著者
坂口 由佳
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.290-310, 2013 (Released:2014-03-03)
参考文献数
21
被引用文献数
2

本研究は, 自傷行為経験者の視点から, 自傷行為をする生徒たちに対する学校での対応を検討したものである。自傷行為経験者14名によって書かれたブログから学校の先生たちの対応に関する記事を抜粋し, グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて分析を行った。その結果, 自傷行為をする生徒たちは先生からの対応について大きく2つの体験プロセスを経ていた。一つは《自傷行為をする生徒たちにとってサポートされたと感じる体験プロセス》であり, この体験を重ねる中で, 生徒たちは自傷行為をやめようと思えるようになっていく。もう一方は《自傷行為をする生徒たちにとって冷たく見放されたという形で体験がすすむプロセス》である。この体験を経ると, 自傷行為をする生徒たちは心を閉ざし, 先生たちとの関係を絶つようになる。一度つながったとしてもその後の先生たちの対応によっては容易に関係を切り, 一旦先生たちとの距離を置くようになるとサポートされたと感じる体験プロセスに戻ることはほとんどない。しかし, 先生たちからのこまめな声かけなど日常的なサポートを繰り返し受けることでサポートされたと感じるプロセスに戻っていくというルートが一つ認められた。
著者
榎本 淳子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.180-190, 1999-06-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
18
被引用文献数
27 14

本研究は, 青年期の友人関係の発達的な変化を明らかにすることが目的である。青年期の友人関係を友人との「活動的側面」と友人に対する「感情的側面」の2側面から捉え, これらの関連とそれぞれの発達的な変化を質問紙を用いて検討した。対象者は中学生 (326名), 高校生 (335名), 大学生 (247名) の計 908名であった。因子分析の結果, 活動的側面については4因子 (「相互理解活動」, 「親密確認活動」, 「共有活動」, 「閉鎖的活動」) が見いだされた。発達的変化としては, 男子は友人と遊ぶ関係の「共有活動」からお互いを尊重する「相互理解活動」へと変化し, 女子は友人との類似性に重点をおいた「親密確認活動」から他者を入れない絆を持つ「閉鎖的活動」へと変化し, その後「相互理解活動」へ変化した。感情的側面については, 因子分析から5因子 (「信頼・安定」, 「不安・懸念」, 「独立」, 「ライバル意識」, 「葛藤」) が見出された。また, 発達的変化は, あまり見られなかった。2側面の関連については, どの活動的側面も感情的側面の「信頼・安定」と関連しており, 親しい友人とは信頼し安定した感情で友人関係を築いていることがわかった。また, 活動的側面の「親密確認活動」は主に感情的側面の「不安・懸念」と関連しており, 「相互理解活動」は「独立」と関連していた。
著者
依田 新 大橋 正夫 島田 四郎
出版者
日本教育心理学協会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.1-9,64, 1969

小学校へ入学したばかりの1学級の児童に担任の教師が個別に面接して, 好きな友達と嫌いな友達の名前を無制限にあげさせた。こうして毎月1回3年生の終りまで合計36回にわたって学級内の友人構造を調査した。これを主として数量的に分析した結果次のことが明らかとなった。<BR>(1)好きな友達としてあげる人数の平均は第1回では1人以下であったのが次第に増加し, 終には3人を越すようになつた。あげた嫌いな友達の数はそれより稍少いが, 大体類似の傾向をたどつて増加する。<BR>(2)好きな友達として女子が指名するのはほとんど最初から女子が多いが, 男子が男子を多くあげるようになつたのは2年生の3学期に入つてからである。とれに対して嫌いな友達としてあげるのは, 男女ともはじめから男子が多い。<BR>(3)多数から集中的に選ばれるスターは, 「好きな友達」ではほとんど女子, 「嫌いな友達」ではほとんどが男子である。両方ともその地位はかなり安定しているが, 特に前者はそれが顕著である。<BR>(4)本研究の年齢範囲では選択行動の一貫性は発達に伴って増大しているとはいえない。しかし積極的選択の方が拒否的選択よりも常に高い。<BR>(5)好きな友達の相互選択の量は一般に男子同志より女子同志の間の方が多く, 又次第に多くなるが, 異性間のそれは2年生を山とし3年生ではかえつて少くなっている。又相互依存の程度は次第に高くなって行く。相互に嫌い合つている組の数には性による差がなく, 又異性間のそれは3年生に急増している。<BR>以上のごとは一般に言われているよりも早く既に1年生頃から性的対立がみら札それが3年生にはかなり顕著になることを一貫して裏づけているように思われる。しかもそれはまず女子の方の側から現れ, ややおくれて男子の方にも現われることを示している。しかしこれは本研究の資料が面接調査によるものであるということに幾分関係があるかもしれない。
著者
落合 良行
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.233-238, 1982-09-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
6
被引用文献数
1 1
著者
林 創
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.43-53, 2002-03
被引用文献数
1

本研究は,児童(小学1~6年生)を対象(N=378)に,再帰的な心的状態の理解がいつごろ理解できるようになるのかを,「心の理論」研究の二次的信念課題によって検討したものである。既存のアイスクリーム課題(Perher & Wimmer,1985)と誕生日課題(Sullivan et al.,1994)に加えて,簡潔で実施が容易な移動課題を新たに用意し,3つの課題を比較した。さらに,ともに意図的な虚偽を述べている場面で「うそと冗談」を区別させる課題を実施し,再帰的な心的状態の理解との関わりを調べた。その結果,移動課題は誤解や解釈の困難性を招きにくい課題であると同時に,この課題から1年生(6~7歳)で多くの者が二次的信念を理解できることが判明した。また,二次的信念や二次的意図の理解と,「うそと冗談」の区別の正答率に関連があり,うそと冗談を区別する上で再帰的な心的状態の理解が前提となることが確認された。
著者
小林 朋子 櫻田 智子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.430-442, 2012 (Released:2013-06-04)
参考文献数
24
被引用文献数
1

本研究の目的は, 災害を体験した中学生が災害直後から1ヶ月の間にどのようなことを感じ, 考えていたのかを明らかにし, その心理的な変化のモデルを生成することである。2004年の新潟県中越地震を経験した中学生の震災後の作文を, 修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて分析した結果, 56個の概念, そして32個のカテゴリー, さらに5個のカテゴリー・グループが抽出された。災害後に, 家族や友人の安否がわかることで安心感が生まれ, 特に学校で友人に会えたことによって不安が解消されていったことがわかったことから, 学校再開がこころのケアにおいて非常に重要であると考えられた。また, 周囲の状況を冷静に捉え, 「自分の方がまだましだ」と考え対処しようとしたり, 自分だけではなく地域全体が早く復興できるよう願うなど, 自分だけの視点に捉われずに状況を把握していた。そして支援を受けるだけではなく, 「みんなの役に立ちたい」という思いを持っていたことが示された。
著者
堀口 康太 小玉 正博
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.101-114, 2014-06-30 (Released:2015-03-27)
参考文献数
50
被引用文献数
5 2

本研究は, 自己決定理論の枠組を参考にし, 老年期の発達課題を考慮した社会的活動参加動機づけ尺度を作成することを目的として実施された。都市部において社会的活動に参加する60歳から89歳まで424名を対象とした質問紙調査を実施し, 男女278名(男性72名, 女性195名, 不明11名 ; M=72.0歳, SD=5.9)を有効回答として分析を実施した。予備調査によって抽出された暫定版37項目を用いて因子分析を実施し, 最終的に「自己成長の追求」, 「自己の発揮志向」, 「喪失の制御」, 「他者への同調」, 「周囲への貢献希求」の5因子22項目によって構成される社会的活動参加動機づけ尺度が作成された。その後, 作成された尺度を構成している下位尺度について理論上想定された動機づけとの対応・相違が検討され, 尺度の妥当性・信頼性が確認された。本研究で作成された尺度によって, 老年期特有の動機づけを測定することが可能となり, 老年期における社会的活動への参加に関する研究が発展する可能性が示唆された。
著者
森 一夫
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.17-25, 1976-03-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
7

物質観の発達をとらえるにあたって, まず幼児の物質観は素朴実在論的物質観であると措定する。これは, 外界に実在する物質を知覚されるとおりのままの固まり (mass) としてみて, 物質の内的構造の把握にまでは至らないから,(1) 物質の表面的属性だけで判断するために重さの概念は見かけの大きさに従属していて, したがって重量と体積とは概念的に未分化である。(2) 自らの意識に反映されたとおりのままの物質としてとらえているため, 欲求の度合に応じて物質の大きさの知覚に差異が生じる。このような基本的仮説に基づいて実験を行ったところ, 次のような知見が得られた。1. 3才児と4才児では大きい球を重いと判断する傾向が認められる。つまり幼児に関する限り, 視覚が介在すると反Charpentier効果ともいうべき傾向が認められる。これは幼児の場合, 重量が見かけの体積に依存しそいるため, Charpentier効果に優先してこれと逆の結果が現われたものであろうと考えられる。2. 4・5才児にpositiveな価値をもつ刺激としてビスケットと,偽ビスケットの2次元的形態の大きさを評価させたところ, 後者よりも前者の方を大きく知覚している。また4・5才児ともビスケットを過大視している。さらに4・5才児に同一標本を, 一方ではpositiveな刺激として「チョコレート」と教示し, 他方のグループではnegativeな刺激として「苦い薬」と教示して3次元的形態の大きさを評価させたところ, 前者の方が後者の場合よりも大きく知覚している。また, 前者の場合には刺激体を過大視しているが, 5才児では後者の場合を実物よりも過小視している。3. 「大きい物体は重く, 小さい物体は軽い」と判断している4才児が, 体積と重量との量的矛盾関係, すなわち「大きいが軽く, 小さいが重い」ことを知覚的体験して, 「大きい」「小さい」「重い」「軽い」という言語でこれを表現できた場合, もはや見かけの体積 (かさ) に惑わされずにかなり正確に重さの弁別が可能になる。そして, このとき重さの弁別に際してCharpentier効果が認められる。
著者
外山 美樹 湯 立 長峯 聖人 黒住 嶺 三和 秀平 相川 充
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.66, no.4, pp.287-299, 2018-12-30 (Released:2018-12-27)
参考文献数
43
被引用文献数
3 2

本研究の目的は,学習性無力感パラダイムを用いて,実験参加者にストレスフルな失敗経験を与えた後の,制御焦点と課題パフォーマンスの関連を検討することであった。促進焦点と防止焦点で基本的な認知能力のパフォーマンスには差はないが,学習性無力感を経験した後の課題においては,促進焦点のパフォーマンスが優位になるという仮説を立てて検証を行った。実験参加者は大学生57名であった。本研究の結果より,学習性無力感を経験した後の課題においては,促進焦点条件のほうが防止焦点条件よりも,パフォーマンスが高いことが示され,仮説が支持された。また,解決可能な課題と解決不可能な課題が混在している課題においては,防止焦点のほうが促進焦点よりも,パフォーマンスが高い傾向にあることが明らかとなった。本研究より,文脈によって促進焦点と防止焦点のどちらのパフォーマンスが優位となるのかが異なることが示された。促進焦点は,挫折や失敗から回復する“レジリエンス”が優れており,一方で,防止焦点は,解決不可能な課題が混在した文脈での課題パフォーマンスが優れていることが示唆された。
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.234, 2020 (Released:2020-11-03)

下記論文は,理事会のもとに設置されたワーキンググループにおいて,研究の手続きに関し,重要な先行研究が引用されておらず,結果的に他者のアイディアを無断で流用したものに該当すると判断されました。著者に説明を求めたところ,先行研究の引用が欠落していたことを認め,論文を取り下げたいとの申し出がありました。理事会は,著者の他の論文では当該先行研究が正しく引用されていることから,下記論文での引用の欠落が不注意によるものと判断し,著者からの論文取り下げの申し出を承認することとしました。 記 吉野 巌・島貫 靜(2019). 小学校算数授業におけるメタ認知育成の試み ――「頭の中の先生」としてのメタ認知の意識づけとメタ認知訓練の効果―― 教育心理学研究, 67, 343-356.
著者
瀬尾 美紀子
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.441-455, 2005-12
被引用文献数
3

本研究は, 学習上の援助要請を促進する介入方法を考案し, その効果を検証することを目的とした。まず, 予備調査において, 援助要請に必要な要因を学習者に尋ねた結果, 主に自己のつまずきを明確化することと, 時間や場所の確保のような環境要因が挙げられた。研究1では, 自己のつまずきを明確化するためのつまずき明確化方略の使用と, 先行研究で影響が示されてきた達成目標や援助要請に対する認知が, 援助要請とどのように関連しているか質問紙調査によって検討した。その結果, 習得目標がつまずき明確化方略を媒介して援助要請と関連することが明らかになった。予備調査と研究1の結果を受けて, 研究2では, 高校2年生を対象に, 質問生成に対してつまずき明確化方略を教授する介入授業を行い, 方略教授の効果について検討した。その結果, 方略を教授することによって, 質問生成量の増加が, 数学の学力の高い集団で確認された。一方, 数学の学力に関係なく, 数学の学力の高い集団と低い集団の両方で, 一般的な質問は減少し, 内容関与的質問が増加して, 質問生成の質的な向上が確認された。
著者
南風原 朝和 芝 祐順
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.259-265, 1987-09-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
9

Three probabilistic indices were proposed for interpreting major types of statistical results obtained in behavioral research: the probability of concordance as an index of correlation, and two versions of the probability of dominance being indices of mean difference in the case of randomized and paired data, respectively. Charts for finding confidence intervals for their population values were provided. The relationships of these indices with certain nonparametric statistics were also noted.
著者
平山 祐一郎
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.399-406, 1993-12-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
5
被引用文献数
2

The word-association instructional strategy for writing compositions, commonly used in elementary and junior high schools, is based on the use of word associations. Even though there are reasons to believe that this strategy can improve written compositions, the evidence available is not as yet conclusive. One of the supposed merits of this strategy is the increase in length of the compositions. To further investigate the above findings, two groups of fifth graders, one experimental (N=30) and one control (N=35), were asked to write two compositions. Both groups did not differ in the first compositions, but did in the second compositions; only the experimental group was found to follow this strategy. Confirming the supposed effect of this strategy on composition length, the compositions of the experimental group were longer than those of the control group. However, the effect of this strategy on composition length in the second composition was limited only to those experimental subjects whose first composition was relatively short.
著者
倉盛 美穂子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.121-130, 1999-06-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
18
被引用文献数
5 3

本研究は, 異なるレベルのペアが共同で課題に取り組む場合, 被験児の話し合いへの取り組みによって, 成績の伸びや話し合い中の内容に違いがみられるのかについて検討を行った。その際に, 下位のレベルの被験児の話し合いへの取り組み (主張性・認知的共感性) が, 成績の伸びや話し合い中の内容に及ぼす影響を検討した。本研究では, 共同で話し合う課題として道徳判断課題を使用した。また, 道徳レベルが下位の被験児を, 主張性, 認知的共感性の高低によって4つのグループに分けた後に, 上位レベルの被験児とのペアリングを行った。被験児は3回の話し合いセッションに参加した後, 再び道徳レベルを測定された。この話し合いセッション後の被験児の道徳レベルの変化と, 話し合いセッション中の発話内容について分析を行った。その結果, 下位レベルの被験児の発話は, 主張性が高いと課題に記述された内容をそのまま述べる発話が多く, 認知的共感性が高いと記述内容だけでなく記述内容を発展した内容の発話が多かった。また, 下位レベルの被験児の主張性と認知的共感性は, 上位レベルの被験児の発話数にも影響していた。このような主張性・認知的共感性の違いが発話に及ぼした影響は, 下位レベルの被験児の課題成績の伸びに反映されることが明らかになった。
著者
大谷 宗啓
出版者
The Japanese Association of Educational Psychology
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.480-490, 2007
被引用文献数
1

本研究は, 高校生・大学生を対象に, 従来, 深さ・広さで捉えられてきた友人関係について, 新観点「状況に応じた切替」を加えて捉え直すことを試み, その捉え直しが有意義なものであるかを質問紙調査により検討した。因子分析の結果, 新観点は既存の観点とは因子的に弁別されること, 新観点は深さ・広さの2次元では説明できないものであることが確認された。また重回帰分析の結果, 新観点追加により友人関係から心理的ストレス反応への予測力が向上すること, 新観点による統制の有無により既存観点と心理的ストレス反応との関連に差異の生じることが明らかとなった。
著者
石津 憲一郎 安保 英勇
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.23-31, 2008-03-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
29
被引用文献数
27 14

臨床場面では過剰適応は非適応的とされているが, 実証的な過剰適応研究は数が少ない。本研究では過剰適応の概念を理論的に整理し, その構造を検討することを第1の目的とした。続いて, 従来言われてきたように過剰適応が個人にとって非適応的に作用するのかを実証的に検討することを第2の目的とした。中学生を対象にした調査の結果, 過剰適応は個人の性格特性からなる内的側面と, 他者志向的で適応方略とみなせる外的側面から構成されることが示された。また, 過剰適応と学校適応感, ストレス反応との関連を検討した結果, 過剰適応の内的側面は学校適応感およびストレス反応にネガティブな影響を与えていたが, 適応方略として捉えられる外的側面は学校適応感を支える一方で, ストレス反応にも正の影響を与えることが示された。本研究の結果, 従来言われてきたこととは異なり, 必ずしも過剰適応的であることが非適応的とはみなすことができないことが示された。しかし, 他者志向的な適応方略で支えられる適応感の影にはストレスの存在が想定され, そのストレスが将来の不適応を予測する可能性について考察を行った。
著者
濱口 佳和 藤原 健志
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.59-75, 2016 (Released:2016-04-11)
参考文献数
55
被引用文献数
4 6

本研究は, 高校生用の自記式能動的・反応的攻撃性尺度の作成, 能動的・反応的攻撃性と身体的攻撃・関係性攻撃との関連, 能動的・反応的攻撃性類型の心理・行動的特徴を明らかにすることを目的として行われた。高校1~3年生2,010名に対して, 中学生対象に開発された自記式能動的・反応的攻撃性尺度を実施し, 探索的因子分析を実施したところ, 中学生同様の6因子が得られた。検証的因子分析の結果, 仲間支配欲求, 攻撃有能感, 攻撃肯定評価, 欲求固執からなる能動的攻撃性と報復意図と怒りからなる反応的攻撃性の斜交2因子モデルが高い適合度を示した。6下位尺度については, 攻撃肯定評価でやや低いものの, 全体として高い信頼性が得られ, 情動的共感尺度や他の攻撃性尺度等との相関により併存的妥当性が実証された。重回帰分析の結果, 性別と能動的・反応的攻撃性によって, 身体的攻撃の約40%, 関係性攻撃の約30%が説明されることが明らかにされた。クラスター分析の結果, 能動的攻撃性・反応的攻撃性共に高い群, 反応的攻撃性のみが高い群の2種類の攻撃性の高い群が発見され, Crapanzanoの重篤モデルを支持する結果が得られた。