著者
松原 達哉
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.7, no.3, pp.18-28, 1959-12-30

乗法九九学習を成功させるためには,児童の心身の発達および経験内容から考察して,何才何か月ごろから開始するのが,最も適当であるかを研究すること。さらに,算数学習のレディネスに影響を与える要因についての分析的研究をすることの2つを目的とした。実験方法は,アメリカの「算数の学年配当7人委員会」の方法を改善し,4つの実験群を設けた。この各実験群に,第1基礎テスト,第2基礎テスト,予備テスト,終末テスト,把持テスト,知能検査,配慮実験,ゲス・フー・チストその他の調査を実施した。被験者は,大,中都市,農村の8小学校2年,3年生1,046名を対象に22名の教師が,同一指導案によって指導した。本実験の基準に従って整理した結果では,乗法九九学習の指導開始は,8才1か月(2年2学期)から行なっても可能であることが実証された。現在,8才7か月(3年1学期)から開始しているが,さらに,6か月早めても,わが園児童の場合は,可能であると考られる。これは,アメリカのC.Washburneらの実験に比べ,2才1か月早い。また,算数学習のレディネスの要因としては,(1)算数学習に必要な知能,(2)四反応の速さ,(3)視聴覚および視聴覚器官の障害の有無,(4)健康,栄養,疲労の条件,(5)家庭的背景,(6)情緒の安定性,(7)根気の強さ,(8)自主性,(9)数の視聴覚記憶,(10)語の視聴覚記憶,(11)算数に対する興味,(12)算数的経験などが重要なものであることが実証された。
著者
金 徳龍
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.205-212, 1990-06-30

This is a psychological study of "linguistic interference" between Korean and Japanese found among students attending a korean school. This study examined the degrees of linguistic "independence" and "dependence" between the two languages by "color-naming test". The results were as follows : (1) Either of the two languages became a predominant language ; (2) The degree of linguistic interference between the two languages was not considered high ; (3) A relatively stronger influence was given on linguistic interference in bilingualism when the second language began to be learned rather than by the length of its study.
著者
落合 良行
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.332-336, 1983-12-30
被引用文献数
7
著者
小松 孝至
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.481-490, 2000-12-30
被引用文献数
1

本研究の目的は,幼児の幼稚園での経験に関する母子の日常的な会話の特徴を,母親が会話に見出す意義,母親から子どもへの働きかけ,および両者の関連から検討することである。質問紙を用いて,幼稚園児(3歳児クラス〜5歳児クラス)の母親581名から,会話に対する母親の意義付け(「情報収集」「教育・援助」「経験の共有」の3内容で合算),会話における母親から子どもへの働きかけ(質問する,なぐさめる他)などについて回答を得た。母親の会話への意義付けは全体的に高かったが,その中でも,3歳児の母親は5歳児の母親に比べ「情報収集」の意義付けを重視しているなどの差がみられた。また,特に長子と母親の会話において,質問やアドバイスといった母親からの働きかけが多く行われることも示唆された。さらに,会話への意義付けは,それと内容上関連を持つ働きかけとの間で正の相関を示した。これらの結果から,園と家庭の接点において,幼稚園での経験に関する会話が母親にとっての意味を付与され,実践されていることが示された。
著者
中岳 治麿
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.14, no.3, pp.19-25, 1966-09

この報告では,学習プログラムを作成する場合,作成者の主観的な判断を可能なかぎり排除して,客観的な資料に基づいて構成していく方法を検討した。実際には,すでに学習を終わった集団について実施した学力検査(基礎調査)結果に,(2),(5)式を適用することによって,コースアウトラインに対応する学力検査問題の系列を抽出し,これに基づいて,学習プログラムを構成していくことになる。また,この方法によって構成されたプログラムは,比較的,学習著の学習の機構に適合していることが,実験の結果確かめられた。したがって,この方法は,数学科のように,尺度化が可能な領域では,適用できるのではないかと考えられる。
著者
大井 学 大井 佳子
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.48-54, 1986-03-30

A three-year-old girl with delayed speech received an intervention as to her irrelevant use of words in giving and taking. Before the intervention, she would give and take without saying a word or irrelevant words, such as ""Choudai, hai""(Give me, look)in giving, and ""Dozo, arigatou""(Look, thank you)in taking. In the intervention she was requested to use dolls as giver and taker imitating modeled speech of adult. Through initial manual guidance she could use dolls. It helped her conceptualize giving and taking; she could then relate words to those acts relevantly. However she would express no intent by words, representing only the acts themselves. In the end she would say ""Arigatou"" both as giver and taker, representing her partner's taking and her own taking. Her irrelevant word use was the result of adopting representative function of language with no consideration of actor-utterance relation. Further investigation would be requested to clarify the reason why she could not relate them relevantly.
著者
村上 英治 荻野 惺 冨安 芳和 久留 一郎 秦 安雄 江見 佳俊 岩井 文子
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.75-84, 124-125, 1967-06-30

(1) われわれは,われわれ自身の眼をとおして,名古屋市内の公立中学校に設置されている10の特殊学級の授業場面における精神薄弱児教育のあり方をつぶさに観察し,具体的に展開されているその教育状況のなかでの教師-生徒関係を中核としながら,その教育の直接のにない手である教師の指導のあり方の類型化をすすめようと試み,2つの類型を抽出することができた。それらは次のようにまとめることができる。 指導類型1:教師は生徒に対し強い愛情をもち,生徒に関心をもたせせるように,生徒の自発性をひきだすような配慮をし,生徒の気持と生徒の反応を的確につかんだうえで,生徒に理解されることばで働きかけ,理解がじゅうぶんでない生徒には,たとえ指導計画からはなれても,集中的に指導し,徹底的に理解させようとする教師の構えが強く,生徒も,教師を強く信頼し,教師の言動ひとつひとつを受けとめるのはもちろん,自発的に発言することも多く,わるくいえばさわがしいともいえるがあかるい,やらかい,開放的な雰囲気のなかで楽しそうに授業をうけている。 指導類型2:教師は生徒を拒否するでもなく,また,生徒に対して愛情をもっていないというわけでもないが,かといって身体的接触が多いというわけでもなく,ことさら生徒の自発性をひきだす努力をするでもなく,教師自身の言動に対する生徒の反応にあまり左右されずに,計画どおりの授業をすすめており,一方生徒も,教師の言動ひとつひとつを受けとめているという感じが薄く,教師の指示に対して積極的に反応しないばかりか,自発的に発言することも少なく,しずかで,よくいえば規則正しいけれども,わるくいえばかたい,強制の色の濃い指導的雰囲気のなかで,あまり楽しそうなようすもなく,どちらかといえば普通学級にも似た授業をうけている。 観察評定のために用いられた項目も若干異なるし,評定者そのものもちがうので,直接比較するのは許されないが,今回,われわれが10学級を対象にして抽出することのできた指導類型1は,村上ほか(1995)の研究で取り扱ったS学級のあり方ときわめて類似しているように思われる。指導類型2は,学級のふんい気など,Y学級のあり方に一見類似しているかにみられないでもないが,教師が生徒に否定的に働きかけてはいないという点において,Y学級と異った類型とみるのが妥当であろう。 われわれは今回この2つの指導類型を見出したからといって,精神薄弱児を教育する指導者の指導の型の類型として存在するのがこの2つの型のみであるというように主張するつもりはない。われわれが今回とりあつかったこれら10学級から,たまたまこの2つの指導類型が,われわれのとった手続きによって抽出されたと考えているのである。これらの2つの類型の抽出には,対象学級の選択も大きな条件となっていたことももちろんのことであるし,また,評定に用いられた項目の選択も大きな役割をはたしていただろうと考えられる。さきにもふれたように,今回もちいた評定項目のなかには,いくつか新しくつけ加えられたものもないわけではないが,その基底となったのは,主に前回,Y・S両学級の分析のために用いられたものであるからである。したがって,今後さらに多くの,これら10学級以外の諸学級を,具体的な教育状況のなかで観察していくことによって,評定項目そのものをも,より多くの学級指導のあり方の類型化により適切なものならしめるための検討が,残された課題となる。 (2) ところでまた,われわれの研究の手つづきをとおして,教師-生徒関係を中核とする具体的授業事態に関して見出された2つの指導類型は,こうした授業の直接の指導者である教師の人がらとは,かならずしも一義的に関係しないことがいちおう明らかになった。このことは,ある意味では,より望ましい指導類型へと教師を訓練することの可能性を,われわれに示唆しているものとみることもできるかもしれない。これも,精神薄弱児教育における指導者の養成の問題と関連し,今後のいっそうの検討を待つ残された問題のひとつであろう。 (3) さらにまた,第3には,研究の手続きとしてこうした観察評定法をとるかぎり,観察評定者間の評定の一致度,いわば信頼性の水準の高さがなによりの眼目となる。この点に関しては,本研究のなかでまだ問題となるところは多々残されている。 以上の反省にたって,今後,研究方法それ自体の再吟味を重ねつつ,現実に存在する多くの精神薄弱児学級の教師の具体的な教育状況における指導の型の類型化をすすめていきたいと考えている。そうした教師の指導の型のいかんが,本質的に精神薄弱児そのものの社会的適応のあり方につらなるものであるという観点が,われわれの研究の中核となっているからである。
著者
倉掛 正弘 山崎 勝之
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.384-394, 2006-09-30

うつ病予防の重要性が指摘され,欧米では早くから心理学を基盤とする児童期,青年期を対象としたうつ病予防介入が実施され,大きな成果を上げてきた。日本においては,うつ病の低年齢化が指摘されているにもかかわらず,現在,児童を対象としたうつ病予防介入は全く行われていない。このような現状をふまえ,本研究では,心理学的理論にもとづく教育現場で実施可能な小学校クラス集団を対象とするうつ病予防教育プログラムの構築,実践,その教育効果及び効果の持続性の検討を行うことを目的とした。プログラムは,うつ病の構成要因とされる認知・感情・行動の3つの要因に対し,総合的に介入を行い,抑うつ傾向を改善することで,うつ病予防を目指している。さらにこのプログラムを実際の小学校教育現場において実践し,その教育効果と効果の持続性について検討を行った。その結果,教育効果とその効果の持続性が部分的に確認され,本プログラムが,うつ病予防総合プログラムとして有効であることが示唆される結果が得られた。
著者
石川 信一 戸ヶ崎 泰子 佐藤 正二 佐藤 容子
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.572-584, 2006-12-30
被引用文献数
1

本稿の目的は,児童青年に対する抑うつ予防プログラムのレビューを行うことであった。初めに,抑うつのリスクファクターには,個人的要因,社会的要因,認知的要因,家族の要因,外的な出来事要因があることが示された。このリスクファクターを軽減するための予防的介入要素は以下の4つに分類できることが分かった。(1)環境調整,(2)社会的スキルの獲得,(3)問題解決能力の向上,(4)認知への介入である。次に,予防研究をユニバーサルタイプとターゲットタイプ(indicatedとselectiveの予防プログラム)の2つに分類した。先行研究の多くは,ターゲットタイプのプログラムは抑うつの予防に効果があることを示している。一方,ユニバーサルタイプの結果は一貫していない。特に,長期的予防効果についての実証はあまりなされていない。最後に,抑うつ予防研究における実践と研究における示唆について議論がなされた。
著者
高野 明 宇留田 麗
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.113-125, 2002-03-31

近年,学生相談の領域では,心理的不適応の治療を目指したクリニックモデルに基づく活動だけではなく,教育的アプローチや厚生補導的アプローチを含む形で,活動全体を再構成する必要性が唱えられるようになっている。学生相談サービスの幅を効果的に広げるためには,多様な問題を抱える学生にとって,サービス機関へ援助を求めやすいような環境を作る必要がある。本論文では,学生の援助要請行動に注目し,社会心理学における知見をもとに,援助要請行動を促進すると思われる要因を導きだした。そして,日本と米国における学生サービスの現状を概観し,実践において援助要請を促進するために何をなすべきなのか検討した。その結果,学生サービス担当者による心理教育活動の充実,学生の自主グループの組織化と支援や,他職種とのコラボレーションによるシステム構築の必要性が指摘された。
著者
城間 祥子 茂呂 雄二
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.120-134, 2007-03-30
被引用文献数
1

本研究では,参加の過程を学習とみなす観点から,中学校の音楽の時間に実施された和楽器の専門家とのコラボレーション型授業(出前教室)において,どのような「参加過程の変化」が生じていたのかを分析した。フィールドワークと,授業のビデオデータの分析にもとついて,次の3つの側面から参加過程の変化を記述した。(1)課題:参加者は何を目指して共同で実践を行っているのか。(2)人的・物的リソースの配置:参加者はどのように共参加者と関わり道具を利用することができるのか。(3)責任:参加者は課題や人的・物的リソースの配置にどの程度関与しているのか。その結果,コラボレーション型授業では,様々な制約や参加者の状態・要望に応じて授業の構成や目標が柔軟に変化すること,人的・物的リソースをうまく組織化することによってコラボレーションが促されること,課題の決定や学習の管理の責任を生徒に委ねることで生徒の積極的な参加を引き出していることが,明らかになった。最後に,出前教室におけるコラボレーションの変化から示唆された,学校と外部の専門家のコラボレーションの意義と留意点について検討した。
著者
菅原 ますみ 八木下 暁子 詫摩 紀子 小泉 智恵 瀬地山 葉矢 菅原 健介 北村 俊則
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.129-140, 2002-06-30
被引用文献数
11

本研究は,夫婦間の愛情関係が家族機能と親の養育態度を媒介として児童期の子どもの抑うつ傾向と関連するかどうかを検討することを目的として実施された。313世帯の父親,母親および子ども(平均10.25歳)を対象に郵送による質問紙調査を実施し,両親回答による夫婦関係と養育態度,および家庭の雰囲気と家族の凝集性,子どもの自己記入による抑うつ傾向を測定した。配偶者間の愛情関係と子どもの抑うつ傾向との間に相関は見られなかったが,家庭の雰囲気や家族の凝集性といった家族機能変数を媒介として投入した結果,両親間の愛情の強固さと家族機能の良好さが,また家族機能の良好さと子どもの抑うつ傾向とが関連することが明らかになった。また同時に,配偶者間の愛情関係は親自身の養育態度とも関連し,相手への愛情の強さと子どもに対する態度の暖かさや過干渉的態度との間に有意な関係が見られた。しかし,こうした養育態度のうち,子どもの抑うつの低さと関連が認められたのは,母親の養育の暖かさのみであり,父親の養育態度は子どもの抑うつ傾向とは関連しなかった。
著者
近藤 敏行 小林 利宣
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.8, no.3, pp.1-9, 1960-12-30

さきに著者が発表した,K.K.改訂Bemreuter Personallty Inventoryを,中学生の生活や思考に適応するようにあらためた92項目の診断目録(K.B.P.I、-J特型)を作製し220名の被検者の応答に基づいて,各項目間の四分割相関係数を算出し,その相関行列をもとに三因子分析を行ない,7個の因子を抽出した。それはもとの診断目録の因子と5個一致し,2個はもとの因子とは別のものと解釈された。一致した因子は,神経質,自己充足・内向-外向,自信欠如・支配服従1の5特性であり,もとのB.P.I.にあつた社交性のかわりに,情緒性,自我の2特性が抽出された。次に各因子の各項目に対する負荷量を5段階法によって,重みづけを行をつて,2,1,O,-1,-2の得点をあたえた。次に中国・四国,近畿地区のづ・学校5年生以上高等学校1年までの児童,生徒約1,000名に,この診断目録を実施して,その標準化を行をつた。因子解釈において,特にS型との関連において,やや困難を感じさせられたものが若干あり,目録の妥当性についての検討が,今後に残された課題である。
著者
氏家 達夫
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.284-292, 1980-12-30

本研究は,子どもがどのようにして誘惑に抵抗できるようになるのかということを問題にした。そして,言語的自己教示方略(VSI)と気紛らわし方略の2つの統制方略によってそれらを説明するために,2つの実験を行った。その結果は次の通りであった。 (1)実験Iでは,誘惑に対する抵抗状況における統制方略の自発的使用の程度が検討された。その結果,(a)視線そらし方略(ATS)が有効である。(b)6歳児はATSを自発的に用いられるが,4歳児では自発的に用いることはできない。(c)VSIは,4,6歳両群で自発的に用いられない。(d)4歳群と6歳群の間の誘惑に対する抵抗能力の差はATSによって説明されると考えられた。 (2)実験IIでは,被験児に,ATS,VSIの2つの統制方略のいずれかを用いるように教示を与えた。その結果,(a)ATS条件は,4歳群に対してのみ効果的であった。6歳群ではATS条件と統制条件に差がなく,しかもそれらは,4歳群のATS条件と差がなかった。(b)一方,VSI条件は6歳群でのみ効果的であった。(c)従って,年齢と条件の間には交互作用が認められる。(d)以上の結果から,4歳児と6歳児の間の誘惑に対する抵抗能力の差と,6歳児と8歳児の間の差には質的な違いがあり,およそ6歳を境にして,誘惑に対する抵抗に必要な統制方略がATSからVSIに入れ替わるものと考えられる。
著者
西坂 小百合
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.283-290, 2002-09-30

幼稚園教諭の精神的健康へのストレスの影響,及びストレスへの個人特性の影響を明らかにするため,質問紙による調査を行った。ストレス評価に影響を及ぼす個人特性として保育者効力感,ハーディネスを仮定し,幼稚園教諭のストレス要因を明らかにするとともに,これらの個人特性の効果を検討するものである。質問紙の内容は,認知的評価の視点から作成したストレス評価尺度,精神的健康,個人特性としての保育者効力感とハーディネスが含まれる。調査の対象は東京都内公立幼稚園に勤める幼稚園教諭186人である。パス解析の結果,幼稚園教諭の精神的健康に影響を及ぼしているのは,「園内の人間関係の問題」及び「仕事の多さと時間の欠如」をストレスとして知覚することであった。そのほか「子ども理解・対応の難しさ」,「学級経営の難しさ」が因子分析によりストレス因子として得られたが,これらは精神的健康に影響を及ぼすものではなかった。個人特性としてのハーディネスが「園内の人間関係の問題」,「仕事の多さと時間の欠如」,「子ども理解・対応の難しさ」に対するストレス知覚を軽減し,精神的健康を維持する要因になっていることが示された。
著者
杉村 健
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.14, no.4, pp.211-215, 1966-12-31

本研究の主な目的は,教室における暗黙の強化は競争場面では生じるが,非競争場面では生じないという仮説を検証することであった。被験者は小学校5年生の児童であった。1学級の男女それぞれ20名ずつからなっている4学級のうち,2学級の者には競争的教示のもとで課題が与えられ,残り2学級の者には非競争的教示のもとで与えられた。8個の図形に対応する1から8までの数字を書かせる符号問題を4分間ずつ2日続きでやらせた。第1日目の成績と男女の数にもとづいて各学級を半分に分け,第2日目の開始前に,各学級の半数の者に対して第1目目の成績についての明白な強化(称賛・叱責)が与えられた。すなわち競争場面と非競争場面のそれぞれについて,1学級の半数の者は級友の前で正の強化(称賛)が与えられ(EP群),残りの学級の半数の者は同様に負の強化(叱責)が与えられた(EN群)。前者の学級においてなにも言われなかった者は,級友が強化されるのを観察することによつて,暗黙のうちに負の強化を受けたとみなされ(IN群),後者の学級では明白な負の強化を与えられた級友を観察することによって,暗黙のうちに正の強化を受けたものとみなされた(IP群)。第2目目の正答数から第1目目のそれを引いた値を測度として実験的処理の効果を調べたところ,主な結果は次のとおりであった。(a)競争場面では,暗黙の強化における正と負の効果のちがいが大きく(IP群とIN群),明白た強化での正と負の効果にはあまりちがいがなかった。(b)非競争場面では,明白な強化における正と負の効果のちがいが著しいが(EP群とEN群),暗黙の強化ではそれがわずかであった。(C)明白な強化においては,男子では正と負の効果にちがいが認められないが,女子では正の強化が負の強化にくらべて著しく成績を向上させた。(a)と(b)の結果から,暗黙の強化という現象が競争場面でしか生じないという仮説が大体支持され,そしてその理由が考察された。(C)の結果は,女子が明白な正と負の強化に対して,敏感にそして分化的に反応しやすいという点で,従来の研究と一致Lた。
著者
倉光 修
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.144-151, 1980-06-30

学業テストにおいて,学習者がテスト結果をどの程度検討しているかを調べるために,英語・数学について,高校生202人を対象に質問紙による調査が行われた。結果は,テスト結果の検討が不十分であることを示唆するものであった。 そこで,英語・数学について,高校生のべ294人を対象に,テスト結果の検討をより十分にさせるためのフィードバック方式が工夫され,その効果が実験的に検討された。実験は3部からなり,各実験共,実験群と統制群を形成し,Pre-testとPost-testの差によって,テスト結果の検討の程度が推定された。 実験Iでは,実験群(n=29)に,テスト各問の出題領域が示され,学習者が再学習するべき領域をチェックできるようなチェックリストが与えられて,統制群(n=29)と比較された。結果は,両群に有意差はなかった。 実験IIでは,実験Iの手続に加えて,両群に再テスト(Post-test)が予告された。実験は2校で行われ,A校では実験群(n=40)が,統制群(n=41)よりも,有意に高い成績の伸びを示し,B校(実験群: n=36 統制群: n=38)では,その差は有意な傾向を示した。 実験IIIでは,実験群(n=41)に,学習者自身がテスト範囲や使用教材を指定し,テスト結果のフィードバックにおいて否定的表現が用いられないような個人別小テストが繰り返され,統制群(n=40)と比較された。結果は,実験群が統制群よりも高い成績の伸びを示し,その差は有意な傾向を示した。以上から,テスト結果の検討を促進する要因として,結果の検討を容易にする詳細な情報を与えること,結果の検討が有益であると思わせること,結果の検討に伴なう不快感を軽減することの3点が挙げられ,これらを組み合せることによって,大きな効果が期待できると考えられた。 また,実験II,IIIの実験群と実験IIIの統制群では,Pre-testの成績が悪かった者ほど,高い伸びを示す傾向が顕著に認められた。これは,成績の悪かった者ほど,テスト結果の検討を怠りがちであり,逆に結果の検討をすれば高い伸びが期待しうることを示唆すると考えられた。
著者
黒田 祐二 有年 恵一 桜井 茂男
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.24-32, 2004-03

本研究の目的は,大学生の親友関係における関係性高揚と精神的健康との関係について検討すること,及び,その関係に相互協調的-相互独立的自己観が及ぼす影響について検討することであった。結果から,日本の大学生において,自分たちの親友関係を他の親友関係より良いものであると評価する「積極的関係性高揚」と,悪くはないと評価する「消極的関係性高揚」は,相対的幸福感・自尊感情・充実感と正の関係を示し,抑うつと負の関係を示すことが見出された。さらに,この関係性高揚と精神的健康との関係は,相互協調的自己観ないし相互独立的自己観が自己に内在化されている程度によって異なることが示された。すなわち,相互協調的自己観の低い者より高い者において,そして,相互独立的自己観の高い者より低い者において,関係性高揚(積極的関係性高揚及び消極的関係性高揚)と精神的健康との関係が強くなることが示された。The purpose of the present study was (1) to investigate relations between the enhancement of close friendship and the mental health of Japanese college students, and (2) to examine whether that relationship varied with the students' scores on interdependent-independent construal of the self. The results were as follows (1) "Active enhancement", in which participants evaluated their close friendship as better than others and "passive enhancement" in which participants evaluated their close friendship as not worse than others', were positively correlated with subjective happiness, self-esteem, and fulfillment sentiment, and negatively correlated with depression. (2) Correlations were stronger for participants who scored high on interdependent construal of the self than for those who scored low on that measure. Similarly, correlations were stronger for participants whose scores were low on independent construal of the self than for those whose scores were high.
著者
郷式 徹
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.354-363, 1999-09-30

本研究の目的は幼児がどのように心を理解するかについて,自己の心的状態の理解と他者の心的状態の理解の比較を通して,検討することにある。実験1は,Perner, Leekam & Wimmer (1987)のスマーティー課題(本研究では自己信念変化課題と呼ぶ)と同構造の3課題(標準課題・状況変化課題・多義図形課題)を3・4・5歳児63人に実施した。また実験2は,多義図形課題と誤信念課題(Wimmer & Perner,1983)を3・4歳児28人に実施した。2つの実験の結果を通して,自己の心も他者の心も同時期に理解されることが示され,「心」とは表象であり,「心の理解」は「心の理論」に基づいてなされる表象の操作であると考える理論説の妥当性が支持された。また,幼児が心を理解する際の表象操作に対する知覚的要因や既有知識の影響が示唆された。