著者
坂本 篤史
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.584-596, 2007-12-30
被引用文献数
2

本研究は,現職教師の学習,特に授業力量の形成要因に関し,主に2000年以降の米国での研究と日本での研究を用いて検討し,今後の展望を示した。現職教師の学習を1)授業経験からの学習,2)学習を支える学校内の文脈,3)長期的な成長過程,という3つの観点から包括的に捉えた。そして,教師を"反省的実践家"と見なす視点から、現職教師の学習の中核を授業経験の"省察(reflection)"に据えた。授業経験からの学習として教職課程の学生や新任教師の研究から,省察と授業観の関係や,省察と知識形成の関係が指摘された。学校内の文脈としては教師共同体や授業研究に関する研究から,教師同士の葛藤を通じた相互作用や,校内研修としての授業研究を通じた学習や同僚性の形成が示唆された。長期的な成長過程としては,教師の発達研究や熟達化研究から,授業実践の個性化が生じること,"適応的熟達者(adaptive expert)"として発達を遂げることを示した。今後の課題として,現職教師の個人的な授業観の形成過程に関する研究,教師同士が学び合う関係の形成に関する実証的研究方法の開発,日本での教師の学習研究の促進が挙げられた。
著者
村上 宣寛
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.183-191, 1980-09-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
38
被引用文献数
1 2

音象徴の研究には2つの流れがあり, 1つはSapir (1929) に始まる, 特定の母音と大きい-小さいの次元の関連性を追求する分析的なものであり, もう1つはTsuru & Fries (1933) に始まる, 未知の外国語の意味を音のみから推定させる総合的なものであった。本研究の目的は音象徴仮説の起源をプラトンのテアイテトス (201E-202C) にもとめ, 多変量解析を用いて日本語の擬音語・擬態語の音素成分を抽出し, それとSD法, 連想語法による意味の成分との関連を明らかにするもので, 上の2つの流れを統合するものであった。刺激語はTABLE1に示した65の擬音語・擬態語であり, それらの言葉から延べ300人の被験者によって, SD評定, 名詞の連想語, 動詞の連想語がもとめられた。成分の抽出には主因子法, ゼオマックス回転が用いられた。なお, 言葉×言葉の類似度行列作成にあたって, 分析Iでは言葉に含まれる音をもとにした一致度係数, 分析IIでは9つのSD尺度よりもとめた市街模型のdの線型変換したもの, 分析IIIでは6803語の名詞の反応語をもとにした一致度係数, 分析IVでは6245語の動詞の反応語をもとにした一致度係数を用いた。分析Vの目的は以上の4分析で抽出した成分の関係を調べるもので, Johnson (1967) のMax法が用いられた。分析1の結果はTABLE2に示した。成分I-1は/n/と/r/, I-2は/r/と/o/, I-3は/a/と/k/, I-4は促音, I-5は/o/, I-6は/a/, I-7は/i/, I-8は/p/, I-9は/u/, I-10は/b/, I-11は/k/, I-12は/t/に関連していた。分析IIの結果はTABLE3に示した。成分II-1はマイナスの評価, II-2, II-4はダイナミズム, II-3は疲労, に関連していた。分析IIIの結果はTABLE4に示した。成分III-1は音もしくは聴覚, III-2は歩行, III-3は水, III-4は表情, III-5は不安, III-6は液体, III-7は焦りに関連していた。分析IVの結果はTABLE5に示した。成分IV-1は活動性, IV-2は不安, IV-3は表情, IV-4は音もしくは運動, IV-5はマイナスの評価もしくは疲労, IV-6は液体, IV-7歩行, IV-8は落着きのなさに関連していた。分析Vの結果はTABLE6とFIG. 1に示した。音素成分と意味成分の関係として, I-5 (/o/) とIV-8 (落着きのなさ), I-7(/i/)とIII-7 (焦り), I-10 (/b/) とIII-6 (液体) が最も頑健なものであった。さらに, I-8 (/p/) とIII-2 (活動性), I-9 (/u/) とIII-5 (不安) 及びIII-6 (液体), I-12 (/t/) とIII-2 (歩行) 及びIV-8 (落着きのなさ) も有意な相関があった。日本語の擬音語・擬態語の限定のもとで, 音象徴の仮説が確かめられた。/o/が落着きのなさを, /i/が焦りを, /b/が液体を象徴するという発見は新しいものでありその他にも多くの関係があった。また, SD法によってもたらされた成分は狭い意味の領域しかもたらさず, 意味の多くの側面を調べるには不十分であり, 擬音語と擬態語の区別は見出されなかった。
著者
瀬戸 瑠夏
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.174-187, 2006-06-30

2001年度以降,公立中学校へのスクールカウンセラー(以下,SC)全校配置が決定された。これに対応して,学校コミュニティに根ざした活動のあり方について,より詳細に検討していく必要がある。本研究では,学校組織全体を援助する方略の一つであるオープンルームに焦点を当て,その活動の場としての面接室(スクールカウンセリングルーム;以下,ルーム)が,どのような機能構造を有しているのかを検討した。方法として公立中学校でのフィールドワークを行い,質問紙調査(研究1)・観察調査(研究2)・面接調査(研究3)を通して,生徒の視点からルームの機能構造を探った。その結果,「開かれた異空間」「私的な異空間」から成る重層的二空間構造を見出した。さらに,研究1〜3によって深めた仮説的知見に基づき,11の機能カテゴリーを重層的二空間モデルとして再構成した。これにより,オープンルーム活動を通して問題解決が可能であることが示唆され,「スクールカウンセリングにおいて特徴的な,個人面接とも日常生活とも異なる中間領域」としての意義が明らかになった。
著者
竹内 朋香 犬上 牧 石原 金由 福田 一彦
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.294-304, 2000-09-30
被引用文献数
1

不眠, 不充分な睡眠や付随する疲労は, 行動問題や情動障害に関連し, 二次的な学業問題, 集中力欠如, 成績悪化などに結びつく。そこで本研究では, 睡眠問題発現の予防学的側面をふまえ第1に, 睡眠習慣調査の因子分析により大学生の睡眠生活パタンを総合的に把握する尺度を構成した。第2に, 尺度得点のクラスター分析により睡眠習慣を分類し, 大学生の睡眠衛生上の潜在的問題点を検討した。因子分析により睡眠に関する3尺度-位相関連(朝型・夜型と規則・不規則関連9項目), 質関連(熟眠度関連6項目), 量関連(睡眠の長さと傾眠性関連6項目)-を抽出し, 通学など社会的要因との関連を示唆した。分類した6群のうち4群は, 睡眠不足, 睡眠状態誤認, 睡眠相後退など睡眠障害と共通点を示し, 時間的拘束の緩い大学生活から規則的な就業態勢への移行時に睡眠問題が生じる危険性を示唆した。また本研究のような調査票による, 医学的見地からみた健常範囲内での睡眠習慣類型化の可能性を示唆した。分類結果に性差を認め, 短時間睡眠で高傾眠群, 睡眠の質が悪いが朝型, 規則的で平均睡眠量の群で女子の, 夜型, 不規則, 睡眠過多な群, 夜型, 不規則で睡眠の質が悪い群では男子の割合が高かった。従来の知見をふまえ生物学的要因の関与を推測した。
著者
海津 亜希子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.241-255, 2016 (Released:2016-08-08)
参考文献数
55
被引用文献数
7

早期の段階での算数に焦点を当て通常の学級で実施するアセスメントを開発した。本研究では多層指導モデルMIM(海津, 2010; 海津・田沼・平木・伊藤・Vaughn, 2008)のプログレス・モニタリング(PM)としての機能を有するかについて検証した。対象は小学校1年生400名。MIM-PM算数版を年間通じて定期的に実施した。妥当性の検証では反復測定による分散分析の結果, 実施回における主効果が認められ, 回を経るごとに得点が高くなる傾向が示された。標準化された学力検査算数とも比較的高い相関があった。また, 既存のMIM-PM読み版とテスト・バッテリーを組み, 双方の得点傾向から3群(算数困難群, 高学力群, 低学力群)に分類し, 比較分析を行った。3群の学力検査算数の得点でも差異がみられた。算数困難群は全体の5.15%であった。実施回×学力特性群の2要因混合計画の分散分析を行った結果, 有意な交互作用, 2要因とも主効果が認められた。MIM-PM算数版の実施により把握できた算数困難群や低学力群は, 高学力群のような有意な得点上昇が一貫してみられなかったが, 当該学習に関する直接的な指導が実施されている期間では有意な伸びが確認された。MIM-PM算数版の活用でつまずきの早期把握の可能性が示唆された。
著者
秋田 喜代美 無藤 隆
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.462-469, 1993-12-30
被引用文献数
1 3

The purpose of this study was to clarify developmental changes of the conceptions (evaluations and meanings) and feelings about book-reading, and to examine relations between conceptions, feelings and behavior frequency. Five hundred and six children of 3rd, 5th, and 8th grades answered the questionnaire about reading. Three major findings were as follows. First, all children shared the same evaluation that reading was a good activity. Second, three meanings of reading were identified: an exogenous meaning of "getting praise and good grades" (PRAISE), a cognitive endogenous meaning of "having a fantasy world and getting knowledge" (FANTASY), and a physiological endogenous meaning of "refreshing and killing time" (REFRESHING). Older children evaluated the cognitive endogenous meaning of FANTASY more and the exogenous meaning of PRAISE less. Third, positive feelings were predicted from 3 variables: grade, evaluation and FANTASY meaning. Behavior frequency was predicted from 3 variables: grade, positive feelings and the REFRESHING meaning.
著者
阿部 晋吾 太田 仁
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.294-304, 2014-12-30 (Released:2015-03-30)
参考文献数
51
被引用文献数
3 1

本研究では中学生を対象に, 自己愛傾向の程度によって, 教師からの叱りの動機推測が援助要請態度に及ぼす影響に差異がみられるかどうかを検討する質問紙調査を行った。その結果, 教師からの叱りに対して向社会的動機を推測するほど, 援助適合性認知は高くなる一方, 自己中心的動機を推測するほど, 援助適合性認知は低くなることが示された。自己中心的動機の推測はスティグマ認知にも影響を及ぼしていた。また, 自己愛傾向の高い生徒は, 向社会的動機の推測の影響が弱く, 自己中心的動機の推測の影響が強いことも明らかとなった。
著者
工藤 与志文
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.41-50, 1997-03-30

College students numbering 206 were examined on their beliefs of the movement of sunflowers, and 112 students who had the false belief participated also in the experiment. The subjects were asked to read the science text which explained the facts that contradicted their beliefs in the following three conditions : (a) the photosynthetic rule was instructed, and the contradictory facts were referred to as examples of the rule ; (b) the photosynthetic rule was instructed, but the facts were referred independently from the rule ; and (c) only the facts were presented. The subjects were then put to some reading comprehension tests. The frequencies in the occurrence of belief-dependent misreading (BDM) on the tests were analysed. The following results were obtained : (1) There were less BDMs in the condition of the rule and example than in the other two conditions ; (2) there were no less BDMs in the condition of the rule and facts than in the condition of the facts only. There findings suggested that the instruction in the relation of the rule and example was useful in order to avoid BDM.
著者
柏木 恵子 永久 ひさ子
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.170-179, 1999-06-30
被引用文献数
8

子どもの価値は普遍・絶対のものではなく, 社会経済的状況と密接に関連している。近年の人口動態的変化-人口革命は, 女性における母親役割の縮小と生きがいの変化をもたらし, 子どもをもつことは女性の選択のひとつである状況を現出させた。子どもは"授かる"ものから"つくる"ものとなった中, 子どもの価値の変化も予想される。本研究は, 母親がなぜ子を産むかその考慮理由を検討し, 子どもの価値を明らかにするとともに, 世代, 子ども数, さらに個人化志向との関連を検討することによって, 子どもの価値の変化の様相の解明を期した。結果は, 子どもの精神的価値として社会的価値, 情緒的価値, 自分のための価値が分離され, さらに子ども・子育てに関連する条件依存, 子育て支援の因子も抽出された。子どもの価値はいずれも世代を超えて高く評価されているが, より若い世代, 有職, 子ども数の少ない層では, その価値が低下する傾向と条件依存傾向の増大が認められた。家族のなかに私的な心理的空間を求める傾向-個人化志向は, 世代を超えて強く認められたが, 若い世代, 有職, 子ども数の少ない層でより強まる傾向が認められ, さらに, 子どもを産むことへの消極的態度と関連していることも示唆された。この結果は, 人口革命と女性のライフコースと心理との必然的関連, また子産みや子育てに関わる家族および社会規範との関連で論じられた。
著者
塙 朋子
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.273-282, 1999-09
被引用文献数
1

本研究は子どもが他者との関係性に応じて,どのように情動を表出するようになるのか,児童期中期に焦点をあててその発達的変化を検討した。被験者は小学校2年生から5年生,計1466名である。各人に,物語中の主人公が怒りや喜び,悲しみを経験する物語を読ませた。そして母親,父親,友達に対して,もしその子が自分だったらどの程度情動を表出するか,答えさせた。また関係性の指標として,他者と共にいる時の自己,ソーシャルサポートを取り上げ,それぞれ子どもに評定させた。その結果,低学年(2・3年生)と高学年(4・5年生)とでは,他者との関係性と情動表出との関連は,異なることが示唆された。また各情動ごとに,関係性と情動表出との関連は,異なる変化を示した。喜び表出は,低学年で肯定的関係性と相関がみられ,高学年ではその関連がより強くなった。また怒り表出は,高学年では関係性との間にほとんど関連はみられなかった。この結果は,情動の発達における対人関係の役割を重視すること,及び各情動ごとに,個別に検討する必要があることを示唆している。
著者
川村 幹
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.12, no.4, pp.232-236, 1964-12-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
2

教員養成制度の改善について近年諸案が発表され, 最近教育職員養成審議会からの答申も出ている。これに関し, 心理学および心理学関係科目が教員養成にどのような役割を与えられたかを, 内外の資料からとりまとやて紹介する。なお, この資料は主として中島 (1961) によつた。
著者
杉本 希映 庄司 一子
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.289-299, 2006-09-30
被引用文献数
2

本研究では,「居場所」の心理的機能の構造とその発達的変化について検討した。「居場所」の心理的機能の構造を分析するために,自由記述により得られた居場所の選択理由と先行研究を検討して作成した尺度を用いて,小・中・高校生を対象に調査を行った。その結果,「居場所」の心理的機能には,「被受容感」「精神的安定」「行動の自由」「思考・内省」「自己肯定感」「他者からの自由」の6因子があることが明らかとなった。「居場所」を他者の存在により,「自分ひとりの居場所」「家族のいる居場所」「家族以外の人のいる居場所」に分類した結果,小学生では「家族のいる居場所」,中・高校生では「自分ひとりの居場所」が多いことが明らかとなり,発達段階により選択される「居場所」が異なってくることが示された。この3分類により心理的機能の比較分析を行った結果,それぞれの「居場所」の固有性が明らかとなった。
著者
津留 宏
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.12-20, 1956-06-30

小学校五年生を通してみた603世帯,約3500名の家族相互の称呼において,比較的多数を占めた呼び方は次の通りである。夫→妻1.名前の呼び捨て(45%)2.「お母ちやん」「お母さん」(合せて29%)妻→夫「お父さん」「お父ちやん」(合せて73%)子→父1.「お父ちやん」(67形)2.「お父さん」(27%)子→母1.「お母ちゃん」(78%)2.「お母さん」(18%)父→子1.名前の呼び捨て(83%)2.名前または略名に「ちゃん」付け(13%)母→子1.名前の呼び捨て(67%)2.右前または略名に「ちゃん」付け(27%)「おじいさん」「おじいちゃん」(合せて70%)母→祖父「おじいさん」「おじいちゃん」(合せて80%)父→祖母「おばあさん」「おぱあちゃん」(合せて70%)母→祖母「おばあさん」「おぱあちやん」(合せて80%)祖父→父1.名前の呼び捨て(60%)2.「お父さん」「お父ちゃん」(合せて25%)祖母→父1.名前の呼び捨て(44%)2.「お父さん」「お父ちゃん」(合せて40%)祖父→母1.名前の呼び捨て(80%)2.「お母さん」「お母ちゃん」(合せて24%)祖母→母1.名前の呼び捨て(63%)2.「お母さん」「お揖ちゃん」(合せて10%)兄→弟1.名前の呼び捨て(71%)2.名前または略名に「ちゃん」付け(23%)姉→弟1.名前の呼び捨て(60%)2.名前または略名に「ちやん」付け(32%)兄→妹1.名前の呼び捨て(66%)2.名前または略名に「ちゃん」付け(32%)姉→妹1.名前の呼び捨て(55%)2.名前または略名に「ちゃん」付け(43%)弟→兄1.「兄ちゃん」「お兄ちゃん」またはこれの付くもの(合せて62%)2.名前または略名に「ちゃん」付け(17%)妹→兄1.「兄ちゃん」「お兄ちゃん」またはこれの付くもの(合せて59%)2.名前または略名に「ちゃん」付け(22%)弟→姉1.「姉ちゃん」「お姉ちゃん」またはこれの付くもの(合せて63%)2.名前また略名に「ちゃん」付け(17%)妹→姉1.「姉ちゃん」「お姉ちゃん」またはこれの付くもの(合せて68%)2.名前または略名に「ちやん」付け(20%)尚,調査結果全般を通し次のような傾向が看取される。1 夫婦間の称呼は一般に甚だ不明確であり,持に妻→夫の場合は暖昧である。多くは子が父を呼ぶ呼び方を借りている。2 一般標準語とされる子→父母の「お父さん」「お母さん」,弟妹→兄姉の「兄さん」「姉さん」は意外に少い。一般に家族間は「さん」よりは「ちゃん」付けが多い。但し「おじいさん」「おばあさん」はこの限りでない。3 夫婦間及び子,祖母の父に対する称呼よりみて,同母よりは父に対して敬意が強い。4 きょうだい間の呼び方は,よく家庭の教育的配慮の如何を反映している。5 農村には全く不当な称呼がかなりみられる。住宅地にはこれがない。一般に敬称の点では農林工業地がより乱れている。6 家族称呼は一般に子供本位の呼び方になろうとする。日本の家庭の子供本位的性格を表わしている。7 家族称呼にも明らかに過渡期的様相がみられる。即ち従来の標準的な家族称呼が崩れて新しい称呼が生じつつある。旧い称呼の権威的,序列的,形式的なものが,より平等的,人間的,親愛的な呼び方にとって代わられようとしている。恐らくこれは家族制度の変化と共に,封建的家族意識の減退,個人意識の昂揚等によるものであろう。8 尤も農村と住宅地の一部では標準的な称呼に尚,.関心が強いようにみえる。これは次のように解せられる。即ち日本の家族称呼の標準語はやや保守的たものであるが,農村はその家族制度の保守性からこれを残し,住宅地の知識階級では保守的というのではなくむしろ教育的配慮から標準語に依ろうとしているのであろう。従って両方の性格を欠く商工地では最も称呼の乱れがみられるのである。以上,家族称呼は日本の現下の家族関係の特徴のいくつかを示唆したが,こうした大きな問題については,これはやはり補助資料的にとどまるものと思われる。
著者
斉藤 誠一
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.336-344, 1985-12-30
被引用文献数
3

The purpose of this study was to investigate the relationship between pubertal growth and sex-role formation. In a first study, a sex-role scale for early adolescents, containing 9 masculine items and 6 feminine items, was constructed. In a second study, recognition and acquisition of masculine traits and feminine traits were related to variables concerning pubertal growth. The main results were as follows: 1)Height had little influence on either recognition or acquisition of masculine traits and feminine traits. 2)Mature boys showed significantly higher level of masculine trait acquisition than immature boys. 3)Both boys and girls who were satisfied with the important parts of their bodies showed significantly higher level of masculine and feminine trait acquisition. 4)It was found in both males and females that the level of acquisition of masculine traits and feminine traits were associated with some of the variables concerning pubertal growth, without recognition of them.
著者
高垣 マユミ 中島 朋紀
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.472-484, 2004-12-30
被引用文献数
3

本研究は, 小学4年生を対象とした一斉形態の理科授業の協同学習において, 「知識の協同的な構成が生じている場面においては, どのような相互作用がみられるのか」また, 「そのような相互作用を教室において生じさせる要因は何か」について検討することを目的とした。授業の構成は, ブリッジングアナロジー方略(Clement, 1993)を教授的枠組みに据え, 学習者の既有知識から出発した「話し合い活動」による協同的探求を中心とし, 解釈上の疑問や問題点を検証する場として実験・観察を位置づけた。理科授業の協同学習における発話事例の解釈的分析から, 以下の結果を得た。1)知識の協同的な構成には, 「個別的」VS.「統合的」の二項対立的な相互作用のスタイル間の揺さぶりによる組織的変化が必要であることが示唆された。2)科学の基礎概念についての対話者間の解釈上の違い, 及び, 「アナロジー」, 「可視化」という具体的事象の理解を深める道具立てにより, 「操作的トランザクション」の対話が生成され, 相互作用の組織的な変化が生起することが見出された。
著者
奈田 哲也 堀 憲一郎 丸野 俊一
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.324-334, 2012 (Released:2013-02-08)
参考文献数
26
被引用文献数
3 2

本研究の目的は, 奈田・丸野(2007)を基に, 知識獲得過程の一端を知り得る指標としてエラーバイアスを用い, 他者とのコラボレーションによって生起する課題活動に対するポジティブ感情が個の知識獲得過程に与える影響を明らかにすることであった。そのため, 小学3年生に, プレテスト(単独活動), 協同活動セッション, ポストテスト(単独活動)という流れで, 指定された品物を回り道せずに買いながら元の場所に戻る課題を行わせた。その際, 協同活動セッション前半の実験参加者の言動に対する実験者の反応の違いによって, 課題活動に対するポジティブ感情を生起させる条件(協応的肯定条件)とそうでない条件(表面的肯定条件)を設けた。その結果, 協応的肯定条件では, エラーバイアスが多く生起し, より短い距離で地図を回れるようになるとともに, やりとりにおいて, 自分の考えを柔軟に捉え直していた。これらのことから, 課題活動に対するポジティブ感情は, その活動に没頭させ, さらに, 相手の考えに対する柔軟な姿勢を作ることで, 新たな視点から自己の考えを捉え直させるといった認知的営みを促進させる働きを持つことが明らかとなった。
著者
水野 治久 石隈 利紀
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.530-539, 1999-12-30

我が国においてカウンセリングが専門的サービスとして認められつつあるが,援助を受ける側からの被援助志向性や被援助行動に関する研究はほとんど実施されていない。一方で,米国ではこの領域に関する研究は20年ほど前から行われている。米国における被援助志向性および被援助行動の研究を分類した結果,1)デモグラフィック要因との関連,2)ネットワーク変数との関連,3)パーソナリティ変数との関連,4)個人が抱えている問題の深刻さ,症状との関連の4領域に集約された。研究の課題として,1)他の研究を踏まえた上での援助志向性,被援助行動の定義の必要性,2)被援助志向性が低い人に対する介入や被援助志向性が低い人のための援助システムの構築へ結びつく研究の必要性があげられる。このような研究を通して,我が国の専門・職業的心理学の構築の必要性が示唆された。
著者
落合 良行 佐藤 有耕
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.55-65, 1996-03-30
被引用文献数
2

The purpose of this study was to examine friendship in adolescence and how it changed in each developmental stage. A questionnaire regarding friendship was created. Subjects were 579 students. They were junior high-school, high-school and university students. As the result of the factor analysis, the friendship was categorized by the two-dimensional space. One axis conserned the intimacy of their friendship ; and the other axis consisted on the number of their friends. Junior high school students tended to make many friends but their relationships were not so intimate. As they grew older, they tried to have more intimate friendships with just a few friends.
著者
及川 恵 坂本 真士
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.106-119, 2007-03-30

本研究では,認知行動療法の理論に基づき,抑うつ予防を目的とした心理教育プログラムを考案し,その効果を検討した。プログラムでは,大学の心理学関連の講義時間を活用し,計7回の介入授業を実施した。プログラムの効果を検討するため,プログラム実施前後に,介入群と統制群に対して,抑うつに関連する思考や情動にうまく対処することができるという確信,すなわち抑うつ対処の自己効力感と複数の適応指標からなる質問紙を実施した。まず,各授業終了時の感想シートの検討から,授業内容はよく理解され,興味関心を持って臨める内容であったと思われる。次に,抑うつ対処の自己効力感を従属変数とし,群と時期を独立変数とする二要因分散分析を行った。その結果,交互作用が有意であり,介入群は統制群に比べ,プログラム実施後に効力感が増加していることが示された。下位目標ごとの検討においても概ね同様の結果が得られ,本プログラムの有効性が示唆された。なお,プログラムの間接的な効果を把握するため,自己効力感と適応指標の変化量の相関を検討した結果,介入群において自己効力感の増加が現状満足感の増加と関連することが示唆された。