著者
西村 香織 塚崎 直子 片山 一朗 中村 茂 小池 マリ 藤井 弘之
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.113, no.2, pp.159-163, 2003-02-20 (Released:2014-12-13)

我々は1984年から1999年の16年間に当科を受診した皮膚疾患を有する金属パッチテスト陽性患者51症例について,歯科金属と皮膚疾患の関連について調査を行った.皮膚疾患は掌蹠膿疱症が18例と最多であった.可能な症例については歯科金属の成分同定を行い,原因と考えられた金属を除去し皮膚症状の改善効果があるか否かを検討した.合併症(病巣感染)を持つ症例については,それらの治療効果も検討した.金属除去が有効と思われた症例は全体の50%だったが,パッチテスト陽性金属を除去した症例に限れば67%であった.
著者
藤城 幹山 坪井 良治 大久保 ゆかり
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.125, no.9, pp.1775-1782, 2015-08-20 (Released:2015-08-20)
参考文献数
21

2010年から2012年までの3年間に当科を初診で受診した掌蹠膿疱症患者111例を統計的に検討した.結果は,男性38例,女性73例,平均発症年齢44歳,喫煙率62%,爪病変31%,骨関節症状45%,金属アレルギー14%であった.統計的に検定を行ったところ,骨関節症状は爪病変,金属アレルギーの既往,50歳未満での発症と合併率が有意に高かった.患者背景と治療効果の関係では,喫煙を継続している群,爪病変がある群,金属アレルギーの既往がある群,40歳代および40歳以上で発症した群では治療効果が有意に低いことが示された.
著者
山本 洋子 橋本 明彦 冨樫 きょう子 高塚 純子 伊藤 明子 志村 英樹 伊藤 雅章
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.111, no.5, pp.821-826, 2001-04-20 (Released:2014-12-27)
被引用文献数
1

掌蹠膿疱症における歯性病巣治療の有効性を調べるために,新潟大学医学部附属病院皮膚科で掌蹠膿疱症と診断した60症例について検討した.本学歯学部附属病院第二補綴科で歯性病巣を検索したところ,54例に慢性根尖病巣または慢性辺縁性歯周炎を認め,歯科治療を開始した.皮疹の経過観察を行い,「治癒」,「著明改善」,「改善」,「軽度改善」,「不変」,「悪化」の6群に分類し,「改善」以上の皮疹の軽快を認めた症例を有効群とした.口腔内アレルゲン金属除去ないし扁桃摘出術を行った症例を除いた31例について,歯性病巣治療の有効性を検討した.有効率は,歯性病巣治療終了群では70.6%,歯性病巣治療途中群では57.1%,両者を合わせた「歯性病巣治療群」では64.5%であり,無治療群の14.3%に比べて有意に有効率が高かった.有効群では歯性病巣治療開始後比較的早期に治療効果を認めること,罹病期間が長期でも治療効果が速やかに現れる症例があることより,歯性病巣は掌蹠膿疱症の主要な発症因子の1つであると考えた.本症では,従来のような扁桃炎などの耳鼻咽候科的な感染病巣および歯科金属アレルギーの検索とともに,自覚症状の有無に関わらず歯性病巣の検索も行い,個々の患者ごとに適切な治療方針を決定することが重要である.
著者
足立 厚子
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.128, no.3, pp.407-412, 2018-03-20 (Released:2018-03-20)
参考文献数
14

金属アレルギーには皮膚に直接接触して起こす金属接触アレルギーと,食品や歯科金属に含まれた微量金属が体内に吸収されて発症する全身型金属アレルギーとがある.全身型金属アレルギーの最も多い病型である汗疱状湿疹は,ニッケル,コバルト,クロムのパッチテストが陽性を示すことが多く,チョコレートや豆などの金属の多い食品を制限することにより軽快することがある.ただしこれらの金属は人体にとって必須金属でもあるため,厳格すぎる除去食は避けるべきである.
著者
髙垣 謙二
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.124, no.9, pp.1739-1744, 2014-08-20 (Released:2014-08-22)
参考文献数
22

日本紅斑熱とつつが虫病は,わが国に常在する代表的なリケッチア症であり,ダニに吸着された後,一定の潜伏期を経て,突然の発熱,悪寒戦慄,頭痛などで発症する.「感染症の予防および感染症の患者に対する医療に関する法律」(感染症法)では,ともに四類感染症全数把握の疾患として分類されている.発熱後数日以内に無症候性紅斑を生じるが,つつが虫病の発疹では躯幹に多い傾向があり,日本紅斑熱では四肢末梢に多く,出血斑を伴いやすい.いずれも,刺し口は認められるが日本紅斑熱のそれは小さい.早期に治療を開始すると良く反応することが知られているが,いずれの疾患も確定診断が手軽で確実にできるとはいえない状況である.臨床医は,発疹を有する熱性疾患の一つにリケッチア症もあるということを常に念頭において診療をし,疑い症例の確定診断のための手順と治療方法や,治療開始のタイミングをあらかじめ承知しておくことが大切である.
著者
赤崎 秀一 峰松 義博 吉塚 直伸 芋川 玄爾
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.98, no.1, pp.41, 1988 (Released:2014-08-08)

皮膚角層の水分保持に重要な働きが示唆されている角質細胞間脂質(SCL)の物理化学的性状及びSCL配合クリームの乾燥落屑皮膚改善効果(角層水分保持機能改善効果)について検討した.その結果,1)SCLはin vitroで多量の水の存在下でラメラ構造(両親媒性物質と水との会合体)を形成することが,偏光顕微鏡観察により確認された.2)SCLの角層水分保持機能改善効果発現に際しては界面活性剤の基剤への添加が必要であり,検討した界面活性剤の中ではグリセリルエーテル(GE)が最も高い改善効果を示した.3)ヒト前腕部からアセトン/エーテル処理で単離したSCLを薄層クロマトグラフィーでコレステロールエステル,遊離脂肪酸,セラミド,糖脂質画分に分け,それをW/Oタイプクリーム(ベースクリーム)に分散させ,これを同処理により生じた乾燥落屑状態の皮膚へ1日/1回,数日間塗布した.その結果各脂質画分配合クリームではいずれも,ベースクリームではほとんど認められない,水分保持機能の有意な上昇を伴う,乾燥落屑状態の有意な改善が認められた.4)セラミドの改善効果を更に確認するために,市販の牛脳由来のセラミドを検討したところヒト角層由来のものと同様な角層水分保持機能改善効果が認められた.SCL配合クリームによるSCLの除去により生じた乾燥性皮膚への改善効果は,角層細胞間においてSCLの膜構造が補強,再構築され,角層の水分保持機能が高まった結果と推察される.またこの際,GEのような特殊な界面活性剤の添加はSCLの角層への浸透性を助け,ラメラ構造の形成を促すものと考えられる.以上より角層水分保持機能に関与する因子として,角質細胞間脂質の重要性か確認され,中でもスフィンゴ脂質(セラミド)の主要な役割が明らかとなった.
著者
飯島 茂子 角田 孝彦
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.127, no.1, pp.23-30, 2017-01-20 (Released:2017-01-20)
参考文献数
19

痤瘡治療薬である過酸化ベンゾイル(BPO)含有ゲルによる接触皮膚炎の7例を報告した.1%BPO試薬およびBPO含有ゲルを用いて,パッチテストを行った結果,4例はアレルギー性接触皮膚炎,3例は刺激性接触皮膚炎と診断した.前者では発症までに9日~24日,後者では2日の外用期間であった.臨床所見のみでは両者の区別は困難で,外用期間・パッチテスト皮膚反応の継時的変化が有用だった.当院でのアレルギー性接触皮膚炎の発症頻度は2.7%であり,皮膚科医はそのアレルギー発現性に留意して処方すべきであると考えた.
著者
西井 貴美子 山田 秀和 笹川 征雄 平山 公三 磯ノ上 正明 尾本 晴代 北村 公一 酒谷 省子 巽 祐子 茶之木 美也子 寺尾 祐一 土居 敏明 原田 正 二村 省三 船井 龍彦
出版者
Japanese Dermatological Association
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.119, no.14, pp.3037-3044, 2009

大阪皮膚科医会は学校における水泳プール授業時のサンスクリーン剤使用の実態調査を大阪府下の公立学校1,200校を対象に実施したが,結果は約3割以上の学校がサンスクリーン剤使用を禁止または不要としていた.禁止の理由として水質汚染の心配が多数をしめたため,2007年夏に大阪府内の公立中学校14校の協力を得てワンシーズン終了後の水質検査を実施し,プール授業開始直後の水質と比較した.結果は文部科学省の学校環境衛生の基準に定められている6項目(pH,濁度,遊離残留塩素,過マンガン酸カリウム消費量,大腸菌,トリハロメタン)のうち濁度,過マンガン酸カリウム消費量,大腸菌,トリハロメタンに関しては基準値からはずれた項目はなかった.遊離残留塩素,pHについてはサンスクリーン剤使用を自由または条件付許可の学校で基準値より低値を示す傾向にあった.統計的検討はサンプル数,各校の条件の違いでむずかしいが,定期的にプール水の残留塩素濃度を測定,管理し,補給水の追加をすれば紫外線の害を予防する目的でサンスクリーン剤を使用することに問題はないと考える.
著者
塩原 哲夫
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.128, no.2, pp.177-182, 2018

<p>アトピー性皮膚炎(AD)は皮膚のバリア機能異常により生ずるとの仮説が一般的である.しかし角層水分量の多くは安静時に皮溝から排出される基礎発汗によりもたらされることを考えると,発汗障害はADにおける皮膚の乾燥の最大要因である可能性がある.本稿では,如何にADの病態は発汗障害に伴って進展していくかを,我々のデータを元に概説する.とくにADの治療を考える上で,外用剤の発汗に対する影響についての認識は必須である.</p>
著者
福田 英嗣 鈴木 琢 早乙女 敦子 早出 恵里 向井 秀樹
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.123, no.2, pp.133-141, 2013

成人アトピー性皮膚炎(Atopic dermatitis:AD)の入院療法における病勢マーカーについて検討した.対象は当院皮膚科に2009年3月から2010年1月までに,急性増悪ないし重症例のため入院加療した成人AD 26名である.年齢は17~48歳(平均値±SD:28.7±8.0歳),性別は男性10名,女性16名で,入院期間は7~25日(13.0±3.5日)である.方法は,入院時(第2病日)と退院時の早朝(7時~8時)に血清コルチゾール値,血漿adrenocorticotropic hormone(ACTH)値,血清thymus andactivation-regulated chemokine(TARC)値,血清lactate dehydrogenase(LDH)値,末梢血好酸球数を測定し,比較検討した.さらに,日本皮膚科学会(日皮会)AD重症度分類,痒みのVisual analoguescale(VAS)値,Skindex-16,Dermatology Life Quality Index(DLQI)に関しても比較検討した.結果は,入院時に低値を示した血清コルチゾール値と血漿ACTH値はともに有意な増加を示し,入院時に高値を示した血清TARC値や血清LDH値は有意に減少した.一方,末梢血好酸球数は減少するも有意差を認めなかった.また,日皮会AD重症度分類,Skindex-16,DLQIおよび痒みのVAS値は有意に減少した.今回の検討で,2週間程の短期入院における血中病勢マーカーは血清コルチゾール値,血漿ACTH値,血清TARC値,血清LDH値が有用であった.これらの中で,血清TARC値は全例において入院時から退院時に減少し,測定幅を考慮すると,血清TARC値が重症度と改善度の評価を最も反映するマーカーと考えた.その他のマーカーとして日皮会AD重症度分類,Skindex-16,痒みのVAS値およびDLQIが有用であった.
著者
池田 志斈 真鍋 求 小川 秀興 稲葉 裕
出版者
Japanese Dermatological Association
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.100, no.7, 1990

全国アンケート調査から得られた単純型およおび劣性栄養障害型表皮水疱症患者の身長・体重の値を統計学的に処理し,全国平均の値と比較した.その結果,1)単純型では女性の身長が全国平均値より有意(1%以下の危険率)に低い.しかし女性の体重,男性の身長・体重には有意の差を認めない.2)劣性栄養障害型では,男女とも身長・体重が全国平均値より有意(1%以下の危険率)に低い,などが示された.本疾患々者の成長発育状態及び栄養状態を把握し,十分な栄養を補給を行うことがなされるならば,本疾患々者の予後が比較的良好となることが期待できるものと思われる.
著者
富田 靖
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.109, no.12, pp.1974-1976, 1999-11-10
被引用文献数
1
著者
猪又 直子
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.133, no.11, pp.2581-2587, 2023-10-20 (Released:2023-10-20)
参考文献数
13

血管性浮腫は,原則,蕁麻疹を合併しないブラジキニン起因性と,蕁麻疹を合併しやすいマスト細胞メディエーター起因性に大別される.前者の代表例,遺伝性血管性浮腫は,喉頭や消化管などの粘膜の浮腫が単独で現れることもあり致死的になる.近年,その新規治療薬として急性発作時のB2受容体拮抗薬,長期予防のブラジキニン阻害薬や抗ヒト血漿カリクレイン抗体,C1-インヒビター阻害薬などが登場し,より安全な管理が可能になった.
著者
濱口 儒人 藤本 学 長谷川 稔 小村 一浩 松下 貴史 加治 賢三 植田 郁子 竹原 和彦 佐藤 伸一 桑名 正隆
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.119, no.9, pp.1837-1843, 2009-08-20 (Released:2014-11-28)

抗U3RNP抗体は代表的な抗核小体型抗体の1つであり,全身性強皮症に特異的とされる.今回われわれは,金沢大学皮膚科で経験した抗U3 RNP抗体陽性全身性強皮症(systemic sclerosis:SSc)8例(女性6例,男性2例,発症時の平均年齢44歳)における臨床症状,治療,予後について検討した.病型分類ではdiffuse SSc(dSSc)が4例,limited SSc(lSSc)が4例だった.全例でレイノー症状を認め,指尖陥凹性瘢痕,手指の屈曲拘縮,びまん性の色素沈着を伴う例が多く,dSScでみられる皮膚症状を高率に有していた.一方,内臓病変に関しては,1例で強皮症腎を発症したものの,肺線維症や肺高血圧症,心病変など重篤な臓器病変を有する頻度は低かった.6例で皮膚硬化に対し中等量のプレドニゾロンが投与され,皮膚硬化の改善がみられた.観察期間中に死亡した症例はなかった.欧米では,抗U3 RNP抗体陽性SScはdSScの頻度が高く,肺線維症や肺高血圧症,心筋線維化による不整脈や心不全,強皮症腎などの重篤な臓器病変を有することが多いと報告されている.また,その予後は抗トポイソメラーゼI抗体陽性SScと同等で,予後不良例が少なくないことが知られている.したがって,本邦における抗U3 RNP抗体SScは欧米の症例と比較し,皮膚症状は類似しているものの臓器病変は軽症であると考えられた.しかし,抗Jo-1抗体陽性の抗ARS症候群を合併した症例や強皮症腎を生じた症例もあり,抗U3 RNP抗体SScの臨床的特徴についてさらに多数例での検討が必要と考えられた.

2 0 0 0 1.皮膚筋炎

著者
松下 貴史
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.133, no.9, pp.2135-2141, 2023-08-20 (Released:2023-08-20)
参考文献数
14