著者
河内 清彦
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.437-447, 2004-12-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
34
被引用文献数
2 2

本研究では障害者に関する健常学生の抵抗感を軽減させるための手がかりを得るため, 健常学生の自己効力感及び障害者観に及ぼす障害条件, 対人場面, 個人的要因 (障害者への関心度, 性別, 援助経験) の影響を検討した。4障害 (視覚, 聴覚, 運動, 健康) 条件に対応した4下位尺度 (関係, 主張, 教育, 当惑) により658名の大学生に質問紙調査を実施した。因子分析の結果では, 特定の対人場面を表す下位尺度に関し, 4障害条件が共通の因子負荷量を示す「当惑関係」「自己主張」「統合教育」という3因子が抽出された。このことから, 健常学生の意識に及ぼす影響は, 障害条件よりも尺度内容に依存していることが明らかとなった。これら3因子と個人的要因との関連では,「当惑関係」因子は3要因と,「自己主張」因子は性別と関連が認められたが,「統合教育」因子はどの要因とも関連が認められなかった。一方, 下位尺度別障害条件と個人的要因との比較では, 視覚と聴覚の障害条件よりは, 運動と健康の障害条件の方が抵抗感が弱く, 性別の影響は下位尺度により異なっていたが, 関心度と援助経験は障害者と交流しようという積極的な意識を助長することが明らかとなった。
著者
山岡 明奈 湯川 進太郎
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.73-86, 2019
被引用文献数
2

<p> 創造性を増進することは社会にとって有用であると考えられるが,しばしば創造性の高い人は精神的に不健康であると指摘されてきた。一方で,近年では創造性が高くても精神的に健康な人の存在も示唆されている。そこで本研究では,創造性と精神的健康の両方と関連深い概念として知られているマインドワンダリングという現象に着目し,創造性の高さや精神的健康さの違いによって,マインドワンダリングの特徴に違いかあるのかを実験的に検討した。まず,62名の参加者の創造性と抑うつ傾向およびワーキングメモリ容量を測定した。その後,思考プローブ法を用いて,映像視聴中のマインドワンダリングの思考内容,自覚の有無,話題数を測定した。分析の結果,創造性が高く精神的に健康な人は,マインドワンダリング中に過去のことを考える頻度が少ないことが示された。本研究の結果は,マインドワンダリングを用いて,精神的健康を維持しつつ創造性を増進するための基礎的知見を示したといえる。</p>
著者
伊藤 美奈子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.12-20, 2000-03-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
25
被引用文献数
18 8

本研究は, 教師のバーンアウト傾向を規定する要因について調べることを第1の目的としている。208 名の教師を対象に次の項目についての調査が実施された。(1) 性格特性,(2) 教師としての能力評価と理想の教師像,(3) 仕事上のストレス,(4) サポート,(5) 周りの同僚に対するイメージ,(6) バーンアウトという内容からなる。その結果, 〈達成感の後退〉は, 性格特性の中でもNP (やさしさ・世話), 授業指導能力などの《指導性》と, 職場での人間関係やサポートなどの《関係性》により解消されることが示唆された。また〈消耗感〉はく達成感の後退〉が強い者に多く見られ, 《関係性》によって抑制されるという点では〈達成感の後退〉と同様であったが, 《悩み》によって促進されるという特徴が示された。また若年群とベテラン群を比較した結果, 若年群の方が〈達成感の後退〉を強く感じていたが, その背景には授業指導に関する自信の低さがあることが示唆された。また, クラス運営を重視する授業指導志向タイプと, 子どもとの関係性を大切にする関わり志向タイプを比較した結果, 前者では授業能力の評価がバーンアウトに関与するのに対し, 後者では同僚との人間関係がバーンアウトを防止するのに重要な機能を果たすことが示唆された。
著者
吉田 琢哉 吉澤 寛之 浅野 良輔 玉井 颯一 吉田 俊和
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.252-264, 2019-12-30 (Released:2020-01-24)
参考文献数
59
被引用文献数
5

本研究では,複数の社会化エージェントの働きかけが,子どもの反社会的行動の規定因である社会的認知バイアスに及ぼす影響について検討した。親の養育,教師の指導,友人の非行は社会的認知バイアスに直接的な影響を及ぼす一方で,地域住民の集合的有能感は親の養育や教師の指導を媒介して社会的認知バイアスに影響を及ぼすと予想した。1,404名の小中学生とその保護者を対象に調査を実施した。共分散構造分析による分析の結果,地域住民の集合的有能感は親の認知する養育,子どもの認知する養育,および教師の指導を介して社会的認知バイアスを抑制し,子どもの認知する親の養育と教師の指導,そして友人の非行は社会的認知バイアスに直接的に影響するというモデルの適合性が示された。集合的有能感のうち,非公式社会的統制が親の養育を,社会的凝集性・信頼が教師のM機能を促進したことから,親の養育と教師の指導とでは地域住民の働きかけが及ぼす影響過程が異なることが示唆された。
著者
雨宮 政
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.p273-277, 1985-12

Simple reaction times(SRTs) and choice reaction times(CRTs) for mentally retarded(MR) children and normal(N) children matched on MA were analyzed. The main results were as follows; 1)In SRT experiments, there were great RT differences between MR group and N group, but in CRT experiments, no significant CRT differences between them were noticed. 2)Between MR-C group, selected from MR group by the condition that the members were the same SRT level that N group members, and N group, no significant differences in CRTs were seen. It was inferred that MA 5-8 N children responded on the same way of MR children in CRT tasks that demanded higher mental activities.
著者
雨宮 政
出版者
The Japanese Association of Educational Psychology
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.273-277, 1985

本研究では, MAマッチされた精神遅滞児 (MR児) と普通児 (N児) を対象として, 彼らのSRT, CRTを分析した。<BR>その結果, 次のことが明らかになった。<BR>SRT事態ではMR群とN群との問に大きなRT差が示されたが, CRT事態では有意なRT差が認められなかった。SRTレベルが同一であるMR-C群とN群との間でもCRTの差が認められなかった。MA5-8歳レベルN児は, 高次の心理的操作の要求されるCRT事態でも, MR児と同じ反応とすることが明らかになった。そこで, N児は, MA7-8歳で何らかの心理活動の転換を迎えることが推測された。
著者
豊田 秀樹
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.283-285, 1989-09-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
5
被引用文献数
1

The purpose of this study is to propose the three methods for estimating the reliability coefficient under Item Response model. The first method may be used for the item selection, if the latent trait distribution is assumed to be known. The second method gives the upper bound of the reliability coefficient estimate. By the third method, the estimate of reliability coefficient may be calculated from the two following sample statistics only: the sample mean and variance of the estimated values on the latent trait. Some examples using the Scale for Word Meaning Comprehension (Shiba & Noguchi, 1982) are given as application.
著者
飯田 都
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.367-376, 2002-09

本研究の目的は,教師の児童認知だけでなく児童の教師認知を視野に入れ,学級適応感における児童の認知機能の役割に関して,探索的検討を行うことであった。教師-児童の関係性が明確であり,且つ教師の要請に関する認知の仕方の独自性が顕著であった児童4名を対象とし,彼らの教師の要請像の様相を検討した。その結果,(a)教師の要請に関する児童の認知が,自己高揚的であった場合,その児童は不得手とする要請に関しては,教師の否認による要請を過小評価し,一方,得手の要請は過大評価する。また,認知された方向づけは承認が中心である。(b)教師の要請について児童の認知が自己卑下的であった場合,当該児童は不得手な要請に関する否認による方向づけを過大評価し,得手の要請に関しては過小評価する。また,否認による要請の方向づけが強く認知されている,等の認知的特徴に関わる事例が報告された。これらの結果は,教師の要請に対する児童個々の要請認知のあり方が,学級適応感を規定する重要な要因であることを示唆するものであった。児童の学級適応感を理解する上で,教師の対児童認知のみならず,児童の教師認知要因をも考慮する必要性について考察した。
著者
飯田 都
出版者
The Japanese Association of Educational Psychology
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.367-376, 2002
被引用文献数
1

本研究の目的は, 教師の児童認知だけでなく児童の教師認知を視野に入れ, 学級適応感における児童の認知機能の役割に関して, 探索的検討を行うことであった。教師一児童の関係性が明確であり, 且つ教師の要請に関する認知の仕方の独自性が顕著であった児童4名を対象とし, 彼らの教師の要請像の様相を検討した。その結果,(a) 教師の要請に関する児童の認知が, 自己高揚的であった場合, その児童は不得手とする要請に関しては, 教師の否認による要請を過小評価し, 一方, 得手の要請は過大評価する。また, 認知された方向づけは承認が中心である。(b) 教師の要請について児童の認知が自己卑下的であった場合, 当該児童は不得手な要請に関する否認による方向づけを過大評価し, 得手の要請に関しては過小評価する。また, 否認による要請の方向づけが強く認知されている, 等の認知的特徴に関わる事例が報告された。これらの結果は, 教師の要請に対する児童個々の要請認知のあり方が, 学級適応感を規定する重要な要因であることを示唆するものであった。児童の学級適応感を理解する上で, 教師の対児童認知のみならず, 児童の教師認知要因をも考慮する必要性について考察した。
著者
黒田 正典
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.30-38,62, 1969-10-15 (Released:2013-02-19)
参考文献数
9

人間の精神生活はどんな点から「わかる」ようにすべきか。精神生活は自然科学的因果の説明だけによつてもわからない。また目的や規範だけでも完全にはわからない。精神生活は, 人間に対して束縛的に影響する事実的条件と人間が自由意志によつて選択する目的的条件の両方からつかまれる必要がある。意見とか行為とか技術とかいうものもこの事実的条件 (Xということにしよう) と目的的条件 (Z) の両方を合理的に繋ぐ結果 (Y) としてつかまれるのである。つまり人の行為をわかるということ (了解) もこの両者XとZとの関係が明かになるということにほかならない。
著者
野村 晴夫
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.355-366, 2002-09-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
33
被引用文献数
1

本研究では, 高齢者が自らの過去を回想して述べる自己語りの構造的特質と, 自我同一性の様態との関連を明らかにすることを目的とした。65歳以上の健常高齢者30人を対象に, エリクソン心理社会的段階目録の日本版 (中西・佐方, 1993) の一部を施行して, 自我同一性達成度を測定した。また, 性格特性語の自己への帰属を過去の経験から例証する課題により, 自己語りを得た。そして, 構造的な整合. 一貫性の観点から, 根拠として語られた経験の信憑性を表す特定性, 情報量の多寡を表す情報性, 主題である性格特性に則していることを表す関連性の3次元に基づき, 語りを分析した。その結果, 情報性, 関連性の2次元において, 語りの構造的特質が自我同一性達成度により異なることを見出し, 自己語りの構造的特質が自我同一性の様態に関連することが示唆された。なかでも, 自我同一性達成度が低い一群の高齢者は, 自己の否定的な性格特性について語るに際して, 情緒的な明細化が顕著になり, 主題との関連性が低い自己語りを構成することが明らかとなつた。しかし, 自我同一性達成度と, 語りの特定性とは関連を見出さず, また, 情報性・関連性との間に見出した関連も直線的ではなかった。
著者
柏木 恵子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.14, no.4, pp.230-245, 1966-12-31 (Released:2013-02-19)
参考文献数
141
被引用文献数
1 1
著者
木村 敏久 小泉 令三
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.185-201, 2020-06-30 (Released:2020-11-03)
参考文献数
31
被引用文献数
6

本研究では,いじめ抑止に関する中村・越川(2014)の改善をめざして,社会性と情動の学習における問題解決スキルの習得を目標に2時間の心理教育プログラム(①いじめ対応策の検討,②対応策実行のためのロールプレイング)の授業を実施した。心理臨床の専門家ではなく通常の授業と同様に教師が実施した。中学2年生151名が本研究に参加し,実施時期をずらすウェイティング・リスト法を用いて,前期実施群と後期実施群を設定し,統制条件との比較による効果測定を行った。その結果,観衆や傍観者の立場での学習については,未学習の生徒との比較の結果,先行研究と同様にいじめの停止行動に対する自己効力感が学習後に上昇しており,かつ今回,一定期間(9日間),効果の維持が確認できた。一方,加害を容認するような傾向としては,学習後に一旦いじめ加害傾向が減少し,いじめ否定規範は上昇するものの,効果が継続しない傾向が新たに示された。また,社会的能力が高いと全般的にいじめ抑止傾向は高いことが明らかになった。以上の成果から,教師による指導の効果を確認するとともに,いじめ抑止の方策を教育実践上の観点から考察した。
著者
Danny D. Steinberg 山田 純
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.310-318, 1980-12-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
20
被引用文献数
2 1

This research attempts to determine the natural ability of children in learning to write. It is especially concerned with determining the earliest age at which children might benefit from reading instruction.The subjects were 95 Japanese nursery school girls (40) and boys (55) grouped according to age from 2 to 6 years. They were given 5 hiragana figures (ka, su, hi, me, ru) and 5 Roman figures (B, H, O, S and W-all capitals) to trace and to copy in two sizes, small (2 1/2cm×21/2cm) and large (5cm×5cm). For tracing, dotted lines formed the component strokes and the entire figure while a single entire figure was presented for copying into a blank space.The test period extended over two weeks, 5 days a week, with the test period on each day lasting less than 20 minutes. In the first week, the subjects traced figures. On each test day, the 2 and 3 year olds were given l hiragana and l Roman figure in both the small and large sizes to trace, while the 4, 5and 6 year olds were given 2 hiragana figures and 2 Roman figures in the two sizes. In the second week, the subjects copied the same figure they had been given to trace. Two judges independently rated the 5th day's subject responses on both the tracing and copying task. The judges rated the quality of each figure on a 5 point scale, where l indicated unidentifiable and 5 indicated near adult. The correlation between the judges' responses was +.85 for the tracing task and +.91 for the copying task.The results from analyses of variance show that Age, Sex Task and Size each has a significant main effect and that all significantly interact with one another in various ways. The only variable which showed no effect was type of writing, i. e., there was no significant difference in quality between the hiragana and the Roman figures.In general, there was steady progress for both sexes. The mean for the 2 year old group=1.85, for the 3 year olds=2.22, for the 4 year olds=3.40, for the 5 year olds=4.09 and for the 6 year olds= 4.57. The greatest and most important gain occurred between ages 3 and 4 years. The females did significantly better than the males, especially at the older ages. Such a finding is in agreement with other writing research, where boys may sometimes equal the performance of girls but they never exceed them.Surprisingly, the smaller size figures received higher scores than the larger size ones in both types of task. This finding challenges the generally held assumption that larger figures are easier to form. Possibly, the larger figures require more control, e. g., it seems more, difficult to draw a long straight line or a long curved line than a short one. With regard to type of task, the results, not unsurprisingly, show performance on the tracing task to be better.Because at 2 years of age the children's writing was largely unidentifiable, and by 4 years it was quite identifiable, it is concluded that the critical age for children learning to write is 3 years. Thus, it appears that writing instruction would benefit 3 year olds and perhaps 2 year olds as well.
著者
山崎 瑞紀 倉元 直樹 中村 俊哉 横山 剛
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.305-314, 2000-09

山崎・平・中村・横山(1997)に引き続き, 本研究においては, アジア出身学生の対日態度, 及び対異文化態度と, それらに影響する要因の関係を検討した。態度形成モデルは, エスニシティ(民族性)の観点から構成された。「対日態度」, 「対異文化態度」, 「友人関係」, 「肯定的経験」, 「否定的経験」, 「自分たちのエスニシティがホスト社会に受け入れられているという認知」といった構成概念が測定された。日本語学校に通う399名のアジア出身学生が質問紙に回答した結果, 以下の点が示唆された:(1)「日本人による受容の認知」は, 肯定的な対日態度, 対異文化態度の形成に重要な役割を果たす, (2)中国出身の学生は, 韓国出身の学生よりも, 日本人と豊かな「友人関係」を形成しており, 「肯定的な経験」が多く, 滞在社会は自分たちの民族文化に対して関心を持っている, と感じており, より親和的な「日本人イメージ」を形成している, (3)さらに, 前回, 留学生を対象に行った調査結果と比較したところ, 日本語学校生は留学生よりも, 「肯定的経験」が少なく「否定的経験」が多いこと, 「日本人との交流意図」, 「異文化との交流意図」が低いことが示唆された。
著者
中村 知靖 前川 眞一
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.22-30, 1993-03-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
24

According to the Thurstonean point of view, a usual two-parameter normal ogive model can be derived as a special case of the Law of Categorical Judgement, where all subjects have common dispersion parameter. The generalized item response (GIRT) model, first proposed by Torgerson (1958), is an extension of the IRT model, in which each subject is characterized not only by the ability parameter (θ) but also by the dispersion parameter (Φ). For a subject characterized by (θ, Φ), the probability that he/she answers the item correctly is given by Pr (U=1|θ, Φ) =φ ((θ-b)), where φ is the standard normal or logistic distribution function and (a, b) constitutes the set of usual item parameters. In this article, an item parameter estimation method maximizing the marginal likelihood where the subject parameters (θ, Φ) are integrated out, is presented.
著者
吉田 琢哉 吉澤 寛之 浅野 良輔 玉井 颯一 吉田 俊和
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.147-159, 2020-06-30 (Released:2020-11-03)
参考文献数
45
被引用文献数
5

本研究では,地域に根ざした学校運営におけるチームワーク尺度を作成し,その信頼性と妥当性を検証した。予備調査として,小中学校で学校教育に参加している保護者・地域住民ならびに教師を対象に面接を行った。予備調査を踏まえて質問項目を作成し,小中学生の保護者を対象としたweb調査を実施した(N=495)。探索的および確認的因子分析により,学校運営におけるチームワーク尺度はチーム志向性,チーム・リーダーシップ,チーム・プロセスからなる3因子構造が確認された。チームワークと集団同一視,および教師と地域住民に対する信頼感との関連から,基準関連妥当性が確認された。学校運営におけるチームワーク尺度の教育場面での活用法について議論された。
著者
秦野 悦子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.191-205, 1984-09-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
46

The purpose of this study was to examine the developmental process of pragmatic negation from the sensorimotor interaction to the early linguitic communication.The data for this case study were the longitudinal diary records of my daughter A, from her birth to 24 months of age. The data for analysis were 396 nonverbal and verbal episodes of pragmatic negation.Resultant findings:(1) The development of media used for pragmatic negationThe earliest emergence of media she used was crying with nondirective activities. The second was exclusive direct actions for an object or person, the third was the symbolic use of ritual headshaking gesture, and the last was the verbal negation. The abovementioned negative media were not only the change from gesture to language, but the later media were combined to the earlier media, then building more effective communications.(2) The acquisition of head gesturesNodding and shaking the head are a type of symbolic behaviour similar to affirmative/negative particles, and the establishment of these gestures was at 1: 1.(3) The process of the functional differentiation of pragmatic negationIt could clearly be seen that function preceded from in the development of negation. In this study five-functional categories of negation were suggested: 1. exclusive rejection, 2. rejective expression of request for supportive action, 3. denial, 4 nonexistence, 5. prohibition.Rejection was the first function in which negations were used for, the first topics of negation were concretely present in the child's immediate world of activity and transcended the here and now only when negative comments came up. About a year later, other types of negation such as denial, non-existence, prohibition appeared. In the later negation contexts, the topic of negation had transcended on the spot.The negation acquired later was based on one's judgment about unfulfilled expectation or presupposition. The more mature use of unfulfilled expectation provided an important insight into the development of pragmatic negation. So, the developmental sequence of negation from emotional to declarative was confirmed.(4) Form-Function MappingSome lexical items, iya (iyayo, iyada), attspu, metts (a baby-talk), nai, ii, chigau, were used to signal exclusive rejection. Lexical item nai (inai) signified nonexistance, nai expressed denial, and dame (metts) indicated prohibition. In early stage, nai was overregularized to almost all functions to negation.(5) The developmental strategies of negative lexiconStrategy 1. To intend negation, the specialized vocal must be used.Strategy 2. The negative operator is used independently and negates the whole proposition.Strategy 3. The negative operator has fixed location, and in Japanese, it is put at the last part of the utterances.Strategy 4. To combine the words, the negative operator is only added to other linguistic items.Strategy 5. To combine the words, other linguistic items are inflected, and then added to the negative operator.Strategy 6. To combine the words, other linguistic items (nouns and nominal adjectives) are followed by the negative form janai.
著者
外山 美樹
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.174-184, 2020-06-30 (Released:2020-11-03)
参考文献数
33
被引用文献数
3

本研究の主な目的は,上位目標として“学業達成”を設定し,1つの下位目標(授業の出席)の達成が別の下位目標(試験勉強に励む)の追求に及ぼす影響が,楽観性の程度によって異なってくるのかどうかを検討することであった。また,下位目標の達成が別の下位目標への追求に及ぼす影響において,上位目標の達成の重要度も1つの要因として検討した。大学生を対象とし,研究1では場面想定法を用いて,続く研究2では,日常の学業場面を用いて検討した。本研究の結果より,楽観性が低い人においては,学業達成の重要度と試験勉強時間との間に関連がみられないが,楽観性が高い人においては,学業達成の重要度と試験勉強時間との間に関連がみられ,学業達成の重要度が高いほど試験勉強時間が長い傾向にあることが示された。また,1つの下位目標の達成が別の下位目標の追求に及ぼす影響について,楽観性の調整効果が確認された。楽観性の高い人では,下位目標の達成度が高くなるほど,別の下位目標の追求の強さが弱い傾向にあることが明らかとなった。本研究の結果より,楽観性の高い人は,文脈に応じて行動を調整することができる柔軟性が優れていることが示唆された。
著者
康 智善
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.317-325, 1998-09-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
31

In the field of studying associative process, two major testing methods could be utilized: Word Association Test (WAT) and the Rorschach Test. It had been held that associative processes of both tests had hardly anything in common, because of the differences between both test stimuli. The aim of this study was to detect common factors of associative process of both tests, focusing on “Conceptual Distance” between stimulus and response. WAT and the Rorschach Test were administered to 44 subjects of normal adults. Testing situation of WAT was modified, adopting “Free-Condition,” in which time pressure had been removed. A new analysing method,“Associative Determinant Analysis” was used to examine WAT responses. WAT responses were finally classified Subject-bound response and Stimulus-bound response. Test results showed that Subject-bound response was closely related with the following Rorschach scores: 1) more articulated form perception; 2) more FC responses; 3) introversive experience type, and 4) higher creativity. Stimulus-bound type of response was found to be nearly contrary. Thus, Subject-bound response was characterized by a greater conceptual distance on the one hand, and Stimulus-bound response by less conceptual distance on the other.