著者
大橋 洸太郎 高嶋 幸太
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.95-106, 2018-03-30 (Released:2018-04-18)
参考文献数
19
被引用文献数
4

本研究では,大学教育における第二外国語に対して,学生が何を望んでいるのかの調査,分析をある私立大学内で行った。その際には,大学で中国語,ドイツ語,スペイン語,フランス語,朝鮮語といった第二外国語を履修する62 名の自由記述型の質問項目の回答を用いて,捕獲率による知見の収集率の確認と,得られた知見の吟味,考察を行った。その結果,(a)実用的な授業,(b)学習者にとって困難な点の把握,(c)コース設計に対する考慮の重要性が明らかになった。また,調査用紙のフェイス項目を用いて協力者をサブグループに分類し,より詳細な層ごとに捕獲率を計算した。この試みにより,留学や仕事で外国語の使用を志望していない学生でも実用性を求めていることが確認された。
著者
中島 実
出版者
日本教育心理学協会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.172-180, 1978

In the study of child's thinking in a "20 Questions" game, Mosher and Hornsby found out two typical strategies, constraint seeking (CS) and hypothetical scanning (HS). They attributed these strategic variations to representative ability differences, and assumed that CS required symbolic representation. On the other hand, this CS type strategy was the process of sequential classification, so that it could be considered to correspond to Piaget's additive classificatory operation. On this framework the so-called concrete period children must have a repertory of such a strategy, but there had been no evidence of that correspondence in the studies on the "20 Questions". The present study was aimed at examining the problem of such correspondence by two cross-sectional studies. In Experiment 1, the usual "20 Questions" task was used with modified stimulus and procedure. The results showed that most of the 2nd or 3rd-grade children could exhibit CS (2nd graders=80%, 3rd graders=90%) as well as some of the 1st-grade or pre-school children (1st graders=45%, pre-school=30%). This developmental tendency was similarly observed in Experiment 2 in which Ss were assigned "20 Questions" listening task. These findings show that the so-called concrete period children could employ CS type problem solving, and such CS type strategy corresponded more to classificatory operation than to representative ability. Further, the developmental process of classificatory operation was discussed at length.
著者
坂本 真士
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.407-413, 1993-12-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
27
被引用文献数
1 3

The self-focus theory of depression (Ingram, 1990) predicts that the depressives remain self-focused when the external environment changed as compared with the nondepressives. Fifty-three male students participated in the following experiment. They were administered a self-rating depressive scale. About half of the subjects were heightened self-focused attention whereas the other half of the subjects were not. All subjects were instructed to solve tasks that required much attention. The results generally supported the hypothesis: (a) among subjects who were heightened selffocused attention, the depressives solved less tasks than the nondepressives; and (b) during the task-solving, the depressives focused more attention on themselves than the nondepressives did. On the other hand, among the subjects not showing heightened self-focused attention, the above mentioned differences were not found. The role of the self-focused attention in maintenance of depression was discussed.
著者
福田 麻莉
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.346-360, 2017 (Released:2018-02-21)
参考文献数
33
被引用文献数
4

本研究では, 家庭学習でのつまずき場面における, 数学の教科書・参考書の利用量・利用の質に対し, 教科書観, 有効性の認知, コスト感, 学習観ならびに, 授業中の教師による教科書・参考書の使用の程度が及ぼす影響を検討した。中学生・高校生1,850名を対象に質問紙調査を実施し, 仮説に基づき構成したモデルを用いて多母集団同時分析を行った。その結果, 中学生・高校生集団ともに, 教師が授業中に教科書を積極的に使用していると生徒が認識しているほど, 「教科書・参考書は家庭学習でも利用する道具である」という教科書観を抱いていること, また, そうした教科書観が有効性の認知, コスト感を介して, 教科書・参考書の利用量および自律的な利用方法にポジティブな影響を及ぼしていることが明らかとなった。以上の結果から, 数学の授業において, 教師が教科書・参考書を 積極的に使用することの重要性が示された。ただし, 有効性の認知と依存的な利用方法との間にも正の関連が示されたことから, 質を高めるためには更なる工夫が必要であることが示唆された。
著者
濱口 佳和 石川 満佐育 三重野 祥子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.393-406, 2009 (Released:2012-02-29)
参考文献数
29
被引用文献数
4 6

本研究は, 中学生の反応的攻撃性と能動的攻撃性の因子構造を明らかにするとともに, これらの攻撃性と反社会的行動欲求および抑うつ傾向との関連性を明らかにするために行われた。濱口(2004, 2005)が開発した中学生用の反応的攻撃性尺度と能動的攻撃性尺度, CES-D(抑うつ尺度), 14の反社会的行動欲求項目が, 中学生男女603名を対象に実施された。検証的因子分析の結果, 反応的攻撃性, 支配的能動的攻撃性, 利己的能動的攻撃性の斜交3因子モデルが最適であることが明らかにされた。また, 抑うつ傾向には男女とも反応的攻撃性が有意な関連を示したのに対して, 能動的攻撃性は有意な関連を示さないこと, 反社会的行動欲求には男子では3種類の攻撃性のすべてが, 女子では支配的能動的攻撃性のみが有意な関連を示すことが明らかにされた。反応的攻撃性と能動的攻撃性が中学生の心理社会的適応に異なる役割を果たすこと, 3種類の攻撃性の相互相関や, これらの攻撃性と反社会的行動欲求との関連について性差が存在することが示された。また, 従来指摘されていた青年の行為障害と大うつ病性障害の併存率が, 反応的攻撃性によってもたらされる可能性があることが指摘された。
著者
及川 昌典
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.504-515, 2005-12-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
48
被引用文献数
6 2

近年の目標研究によって, 意識的な目標追求と非意識的な目標追求は, 同じような特徴や効果を持つことが明らかになっている。しかし, これら2つの目標追求が, どのような状況で, どのように異なるのかは明らかではない。本研究は, 抑制のパラダイムを用いて, 教示による意識的抑制と, 平等主義関連語をプライミングすることによる非意識的抑制との相違点を明らかにするために行われた。実験1では, 非意識的に行われる抑制においては, 意識的に行われる抑制に伴う弊害である抑制の逆説的効果が生じないことが示された。教示により外国人ステレオタイプの記述を避けた群は, 後続の課題で, かえってステレオタイプに即した印象形成を行うのに対し, 非意識的に抑制を行った群では, そのような印象形成は見られなかった。実験2では, 非意識的な抑制は, 意識的な抑制よりも効率的との想定を基に, 相対的に抑制に制御資源が消費されないだろうと予測された。抑制後に行われた自己評定においては, 意識的抑制群においてのみ, 強い疲弊感が報告されていたが, 後続のアナグラム課題においては, 意識的抑制群も非意識的抑制群も同様に課題遂行が阻害されており, 両群において消費される資源量には違いがないことが示された。抑制意図と行動, それに伴う意識の関係について論じる。
著者
平田 祐太朗
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.48-62, 2015-03-30 (Released:2015-08-22)
参考文献数
25
被引用文献数
5 5

本研究は, 発達障害児童の保護者・教員間の協働を支えるスクールカウンセラー(以下, SCと略記)のアプローチについて明らかにすることを目的として行われた。17名のSCへ半構造化面接を行い, その中から得られた30の事例に関するインタビューデータを, グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて分析を行った。分析のステップは大きく4つに分かれ, その結果, 5つの仮説的知見とモデルを生成した。これらの仮説的知見・モデルに考察を加えたところ, SCのアプローチは多面的な見立てに基づく, 保護者・担任双方への関わりを通して,保護者と担任教師のつなぎを行い子どもの成長を一緒に考えることを目指していた。さらにその関わりは保護者・担任それぞれに対する関わりだけではなくそれらが相互に影響し合う包括的な関わりであった。また保護者への関わりは『保護者のニーズの汲み上げ』『保護者の後押し』『保護者の揺れへの寄り添い』の3つ, 担任への関わりは『担任のバックアップ』『他機関利用に関する担任への助言』の2つで構成されていた。保護者・担任間のつなぎはコミュニケーション, 子ども理解, 両者の想いの3つに整理された。また本研究の課題としてSCの語りから得られた限定的なモデルであるという点, さらに一般化の問題が挙げられた。
著者
川井 栄治 吉田 寿夫 宮元 博章 山中 一英
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.112-123, 2006-03-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
13
被引用文献数
6 3

ネガティブな事象に対する認知パタンが自己否定的なものに固定化し, それに伴って自己効力感やセルフ・エスティームが低下することを防ぐための授業を考案して, それを小学校高学年の児童に対して学級単位で実施し, その効果について多面的な検討を行った。実験計画はプリポスト・デザインとポストオンリー・デザインを併用した統制群法であり, 自己否定的な認知パタンを固定化させないようにすることの必要性について説明したうえで, 実際にそのための授業を行う実験群と, 前者の説明のみを行う統制群を設けた。得られたデータを分析した結果, 実験群の児童の方が統制群の児童よりも, 自己否定的な認知パタンを否定する方向の信念を抱くようになっているとともに, 自己効力感とセルフ・エスティームが高まっていることが示された。また, このような効果の持続性および日常への般化の存在も示された。
著者
中島 由佳 無藤 隆
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.403-413, 2007-09-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
43
被引用文献数
1 1

本研究は, 就職活動におけるキャリア志向, 就職活動プロセス, 就職達成の関係についての検討を試みた。先行研究に基づいて仮説モデルを構築し, 女子学生394名 (短大2年生222名, 大学4年生172名) を対象とした質問紙調査を行った。キャリア志向として挑戦・対人志向, 就職活動中の意思・認知として選択的・補償的2次コントロール, 求職行動として選択的・補償的1次コントロールがモデルを構成する概念として使用された。構造方程式モデリングの結果, 就職への意思である選択2次の媒介因としての働きが明らかとなった。両キャリア志向は選択2次を介して選択1次・補償2次の求職行動に寄与しており, 特に対人志向は, 選択2次に媒介されてのみ直接的な求職行動である選択1次に寄与していた。また, 選択1次が就職の達成に寄与する一方, サポート希求などを含む補償1次は就職達成に負の影響を持つことが示された。しかし補償1次はまた, 選択1次を高める働きも見せた。短大生と大学生との間には, 各変数間の関係における有意な相違は見られなかった。キャリア志向とともに, 媒介因としての選択2次を高めるような援助を学生に行うことの重要性が, 本研究からは示唆された。
著者
柏崎 秀子
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.57-64, 1987

The purpose of this study was to examine the usage of Japanese particles "wa" and "ga" based on speaker's attitude of mind. To consider the education of Japanese for foreigners, hypotheses were built up pragmatically ; a speaker used "wa" to lay emphasis on the following part of a sentence which particles divide, and "ga" to emphasize the preceding phrase. It was opposed to given-new information hypothesis. The first study investigated the different usages of "wa" and "ga" on the first sentences appearing in newspapers. The results showed that "wa" was much used in economic pages as "ga" was rather used in social ones. It suggested that the different usages of "wa" and "ga" were related to a writer's different attitude of mind. The second study investigated different usages by undergraduates when asked to select appropriate particles in given sentences and to write their reasons why they selected them. It suggested that the selection of the particles depended on how to lay emphasis rather than on given-new information.
著者
岡田 佳子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.193-203, 2002-06-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
27
被引用文献数
5 1

本研究は, 中学生の心理的ストレス・プロセスにおける二次的反応の生起について検討することを目的とした。540名の中学生を対象として, 学校ストレッサー, 一次的反応としての情動反応, 二次的反応と仮定される, 引きこもり, 依存, 対人不信, 自信喪失, 無気力, 絶望, 攻撃の7カテゴリーの反応について調査を行った。二次的反応と仮定された7カテゴリーの反応をとらえるために使用した項目について探索的因子分析を行った結果,「攻撃」,「引きこもり」,「無気力」,「依存」の4因子が得られた。これらが, 学校ストレッサーやそれによって引き起こされた情動反応といかなる関係にあるのかを検討するために, 学校ストレッサーから情動反応を経て,「攻撃」,「引きこもり」,「無気力」,「依存」反応に至るモデルを共分散構造分析によって分析した。結果は「攻撃」,「引きこもり」,「無気力」,「依存」反応は情動反応が高まってはじめて生起する二次的反応であるとする仮説に反しないものであった。また, 同じ二次的反応であっても, その種類によって生起パターンが異なることが分かった。
著者
宇佐美 慧
出版者
The Japanese Association of Educational Psychology
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.385-401, 2011
被引用文献数
5

社会科学の分野においては, サンプリングされた個人(e.g., 生徒, 患者, 市民)の測定データが, 上位の抽出単位である集団(e.g., 学校, 病院, 地域)にネストされた構造を持つことが多い。このような階層データにおいては, 一般に階層線形モデル(Hierarchical Linear Model : HLM)のような, 同一集団内に所属する個人間の相関情報を考慮した解析手法が有用である。本研究では, 階層データにおいて, 2群間の平均値差に関心がある場合に着目し, 検定力および効果量の信頼区間幅の観点から必要なサンプルサイズを決定するための決定方法を, 群の割り当てが個人単位で決定される場合(Multisite Randomized Trials : MRT)と集団単位で決定される場合(Cluster Randomized Trials : CRT)のそれぞれについて, ランダム切片モデルを用いて解析した状況を想定して統一的に導出する。さらに, 実用上の観点から, 一定の検定力および信頼区間幅を得るために必要なサンプルサイズをまとめた数表の作成も試みた。 MRT型の収集デザインのための数表は, 個人内の反復測定デザインや, ランダムブロックデザインなどの, いわゆる対応のあるデザインから得られるデータにおいても利用可能である。
著者
吉澤 寛之 吉田 琢哉 原田 知佳 浅野 良輔 玉井 颯一 吉田 俊和
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.281-294, 2017 (Released:2017-09-29)
参考文献数
26
被引用文献数
6

先行研究においては, 養育者の養育や子どもの養育行動の認知が適応的側面と不適応的側面という両方の社会的情報処理を媒介して反社会的行動を予測するメカニズムが検討されていない。本研究では, 養育者の養育態度は実際の養育行動として表出され, 子どもがこうした行動を認知することで養育者の養育態度に関するイメージを表象し, その表象が適応的, 不適応的な社会的情報処理を介して反社会的行動に影響するとする仮説を検証した。中学校1校の327名の中学生(1年生193名, 2年生79名, 3年生55名)とその養育者(母親303名, 父親19名, その他5名), 大学2校の471名の大学生とその養育者(母親422名, 父親40名, その他9名)からペアデータが収集された。子どもと養育者は, 子どもが幼少期の頃の養育としつけについて回答した。子どもからは, 社会的ルールと, 認知的歪曲や規範的攻撃信念による反社会的認知バイアスについても測定された。大学生は高校時代の反社会的行動の過去経験を報告した。構造方程式モデリングを用いた分析により, 中学生と大学生のサンプルの両方で本研究の仮説モデルに整合する結果が得られた。本知見から, 養育者は自らの養育行動が意図した通りに正しく子どもに認知されているか確認する必要性が推奨された。
著者
水元 景文
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.10, no.4, pp.225-231,253, 1962

対連合記憶の過程を習得時と想起テスト時に2分し, それぞれについてパターンとともにSおよびRの有意味性の記憶に対する効果が検討された。ここではパターンを一応記憶材料呈示の時空的な布置関係と考えて,習得時のパターンとしては,S→Rという特異の方法で呈示し学習させた。また,習得終了後の想起テストのパターンとしては,Fテスト(習得時のSとRの関係がテスト時でも変らない)とBテスト(習得時のSとRの関係がテスト時には逆になる)の2つが設けられた。有意味性の検討として,有意味綴りあるいは無意味綴りとかなもじ一字(たとえば,「アサーヒル」の対を「アーヒル」として覚えたという内観報告にもとずき,2字の綴りのうち,1字を最初らか消して,かな1字にしてしまつたもの)を対にしたリストを作つて行なった。<BR>その結果,習得時にはSあるいはRが有意味綴りだと無意味綴りよりも習得が容易であり,想起テストでは,BテストはFのそれより想起はむずかしいが,この場合でも有意味語はよく想起されるという結果を得た。