著者
伊藤 貴昭 垣花 真一郎
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.86-98, 2009-03-30 (Released:2012-02-22)
参考文献数
19
被引用文献数
13 3

説明を生成することが理解を促進することはこれまでの研究でも数多く示されてきた。本研究では, 他者へ向けた説明生成によって, なぜ理解が促されるかを検討するため, 統計学の「散布度」を学習材料として, 大学生を対象に, 実際に対面で説明する群(対面群 : 13名), ビデオを通して説明する群(ビデオ群 : 14名), 上記2群の説明準備に相当する学習のみを行わせる群(統制群 : 14名)を設定し, 学習効果を比較した。その結果, 事後テストにおいて対面群が他の2群を上回っており, 対面で説明することが理解を促すことが示唆された。一方, ビデオ群と統制群には有意差は見られず, 単に説明を生成することのみの効果は見られないことが示された。プロトコル分析の結果, 「意味付与的説明」, またその「繰り返し」の発話頻度と事後テストの成績との間に有意な相関が見られ, 対面群ではビデオ群よりこの種の発話が多く生成されていた。対面群でそれらが生成された箇所に着目すると, これらの少なくとも一部は, 聞き手の頷きの有無や返事などの否定的フィードバックを契機に生成されていることが明らかとなった。本研究の結果は, 他者に説明すると理解が促されるという現象は, 聞き手がいる状況で生じやすい「意味付与的説明」, またそうした発話を繰り返すことに起因することを示唆している。
著者
高田 利武
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.480-489, 1999-12-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
23
被引用文献数
15 14

文化的自己観の個人への反映である相互独立性と相互協調性について, 日本文化での発達過程を探ることが本研究の目的である。既存の尺度 (高田他1996) に加え児童・生徒用尺度を作成した上, 児童期後期から老人期に亘る横断的資料により発達的変化を検討し, 更に日本人青年の相互独立性と相互協調性を西欧人青年と比較した結果,(1) 日本人青年は西欧人青年に比べ相互独立性が低く相互協調性は高く, 相互協調性が相互独立性を凌ぐ傾向が児童期から青年期を経て若年成人期まで見られる,(2) 相互独立性は小学校高学年から中学生にかけて低下するが, 若年成人期以降は一貫して上昇する,(3) 相互協調性は小学校高学年から中学生にかけて低下するが, 青年期には高い水準を維持した後, 成人期では減少し老人期で再び上昇する, という結果を得た。これらの知見から, 文化的自己観が自己スキーマに反映する際の2種の過程が示唆された。
著者
湯 立 外山 美樹
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.212-227, 2016 (Released:2016-08-08)
参考文献数
54
被引用文献数
8 6

本研究では, 一般的個人興味を測定する尺度を作成し, 大学生の専攻している分野への興味の変化様態について検討した。研究1では, 感情, 価値, 知識の3側面から成る大学生用学習分野への興味尺度を作成した(N=202)。内的整合性の観点から信頼性が確認された。確認的因子分析の結果, 因子構造の交差妥当性が確認された(N=288)。内的調整, マスタリー目標, 自己効力感と正に関連したことから, 一定の構成概念妥当性が確保された(N=268)。研究2では, 大学生新入生(N=499)を対象に, 専攻している分野への興味について, 6ヶ月の短期的縦断調査を行った。潜在曲線モデルを用いて分析した結果, 全体的な変化パターンについて, “感情的価値による興味”“認知的価値による興味”は緩やかに減少したが, “興味対象関連の知識”はより急速に増加した。入学後1ヶ月の時点ですでに個人差が存在し, “感情的価値による興味”の変化のパターンは個人差がより大きいことが示された。“認知的価値による興味”の変化パターンにおいて男女差が見られた。今後, 興味の発達における個人差を説明する要因の検討は意義があることが示唆された。
著者
三島 美砂 宇野 宏幸
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.414-425, 2004-12-30
被引用文献数
2

小学校高学年の児童に, 1学期と学年末の2回, 「教師認知」と「学級雰囲気」についての調査を実施し, 教師が学級集団や学級雰囲気に如何に効果的に影響を及ぼすかということを検討した。因子分析の結果, 「教師認知」因子として, 「受容・親近」, 「自信・客観」, 「怖さ」, 「罰」, 「たくましさ」が, 「学級雰囲気」因子として, 「認め合い」, 「規律」, 「意欲」, 「楽しさ」, 「反抗」が抽出され, 重回帰分析の結果, 学級雰囲気と強い関連性をもっているのは, 教師認知因子「受容・親近」, 「自信・客観」の2つであることが示唆された。「受容・親近」は主に「意欲」・「楽しさ」の2つの雰囲気に影響を与えており, 早期よりその効果が顕在化していた。それに対し, 「自信・客観」は1学期にはどの雰囲気とも関連が認められなかったが, 学年末の学級雰囲気「認め合い」に正の, 「反抗」に負の大きな影響力をもつことが示された。
著者
麻柄 啓一
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.379-388, 1996-12-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
16

Many people nourish a misconception that vacuums draw substance into them. But vacuums can never draw anything. In fact, air presses substance. This study aimed at investigating why it is difficult for learners to rectify such misconception, by using specially devised questions. Subjects were undergraduates. The main results were as follows; (1) Once their misconception was provoked, most Ss unintentionally tried to modify their knowledge on the amount of air pressure in such a way as not to contradict their misconception.(2) Even when they were instructed in advance to use the relevant knowledge they had, their misconception couldn't be replaced by the correct concept.(3) But the reasoning process based on the relevant knowledge could be activated under a certain type of questions.(4) So we might infer that two contradictory reasoning processes could coexist in cognitive structure in learners.
著者
鈴木 雅之
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.131-143, 2011-06-30 (Released:2011-10-21)
参考文献数
28
被引用文献数
5 5

本研究では, テストをフィードバックする際にルーブリックを提示し, 評価基準と評価目的を学習者に教示することの効果について, 中学2年生を対象とした数学の実験授業によって実証的に検討した。また, 返却された答案とルーブリックだけで, 自身の答案内容とルーブリックの記述内容との対応関係が理解できるのかを検討するために, ルーブリックを提示し具体的な添削をする群と, 添削をしない群を設けた。さらに, ルーブリックがなくても具体的な添削があれば, ルーブリックの提示と同等の効果が得られる可能性を考慮し, ルーブリックを提示せずに添削だけを施す群を設定した。その結果, ルーブリックを提示された2群は, 提示されなかった群と比較して, 「改善(自身の理解状態を把握し学習改善に活用するためのものであるという認識)」テスト観や内発的動機づけが高く, 理解を指向して授業を受ける傾向にあり, 最終日の総合テストでも高い成績をおさめた。また, パス解析を行った結果, 動機づけと学習方略, テスト成績への影響は, ルーブリックの提示によって直接引き起こされたのではなく, テスト観を媒介したものであることが示唆された。さらに本研究では, 添削の効果がみられないことが示された。
著者
河村 茂雄 田上 不二夫
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.213-219, 1997-06-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
9
被引用文献数
1

The purpose of this study was to investigate the relationship between teachers'compulsive beliefs on teaching activities and their pupils'school morale. The questionnaires were administered to teachers and pupils in 105 classes of public elementary schools in Tokyo. The results showed that the teachers of high compulsive beliefs on teaching activities might have limited cognitive frames or appraisal standard for pupils. It was also found that pupils'school morale was relatively low in those teachers'classes.
著者
松尾 剛 丸野 俊一
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.93-105, 2007-03-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
12
被引用文献数
2 2

本研究の目的は, 熟練教師による話し合いを支えるグラウンド・ルールの共有過程を明らかにすることであった。小学校6年生1学級 (女児21名, 男児18名) の国語単元における発話について, ルールの意味や働きかけの意図に関する教師へのインタビュー回答を踏まえながら, 3種類のコーディングによる定量的分析を行うことで, ルールの内容を整理し, ルールが示されていた談話過程を特定した。さらに, その談話過程の特徴を, 定性的分析によって明らかにした。分析の結果, 教師は即興的思考を絶えず働かせながら以下のように働きかけていたことが明らかになった。(1) 子どもが主体的に学び合うことの妨げになっている認識を, やりとりの文脈の中で感じ取っていた。そして, その認識を問い直し, 新たに構成するため, 独自のルールを生成していた。(2) ルールはやりとりの文脈に固有な内容を持つため, 教師からの一方的な提示では, 具体的な意味や重要性を子どもに気づかせることはできないと考えていた。その考えのもとに, 教師は話し合いの流れの中に現れたルールを取り上げ, 意味づけることで各ルールを子どもに示していた。
著者
森 敏昭
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.57-61, 1980-03-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
9
被引用文献数
4 2

文章を黙読した場合と音読した場合とでは, 文章の記憶及び読解の成績にどのような違いが生じるかという問題を, 大学生を被験者として検討した。その結果, 音読することは, 文章を逐語的に記憶する場合には有効であるが, その効果は一時的であることがわかった。これに対し, 黙読することは, 文章を逐語的に記憶するというよりも, 文章の内容を体制化して記憶する場合に有効であり, その効果は音読の場合よりも永続的であることがわかった。一方, 黙読するか音読するかということによって, 読解の成績には顕著な差はみられなかった。このことは, 黙読するか音読するかという事が読解と無関係であるというより, 読解テストのやり方自体に方法上の改善をほどこす必要があるということを示唆するものと考えられる。
著者
小浜 駿
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.325-337, 2010 (Released:2012-03-07)
参考文献数
35
被引用文献数
5

本研究の目的は, 大学生が学業課題を先延ばししたときに, その前・中・後の3時点で生じる意識の感じやすさを測定する先延ばし意識特性尺度を作成し, その信頼性および妥当性を検討することであった。研究1では, 先延ばし意識特性尺度の作成と尺度の内的整合性および構成概念妥当性の検討を行った。研究2では, 尺度の再検査信頼性の検討を行った。探索的因子分析によって先延ばし意識特性尺度の7因子構造が採択され, 確認的因子分析でその構造の妥当性が確認された。同尺度とこれまでに作成された先延ばし特性尺度との関連から弁別的証拠が, 同尺度と認知特性, 感情特性との関連から収束的証拠が得られ, 構成概念妥当性が確認された。先延ばし意識特性尺度と他の尺度との関連から, 否定的感情が一貫して生起する決断遅延, 状況の楽観視を伴う習慣的な行動遅延, 気分の切り替えを目的とした計画的な先延ばし, の3種類の先延ばし傾向の存在が示唆された。考察では3種類の先延ばし傾向と先行研究との理論的対応について議論され, 学業場面の先延ばしへの介入に関する提言が行われた。
著者
高橋 麻衣子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.538-549, 2007-12-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
25
被引用文献数
3 2

本研究は, 黙読と音読での文理解に違いを生み出す要因を検討し, 黙読と音読の認知プロセスを明らかにすることを目的とした。認知プロセスにかかわる要因として (1) 読解活動中に利用可能な注意資源,(2) 黙読における音韻変換をとりあげ, 二重課題実験によって検討した。読解活動中に利用可能な注意資源の量を操作するために, 読解活動中に読み手にタッピング課題を課した。黙読における音韻変換の要因を検討するために, 読解課題中に読み手に構音抑制課題を課し, 音韻変換を阻害した。その結果, 音読での文の理解度は読み手の注意資源の量にかかわらず, 一定の成績を保てるのに対し, 黙読での文の理解度は, 読み手の注意資源が奪われると低下することが示された。また, 黙読において音韻変換が阻害されると, その理解度は常に音韻変換を行っている音読での理解度よりも低下することが示された。これらの知見から, 読み手に利用可能な注意資源の量と, 黙読で音韻変換を行うかどうかという要因が, 黙読と音読での理解度の差を生み出すことが考えられた。以上の結果から音読と黙読の認知プロセスモデルを提案し, これまで提出された多様な現象を統合的に説明できる可能性を指摘した。
著者
松本 明日香 小川 一美
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.28-41, 2018-03-30 (Released:2018-04-18)
参考文献数
36
被引用文献数
4 4

本研究の目的は,大学で専攻する学問に対して,どのような価値を求めるのか,どのような価値評定をしているのかという専攻学問に対する価値と,大学教育を通じて培うべき力である批判的思考力との関連を探索的に検討することであった。批判的思考力として,質問力,質問態度,クリティカルシンキング志向性を測定した。専攻学問に対する価値を第1群,批判的思考力を第2群として正準相関分析を行った結果,以下の2点が示された。1点目は,専攻学問に対する4つの価値全てが高いと,質問態度やクリティカルシンキング志向性が高くなり,事実を問う質問数も多くなるという結果であった。2点目は,専攻学問の学びは他者から見て望ましいと思われているという価値である公的獲得価値は高いが,専攻学問は充実感や満足感を喚起する学問であると思うという興味価値が低いと,事実を問う質問数は多くなるが,クリティカルシンキング志向性および思考を刺激する質問数に負の影響を与えるという結果であった。専攻学問に対して価値を見出すことは,批判的思考力の獲得に有効な要素であることや,複数の価値を組み合わせて効果を検討することの意義などが考察された。
著者
西村 多久磨 河村 茂雄 櫻井 茂男
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.77-87, 2011-03-30 (Released:2011-09-07)
参考文献数
28
被引用文献数
8 9

本研究の目的は, 中学生における内発的な学習動機づけと同一化的な学習動機づけの学業成績に対する影響の相違を検討することであった。特に, メタ認知的方略との関連に着目し, 学業成績に対する影響の相違について, 本研究では, 以下の仮説を立てた。それらは(1) 内発的な学習動機づけは学業成績を予測しないのではないか, (2) 同一化的な学習動機づけはメタ認知的方略を介して学業成績を予測するであろう, であった。研究1では自己決定理論に基づく学習動機尺度が作成され, 尺度の信頼性と妥当性が確認された。研究2ではパス解析により因果モデルが作成され, 仮説が支持された。本研究の結果より, 学業成績に対する同一化的な学習動機づけの重要性が示唆された。
著者
堀田 美保
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.61, no.4, pp.412-424, 2013 (Released:2014-05-21)
参考文献数
53
被引用文献数
3 1

本研究ではアサーティブネス・トレーニング(Assertiveness Training : AT)の効果研究における2つの混乱, (1)ATがアサーティブネス習得そのものに与える効果とアサーティブネスがもたらす波及的効果との混乱と, (2)アサーティブネスと攻撃的コミュニケーションとの混乱を取り上げた。AT実践の場で伝えられている諸概念の位置づけやスキル内容に依拠しつつ,これらを検討し, AT研究が取り組むべき課題を探ることを目的とした。第1に, アサーティブネスの定義が曖昧であるという指摘がある中, アサーティブネスとは「自己尊重」と「他者尊重」の両者を軸とするコミュニケーションとして明確に定義すべきであることを改めて提唱した。第2に, 「他者尊重」を欠く自己主張は攻撃的コミュニケーションであり, アサーティブなコミュニケーションとは排他的類型として明確に区別されるものであることを明らかにした。今後, 「自他尊重」を土台として, 攻撃型を含まない形でのアサーティブネスの測定が必要であり, その上でアサーティブネスが「関係構築」「課題遂行の促進」「社会変革」へ与える効果が検討されることが今後の課題であると提唱した。
著者
池田 浩 三沢 良
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.367-379, 2012 (Released:2013-06-04)
参考文献数
32
被引用文献数
2 2

本研究は, 失敗に対する捉え方や価値観を意味する失敗観尺度を作成し, その信頼性と妥当性の検討を行った。研究1では, 自由記述の回答からKJ法を用いて失敗観の構造を明らかにし, それと関連する先行研究を基に尺度の原案を作成した。そして, 大学生246名を対象に調査を実施し, 失敗観はネガティブ感情価, 学習可能性, 回避欲求, 発生可能性の4因子で構成されていることを見出した。研究2では, 759名の大学生を対象に調査を実施し, 尺度の内的整合性と時間的安定性を含めた信頼性, そして関連する尺度との関係性から妥当性を確認した。最後に, 研究3では, 大学生187名を対象に場面想定法による調査を実施したところ, どのような失敗観を持つかによって, 失敗に対する原因帰属やその後の対処行動が規定されることが示唆された。
著者
長谷川 真里
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.13-23, 2014 (Released:2014-07-16)
参考文献数
21
被引用文献数
7

本研究の目的は, いわゆる「仲間はずれ」とよばれる, 異質な他者を集団から排除することについての判断の発達を検討することであった。研究1では, 小学生, 中学生, 大学生を対象に, 私的集団(遊び仲間集団)と公的集団(班)のそれぞれにおいて, 社会的領域理論の3領域(道徳, 慣習, 個人)に対応した行動の特徴を持つ他者に対する排除判断(集団から排除することを認めるか), その理由, 変容判断(その他者の特徴は変わるべきか)を求めた。その結果, 年齢とともに, 排除自体の不公平性に注目し排除される他者の特徴を区別しない判断から, 集団機能に注目し他者の特徴を細かく区別する判断へ変化した。小学生は2つの集団を区別して判断する一方で, 他者は変わるべきであると考える傾向が見られた。研究2では, 小学生と中学生を対象に, 友人への志向性の差と排除判断の関係を検討した。閉鎖的, 固定的な集団への志向性および友人への同調欲求が高いと, 集団排除を認めることが示唆された。最後に, 本研究の限界と今後の課題が議論された。
著者
黒田 祐二 桜井 茂男
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.86-95, 2003-03-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
28
被引用文献数
12 3

本研究は, 友人関係場面における目標志向性と抑うつとの関係に介在するメカニズムを明らかにすることを目的として行われた。両者に介在するメカニズムとしては, Dykman (1998) により提唱されたディストレス生成モデル (目標志向性が対人行動を通してネガティブな出来事を促進 (ないし抑制) し, その結果抑うつが促進 (ないし抑制) される) に加えて, 新たにユーストレス生成モデル (目標志向性が対人行動を通してポジティブな出来事を促進 (ないし抑制) し, その結果抑うっが抑制 (ないし促進) される) を提唱し, この2つのモデルを検討した。重回帰分析による結果から, 3つの目標と抑うつとの関係はいずれもユーストレス生成モデルで説明できることが示された。すなわち,(1) 「経験・成長目標→関係構築・維持行動及び向社会的行動→ポジティブな出来事の発生→非抑うつ」,(2)「評価一接近目標→関係構築・維持行動→ポジティブな出来事の発生→非抑うつ」,(3)「評価一回避目標→関係構築・維持行動の不足→ポジティブな出来事の非発生→ 抑うつ」,という結果が示された。本研究の関連する既存の研究領域及び教育的介入に対する示唆が論じられた。
著者
石田 英子 小笠原 春彦 藤 永保
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.270-278, 1991-09-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
9

The purpose of this study was to clarify (1) people's concept of intelligence in the following six cultures: Japan, Korea, China, Taiwan, Canada and Mexico ; and (2) the difference between the three following Japanese concepts: ‘atamanoyoi’, ‘rikouna’, ‘kashikoi’, which express “intelligent” in Japanese. The results were as follows: 1) Five-factor solution was found to be valid. They were named “sympathy and sociability”,“inter-personal competence”,“ability to comprehend and process knowledge”,“accurate and quick decisi on making”, and “ability to express oneself”; 2) The factor structures of Japan, Korea, China and Taiwan were similar to each other, but dissimilar to those of Canada and Mexico ; 3) The patterns of the correlations among the five factors were rather similar, while the variances of the factors were different between the nations concerned ; 4) The concept of ‘kashikoi’ was different from that of ‘atamanoyoi’ in that ‘kashikoi’ implied sociability together with cognitive ability.
著者
深谷 達史 戸部 栄子 立見 康彦
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.414-428, 2017 (Released:2018-02-21)
参考文献数
30
被引用文献数
3

説明行為に関する知識である説明スキーマは, 説明的な文章の読解と表現に共通して働く知識である。例えば, 説明的な文章が主に「問い-説明-答え」の要素からなるという知識に基づき, 説明的文章の内容を整理して読んだり, 書いたりできると想定される。本研究では, 小学4年生の1学級を対象に, 説明スキーマに基づく方略使用を促し, 論理的な読み書き能力を育成することをねらいとする, 2つの説明的文章の単元の実践を行った。2つの実践では, 単元の前半に説明スキーマを明示的に教授し, 問いの文を同定した上で, 説明と問いへの答えをまとめるなど, 説明スキーマを活用して教科書の教材を読み取らせた。単元の後半では, 問い-説明-答えの要素に基づき, 授業時間外に読んだ関連図書の内容を説明する文章を作成した。また, 実践においては, ペアやグループで読んだことや書こうとしていることを説明, 質問しあう言語活動を行い, 内容の精緻化を図った。質問紙やテストによる調査結果から, 実践後には説明スキーマを活用する態度やスキルを表す得点が高くなったことが示された。今後, 他教科や探究的な学習においても説明スキーマに基づく指導を展開していくことが期待される。
著者
益子 洋人
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.133-145, 2013 (Released:2013-10-10)
参考文献数
32
被引用文献数
8

本研究では, 過剰適応を「関係維持・対立回避的行動」と「本来感」から捉えた。本研究の目的は, 自他双方が満足できる葛藤解決を目指す「統合的葛藤解決スキル」をとる程度と, 関係維持・対立回避的行動, 本来感との関連を検討することであった。予備調査では, 大学生429名の回答を分析し, 「丁寧な自己表現」「粘り強さ」「受容・共感」「統合的志向」からなる統合的葛藤解決スキル尺度(Integrating Conflict Resolution Skills Scale ; ICRS-S)を開発した。α係数や再検査信頼性の値から, 一定の信頼性が確認された。また, 社会的スキル, 友人満足感, 対人葛藤方略スタイルとの相関分析から, 一定の妥当性が確認された。本調査では, 大学生197名の回答を分析し, 統合的葛藤解決スキルと関係維持・対立回避的行動, 本来感の関連を検討した。共分散構造分析の結果, 統合的葛藤解決スキルは本来感を向上させ, 過剰適応者の適応を促進する可能性が示唆された。