著者
秋山隆 久保沙織 豊田秀樹 楠見孝 向後千春
出版者
日本教育心理学会
雑誌
日本教育心理学会第58回総会
巻号頁・発行日
2016-09-22

統計的方法を学ぶことは,これまで,すなわち有意性検定を学ぶことでした。長期に渡りこの大前提はゆるぎなく盤石で,無条件に当たり前で,無意識的ですらありました。しかし,ときは移り,有意性検定やp値の時代的使命は終わりました。アメリカ統計学会ASAは,2016年3月7日に,p値の誤解や誤用に対処する6つの原則に関する声明をだしました (Wasserstein & Lazar, 2016)。この声明は「『ポストp < 0.05 時代』へ向けて研究方法の舵を切らせることを意図している」(R. Wasserstein (ASA News Releases, 2016)) ものだと言明されています。2016年現在,統計学における著名な学術雑誌バイオメトリカ (Biometrika) の過半数の論文が,ベイズ統計学を利用しています。多くの著名な学術雑誌も同様の傾向です。スパムメールをゴミ箱に捨て,日々,私たちの勉強・仕事を助けてくれるのは,ベイズ統計学を利用したメールフィルタです。ベイズ的画像処理によってデジタルリマスターされ,劇的に美しくよみがえった名作映画を私たちは日常的に楽しんでいます。ベイズ理論が様々な分野で爆発的に活用されています。ベイズ的アプローチなしには,もう統計学は語れません。 有意性検定にはどこに問題があったのでしょう。3点あげます。 Ⅰ.p値とは「帰無仮説が正しいと仮定したときに,手元のデータから計算した検定統計量が,今以上に甚だしい値をとる確率」です。この確率が小さい場合に「帰無仮説が正しくかつ確率的に起きにくいことが起きたと考えるのではなく,帰無仮説は間違っていた」と判定します。これが帰無仮説の棄却です。しかし帰無仮説は,偽であることが初めから明白です。それを無理に真と仮定することによって,検定の論理は複雑で抽象的になります。例えば2群の平均値の差の検定における帰無仮説は「2群の母平均が等しい (μ1=μ2)」というものです。しかし異なる2つの群の母平均が,小数点以下を正確に評価して,それでもなお等しいということは科学的にありえません。帰無仮説は偽であることが出発点から明らかであり,これから検討しようとすることが既に明らかであるような論理構成は自然な思考にはなじみません。p値は土台ありえないことを前提として導いた確率なので,確率なのに抽象的で実感が持てません。このことがp値の一番の弊害です。以上の諸事情を引きずり,「有意にならないからといって,差がないとは積極的にいえない」とか「有意になっても,nが大きい場合には意味のある差とは限らない」とか,いろいろな言い訳をしながら有意性検定をこれまで使用してきたのです。しかし,これらの問題点はベイズ的アプローチによって完全に解消されます。ベイズ的アプローチでは研究仮説が正しい確率を直接計算するからです。 Ⅱ.nを増加させるとp値は平均的にいくらでも0に近づきます。これはたいへん奇妙な性質です。nの増加にともなって,いずれは「棄却」という結果になることが,データを取る前に分かっているからです。有意性検定とは「帰無仮説が偽であるという結論の下で,棄却だったらnが大きかった,採択だったらnが小さかったということを判定する方法」と言い換えることすらできます。ナンセンスなのです。これでは何のために分析しているのか分かりません。nを増加させると,p値は平均的にいくらでも0に近づくのですから,BIGデータに対しては,あらゆる意味で有意性検定は無力です。どのデータを分析しても「高度に有意」という無情報な判定を返すのみです。そこで有意性検定ではnの制限をします。これを検定力分析の事前の分析といいます。事前の分析では有意になる確率と学術的な対象の性質から逆算してnを決めます。しかし検定力分析によるサンプルサイズnの制限・設計は纏足 と同じです。統計手法は,本来,データを分析するための手段ですから,たくさんのデータを歓迎すべきです。有意性検定の制度を守るために,それに合わせてnを制限・設計することは本末転倒です。ベイズ推論ではnが大きすぎるなどという事態は決して生じません。 Ⅲ.伝統的な統計学における平均値の差・分散の比・クロス表の適合などの初等的な統計量の標本分布を導くためには,理系学部の2年生程度の解析学の知識が必要になります。すこし複雑な統計量の標本分布を導くためには,統計学のために発達させた分布論という特別な数学が必要になります。それでも,どの統計量の標本分布でも求められるという訳ではなく,導出はとても複雑です。検定統計量の標本分布を導けないと,(教わる側にとっては)統計学が暗記科目になってしまいます。この検定統計量の確率分布は何々で,あちらの検定統計量の確率分布は何々で,のように,まるで歴史の年号のように,いろいろと覚えておかないと使えません。暗記科目なので,自分で工夫するという姿勢が育つはずもなく,紋切り型の形式的な使用に堕す傾向が生じます。でもベイズ統計学は違います。マルコフ連鎖モンテカルロ (MCMC) 法の本質は,数学Ⅱまでの微積分の知識で完全に理解することが可能です。標本分布の理論が必要とする数学と比較すると,それは極めて初等的です。生成量を定義すれば,直ちに事後分布が求まり,統計的推測が可能になります。文科系の心理学者にとっても,統計学は暗記科目ではなくなります。 学問の進歩を木の成長にたとえるならば,平行に成長した幾つかの枝は1本を残して冷酷に枯れ落ちる運命にあります。枯れ果て地面に落ちた定理・理論・知識は肥やしとなり,時代的使命を終えます。選ばれた1本の枝が幹になり,その学問は再構築されます。教授法が研究され,若い世代は労せず易々と古い世代を超えていく。そうでなくてはいけません。 統計学におけるベイズ的アプローチは,当初,高度なモデリング領域において急成長しました。有意性検定では,まったく太刀打ちできない領域だったからです。議論の余地なくベイズ的アプローチは勢力を拡大し,今やその地位はゆるぎない太い枝となりました。 しかし統計学の初歩の領域では少々事情が異なっています。有意性検定による手続き化が完成しており,いろいろと問題はあるけれども,ツールとして使えないわけではありません。なにより,現在,社会で活躍している人材は,教える側も含めて例外なく有意性検定と頻度論で統計教育を受けています。この世代のスイッチングコストは無視できないほどに大きいのです。このままでは有意性検定と頻度論から入門し,ベイズモデリングを中級から学ぶというねじれた統計教育が標準となりかねません。それでは若い世代が無駄な学習努力を強いられることとなります。教科教育学とか教授学習法と呼ばれるメタ学問の使命は,不必要な枝が自然に枯れ落ちるのを待つのではなく,枝ぶりを整え,適切な枝打ちをすることにあります。ではどうしたらいいのでしょう。どのみち枝打ちをするのなら,R.A.フィッシャー卿の手による偉大な「研究者のための統計的方法」にまで戻るべきです。「研究者のための統計的方法」の範囲とは,「データの記述」「正規分布の推測」「独立した2群の差の推測」「対応ある2群の差の推測」「実験計画法」「比率・クロス表の推測」です。これが統計学の入門的教材の初等的定番です。文 献Wasserstein, R. L. & Lazar, N. A. (2016). The ASA's statement on p-values: context, process, and purpose, The American Statistician, DOI:10.1080/00031305.2016.1154108ASA News Releases (2016). American Statistical Association releases statement on statistical significance and p-Values. (http://www.amstat.org/newsroom/pressreleases/P-ValueStatement.pdf)R.A.フィッシャー(著) 遠藤健児・鍋谷清治(訳) (1970). 研究者のための統計的方法 森北出版 (Fisher, R. A. (1925). Statistical Methods for Research Workers, Oliver and Boyd: Edinburgh.)1 纏足(てんそく)とは,幼児期から足に布を巻き,足が大きくならないようにして小さい靴を履けるようにした,かつて女性に対して行われていた非人道的風習です。靴は,本来,足を保護するための手段ですから,大きくなった足のサイズに靴を合わせるべきです。靴に合わせて足のサイズを制限・整形することは本末転倒であり,愚かな行為です。他の靴を履けばよいのです。
著者
山王丸 靖子 秋山 隆 沼尻 幸彦 寺尾 哲 和田 政裕
出版者
日本食生活学会
雑誌
日本食生活学会誌 (ISSN:13469770)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.197-204, 2016 (Released:2016-04-27)
参考文献数
26
被引用文献数
2

Nowadays, in Japan, there is a high ratio of women who complain of chilliness. In this study, the effects of lifestyle and frequency of certain types of food intake on chilliness among female college students were studied using a questionnaire (n=215). According to the diagnostic criteria for chilliness, 42% of all responders routinely experienced chilliness. The influence of food and lifestyle habits on chilliness was ana lyzed using logistic regression analysis. First, exploratory factor analysis was per formed on 41 items about food and life habits. These items combined into 4 factors with a few items forming their own one-item factor. Using logistic regression analysis, these factors, together with BMI (Body Mass Index), were examined to see whether they predicted the relative risk of respondents for chilliness. The factors “Eating more vegetables”, “Eating more noodles” and “Feeling stress” were shown by the regression analysis to be positively related to experiencing chilli ness (p<0.05). An increase in the consumption of noodles by one level of intensity on a Likert scale of one to five is associated with a 4.75 relative risk of chilliness (given average levels of BMI); an increase in stress by one level (on a one to five Likert scale) is associated with a 3.07 relative risk; an increase in the consumption of vegeta bles by one level (one to five Likert scale) is associated with a 5.56 relative risk. BMI was negatively related to chilliness (p<0.05). These results suggest that to prevent chilliness women should avoid primarily eat ing vegetables and foods like noodles (which are typically eaten by themselves, unlike rice, which is usually part of a balanced meal). Eating a variety of nutritionally-bal anced foods will help with chilliness as well as maintaining a proper weight. The ne cessity of reducing stress is also clear.
著者
尾崎 庄一郎 秋山 隆彦 森田 剛夫 久米川 昌浩 長瀬 敏夫 上原 宣昭 星 昭夫
出版者
The Pharmaceutical Society of Japan
雑誌
Chemical and Pharmaceutical Bulletin (ISSN:00092363)
巻号頁・発行日
vol.38, no.11, pp.3164-3166, 1990-11-25 (Released:2008-03-31)
参考文献数
17
被引用文献数
12 12

Various kinds of 5'-O-unsaturated acyl 5-fluorouridines were synthesized to obtain 5-fluorouridine derivatives with low toxicity and high antitumor activity. Antitumor activity of the compounds against L-1210 leukemia in mice was examined, and the 5'-O-4-opentenoyl derivative showed the highest antitumor activity.
著者
秋山 隆太郎
出版者
奈良先端科学技術大学院大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

多細胞生物の器官は、その機能に応じた様々な3 次元構造をとるが、肺胞や腎臓のボーマン嚢にみられる球形もその基本構造の一つである。実際の生体内では、真球形をとるわけではなく、各組織での機能発現に適した半球や楕円体に調節されていると考えられるが、そのしくみはよくわかっていない。本研究では、ゼブラフィッシュの左右差決定器官クッペル胞の楕円体形成をモデルとして、器官の楕円体形成と機能(ノード流・左右差)を定量的に解析・理解することで、器官形成における3 次元構造と機能との相互作用を明らかにする。
著者
秋山 隆 豊田 秀樹
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.68, no.3, pp.250-265, 2020-09-30 (Released:2021-02-18)
参考文献数
47
被引用文献数
1

テストデータを対象として,受験者の潜在的な特性と項目特性を分離して分析するためのテスト理論に項目反応理論(IRT)がある。通常,IRTでは受験者が所属する下位集団に拘らず,同じ特性に関する値を有していれば,同一項目に正答する確率も同じである仮定される。もし,性別や人種といった属性別で,同一項目に対する正答確率が変化する場合,当該項目は特異項目機能(DIF)を有するといわれる。測定の公平性の観点からDIFは望ましくないため,DIFの分析は大きな関心を寄せられてきた。IRTに基づいたDIFの検討において,広く用いられてきたDIF検出法は統計的仮説検定に基づいている。本研究では,ラッシュモデルにおける均一DIFを対象として,ベイズモデリングに基づいたDIF検討方法を提案する。提案手法を用いることで,下位集団ごとに項目母数を別々に推定し,更に等化係数を推定するという手順を一括して扱うことができる。また,DIFの大きさとそれに対する確信度を考慮可能な指標の提案も行う。
著者
秋山 隆志郎 小平 さち子
出版者
日本教育メディア学会
雑誌
放送教育研究 (ISSN:03863204)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.31-42, 1988-06-30 (Released:2017-07-18)

低年齢幼児のためのテレビ番組開発の一環として,ごく短いアニメ「こんなこいるかな」を制作した。このアニメは,実験室内の研究では,高い注視率であった。しかし家庭でもよく注視されるか,また幼児に好まれたかどうかは,実験室内のデータのみでは明らかにならない。そこで,一次調査(昭和61年11月)と二次調査(昭和62年2月)の2回にわけて,2歳〜3歳の幼児,約270人に,家庭でこれを見てもらい,反応を調査した。また,家庭において,テレビ「こんなこいるかな」を見るだけでなく,同じキャラクターの載っている月刊雑誌を付加情報として配布した場合,幼児の視聴行動は,どう変化するかも確かめた。
著者
豊田 秀樹 中村 健太郎 大橋 洸太郎 秋山 隆
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.304-316, 2019
被引用文献数
1

<p> 本研究では,大学における授業評価アンケートについて,学生が授業において最重要視する知見は何かを明らかにする方法として,一問一答形式を用いた自由記述による意見収集に着目した。</p><p> ここでの一問一答形式とは,全員がそれぞれ最初に1つ挙げる評価,印象に焦点を当て,これを知見と呼び,自由記述型授業評価データにおいて得られる主要な知見を得る方式を指している。この際における知見の得られ方の寡占的(支配的)な程度を,ジップ分布の母数によって表現した。また,ジップ分布から算出される累積確率を用いて,観測された印象の飽和度について,特定の飽和度を達成するために必要な異なる要素(評価,印象)の数と併せて結果を示した。分析には,教授者が想定しないような意見の回答に対応するため,要素数を無限とする場合と,あらかじめ決まった要素から回答するそれぞれの場合に対応したジップ分布を用いた計算結果を示した。実際の講義の評価データの分析を通じ,本方法によって,自由記述による授業評価で得られる知見に対し,少ない特定の知見が全体の中で支配的であるのか,それとも印象,評価が定まらず,多様な知見が散見されているのかについて,客観的な指標に基づく考察が可能となることが示された。</p>
著者
杉山 健太郎 古市 格 渡邉 航之助 川口 耕平 秋山 隆行 井上 拓馬 小河 賢司
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.640-643, 2015-09-25 (Released:2015-12-03)
参考文献数
5

完全隔壁型の膝蓋上滑膜ひだ障害の1例を経験したので報告する.〈症例〉68歳女性.半年前から右膝痛を自覚,その後症状改善ないため当科受診した.当科初診時,右膝蓋上部に径約3 cm大の圧痛を伴う腫瘤を触知した.MRI上,膝蓋上嚢に隔壁を有する嚢胞性病変を認め,内部は炎症性変化が疑われた.関節鏡視下に隔壁を確認し,同部と膝関節腔内とを交通させるよう隔壁および滑膜切除を行い,術後は右膝痛改善を認めた.〈考察〉膝蓋上滑膜ひだ障害の画像的特徴として,MRIで膝蓋上嚢部にT1強調像で低信号,T2強調像で高信号の関節液貯留を認め,内部に低信号の隔壁を有するとの報告がある.治療は関節鏡下での隔壁切除で症状軽快すると報告されている.本症例でも同様の画像所見を認め,関節鏡視下での隔壁および滑膜切除術が症状改善に有効であった.
著者
秋山 隆志郎 小平 さち子
出版者
日本教育メディア学会
雑誌
放送教育研究 (ISSN:03863204)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.31-42, 1988

低年齢幼児のためのテレビ番組開発の一環として,ごく短いアニメ「こんなこいるかな」を制作した。このアニメは,実験室内の研究では,高い注視率であった。しかし家庭でもよく注視されるか,また幼児に好まれたかどうかは,実験室内のデータのみでは明らかにならない。そこで,一次調査(昭和61年11月)と二次調査(昭和62年2月)の2回にわけて,2歳〜3歳の幼児,約270人に,家庭でこれを見てもらい,反応を調査した。また,家庭において,テレビ「こんなこいるかな」を見るだけでなく,同じキャラクターの載っている月刊雑誌を付加情報として配布した場合,幼児の視聴行動は,どう変化するかも確かめた。
著者
宮崎 寿子 秋山 隆志郎 坂元 昴
出版者
日本教育メディア学会
雑誌
視聴覚教育研究 (ISSN:03867714)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.13-42, 1981

テレビ視聴の低年齢化は,最近の多くの報告書が示す通り,確実に進行している。極く最近のNHK放送世論調査所による"幼児の生活とテレビ"に関する調査(1980, 10月)でも,2歳児の一日平均視聴時間は,首都圏・地方を問わず,2時間を越している。特に1〜3歳児は4〜6歳児に比べて午前中の視聴時間が長く,未だ保育園に行かない在宅幼児が午前中に放送される幼児番組をかなり視聴していることがわかる。これらのデータからみても,現在の幼児番組においては,対象児の低年齢化と,その年齢に即した番組制作が要請されていると言えよう。このような状況を踏まえて発足した2歳児テレビ番組研究会(代表:白井常)では,1979年から2歳児番組の形成的研究と番組の効果研究を行なってきたが,本稿では1980年度に行なった4月と9月の実験の中から,"技能・生活習慣"に関するテレビセグメントと,"お話"に関するテレビセグメントを取りあげ,これらのセグメントに対する,2歳児の注視行動を中心に論ずる。
著者
吉野 和樹 久保野 敦史 田中 克史 秋山 隆一
出版者
一般社団法人 日本液晶学会
雑誌
日本液晶学会討論会講演予稿集 2001年 日本液晶学会討論会 (ISSN:18803490)
巻号頁・発行日
pp.301-302, 2001-09-24 (Released:2017-01-10)

The visco-clastic properties for binary mixtures of 6OCB/8OCB are investigated by a light scattering technique with an application of voltages. The mixtures exhibit a reentrant nematic phase between the smectic and crystal phases in the range of 22.0 to 29.5 wt% of 6OCB content. The viscosity and the elastic constant increase with cooling both in the nematic and reentrant nematic phases. It is also found that the viscosity and the elastic constant show an anomalous increase near the phase transition temperature, namely a pretransitional phenomenon. The activation energies for viscosity differ in the nematic and reentrant nematic phases, depending on the 6OCB content. Moreover, the visco-elastic behavior depends on the specific time during which the sample is kept in the smectic A phase. These results confirm that the formation of dimers plays an important role in the reentrant phenomenon of this system.
著者
桑野 洋輔 古市 格 井上 拓馬 小河 賢司 秋山 隆行 渡邉 航之助 荒木 貴士
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.572-576, 2016-09-25 (Released:2016-12-06)
参考文献数
12
被引用文献数
2

【はじめに】頚椎外傷後に咽頭後間隙血腫を生じ,保存的治療で軽快した5例を経験したので報告する.【症例】年齢は47~89歳(平均63.8歳).男性4例,女性1例.交通外傷によるものが3例,転落外傷によるものが2例であった.全例に頚椎骨折を認め,1例は頚髄損傷を合併していた.抗血小板薬を常用しているものが1例あった.咽頭後間隙の最大値は11~37mmであった.2例に気管挿管を必要とし,1例は受傷後3時間で気道閉塞症状が出現したため行い,1例は予防的に行った.抜管までには12~14日間を要した.3例は気管挿管を施行せずに自然軽快した.【考察】咽頭後間隙血腫は遅発性に気道閉塞を引き起こし致命的となることもあるため,その可能性を念頭に置いた治療が必要である.
著者
豊田 秀樹 中村 健太郎 大橋 洸太郎 秋山 隆
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.304-316, 2019-12-30 (Released:2020-01-24)
参考文献数
15
被引用文献数
1

本研究では,大学における授業評価アンケートについて,学生が授業において最重要視する知見は何かを明らかにする方法として,一問一答形式を用いた自由記述による意見収集に着目した。 ここでの一問一答形式とは,全員がそれぞれ最初に1つ挙げる評価,印象に焦点を当て,これを知見と呼び,自由記述型授業評価データにおいて得られる主要な知見を得る方式を指している。この際における知見の得られ方の寡占的(支配的)な程度を,ジップ分布の母数によって表現した。また,ジップ分布から算出される累積確率を用いて,観測された印象の飽和度について,特定の飽和度を達成するために必要な異なる要素(評価,印象)の数と併せて結果を示した。分析には,教授者が想定しないような意見の回答に対応するため,要素数を無限とする場合と,あらかじめ決まった要素から回答するそれぞれの場合に対応したジップ分布を用いた計算結果を示した。実際の講義の評価データの分析を通じ,本方法によって,自由記述による授業評価で得られる知見に対し,少ない特定の知見が全体の中で支配的であるのか,それとも印象,評価が定まらず,多様な知見が散見されているのかについて,客観的な指標に基づく考察が可能となることが示された。
著者
尾崎 庄一郎 秋山 隆彦 池 祥雅 森 春樹 星 昭夫
出版者
The Pharmaceutical Society of Japan
雑誌
Chemical and Pharmaceutical Bulletin (ISSN:00092363)
巻号頁・発行日
vol.37, no.12, pp.3405-3408, 1989-12-25 (Released:2008-03-31)
参考文献数
13
被引用文献数
14 15

With the aim of diminishing the toxicity of 5-fluorouridine (1) and obtaining biologically active derivatives of 1, various kinds of 5'-O-acyl-8-fluorouridines 2 were synthesized. The antitumor activity of the compounds against L-1210 leukemia in mice was examined. The 5'-O-heptanoyl derivative 2h showed the highest antitumor activity.
著者
出原 千寛 石原 みさ子 北嶋 宏美 木村 友哉 秋山 隆一 四方 實彦
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.38 Suppl. No.2 (第46回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.CdPF2036, 2011 (Released:2011-05-26)

【目的】 頸椎除圧術後に、新たに第5頸髄節領域を中心とした麻痺が5~30%の確率で生じる(以下C5麻痺)ことがある。C5麻痺について多数の研究報告があるが、発生機序や病態、効果的な治療方法などはまだ明らかにされていない。また、C5麻痺の発生から回復までの経過を追った報告は少ない。C5麻痺患者に対して適切な治療の選択や患者教育を行うために、麻痺の回復過程の理解は必須である。 我々は第21回京都府理学療法士学会においてC5麻痺患者の麻痺の回復が良好であった例と遅延した例を比較し、遅延例の特徴を回復遅延項目と定義し報告した。今回我々はC5麻痺患者の回復過程を詳細に示し、回復遅延項目を活用した予後予測が可能であるか検討した。【方法】 2009年1月から2010年9月までに当院にて頸椎除圧術を施行した208例のうち、15例が術後にC5麻痺症状を呈した(発生率7.2%)。そのうち第5頚髄節の支配筋の麻痺を呈した13例(男性10名、女性3名、年齢:67.9±7.3)を対象とした。 算定上限日数(150日)内にMMT3以上に至らない例を予後不良と定義した。回復遅延項目は、(1)頸椎後縦靱帯骨化症もしくは歩行障害(頸椎機能判定基準の下肢の項目が1.5点以下)を有している(2)術前の肩・肘関節のMMTが3以下(3)術前の自覚症状発生から手術までの期間が1年以上(4)C5麻痺が術後翌日に発生している(5)麻痺発生時の麻痺筋のMMTが1もしくは0とした。 対象者の麻痺発生から最終評価までの期間(平均116.0±5.0週)の三角筋前部のMMT、端座位での肩屈曲の自動関節可動域(以下、A-ROM)のデータを、カルテから後方視的に調査した。本研究は倫理審査委員会で了承された(2010-1)。【説明と同意】 頸椎除圧術の対象者に対して、術前に研究・学会発表等におけるデータの活用を書面にて説明し了承を得た。【結果】 C5麻痺患者のうち算定上限日数以上もしくはMMT3以上に至るまで経過を追えた症例は、13例中7例であった。7例中5例が予後良好、2例が予後不良であった。予後良好であった5例のうち4例は、回復遅延項目に該当せず3ヶ月以内にMMT4以上に回復した。残りの1例は2項目に該当し、麻痺発生から5ヵ月後にMMT3に至った。予後不良であった2例は3~4項目に該当し、算定上限日数を超過してもMMT3以上に至らなかった。 回復遅延項目数が2項目だった1例のA-ROMは、回復遅延項目に当てはまらなかった4例と比較して、麻痺発生時から算定上限日数まで緩やかな回復過程であった。予後不良であった2例のA-ROMは、麻痺発生時から最終評価時までほぼプラトーであった。【考察】 回復遅延項目数が少ないほどMMT3以上に回復するまでの期間が短く、項目数が多い症例ほど経過が長くなる傾向であった。 A-ROMの結果からC5麻痺の回復過程は以下の3つに分類できる。1~3ヶ月で回復が見込まれる群(以下、グループA)、回復するまでに長期間を要する群(以下、グループB)、回復の見込みが少ない群(以下、グループC)である。また、これらのグループの回復遅延項目数は、グループAが0個、グループBが2個、グループCが3~4個であり、回復遅延項目数を活用することでC5麻痺患者の予後予測が可能であることがわかった。 細野らはC5麻痺の予後は良好で数ヶ月で自然回復すると報告している。しかし、実際には経過が長くなる患者や予後不良な例を経験することがある。グループAに対しては、麻痺の回復に応じて筋力増強訓練や動作練習など機能的な訓練を積極的に行っていく必要があるが、グループBやグループCに対しては、理学療法を行う際に代償運動や筋の過用・廃用に注意を払う必要がある。そのため、麻痺筋に対して正しい運動方向での収縮を学習させたり、麻痺筋以外の筋群の二次的な筋力低下を防ぐ治療や関節可動域訓練を行ったりするなど二次障害を予防する治療が中心となってくる。 このようにC5麻痺発生直後にグループに分類し予後予測をすることで、患者の経過に合わせた適切な治療の選択が可能となり、患者に対するC5麻痺の説明や患者教育をより詳細に行うことができる。【理学療法学研究としての意義】 C5麻痺患者の回復過程を詳細に示した報告はなく、臨床において予後予測が困難であった。C5麻痺患者の回復過程を示し、回復過程を3つの群に分類することができた。回復遅延項目数によってC5麻痺患者の麻痺発生時点での予後予測が可能となった。これらは、理学療法を行う際のプログラムの立案やゴール設定の際の指標となる。さらに患者へのC5麻痺の情報提供がより的確に行える。
著者
豊田 秀樹 秋山 隆 岩間 徳兼
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.209-225, 2014

テストを構成している項目の性質を調べる際の有用な方法の一つとして項目特性図がある。項目特性図は設問項目における受験者の正答率を用いて, 当該項目がどのような性質, 特性を有していたのかを分析するための道具である。項目特性図作成の際に, 分析者は受験者を任意の数の群に分ける作業が必要となる。経験的に5群に分割されることが多いものの, 群数を決定するための明確な基準, 根拠は知られていない。群への分割数の選択について, 統計的な基準や根拠を与えることができれば, 項目特性図を用いて項目の性質を調べる上で便利である。本論文では項目特性図における情報量規準を用いた群数の選択法を論じる。シミュレーションを行い, 与えられた真の群数を推奨可能であることが示唆された。また, 実データへの適用例を通じて提案手法が妥当な群数を推奨可能であることを示す。
著者
田原 秀男 今西 正昭 石井 徳味 西岡 伯 松浦 健 秋山 隆弘 栗田 孝
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.89, no.10, pp.854-857, 1998-10-20
参考文献数
7

生体腎移植後の機能廃絶腎周囲に発生した粘液型脂肪肉腫の1例を経験したので報告する.患者は19歳男性.1988年6月15日母親をドナーとして生体腎移植を施行した.腎移植3年後慢性拒絶反応が徐々に増悪し,1991年6月に透析導入となった.1992年1月腹部腫瘤に気付き受診した.CTにて移植腎周囲に巨大な低吸収像を示す腫瘤を認めた.移植腎を一塊として摘出した.腫瘤は病理組織学的に粘液型脂肪肉腫と診断された.腫瘍細胞はHLA-DRB1 DNA typingによって,レシピエント細胞由来のものであることが証明された.手術後再発もなく外来にて経過観察していたが1993年脳内出血にて死亡した.
著者
山口 惠三 大野 章 石井 良和 舘田 一博 岩田 守弘 神田 誠 秋沢 宏次 清水 力 今 信一郎 中村 克司 松田 啓子 富永 眞琴 中川 卓夫 杉田 暁大 伊藤 辰美 加藤 純 諏訪部 章 山端 久美子 川村 千鶴子 田代 博美 堀内 弘子 方山 揚誠 保嶋 実 三木 誠 林 雅人 大久保 俊治 豊嶋 俊光 賀来 満夫 関根 今生 塩谷 譲司 堀内 啓 田澤 庸子 米山 彰子 熊坂 一成 小池 和彦 近藤 成美 三澤 成毅 村田 満 小林 芳夫 岡本 英行 山崎 堅一郎 岡田 基 春木 宏介 菅野 治重 相原 雅典 前崎 繁文 橋北 義一 宮島 栄治 住友 みどり 齋藤 武文 山根 伸夫 川島 千恵子 秋山 隆寿 家入 蒼生夫 山本 芳尚 岡本 友紀 谷口 信行 尾崎 由基男 内田 幹 村上 正巳 犬塚 和久 権田 秀雄 山口 育男 藤本 佳則 入山 純司 浅野 裕子 源馬 均 前川 真人 吉村 平 中谷 中 馬場 尚志 一山 智 藤田 信一 岡部 英俊 茂籠 邦彦 重田 雅代 吉田 治義 山下 政宣 飛田 征男 田窪 孝行 日下部 正 正木 浩哉 平城 均 中矢 秀雄 河原 邦光 佐野 麗子 松尾 収二 河野 久 湯月 洋介 池田 紀男 井戸向 昌哉 相馬 正幸 山本 剛 木下 承皓 河野 誠司 岡 三喜男 草野 展周 桑原 正雄 岡崎 俊朗 藤原 弘光 太田 博美 長井 篤 藤田 準 根ヶ山 清 杉浦 哲朗 上岡 樹生 村瀬 光春 山根 誠久 仲宗根 勇 岡山 昭彦 青木 洋介 草場 耕二 中島 由佳里 宮之原 弘晃 平松 和史 犀川 哲典 柳原 克紀 松田 淳一 河野 茂 康 東天 小野 順子 真柴 晃一
出版者
日本抗生物質学術協議会
雑誌
The Japanese journal of antibiotics (ISSN:03682781)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.346-370, 2009-08-25
被引用文献数
26
著者
西岡 伯 石井 徳味 植村 匡志 国方 聖司 神田 英憲 金子 茂男 松浦 健 秋山 隆弘 栗田 孝
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.78, no.5, pp.907-911, 1987-05-20

前報において確立された超音波Bモード・パルスドップラー複合装置を用いた移植腎血流測定法の臨床応用を目的とし,腎移植31症例において,本法を施行した.その際,移植腎血流の良否を判定する為に,拡張期血流を重視した,IからIV型のパターンに分類した.その結果,血流パターンのみでは,その病態を正確に把握することは困難であるが,同一症例の同一部位における血流パターンの推移は,有用な情報をもたらす事が判明した.また,本法は腎移植後無尿期に発生する急性拒絶反応をも診断可能であった.他方,腎機能との対比においては,腎実質部血流パターンが,腎門部血流パターンに比し良好な相関が得られた.本法による血流測定は,腎移植の術後管理に簡便でかつ有用な方法である事を報告した.