に塗布するように指導することでコンプライアンスの向上が期待できることが示唆された.
著者
大谷 道輝
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.132, no.3, pp.447-452, 2022-03-20 (Released:2022-03-22)
参考文献数
10

皮膚外用薬には軟膏やクリームに加え,ローション,ゲル,貼付剤,スプレー剤など多くの基剤・剤形があり,疾患や部位などに応じて最適な基剤・剤形を選ぶことが重要である.そのため,選択では,基剤・剤形の特徴を理解することが不可欠である.基剤・剤形以外でも,添加物は副作用に影響するため注意が必要である.皮膚外用薬はアドヒアランスが悪い剤形であり,十分な治療効果を発揮するには,患者に基剤・剤形について情報提供を行い,患者の生活様式や嗜好も考慮して選択すべきである.
著者
新井 達 小中 理会 脇田 加恵 勝岡 憲生 金森 晃
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.119, no.12, pp.2359-2364, 2009-11-20 (Released:2014-11-28)

糖尿病入院患者267名の皮膚症状を調査・検討した.平均年齢は58歳(男性15~86歳,女性19~80歳),糖尿病歴は平均13.2年,入院時HbA1cの平均値は9.13%であった.皮膚症状のなかでは真菌感染症,特に足白癬が高頻度(198例,74.1%)に認められた.カンジダ症は低頻度(14例,5.2%)であったが,13例に白癬を合併し,約半数が糖尿病Triopathyを伴っていた.直接デルマドロームとしては糖尿病性顔面潮紅(rubeosis)(53例),柑皮症(36例),手掌紅斑(23例)などが多くみられた.また,デュプイトラン拘縮は17例,前脛骨部色素斑は6例,糖尿病性浮腫性硬化症が5例にみられた.これらの皮膚疾患ではいずれも高率にTriopathyを伴っていた.また,因果関係は不明だが,掌蹠に色素斑を伴う症例が43例にみられ,男性に好発した.今回の我々の検討結果から,糖尿病に伴う皮膚症状と,その頻度,そして糖尿病の病態との関連性がより具体的に示されたものと考える.
著者
古江 増隆 山崎 雙次 神保 孝一 土田 哲也 天谷 雅行 田中 俊宏 松永 佳世子 武藤 正彦 森田 栄伸 秋山 真志 相馬 良直 照井 正 真鍋 求
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.119, no.9, pp.1795-1809, 2009-08-20 (Released:2014-11-28)
被引用文献数
1

[目的]我が国の皮膚科受診患者の皮膚疾患の頻度,性別,年齢分布,気候との関連性などを多施設大規模調査によって明らかにすることを目的とした.[方法]全国の大学病院76施設,病院55施設,診療所59施設(計190施設)において,2007年5月,8月,11月,および2008年2月の各月の第2週目を目安に,その週のいずれか1日を受診した初診・再診を問わず外来,および入院中の患者全てを対象に,「性別」,「年齢」,「診断名」を所定のマークシート調査に記録した.各調査期間における調査協力施設地域の気温,および湿度に関するデータは,気象庁・気象統計情報を使用した.[結果]4回の調査すべてに協力いただいた170施設(大学病院69施設,病院45施設,診療所56施設)から回収した67,448票を解析した.上位20疾患を列挙すると,その他の湿疹,アトピー性皮膚炎,足白癬,蕁麻疹・血管浮腫,爪白癬,ウイルス性疣贅,乾癬,接触皮膚炎,ざ瘡,脂漏性皮膚炎,手湿疹,その他の皮膚良性腫瘍,円形脱毛症,帯状疱疹・疱疹後神経痛,皮膚潰瘍(糖尿病以外),痒疹,粉瘤,尋常性白斑,脂漏性角化症,薬疹・中毒疹の順であり,上位20疾患で皮膚科受診患者の85.34%を占めた.疾患ごとに特徴的な年齢分布を示した.性差が明らかな疾患が存在した.気温や湿度と正負の相関を示す疾患が存在した.[結語]本調査によって21世紀初頭の皮膚科受診患者の実態を明らかにし得た.本調査が今後も定期的に継続されることで,社会皮膚科学的視野にたった皮膚疾患の理解が深まると考えた.
著者
清水 純子 伊藤 明子 山本 洋子 伊藤 雅章 本間 香 橋本 明彦
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.114, no.7, pp.1277-1282, 2004-06-20 (Released:2014-12-13)

1993~2002年の10年間に新潟大学医学部附属病院皮膚科で組織学的に扁平苔癬と診断し,経過を観察した症例のうち,薬剤性を除く78症例を集計した.合併疾患,C型肝炎ウイルスとの関連,金属試薬貼布試験結果や歯科金属除去の有効性を検討した.抗HCV抗体陽性率は15.4%(78例中12例)で高い傾向がみられた.口腔内病変を有する症例は64例であった.そのうち,貼布試験を施行した症例は40例で,何らかの金属試薬に陽性を示した症例は55.0%(40例中22例),さらに,歯科修復物に陽性金属含有が確認された症例数は15例,歯科金属除去有効率は77.8%(9例中7例)であった.その他,粘膜疹に接している部位の金属修復物を除去した後に粘膜疹が改善した症例が6例あり,歯科金属が非アレルギーの機序で関与する可能性も考えられた.以上より,扁平苔癬の原因ないし増悪因子として,歯科金属による接触アレルギーないし局所刺激性が重要と考えた.