著者
清河 幸子 伊澤 太郎 植田 一博
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.255-265, 2007-06-30
被引用文献数
7

本研究では,他者との協同の中で頻繁に生じると考えられる,自分自身での課題への取り組み(試行)と他者の取り組みの観察(他者観察)の交替が,洞察問題解決に及ぼす影響を実験的に検討した。具体的には,Tパズルを使用し,(1)1人で課題に取り組む条件(個人条件),(2)20秒ごとに試行と他者観察の交替を行いながら2人で課題に取り組む条件(試行・他者観察ペア条件),(3)1人で課題に取り組むが,20秒ごとに試行と自らの直前の試行の観察を交互に行う条件(試行・自己観察条件)の3条件を設定し,遂行成績を比較した。また,制約の動的緩和理論(開・鈴木,1998)に基づいて,解決プロセスへの影響も検討した。その結果,試行と他者の取り組みの観察を交互に行うことによって,言語的なやりとりがなくても,解決を阻害する不適切な制約の緩和が促進され,結果として,洞察問題解決が促進されることが示された。その一方で,試行と観察の交替という手続きは同一であっても,観察対象が自分の直前の試行である場合には,制約の緩和を促進せず,ひいては洞察問題解決を促進することにはならないことが明らかとなった。
著者
森 敏昭
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.57-61, 1980-03-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
9
被引用文献数
4 3

文章を黙読した場合と音読した場合とでは, 文章の記憶及び読解の成績にどのような違いが生じるかという問題を, 大学生を被験者として検討した。その結果, 音読することは, 文章を逐語的に記憶する場合には有効であるが, その効果は一時的であることがわかった。これに対し, 黙読することは, 文章を逐語的に記憶するというよりも, 文章の内容を体制化して記憶する場合に有効であり, その効果は音読の場合よりも永続的であることがわかった。一方, 黙読するか音読するかということによって, 読解の成績には顕著な差はみられなかった。このことは, 黙読するか音読するかという事が読解と無関係であるというより, 読解テストのやり方自体に方法上の改善をほどこす必要があるということを示唆するものと考えられる。
著者
井上 正明 小林 利宣
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.253-260, 1985-09-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
23
被引用文献数
28 58

This paper presents a survey of the research domain and scale construction of adjective-pairs in a Semantic Differential Method in Japan. 233 papers or articles using Semantic Differential to measure the meanings or images of the concepts were collected. Among the collected articles 99 papers using factor analysis on scales were examined. From the point of factor analysis on the adjective-scales 382 pairs were collected. Also 68 effective scales having high frequencies in the Semantic Differential study were examined. On the bases of these results, 68 proper scales fitting to measure the meanings or images of self-concepts, ideas of children, and personality cognition were hypothetically constructed.
著者
尾之上 高哉 井口 豊 丸野 俊一
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.132-144, 2017 (Released:2017-04-21)
参考文献数
33
被引用文献数
5 5

本研究では, 計算スキルの流暢性を形成するための指導法として, タイムトライアルに目標設定と成績のグラフ化を組み合わせた指導(実験条件)に着目し, その効果を, タイムトライアルによる指導(統制条件)の効果と比較した。比較は, 2つの実験計画, (a)3年生の2学級を対象にした統制群法, (b)4年生の1学級を対象にした基準変更デザイン法, で行った。標的スキルは掛け算九九に設定し, 従属変数は2分間のタイムトライアルにおける正答数とした。各実験計画の分析結果は, 実験条件が, 統制条件よりも, 効果が高いことを示した。つまり, (a)では, 事前事後の得点を共分散分析で検定した結果, 実験条件の方が, 事後得点が有意に高かった。(b)では, 実験条件下の成績を, 統制条件下の最高値からの変化量として, 線形混合モデルで分析した結果, 実験条件下の成績は, 統制条件下の最高値よりも, 有意に高い状態で保たれていた。最後に, 各指導による流暢性の伸びと, 社会的妥当性の各得点との関連をSpearmanの順位相関を用いて検定した結果, どちらの実験計画でも, 実験条件においてのみ, 流暢性の伸びと, 成長実感得点の間に, 有意な正の相関が認められた。
著者
松原 達哉
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.7, no.3, pp.18-28,62, 1969-10-15 (Released:2013-02-19)
参考文献数
20
被引用文献数
1

乗法九九学習を成功させるためには, 児童の心身の発達および経験内容から考察して, 何才何か月ごろから開始するのが, 最も適当であるかを研究すること。さらに, 算数学習のレディネスに影響を与える要因についての分析的研究をすることの2つを目的とした。実験方法は, アメリカの「算数の学年配当7人委員会」の方法を改善し, 4つの実験群を設けた。この各実験群に, 第1基礎テスト, 第2基礎テスト, 予備テスト, 終末テスト, 把持テスト, 知能検査, 記憶実験, ゲス・フー・テストその他の調査を実施した。被験者は, 大, 中都市, 農村の8小学校2年, 3年生1,046名を対象に22名の教師が, 同一指導案によって指導した。本実験の基準に従って整理した結果では, 乗法九九学習の指導開始は, 8才1か月 (2年2学期) から行なっても可能であることが実証された。現在, 8才7か月 (3年1学期) から開始しているが, さらに, 6か月早めても, わが国児童の場合は, 可能であると考えられる。これは, アメリカのC. Washburneらの実験に比べ, 2才1か月早い。また, 算数学習のレディネスの要因としては,(1) 算数学習に必要な知能,(2) 反応の速さ,(3) 視聴覚および視聴覚器官の障害の有無,(4) 健康, 栄養, 疲労の条件, 15) 家庭的背景,(6) 情緒の安定性,(7) 根気の強さ,(8) 自主性,(9) 数の視聴覚記憶,(10) 語の視聴覚記憶,(11) 算数に対する興味,(12) 算数的経験などが重要なものであることが実証された。
著者
竹内 朋香 犬上 牧 石原 金由 福田 一彦
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.294-304, 2000-09-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
37
被引用文献数
1 7

不眠, 不充分な睡眠や付随する疲労は, 行動問題や情動障害に関連し, 二次的な学業問題, 集中力欠如, 成績悪化などに結びつく。そこで本研究では, 睡眠問題発現の予防学的側面をふまえ第1に, 睡眠習慣調査の因子分析により大学生の睡眠生活パタンを総合的に把握する尺度を構成した。第2に, 尺度得点のクラスター分析により睡眠習慣を分類し, 大学生の睡眠衛生上の潜在的問題点を検討した。因子分析により睡眠に関する3尺度一位相関連 (朝型・夜型と規則・不規則関連9項目), 質関連 (熟眠度関連6項目), 量関連 (睡眠の長さと傾眠性関連6項目) 一を抽出し, 通学など社会的要因との関連を示唆した。分類した6群のうち4群は, 睡眠不足, 睡眠状態誤認, 睡眠相後退など睡眠障害と共通点を示し, 時間的拘束の緩い大学生活から規則的な就業態勢への移行時に睡眠問題が生じる危険性を示唆した。また本研究のような調査票による, 医学的見地からみた健常範囲内での睡眠習慣類型化の可能性を示唆した。分類結果に性差を認め, 短時間睡眠で高傾眠群, 睡眠の質が悪いが朝型, 規則的で平均睡眠量の群で女子の, 夜型, 不規則, 睡眠過多な群, 夜型, 不規則で睡眠の質が悪い群では男子の割合が高かった。従来の知見をふまえ生物学的要因の関与を推測した。
著者
榊原 彩子
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.485-496, 2004-12
被引用文献数
3

絶対音感の発達には臨界期が存在し, 6歳を超えると絶対音感習得が困難であることが指摘されている。加齢にともなう変化が絶対音感の習得可能性を減じていると考えられるが, 本研究では年齢の異なる幼児(2歳児4名, 5歳児4名)に対し, 同一の和音判別訓練法による絶対音感習得訓練を実践して彼らの絶対音感習得過程を縦断的に明らかにし, 年齢によって習得過程の様相も異なるのか調べることで, 加齢にともなう変化を検討した。音高という属性に「ハイト」と「クロマ」の2次元があるという考えに従えば, 絶対音感とはクロマの特定能力であり, その習得とはクロマの参照枠形成とみなせる。訓練課題のエラーから聴取傾向を記述すると, 習得過程中, 年少児は早い段階でクロマに着目し, 全体的にクロマ次元を重視した聴取傾向を示したのに対し, 年長児はクロマ次元の利用が少なく, 一貫してハイト次元に依存した聴取傾向を強く示した。加齢にともなう変化として, クロマ次元に依存する傾向が減じ, 逆にハイト次元に依存する傾向が増すという変化が示唆され, クロマの参照枠形成である絶対音感習得が, 加齢により不利になる様が示された。
著者
栗田 季佳 楠見 孝
出版者
The Japanese Association of Educational Psychology
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.64-80, 2014

ノーマライゼーションや平等主義的規範が行き渡った今日においても, 障害者に対する偏見や差別の問題は未だ社会に残っており, これらの背景となる態度について調べることが重要である。従来の障害者に対する態度研究は, 質問紙による自己報告式の測定方法が主流であった。しかしながら, これらの顕在的態度測定は, 社会的望ましさに影響されやすく, 無意識的・非言語的な態度を捉えることができない。偏見や差別のような, 表明が避けられる態度を捉えるためには間接測定による潜在指標が有効だと考えられる。本論文は, 潜在指標を用いて障害者に対する態度を調べた研究についてレビューを行った。障害者に対する潜在指標として, 主に, 投影法, 生理学・神経科学的手法, さらに近年では反応時間指標が頻繁に用いられるようになってきており, 多くの研究において障害者に対するネガティブな態度が示されていることがわかった。潜在的態度と顕在的態度の関連性について, 潜在指標の有用性と今後の課題について議論した。
著者
上長 然
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.21-33, 2007-03-30

本研究は,思春期の身体発育と抑うつ傾向との関連について,思春期の身体発育の発現が直接抑うつ傾向に影響するのか,思春期の身体発育が発現に対する受容感や身体変容行動を媒介として抑うつ傾向と関連するのかを検討することを目的として実施した。中学生870名(男子445名,女子425名)を対象に思春期の身体発育の発現状況,思春期の身体発育の発現に対する受容感,身体変容行動(体重減少行動・体重増加行動),露出回避行動,身体満足度,抑うつ傾向について測定した。その結果,1)男子においては思春期の身体発育の発現は抑うつ傾向と直接的にも間接的にも関連していなかった。2)女子においては,皮下脂肪がついてきたことにおいて抑うつ傾向と直接的な関連がみられたが,他の身体発育では見られなかった。3)女子においては,思春期の身体発育の発現は,発現に対する受容感が身体満足度と露出回避行動を媒介にして抑うつ傾向に関連するという構造が示された。
著者
千島 雄太 村上 達也
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.1-12, 2016
被引用文献数
4

本研究では, 現代青年に顕著なキャラを介した友人関係について, 中学生と大学生の比較から検討が行われた。本研究の目的は, キャラの有無による心理的適応の相違に加えて, キャラの受け止め方とキャラ行動が心理的適応に及ぼす影響を明らかにすることであった。中学生396名と大学生244名に質問紙調査を行った。分析の結果, 大学生は中学生よりもキャラがある者の割合が多く, キャラがない者よりも自己有用感が高いことが示された。因子分析の結果, キャラの受け止め方は, "積極的受容", "拒否", "無関心", "消極的受容"の4つが得られた。得点とパス係数の比較を行った結果, 学校段階で違いが見られた。中学生では, 友人から付与されたキャラを受容しにくく, キャラに合わせて振る舞うことが, 心理的不適応と関連することが明らかになった。一方で, 大学生ではキャラ行動と適応には有意な関連が見られず, 付与されたキャラを消極的にでも受け容れることが, 居場所感の高さと関連していた。以上の結果から, 中学生におけるキャラを介した友人関係の危うさについて議論された。
著者
割澤 靖子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.41-58, 2016 (Released:2016-04-11)
参考文献数
31
被引用文献数
4

本研究では, 臨床心理士指定大学院における学生の学習プロセスの個人差を捉えることを目的に, 臨床心理士指定大学院修了後3カ月以内の初学者, 計19名を対象にインタビュー調査を実施し, 修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ, 及び, ケース・マトリックスを援用して分析した。その結果, 『初学者の学習プロセス』は, 『知識や助言に依拠する学び』と『自身の感覚や判断に依拠する学び』を両輪として, 【1捉えどころの分からなさ】, 【2「専門家として未熟な自分」の感覚や判断の信頼できなさ】, 【3 「現時点での自分」の感覚や判断の信頼と活用】, 【4個々の気づきや学びの「つなぎの視点」の獲得】の4つのカテゴリを, 行きつ戻りつしながら進行することが明らかとなった。本研究では, この『初学者の学習プロセス』の進行状況を基準に, 調査協力者らを4つのグループに分類し, 『初学者の学習プロセス』の多様性を整理した。考察では, 初学者の教育・訓練に際して, (1) 自分で感じ考えることをサポートすること, (2)“揺れ戻りの経路”の多様性に注意すること, (3) 初学者の主体的な試行錯誤をサポートすること, (4) 学習対象の選択と限定化に注意すること, の重要性を指摘した。
著者
熊野 道子
出版者
日本教育心理学協会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.456-464, 2002
被引用文献数
1

この研究の目的は,自己開示の状況的要因の1つで,自己開示のきっかけとなる要因である尋ねることに着目し,自ら進んでの自己開示と尋ねられての自己開示の相違を検討することである。315名の大学生を開示内容が社会的に望ましい場合(159名)と社会的に望ましくない場合(156名)に分け,自ら進んで開示する場合と尋ねられて開示する場合のそれぞれに,自己開示の程度,動機,開示後の気持ちについて回答を求めた。その結果,以下のことが明らかになった。(1)開示程度については,開示内容が社会的に望ましくない場合は,自ら進んでより尋ねられて開示する程度が高かった。(2)開示動機については,自ら進んで開示する場合は感情性を動機として開示が行われやすく,尋ねられて開示する場合は規範性を動機として開示が行われやすかった。(3)開示後の気持ちについては,不安といった否定的な感情では,自ら進んで開示する場合も尋ねられて開示する場合も,統計的有意差が認められなかった。一方,肯定的な感情では,自ら進んで開示する場合は安堵感が高く,尋ねられて開示する場合は自尊心が高かった。
著者
原田 杏子
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.54-64, 2003-03-30
被引用文献数
7

本研究の目的は,一般の人々による日常的な相談・援助場面の会話に注目し,「人はどのように他者の悩みをきくのか」を明らかにすることである。会話データから帰納的な分析を行うため,質的研究法の1つであるグラウンデッド・セオリー・アプローチを用いた。データ収集においては,大学生の同年代・同性ペアによる実験的な相談・援助場面の会話を録音した。データ分析においては,<概念のラベル付け>から<最終的なカテゴリーの選択>へと至る4つの段階を経て,データからカテゴリーを生成した。その結果,他者の悩みをきく際の発言として,【推測・理解・確認】【肯定・受容】【情報探索】【自己及び周辺の開示】【違う視点の提示】【問題解決に向けた発言】という6つのカテゴリーが抽出された。生成されたカテゴリーを先行研究と比較すると,悩みのきき手が自分の体験を開示したり,問題を受容するよう促したりするところに,臨床面接や援助技法とは異なった日常的な相談・援助のあり方が見出された。これらのカテゴリーは,データに基づいた暫定的なものではあるが,今まで研究対象として見過ごされてきた日常的な相談・援助に実態像を与えるものとなった。
著者
松原 達哉
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.37-44, 1966-03-31

子どもの就学は,おおまかに6才といわれるが,しかし,誕生日の違いで,実際に入学する年令は異なっている。ある子どもは6才Oか月で,他の子どもは6才11月で小学校1年生になる。そこで,本研究では,子どもを年少児群・中間児群・年長児群の3群にわけ,学力・体位・欠席日数・指導性について縦断的に比較検討した。年少児群は,6才0〜1か月,中間児群は,6才5〜6か月,年長児群は,6才10〜11か月で入学するものである。結果はつぎのようである。1.国語,社会,算数,理科などの知的教科は,平均して2〜3年間年長児群の方が年少児群に比較しですぐれている。しかし,3〜4年ころからその差異はなくなっている。2.音楽は1年間,図工は5年まで,特に,体育は,6年間年長児群が有意にすぐれていることがめだっている。3.身長・体重・胸囲・座高などの体位は,男女とも小学1年生から中学3年生まで,年長児群が年少児群に比較しですぐれている(ただし,女子の身長,座高は中学2年生まで)。中間児群は,両群の中位を占めて発達している。4.欠席日数は,小学1〜2年間は年少児群の方にやや多い傾向がある。5.学校委員およびクラブ活動の委員の人数は,4年生まで年長児群にやや多い傾向がある。
著者
豊田 秀樹 村石 幸正
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.255-261, 1998-09-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
16

双生児と一般児のデータを同時に分析する遺伝因子分析モデルが, Y-G性格検査の研究に適用される。構造方程式モデルの1つであるこのモデルによって, 187組の一卵性双生児と43組の二卵性双生児と1309 人の一般児の標本を分析した。一般児のデータは, 因子の共分散構造を安定させるために利用することができる。遺伝的影響・共有環境・非共有環境は, 適応性因子の分散を, それぞれ2.5%, 32.5%, 65.0% 説明していた。またそれらは, 外向性因子の分散を, それぞれ49.8%, 10.3%, 39.9%説明していた。外向性よりもむしろ適応性の因子の分散に対して, 環境がより大きく影響することを遺伝因子分析の結果は示した。
著者
小野 雄大 庄司 一子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.63, no.4, pp.438-452, 2015-12-30 (Released:2016-01-28)
参考文献数
30
被引用文献数
6 5

本研究の目的は, 中学校と高校の部活動における先輩後輩関係の構造を明らかにし, また学年や性別, 部活動のタイプやレベルによって先輩後輩関係にどのような違いが生じているのか, さらに先輩後輩関係が, 部活動の活動内容や特徴によってどの程度予測されるのか明らかにすることであった。そのため, 全国の中学生と高校生711名を対象に質問紙調査を実施した。その結果, 中学生・高校生ともに1年生が最も先輩後輩関係を感じやすい立場にあり, 中学生では男子よりも女子の方が先輩後輩関係を厳しく捉える傾向にあることが明らかになった。また, 部活動のレベルやタイプ別の検討では, 競技・コンクール等で高いレベルで活躍する部活動や, 文化部よりも運動部において, 先輩後輩関係が明確になることが明らかになった。さらに, 部活動の方針や性格等が, 先輩後輩関係の各側面を高く予測することが明らかになった。
著者
郡司 菜津美
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.67-86, 2022-03-30 (Released:2022-03-30)
参考文献数
35
被引用文献数
3

本研究では,ジグソー法を用いた性教育指導観の理解を目指した授業の学習効果を検討することを目的とし,2018年,2019年の7月,首都圏A私立大学の2ヶ年分の受講者282名を対象に,授業の前後で質問紙調査を実施した。性教育指導観の変化を検討するため,(1)「性」に対するイメージ,(2)性教育をする理由,(3)性教育による児童生徒の具体的な変化についてKH Coderを用いて分析した。その結果,授業の前後で質問紙に記述された語(恥ずかしい,違い,知識,大人,性など)の共起関係が変わった,つまり同じ単語が異なる文脈の中で用いられるようになった。このことから,学生らに性や性教育に対する捉え方に変化が起こり,学習者から指導者へと認識の変化があったと推察された。また,ジグソー法で課題に取り組む協働の過程の中で,学生は主体的に他者と対話することで学習したと推測できた。つまり,文献の内容をグループのメンバーが個々に理解したというより,対話によってグループでの共同理解に努めたということになる。ジグソー法によって性に関しての学びを頭の中に主知的に構築するのではなく,他者との対話の中でパフォーマティブに意味を構築していたことが推測された。
著者
加藤 司
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.295-304, 2001-09-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
57
被引用文献数
30 12

本研究の目的は, Lazarusらの心理的ストレス理論に基づいた対人ストレスモデルを提唱し, その妥当性を検証することである。本モデルではパーソナリティ→媒介過程 (認知的評価→コーピング)→精神的健康といった因果関係が仮定されている。大学生227名を対象に, パーソナリティ (統制の所在, 楽観性, 自尊心), 認知的評価 (重要性, 対処効力感脅威), 対人ストレスコーピング (ポジティブ関係コーピング, ネガティブ関係コーピング, 解決先送りコーピング), 精神的健康 (友人関係の満足度, 心理的ストレス反応) を測定した。パス解析の結果から, 対人ストレスモデルの妥当性が検証された。部分的に, パーソナリティからコーピングへ有意な影響が確認されたが, パーソナリティは認知的評価を媒介としてコーピングに影響を及ぼしていることが実証された。ポジティブ関係コーピングと解決先送りコーピングから友人関係に関する満足感に対して有意な正の影響が確認された。ネガティブ関係コーピングから友人関係満足感に対しては, 有意な負の影響が確認された。また, 解決先送りコーピングは心理的ストレス反応を減少させ, ネガティブ関係コーピングは心理的ストレス反応を増加させることが実証された。
著者
益子 洋人
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.133-145, 2013 (Released:2013-10-10)
参考文献数
32
被引用文献数
8 1

本研究では, 過剰適応を「関係維持・対立回避的行動」と「本来感」から捉えた。本研究の目的は, 自他双方が満足できる葛藤解決を目指す「統合的葛藤解決スキル」をとる程度と, 関係維持・対立回避的行動, 本来感との関連を検討することであった。予備調査では, 大学生429名の回答を分析し, 「丁寧な自己表現」「粘り強さ」「受容・共感」「統合的志向」からなる統合的葛藤解決スキル尺度(Integrating Conflict Resolution Skills Scale ; ICRS-S)を開発した。α係数や再検査信頼性の値から, 一定の信頼性が確認された。また, 社会的スキル, 友人満足感, 対人葛藤方略スタイルとの相関分析から, 一定の妥当性が確認された。本調査では, 大学生197名の回答を分析し, 統合的葛藤解決スキルと関係維持・対立回避的行動, 本来感の関連を検討した。共分散構造分析の結果, 統合的葛藤解決スキルは本来感を向上させ, 過剰適応者の適応を促進する可能性が示唆された。
著者
竹澤 みどり 小玉 正博
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.310-319, 2004-09-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
26
被引用文献数
4 3

本研究では, 不適応的・病的な現象として問題視されやすい依存を, 一般的な対人関係においてより積極的で適応的なものとして捉え, そのような依存を測定するための, 情緒的依存・道具的依存からなる対人依存欲求尺度を作成し, その信頼性と妥当性を検討することを第1の目的とした。さらに, 対人依存欲求尺度と, 肯定的特徴として他者への信頼感がどのように関連するか, これまで依存的であることの特徴として考えられてきた自分への自信のなさや意思決定に対する自己評価の低さとの関連も含めて検討することによって, 依存のより肯定的, 適応的特徴を示すことを第2の目的とした。447名の大学生を対象とし, 調査を実施した。因子分析の結果, 情緒的依存・道具的依存の2つの下位尺度からなる20項目の尺度が開発された。この尺度の信頼性と妥当性の検討を行ったところ, 両下位尺度において十分な信頼性と妥当性が確認された。さらに, 概ね対人依存欲求尺度と自己信頼感との間に有意な関連がみられなかったが, 女性においてはむしろ情緒的依存欲求が高いほど自己信頼感が高く, 依存欲求が高い人は他者信頼感が高いという依存の肯定的・適応的特徴が見出された。意思決定に関する自己評価においては, 情緒的・道具的依存欲求どちらにおいても高い人は, 自己評価が低かった。