著者
阿部 健一
出版者
教育心理学研究
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.73-77, 1988

The development of 3 to 6-year-old children's orienting activity was investigated by examining the accuracy of their estimation as to whether they could jump over an object. Sixty children in each age group were put into three different conditions of jumping. In Standard Condition, the children stood in front of a white line and stepped back as far as possible from where they judged to be able to jump and then were to jump from there. In Physically Loaded Condition, the children performing under the same condition as described above except for a cushion they were to hold in their arms. In Objectively Loaded Condition, the similar procedure was employed except that the children had to jump on a 30×30cm-mat whithout falling out of it.Analyses of the discrepancy between their estimation and actual performance showed that (a) orienting activity developed all through the 3 to 6 year-old bracket, and (b) 6-year-old children's orienting activity was shown differenciating according to conditions.
著者
原田 唯司
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.12-21, 1982
被引用文献数
2

本研究は, まず最初に, 青年期における政治的態度を測定する視点として, 保守的, 革新的それぞれの態度を仮定し, その年齢や性別による差異を知ろうとした (調査1)。次に, 調査IとNHK調査 (1978) の結果の矛盾を解釈するために, 面接調査を実施した (調査II)。<BR>調査Iと調査IIの結果に基づいて, 政治的態度をとらえる視点として, 政治志向 (保守的-革新的) と政治への関与 (積極的-消極的) の両側面を設定した。そして, それぞれの測定尺度を作成し, さらに, 政治的態度に関連する要因を明らかにするために, 質問紙調査を行った (調査III)。<BR>本研究で得られた結果は以下のようである。<BR>1. 青年の政治志向はかなり革新的であり, 保守的傾向は弱い。また, 年齢とともにより革新的傾向が強まり, 保守的傾向は弱まる。<BR>2. 政治的態度には, 政治的関心, 投票やデモ, 陳情の有効性の感覚, 政治的な団体への好意や興味, 社会をよくするための活動などの要因が関連している。社会統計学的要因はあまり関連を持たない。
著者
平石 賢二
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.320-329, 1990-09-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
50
被引用文献数
3 3

In the present study, the structure of self-consciousness as an index of psychological health in adolescence was examined. At first, items were gathered using data from clinical case studies on adolescents in order to develop a questionnaire apparatus. It consisted of four subscales which were categorized in terms of two axes (toward others-toward self and healthy-unhealthy). The questionnaire was subsequently administered to 537 high school students and 386 undergraduate students. The result of a two-step hierachical principal component method (principal component analysis -oblique promax rotation) showed three primary components at each subscale and two higher components. The two secondary components were named “sense of self -establishment” and “sense of self-diffusion,” and these components were considered as an index of psychological health in adolescence.
著者
中井 大介
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.66, no.4, pp.263-275, 2018-12-30 (Released:2018-12-27)
参考文献数
23
被引用文献数
5

本研究では,教師との関係の形成・維持に対する動機づけと,教師への援助要請場面における利益とコストの予期,および相談行動との関連を検討した。中学生288名を対象に質問紙調査を実施した。第一に,担任教師との関係の形成・維持に対する動機づけが担任教師に対する相談行動の利益・コストの予期を媒介し,担任教師に対する相談行動に及ぼす影響を性別に検討した。その結果,(a)「内的調整」「同一化」といった自律的動機づけが主に相談実行の利益の予期と正の関連,「取り入れ」「外的調整」といった統制的動機づけが主に相談実行のコストの予期と正の関連を示すこと,(b)その関連の様相は性別によって異なること,(c)主に自律的動機づけである「内的調整」が相談行動と正の関連,相談回避の利益の予期である「問題の抱え込み」が相談行動と負の関連を示すことが明らかになった。(d)また,動機づけで調査対象者を類型化した結果,すべての動機づけが高い「高動機型」は,他の類型に比べ相談実行の利益の予期が高い傾向にあるだけでなく,相談実行のコストの予期も高い傾向にある中で,より相談行動の得点が高いなど,類型によって援助要請の特徴が異なる可能性が示唆された。
著者
香川 秀太
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.167-185, 2012 (Released:2013-01-16)
参考文献数
37
被引用文献数
1 1

本研究は, 従来の学内学習と現場実践との関係に関する議論を, 状況論の立場から検討し, 従来の徒弟制重視説や学内学習固有機能説に代わる, 緊張関係説を示した。これに基づき, 学内学習から臨地実習への看護学生の学習過程を調査した。学内学習を経て臨地実習を終えた学生に半構造化面接を行い, グラウンデッドセオリーアプローチによる分析を行った。その結果, 看護学生は, 学内学習では, 教員の指導にかかわらず, 架空の患者との相互行為を通して, ほぼ教科書通りの実践にとどまっていた。しかし, 臨地実習で, 本物の患者や看護師との, 学内とは異なる相互行為を通して, 教科書的知識を「現場の実践を批判的に見せるが柔軟に変更もすべき道具」と見なすように変化した。これを本研究では, 学内-臨地間の緊張関係から生まれる, 第1の学内学習のみにも, 第2の臨地での学習にも還元できない独特な知識, つまり「第三の意味(知)」ないし「越境知」として議論した。また, 学内と臨地の各場面での相互行為過程を, 「異なる時間的展望同士が交差・衝突し変化する過程(ZTP)」として考察した。最後に, 結果に基づき, 省察やリアリティ豊かな学習を促進する, 「越境知探求型の学習」を提案した。
著者
内田 照久
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.1-13, 2005-03-31 (Released:2013-02-19)
参考文献数
22
被引用文献数
5 6

音声中の実音声区間と休止区間の時間配分と, 話者の性格印象, 音声の自然性との関係を検討した。パラグラフ・レベルの音声材料を用いて, 大学生581名を被験者として聴覚実験を行った。実音声時間長は, 性格印象, 自然性に特徴的な影響を与えていた。休止時間長の違いによる影響は比較的小さかった。実音声部の発話速度の変化に伴う性格印象の変化パターンは, Big Fiveの特性ごとに固有の2次回帰式で近似できた。勤勉性は速い発話で評価が高く, 遅くなると急峻に低下した。協調性では逆に, 速い発話で評価が低く, 遅い発話で高かった。外向性と経験への開放性はやや速い発話で評価が高く, より速くても遅くても下降した。情緒不安定性には影響は見られなかった。自然性はオリジナルの時間長で評価が最も高く, より速くても遅くても左右対称の形状で低下した。これらのことから音声の変換に伴う自然性の低下の影響は皆無とは言えないまでも, 性格特性ごとの独自性が確認された。この結果は, 性格印象全体の複雑な変化を捉えるために, 音声の時間構造の変化に応じて性格特性ごとに特性値を近似関数で推定し, その推定値を組合せて全体像を捉えるというモデルを支持するものであった。
著者
東 安子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.2, no.3, pp.34-40,66, 1969-10-15 (Released:2013-02-19)
参考文献数
10

Purpose: Recent studies on the resumption of an interrupted task (8)(9)(10) conclude that the important factors which determine the resumption are subject's expectation as to whether he can succeed in that task or not, and the substitute value of the interpolated task.The purpose of this study is to test how these factors, success-expectation and substitute value work under different situational conditions.Subjects: Middle school girlsProcedures: Materials are several formboards constituting some simple geometrical figures (cf. figure. 1)Following two different situations are set up by instructions and the instructor's atmosphere.The two different situations are:A...free play situationB...test situationIn each situation, subject's free choice of task is examined after the following conditions:a. after successful experienceb. after failure experiencec. after interruption with expectation of suecessd. after interruption with expectatien of failuree. after being given similar and difficult interpolated taskf. after being given the different and uninteresting task (Kraepelin Test) as the interpolated taskg. After being given interesting puzzles as the interpolatad task.Results: Under the condition a, in the free play situation most subjects select the task which is different from the original task while in the test situation subjects tend to select the same or the similar task as the original successful one. Under condition b, in both situations A and B, subjects select the task which they failed at first.Condition c and d, in free play situation subjects tend to resume the original interuppted task, but in the test situation there is little tendency to resume.Under condition e, subjects resume the interrupted taskUnder condition f, subjects resume the interrupted task.Under condition g, there is scarcely any tendency to resume the interrupted task.Conclusion from these results, we see the factor of success and failure is effective only in the test situation. In the free play situation, subject's selection of task is not significantly influenced by the factor of success-failure. And from the results of e, f, g, we see there are some instances in which subject's resuming behavior seems to be independent of the substitute value of the interpolated task. For example, subjects often resume interrupted task after finishing interpolated task which i s supposed to have high substitute value while they do not resume even after be ng given the task which is supposed to have low substitute value but having different new kind of attractiveness in itself.The author conclude that the quality? and amount of the situational stress is the most importunt factor determining subject's selection of the task. We must first examine the dynamic character of the experimental situation. Without such examination, any formalization on the resumption of an interrupted task may be onesided.
著者
神崎 真実 サトウ タツヤ
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.241-258, 2018-09-30 (Released:2018-11-02)
参考文献数
34
被引用文献数
4

本研究は,ボランティアと協働することで不登校者を受け入れてきた全日制高校Bで事例研究を行い,一次的援助サービスとしての学級復帰の支援体制について検討することを目的とした。B高校のオープンスペースで,ボランティアとしての参与観察を37回行い,生徒-教師-コーディネーター-ボランティア間の交流を記録し,各支援者の役割を分析した。結果,ボランティアは生徒の学習面,教師や親との関係,友人関係に関わり,中でも生徒同士の友人関係を支える役割を担っていた。コーディネーターは,ボランティアを支援者として位置づけ生徒の状況や支援目標を伝える役割と,支援者として位置づけず自分らしく関わってほしいことを伝える役割を担っていた。教員は,生徒の状況を見立て,授業参加とオープンスペースの滞在をめぐる調整を行っていた。こうした役割分担により,生徒はボランティアとともに様々な居方でオープンスペースに滞在し,多くは学級へ復帰した。結果をふまえ,各支援者の役割と一次的援助サービスとしての学級復帰について考察を行った。従来とは異なる学級復帰支援として,学内における生徒の多様な「居方」を保障する実践を示唆した。
著者
木村 優
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.464-479, 2010
被引用文献数
2

本研究の目的は, 授業における教師の感情経験と, 教職の専門性として説明されてきた認知や行動, さらに動機づけとの関連を検討することであった。高校教師10名に面接調査を実施し, グラウンデッド・セオリー・アプローチによるデータ分析を行った。その結果, 《感情の生起》という現象の中心概念が抽出され, (1) 教師は生徒の行為と自らが用いる授業方略に対して感情を経験し, (2) 状況により教師は異なる感情を混在して経験することが示された。そして, (3)教師が経験する感情の種類, 強さ, 対象によって, 《感情の生起》現象には, 心的報酬の即時的獲得, 認知の柔軟化・創造性の高まり, 悪循環, 反省と改善, 省察と軌道修正, という5つの過程が見出された。喜びや楽しさなどの快感情は教師の活力・動機づけを高めることで実践の改善に寄与し, さらに授業中では教師の集中を高めることで瞬間的な意識決定と創造的思考の展開を促進していた。一方, いらだちなどの不快感情は教師の身体的消耗や認知能力の低下を導くが, 苦しみや悔しさなどの自己意識感情は授業後の反省と授業中の省察に結びつき, 教師が実践を改善し, 即興的に授業を展開するのを可能にしていた。
著者
河内 清彦
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.81-90, 2001-03

本研究では,視覚障害学生及び聴覚障害学生に対し大学生が想起するイメージの意味構造を解明するため,体育学系の男子学生108名と,教育・社会学系の男女学生137名にイメージ連想テストを実施した。得られた2686の記述語を,KJ法により分類し,43項目を選んだ。これらの記述語に数量化理論III類を適用し,標的概念と記述語の重み係数により相互の関連を検討した。その結果,障害学生の標的概念は,障害,性,学科を超え,「痛ましさ」と「忍耐力」の軸に囲まれた意味空間に位置していたが,記述語のレベルではグループ差がみられた。これらの標的概念と最もかけ離れていたのは,「好みの女子学生」と,「学力優秀な学生」の標的概念であったが,ここでは性と学科の影響が推測された。スチューデント・アパシー傾向を示す「自分自身」の標的概念は,他の標的概念との関連はなかった。障害学生の標的概念について記述語別の出現頻数による考察を行ったが,「視覚障害学生」は努力家で強く素晴らしいが,大変で苦しいという相反する記述語が共存していた。「聴覚障害学生」も全体的にはこれと類似していたが,性格面では前者が暗く,後者が明るいなど,部分的には障害種別の違いが示された。
著者
河内 清彦
出版者
教育心理学研究
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.81-90, 2001
被引用文献数
1

本研究では, 視覚障害学生及び聴覚障害学生に対し大学生が想起するイメージの意味構造を解明するため, 体育学系の男子学生108名と, 教育・社会学系の男女学生137名にイメージ連想テストを実施した。得られた2686の記述語を, KJ法により分類し, 43項目を選んだ。これらの記述語に数量化理論III類を適用し, 標的概念と記述語の重み係数により相互の関連を検討した。その結果, 障害学生の標的概念は, 障害, 性, 学科を超え,「痛ましさ」と「忍耐力」の軸に囲まれた意味空間に位置していたが, 記述語のレベルではグループ差がみられた。これらの標的概念と最もかけ離れていたのは,「好みの女子学生」と,「学力優秀な学生」の標的概念であったが, ここでは性と学科の影響が推測された。スチューデント・アパシー傾向を示す「自分自身」の標的概念は, 他の標的概念との関連はなかった。障害学生の標的概念について記述語別の出現頻数による考察を行ったが,「視覚障害学生」は努力家で強く素晴らしいが, 大変で苦しいという相反する記述語が共存していた。「聴覚障害学生」も全体的にはこれと類似していたが, 性格面では前者が暗く, 後者が明るいなど, 部分的には障害種別の違いが示された。
著者
平井 美佳
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.462-472, 2000-12-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
53
被引用文献数
2 1

本研究は, 人が“自己”と“他者”の両者の利益にともに配慮しながら, 状況に応じた自他の調整を行うプロセスを実験的に明らかにすることを目的とした。状況の規定要因として, 問題になる他者の種類と問題の深刻度の2要因を扱った。自己と他者の要求が葛藤する3種類の他者 (家族友人, その他の集団) と3水準の問題の深刻度 (レベル1; 低, レベル2; 中, レベル3; 高) に属す9つ [=3 (他者)×3 (水準)] のジレンマ課題を作成した。大学生63名 (男子29名, 女子34名, 18-23歳) を対象として, 各場面について「もし私だったらどうするか」について推論するプロセスを発話思考法によって検討した。その結果, 主に次の3点が明らかとなった。第1に, 推論のプロセスにおいて自己と他者の両者がともに配慮されること, 第2に, ジレンマに関わる他者別に見ると, 家族とのジレンマにおいては自己を優先させる傾向が強く, 友人およびその他の集団との葛藤においては相手を優先させる傾向があること, 第3に, 問題が深刻になるほど自己を優先させ, 問題が深刻でないほど他者を優先させる傾向があることであった。これらの結果から, 状況に応じた自己と他者の調整プロセスについて論じ, さらに, 研究方法と文化差についての理論の問題についても言及した。
著者
宇佐美 慧
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.163-175, 2010 (Released:2012-03-27)
参考文献数
51
被引用文献数
5 7

小論文試験や面接試験, パフォーマンステストなどに基づく能力評価には, 採点者ごとの評価点の甘さ辛さやその散らばりの程度, 日間変動といった採点者側のバイアス, および受験者への期待効果, 採点の順序効果, 文字の美醜効果などの受験者側のバイアス要因の双方が影響することが知られている。本論文ではMuraki(1992)の一般化部分採点モデルを応用して, 能力評価データにおけるこれら2種類のバイアス要因の影響を同時に評価するための多値型項目反応モデルを提案した。また, 母数の推定については, MCMC法(Markov Chain Monte Carlo method)に基づくアルゴリズムを利用し, その導出も行った。シミュレーション実験における母数の推定値の収束結果から推定方法の妥当性を確認し, さらに高校生が回答した実際の小論文評価データ(受験者303名, 採点者4名)を用いて, 本論文で提案した多値型項目反応モデルの適用例を示した。
著者
池田 琴恵 池田 満
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.162-180, 2018-06-30 (Released:2018-08-10)
参考文献数
34
被引用文献数
5

本研究では,学校評価は管理職が行うものと考えていた校長の意識が,学校全体で実施しようという意識へと変容する過程,および意識変容を促進する専門家の支援のあり方について検討した。本研究の実践では,協働的で自律的な実践活動を支えるエンパワーメント評価アプローチのツールであるGetting To OutcomesTM (GTOTM)1に基づき,日本の学校評価用に開発された学校評価GTOの導入を試みた。複線径路等至性モデルを用いた分析の結果,学校評価GTOを実施することで,(a)目標設定,実践計画,評価実施までを事前に準備することができ,学校評価の改善が可能であるという気づき,(b)学校全体での取り組みを試みる中で校長自身の学校運営に対する統制感の獲得といった意識変容の過程を経て,学校全体での実施という意識に至ることが示された。さらに校長の意識変容を促すために,校長の問題意識がない場合には導入の必要性を検討し,年度途中での運用上の修正が可能な提案,校長自身が学校教育計画や学校評価報告書に統制感を持つための支援,全校実施をイメージできるような実践ツールの提供,学校の特色に応じて実効性のあるツールへと改良するといった,専門家による支援の重要性が示された。