著者
冨樫 きょう子
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.103, no.9, pp.1165, 1993 (Released:2014-08-12)

角層の保水機能と皮表および角質細胞間脂質の加齢による変化を明らかにするために,20歳代の男性17例(若齢群)と60歳代の男性10例(高齢群)の下腿伸側を被験部位とし,高周波伝導度測定装置による角層のconductance valueの測定と水分負荷試験を行った.さらに同部位よりカップ法を用いて皮表および角質細胞間脂質を採取し,high-performance thin-layer chromatographyにより脂質の組成を分析した.角層のconductance valueは水分負荷の前後ですべて高齢群が若齢群に比べて低値であった.単位面積あたりの皮表および角質細胞間脂質の総重量は高齢群と若齢群の間に統計的に有意な差を認めなかったか,高齢群は若齢群に比べて皮脂由来の脂質の重量が少なく,表皮由来の脂質(角質細胞間脂質)の重量が多い傾向にあった.セラミドの総重量では高齢群と若齢群に明らかな差はなかったが,セラミド分画では高齢群は若齢群に比べてセラミド1の割合が少なく,セミラミド4/5の割合が多かった.それぞれの群において,水分負荷前の角層水分量と皮表および角質細胞間脂質の関係を検討した結果,角層水分量は脂質の総重量や皮脂量,角質細胞間脂質量,各々の脂質分画の重量とは相関しなかった.しかし,角層水分量は若齢群と高齢群を合わせるとセラミド分画のうちセラミド1の割合と正の相関を,セラミド4/5の割合と負の相関を示した.これらの成績から,セラミドの組成が角層の保水機能に重要な役割を果たすことが示唆された.高齢者の保水機能の低下はセラミドの組成の変化によるものであり,皮脂量の低下とは直接関係しないと推察された.
著者
小林 美咲
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.110, no.3, pp.275, 2000 (Released:2014-08-19)
被引用文献数
7

アトピー性皮膚炎患者の掻破行動について,患者自身が1ヵ月以上にわたり毎日記録したノートをもとに解析を行った.32例の記録が得られ,検討の結果,通常の痒み刺激による掻く行動の他に,情動と相関して多くは自動的無意識的に起こり,定期的に毎日長時間繰り返されている習慣的な掻破行動の存在が認められた.この習慣的な掻破行動には精神的依存が生じており,コントロールを欠いた状態も見られた.これは単に習慣を越えて嗜癖addiction,または嗜癖行動addictive hehaviorに相当するものであり,嗜癖的掻破行動addictive scratching,さらに,掻破行動依存症scratch dependenceと考え得ると思われた.また掻破行動はほぼ同じ様な掻き方に様式化していることが認められた.そのため,掻破の関与した皮疹は左右対称性に限局して分布する特徴があった.また掻破行動の道具として使用される患者の両手にはpearly nailなどの特徴的な変化が生じていた.嗜癖的掻破行動がアトピー性皮膚炎の病変形成に関与している事が示唆された.
著者
加藤 卓朗
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.119, no.2, pp.157-161, 2009-02-20 (Released:2014-11-28)

室内環境で感染する足白癬は皮膚真菌症の中で最も多く,趾間型,小水疱型,角質増殖型に病型分類される.爪白癬は遠位部の爪甲下が肥厚する病型が多い.診断は直接鏡検で行い,原因菌はTrichophyton rubrumとT. mentagrophytesが多い.イミダゾール系をはじめ複数の外用抗真菌薬があり,内服薬ではテルビナフィン塩酸塩とイトラコナゾールの有効性が高い.感染予防では患者の治療が最も重要である.
著者
菊地 克子 五十嵐 敦之 加藤 則人 生駒 晃彦 金久保 暁 照井 正
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.129, no.13, pp.2763-2770, 2019-12-20 (Released:2019-12-20)
参考文献数
50

皮脂欠乏症は乾皮症と同義であり,加齢により生じる老人性乾皮症や皮膚機能が未成熟である乳幼児に生じるもののほか,アトピー性皮膚炎や魚鱗癬あるいは糖尿病や慢性腎臓病などの疾患に併発すると共に,一部の抗がん剤や放射線治療などに伴っても生じる.皮膚乾燥はしばしば瘙痒を伴い,搔破によって湿疹などの状態になることから,セルフメディケーション製品を含めた保湿剤による治療を疾患や病態に合わせて行う必要があるものの,明確な治療基準は存在しない.そのため,治療に関する指針が定められることが望まれる.
著者
吉国 好道 田上 八朗 白浜 茂穂 佐野 勉 井上 邦雄 山田 瑞穂
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.93, no.5, pp.491, 1983 (Released:2014-08-20)
被引用文献数
2

正常人における夏冬の皮表角層の水分含有状態の変化を,身体22か所において, 3.5MHz 高周波伝導度測定装置を用いて測定した.夏季では,顔面と前胸部がもっとも高値を示し,また,そ径部も比較的高値であった.躯幹,四肢の値も決して低くはなかった.しかし,冬季には,顔面の数か所を除き,各部位の角層水分量は著明に減少し,躯幹,四肢ではより著明で,そのなかでも下腿外側での減少率がもっとも大であった.あわせて測定した角層の水分吸収能1)と水分保持能1)も,冬季には低下していたが,角層水分量の減少ほどに著明ではなく,冬季の角層水分量が減少する原因は,水分吸収能や水分保持能であらわされるような単なる角層機能の低下によるものではなかった.また,皮表脂質量の測定では,夏冬の季節的変化はほとんど認められず,正常人における冬季の角層水分量の減少に対する皮表脂質の関与は少ないと考えた.一方,冬季において water loss by evaporation (WLEv:発汗と,汗管を経ずに経表皮的に失なわれる水分をあわせて皮表に蒸散される水分21)と角層水分量との間に,正の相関関係を認めたことと,冬季の角層水分量は,躯幹,四肢の被覆部よりも露出部である顔面(多汗部)が高値であることより,大気中の水分の影響に加えて,生体側の要因 -WLEv ,すなわち発汗が角層の水分に大きく関与していると推論した.
著者
宮島 進 西野 洋 澤田 由佳 岡田 奈津子 松下 哲也
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.113, no.2, pp.135-144, 2003-02-20 (Released:2014-12-13)

背景:糖尿病性潰瘍,壊疽などの患者は通常他の糖尿病に伴う全身的合併症を有し,しばしば生命予後が不良である.目的:糖尿病性潰瘍,壊疽患者の臨床像を解析し,生命予後に与える危険因子を検索することを目的とした.方法:1994年7月から2001年8月までに糖尿病性潰瘍,壊疽で加療した自験例140例を対象として,死亡・生存の転帰により群分けしてretrospectiveに解析し,臨床的観察項目別に各群のKaplan-Meier法による生存率をLog-rank testを用いて単変量比較し,危険因子を推定した.更に推定された危険因子からCoxの比例ハザードモデルを用いて予後因子を推定した.結果:症例の内訳は死亡例19例,生存例121例,5年生存率は74.5%であった.19例の死亡例はいずれも血糖コントロールが不良で,HbAlc値は平均で9.5%と生存群の7.8%よりも高かった.また死亡群はより広範囲な足病変を有し,糖尿病に伴う合併症を高頻度に認めた.2例は網膜症による失明を合併し,また11例は腎症による長期間の血液透析を受けていた.死亡群の全例が閉塞性動脈硬化症(Arteriosclerosis Obliterans:ASO)を合併し,70%が高位での切断術を余儀なくされた.これらの項目は死亡群,生存群の間で統計的に有意な差であった.死因は突然死,および心不全,不整脈,心筋梗塞などの心臓関連死がともにもっとも多く,次に敗血症,肺炎,脳梗塞の順であった.これらの結果に基づいて比例ハザードモデルで多変量解析を行った結果,生命予後に関連する危険因子は高位切断(ハザード比9.9),HbAlc値(1.6),年齢(1.1)であった.考察:糖尿病性潰瘍,壊疽の生命予後改善のためには,高位切断に至らぬよう足病変の早期発見,治療が重要であるとともに,血糖コントロールや,他の全身的な合併症に注意を払うことが必要である.
著者
高島 有香 守内 玲寧 白戸 貴久 和田 吉生 福澤 信之 原田 浩 清水 聡子
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.130, no.11, pp.2373-2377, 2020-10-20 (Released:2020-10-20)
参考文献数
9

臓器移植患者は免疫抑制のため水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)感染症のリスクが高く,重症化の恐れもあるが,これまで多数例の検討は少なく,治療基準も明確ではない.当施設で施行された腎移植548症例中VZV感染症を発症した81例につき,患者背景,発症頻度,移植から発症までの期間,臨床症状をレトロスペクティブに検証した.汎発型帯状疱疹を11例に認め,うち1例は脳炎を合併し死亡した.腎移植後のVZV感染症診療の際には,速やかな治療開始と慎重な観察が必須であるが,腎移植後1年間以内の患者や献腎移植患者では特に発症率が高く,より慎重な観察が重要である.
著者
奥田 峰広 吉池 高志
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.110, no.13, pp.2115, 2000 (Released:2014-08-19)

皮膚の健常性を維持するためには,皮膚を清潔に保つことが重要であり,そのために各種身体用洗浄剤が古くより用いられてきた.一方,近年アトピー性皮膚炎などの皮膚疾患と角層バリア機能との関連性が注目されている.そこで,本報では皮膚洗浄,特に洗浄剤中の界面活性剤やpHそして洗浄操作と角層バリア機能との関連について比較検討を行った.その結果,洗浄操作を行うことで角層水分蒸散量やリボフラピン浸透量を指標とした角層のバリア機能が影響を受けるだけでなく,その程度,すなわちこする操作の程度で角層バリア機能への影響が異なることも確認された.また,緩衝液を用いた洗浄では角層への影響は少ないが,界面活性剤を含むことで角層への影響に差が認められ,アルカリ性(pH9)では角層への影響が大きくなり,穏和な洗浄条件であっても角層細胞間脂質の溶出などの影響が認められた.一方,弱酸性(pH5)では角層バリア機能への影響も少ないことが明らかとなり,皮膚を洗浄する条件としては皮膚の生理的pHに近い弱酸性が望ましいと考えられた.
著者
西岡 和恵 高旗 博昭 冨永 和行 佐々木 和実
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.118, no.10, pp.1967-1976, 2008-09-20 (Released:2014-12-03)

塩化ビニル手袋によるアレルギー性接触皮膚炎の4例を経験し,手袋の成分別パッチテストにより原因となった成分を明らかにすることができたので報告する.症例は55歳,農業,54歳,農業兼清掃業,57歳,給食業務,52歳,ゴルフ場勤務(後に清掃業)の女性4例で,いずれも職業性に発症していた.皮疹は手部から前腕の湿疹性病変で,うち3例は接触皮膚炎症候群となっていた.4例とも仕事で使用していた塩化ビニル手袋にパッチテスト陽性であり,1例で行った本人使用手袋抽出成分のパッチテストでも陽性を示した.塩化ビニル手袋の成分別パッチテストでは,2例が可塑剤のアジピン酸ポリエステルに陽性,4例が安定剤であるDi-n-octyltin-bis-(2-ethylhexyl) maleateに陽性であった.なお,4例ともMono (2-ethylhexyl) maleateに強陽性を示し,Di-n-octyltin-oxideには陰性であったことから,Di-n-octyltin-bis-(2-ethylhexyl) maleateの2-Ethylhexylmaleate部が抗原決定基と考えられた.
著者
佐藤 健二 池永 満生 佐藤 吉昭 喜多野 征夫 佐野 栄春
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.95, no.9, pp.963, 1985 (Released:2014-08-20)

色素性乾皮症(XP)患者を太陽紫外線から保護する方法を検討した.A群XP患者の皮膚における紫外線紅斑の作用波長は,中波長紫外線のみならず340nmにまで及ぶことが知られている.この波長域の紫外線を効率よく遮断することを目的として種々の素材を調べた.その結果,服の生地では軽くて蒸気をよく通すハイレークエレット(太糸)があり,これを用いた衣服にフードを付け,フードの前にボンセットやUVC-400(農業用紫外線遮断フィルム)を垂らすと外出が可能となる.また,窓ガラスを透過した太陽光線には上記波長域の紫外線が含まれているが,窓ガラスに,スコッチティントP-70,ガラステクト,サーモラックスTF-100,サンマイルドCL-クリアーなどを貼ればこれを除くことができる.室内照明には,紫外線を含まない退色防止用蛍光ランプがある.これらの方法により,XP患者は,日常生活において,日焼けとそれにもとづく種々の皮膚障害を防ぐことができる.
著者
相原 良子 岡野 由利 赤松 浩彦 松永 佳世子 相澤 浩
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.113, no.1, pp.1-8, 2003-01-20 (Released:2014-12-13)

14歳から17歳の思春期女子尋常性痤瘡患者65例と同年齢分布の対照健常女子38例について,卵胞期中期採血によりtestosterone(T),free testosterone(FT),sex hormone binding globulin(SHBG),dihydrotestosterone(DHT),dehydroepiandrosterone sulfate(DHEA-S),androstenedione(Δ4A),luteinizing hormone(LH),follicle stimulating hormone(FSH)を測定し,本症と血中ホルモンの関係について検討した.また尋常性痤瘡患者群はKligman分類により重症群(33例)と中等度群(32例)の2群に分け,重症度と血中ホルモンの関係についても検討した.健常群と比較して尋常性痤瘡患者では血中T,FT,SHBG,DHT,Δ4A,FSH,LH値は有意差は認めなかったが,血中DHEA-S値のみ有意の高値を認めた(p<0.001).更に血中DHEA-S値は尋常性痤瘡群の重症度に相関した(p<0.001).そこでDHEAの皮脂腺に及ぼす影響を,ハムスターの耳介より単離した皮脂腺を組織片培養して得られた脂腺細胞を用いて検討し,DHEAが濃度依存性に培養脂腺細胞の細胞増殖と脂質合成を亢進させることが判明した.以上よりDHEAが尋常性痤瘡の発症機序において,重要な役割を果たしている可能性が示唆された.
著者
木下 正子
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.75, no.4, 1965

アトピー性皮膚炎atopic dermatitis(略称A.D.)はその形態学的にも,生理学,免疫血清学的,精神身体学的,発生学的,風土上及びその他,多方面にわたつて興味があり,検討の余地ある疾患である.今日,われわれのアトピー性皮膚炎としているものは,Brocqがneurodermatitisの概念を発表した時は未だlichen及びprurigoに属する1群の形態的変化の1つと考えられていた.Brocqは本疾患をlocalized 及びdisseminatedに分け,さらに半世紀後に至つて,本疾患患者は,しばしば,喘息,アレルギー性鼻炎を合併したり,また家族的にこれらの疾患が高率に見られることが判り,Besnier(1892)は本疾患と喘息,枯草熱及び胃腸障害(gastro-intestinal disturbance)の合併に注目している.また幼児,年長児及び成人では病像は異なるが,同一の疾患であることが判り,1931年Cocaはアトピーatopyなる概念を発表した.すなわちこのものを彼は,『知られている限りでは人間以外の動物には見られないところの遺伝的影響のある人間に特有の過敏性の1臨床型』としている.次いで1983年,Wise,Sulzbergerらはdis-seminated neurodermatitisをアトピー性皮膚炎の名
著者
増田 裕子 福井 利光 渡辺 大輔 玉田 康彦 松本 義也
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.117, no.14, pp.2489-2494, 2007-12-20 (Released:2014-12-03)

livedo vasculitis(以下LV)と診断した5症例(平均年齢:50.6歳.男女比:2対3.平均罹患期間:3.4年)は,病理組織学的に真皮内の小血管に血栓形成と,血管壁の硝子化がみられた.抗血小板療法で効果が見られなかったので抗凝固剤であるワーファリンカリウムを投与したところ,全例で皮膚潰瘍や疼痛などの自覚症状が短期間に改善した.今後,抗血小板薬や血管拡張剤等に治療抵抗性のLVに対して,ワーファリンカリウムは試みるべき治療法の一つと考えた.
著者
中村 和子 相原 道子 三谷 直子 田中 良知 池澤 善郎
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.115, no.12, pp.1779-1790, 2005-11-20 (Released:2014-12-10)
被引用文献数
4

本邦でDrug-induced hypersensitivity syndrome(DIHS)として報告された症例94例(8カ月~89歳,平均48.2歳,男性50例,女性44例)について臨床的特徴およびウイルスの再活性化について検討した.94例中,DIHS診断基準(案)による典型DIHSが34例,非典型DIHSが50例,HHV-6の再活性化はみられたが,診断基準の1から5のいずれか一つを満たさない症例が10例であった.原因薬剤では抗痙攣薬が62例(63.2%)を占め,なかでもカルバマゼピンが40例と最も多かった.その他塩酸メキシレチン,アロプリノール,DDSなどが多かったが,これまで原因薬剤として注目されていない抗菌薬やシアナマイドなどによるものが10例みられた.投薬から発症までの期間は平均34.5日であり,2カ月を超えるものが8例みられた.皮疹は紅斑丘疹型と紅皮症型が多くを占めた.顔面の腫脹や膿疱,水疱を伴う症例がみられた.経過中の症状再燃は43.3%にみられた.検査異常の出現率は肝障害96.8%,白血球増多86.7%,好酸球増多69.7%,異型リンパ球出現78.9%であった.腎障害5例,呼吸器障害,心筋障害がそれぞれ2例みられた.Human herpesvirus 6(HHV-6)の再活性化は94例中77例でみられ,投薬期間が長い症例でHHV-6の再活性化の頻度が高かった.HHV-7は19例中10例で,Cytomegalovirusは15例中8例で,Epstein-Barr virusは7例中1例で再活性を認め,多くはHHV-6の再活性化を伴っていた.死亡例は4例で,全例HHV-6の再活性化を認め,心筋炎や多臓器障害,敗血症などで死亡した.HHV-6の再活性化と臨床像の関係については,活性化の証明された症例とされなかった症例の間に,発症までの投薬期間を除き有意な差はみられなかった.