著者
飯沼 一宇
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.97-104, 2003-03-01 (Released:2011-12-12)
参考文献数
10

近年のめざましいエレクトロニクス工学の発展とともに様々な非侵襲的脳機能検査法が開発されてきた. これらを第1世代: 古典的脳波, 第2世代: 加算を用いた誘発電位, 第3世代二画像再構築を用いたCTとMRI, 第4世代: 画像と機能の統合であるPET, SPECT, fMRI, MEG, MRS, DTI, 第5世代: これらに時間軸を加味した光トポグラフィに仮に分類した.本稿では第4世代と第5世代の検査法についてその原理, 概要と自験例での応用を述べた.小児への応用を考えると, 非侵襲性で簡便な方法の開発が求められている. これらの検査法はまだ開発, 応用途上でもあり, 今後益々応用が広がっていく可能性がある. これにはわれわれ小児神経科医の係わりが不可欠である.
著者
平澤 利美 眞田 敏 柳原 正文 三宅 馨 津島 靖子 加戸 陽子 荻野 竜也 中野 広輔 渡邊 聖子 大塚 頌子
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.42, no.6, pp.421-426, 2010 (Released:2015-11-21)
参考文献数
14

6~14歳のIQを統制した無投薬の注意欠陥/多動性障害児23名と, 年齢および性を一致させた健常児69名を対象に改訂版Stroopテストを行った. 全注意欠陥/多動性障害群は, 干渉効果を評価するIncongruent Color Naming (ICN) およびICN-Color Naming (CN) の課題達成所要時間において対照群との間に有意差を認めた. さらに, サブタイプ別の検討でも, 学習障害併存症例を除外した15名での分析の結果, 不注意優勢型群と多動性-衝動性優勢型および混合型合併群ともに, ICN-CNの課題達成所要時間において対照群との間に有意差を認め, 不注意に関わる要因の干渉課題成績への影響が示唆された.
著者
平澤 利美 眞田 敏 柳原 正文 津島 靖子 加戸 陽子 荻野 竜也 中野 広輔 渡邊 聖子 大塚 頌子
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.41, no.6, pp.426-430, 2009 (Released:2016-05-11)
参考文献数
19

改訂版Stroopテストにおける年齢別の標準値を得るとともに, 干渉効果に関する指標の発達的変化について検討することを目的とし, 6~20歳までの健常児 (者) 281名を対象に検査を行った. Incongruent Color Naming (ICN), ICN - Color Naming (CN), ICN/CNなどの干渉効果に関する各指標の年齢による変化について単回帰分析を行った. その結果, 各指標において年齢による変化を認め, 各指標成績が示す最良値は16~17歳台であることが示され, 干渉課題の遂行には, 発達の完了が遅い脳局在や機能システムが関与していることが示唆された.
著者
杉江 秀夫
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.94-98, 2015 (Released:2015-03-20)
参考文献数
14

筆者らは主にグリコーゲンの代謝障害に起因する筋型糖原病, 肝型糖原病を400例以上診断してきた. 従来本症は “糖原病” と呼称しているが, 症例によってはグリコーゲンがほぼ正常あるいはグリコーゲンが逆に枯渇している疾患があることが判明し, 糖原病 (glycogen storage disease ; glycogenosis ; GSD) と呼ぶより, グリコーゲン代謝異常症 (disorders of glycogen metabolism ; DGM) と呼ぶほうがより正確な病態を表す診断名であることを提唱した.  治療的な側面ではPompe病に対する酵素補充療法, McArdle病に対するビタミンB6療法などの成果が報告され, 患者の日常生活動作 (ADL) の顕著な向上を認めている. またグリコーゲン合成系の異常による新たな臨床病型も発見され, グリコーゲン代謝異常症は幅広い臨床スペクトラムを呈する症候群であることがわかってきた. それに加え脳におけるグリコーゲンの役割と, 脳性まひについてその発生起序について考察を加えた.  グリコーゲン代謝異常症は1929年にはじめてI型が報告されて以来様々な酵素欠損が蓄積され現在15病型になっている. 古い疾患ではありながら, 最近その病態, 新たな酵素欠損, 病型の発見が次々となされ, 今後もさらに進展が期待される大変興味深い領域である.
著者
大田原 俊輔
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.3, no.4, pp.411-413, 1971-07-01 (Released:2011-05-24)
参考文献数
13
著者
田中 順子 松崎 香士 荒井 洋 永井 利三郎 松本 義男 岡田 伸太郎
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.14-19, 1994-01-01 (Released:2011-08-10)
参考文献数
12

ステロイド抵抗性または依存性の小児重症筋無力症 (以下MG) 眼筋型3例および全身型3例において, 経ロステロイド剤の継続投与を行わない間歓的メチルプレドニゾロンパルス (以下MP) 療法の治療効果について検討した.全身型2例, 眼筋型2例ではMP療法3クールにて寛解し, 以後再発時あるいは定期的にMP療法を行うことで症状は安定し, うち全身型2例では間歓的MP療法中止後も寛解状態を維持している.他の2例ではMP療法3クールでは完全寛解しなかったが, その後間歓的MP療法を行うことにより症状は次第に改善してきている.副作用はMP療法中に一過性の尿糖および軽度の初期増悪を認めた以外, 特に認められなかった.間激的MP療法は, ステロイド剤長期使用による副作用の出現を防ぐ上でも難治性MGにおいて試みる価値があると考える.
著者
福山 幸夫 杉浦 節子 平山 義人 瀬川 昌也
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.3, no.5, pp.494-500, 1971-09-01 (Released:2011-05-24)
参考文献数
17

The results of follow-up studies on 38 cases of myasthenia gravis in infancy and childhood were reported. The duration of observation in this study ranged from three to 17 years (eight years in average) after the onset of the disease.In 22 cases the myasthenic symptoms remained locally in the extraocular muscles throughout the course, while in other 16 cases bulbar, trunk and extremity muscles were involved at some occasions during the course. The spreading of symptoms in these cases occured at various stages from two weeks to four and half years after the onset of ocular symptoms.The condition of patients at the last observation was considered as complete cure in 5 cases, remarkably ameliorated in 31, not changed in 1, and aggravated in 1.The disturbance of ocular movement was the most frequent symptom persisting at the last observa tion, followed by ptosis, double vision, reduced visual acuity and photophobia in frequency, but no bulbar nor extremity symptoms were observed at that time.Based on both clinical findings and the Tensilon response, symptoms present at the last follow-up observation were considered to be myasthenic as yet only in 25 out of 33 cases, while in other 5 cases symptoms became stationary and not myasthenic.
著者
北住 映二
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.200-205, 2003-05-01 (Released:2011-12-12)
参考文献数
8

在宅の重症障害児 (重症児) の増加に伴い, 生活の場・教育の場での医療的な配慮と対応の必要性と重要性が増大している.呼吸障害・嚥下障害・上部消化管障害などが悪循環を形成しやすい重症児において, 適切なケアと家族を含めたquality of life (QOL) の改善のために, 医療技術的対応の発展とともに, 療育的対応, および学校スタッフによる医療的ケアの前進などの社会的対応の発展が必要である.医療技術課題について学際的な検討を進めるとともに, 小児神経科医が教育や療育の場に積極的にかかわり, 社会的活動を積極的に行っていく必要がある.
著者
金村 英秋 相原 正男 中澤 眞平
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.34, no.5, pp.404-408, 2002-09-01 (Released:2011-08-10)
参考文献数
20

前頭葉, 前頭前野の性差による解剖学的左右非対称性について, 三次元MRI画像を用いて定量的に体積測定を行った.前頭葉, 前頭前野ともに男性では左側が大きく, また加齢とともにその非対称性が大きくなるが, 女性では左右非対称性は明らかでなく, 年齢による影響を受けないことを確認した.男性では女性と比較して前頭葉の機能の側性化 (lateraliZation) が強いことが神経心理学的研究で示唆されているが, 今回の検討はこれら機能的側性化を解剖学的に裏付ける結果であった.今後, 神経心理学的検討と合わせて三次元MRIを用いた体積測定を行うことは, 性差における前頭葉, 前頭前野の機能的な相違に客観的知見を与えるものと考えられる.
著者
小林 朋佳 稲垣 真澄 軍司 敦子 矢田部 清美 加我 牧子 後藤 隆章 小池 敏英 若宮 英司 小枝 達也
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.15-21, 2010 (Released:2016-05-11)
参考文献数
20
被引用文献数
1

読みの能力の発達を明らかにするため, ひらがな読みに特化した仮名表記の単音, 非単語, 単語, 単文4種類の音読課題を作成し, 通常学級在籍中の児童528名の音読に要した時間, 誤読数を解析した. 時間は全課題とも1年生が有意に長く, 学童期の前半に短縮し, 単音と非単語課題では5年生以降の, 単語と単文課題では4年生以降の変化が少なかった. 単語と単文課題の音読所要時間には強い相関がみられた. 一方, 誤読は全課題で少なく, 最初に読み誤るもののすぐに自己修正されるものや語頭音を繰り返して読むパターンは対象の半数にみられた. 今後は読みのつまずきを有する児童の所見と比較し, 簡便な音読検査としての活用法を検討していきたい.
著者
鈴木 浩太 北 洋輔 井上 祐紀 加我 牧子 三砂 ちづる 竹原 健二 稲垣 真澄
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.44, no.5, pp.368-373, 2012 (Released:2014-12-25)
参考文献数
20

出産から産後約7年6カ月までの縦断的データを用いて, 母親が得た豊かな出産体験が学童期の子どもの行動に与える影響について検討した. 構造方程式モデリングの結果, ①助産所における出産は, 出産体験の豊かさを高める, ②出産体験の豊かさは, 乳幼児期における養育の暖かさを増加させる, ③幼児期での養育が暖かいと, 学童期の子どもの向社会性を増加させ, かつ困難さを減少させる, ④幼児期の子どもの扱いにくさは, 学童期の子どもの困難さを予測することが明らかとなった. すなわち, 学童期の子どもの行動を改善させる要因として, 母親の出産体験の豊かさと養育の暖かさが影響することが示された.
著者
鈴木 浩太 小林 朋佳 森山 花鈴 加我 牧子 平谷 美智夫 渡部 京太 山下 裕史朗 林 隆 稲垣 真澄
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.283-288, 2015 (Released:2015-11-20)
参考文献数
18
被引用文献数
1

【目的】自閉症スペクトラム (autism spectrum disorder ; ASD) 児・者をもつ母親において, 養育困難があるにも関わらず, 良好に適応する思考過程を養育レジリエンスと考えて, その構成要素を明らかにすることを目的とした. 【方法】16歳以上のASD児 (者) をもつ母親23名に半構造化面接を行い, 乳幼児期から現在までの子育てについて聴き取りを行った. 音声データから得られた逐語記録を元に修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて質的に分析した. 【結果】5つのカテゴリ, すなわち, ①意識, ②自己効力感, ③特徴理解, ④社会的支援, ⑤見通し, で構成される養育レジリエンスのモデルが想定できた. 発達障害児 (者) の養育において, 母親は親意識と自己効力感によって動機づけられ, 子どもの特徴理解を踏まえて対応策を考え, 社会的支援を活用し, 子どもの特徴や社会的支援に基づき成り行きを見通すことで, 子どもを取り巻く問題に対する適切な対処を導き出していると考えた. 【考察】理論の一般化には更なる検討が必要であるものの, 養育レジリエンスの概念を通してASD児 (者) をもつ母親を理解することが, 発達障害の医学的支援に欠かせない視点になり得ると考えられる.
著者
杉下 守弘
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.111-118, 2002-03-01 (Released:2011-08-10)
参考文献数
17

脳と心の関連については, 次のような3種の研究が行われている. 1. 特殊能力 (例. 絶対音感) や障害 (例. 読字障害) が脳の形態と関係があるかどうかを解明する研究, 2. 特定の高次脳機能障害が脳のどの部分の損傷で生ずるかを解明する研究, 3. 機能的磁気共鳴画像法 (機能的MRI) と陽電子放射断層撮影法 (PET) を使用し, 生きている人間の脳のどの部分が認知機能を司っているかを特定する研究. 特に, 機能的MRIは非侵襲性であるので, 他と比較できないほどの重要性をもった技法である. 機能的MRIの基本的な側面について解説した. 臨床応用に関する最近の機能的MRIデータが概観されている. これら3種の研究をいろいろな問題に用いることによって脳と心の関連が明らかにされるであろう.

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著者
広瀬 宏之
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.2-2, 2016 (Released:2016-03-26)
著者
山野 恒一
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.138-148, 1979-03-01 (Released:2011-05-24)
参考文献数
35

妊娠中期および後期の親マウスを低蛋白食飼料で飼育し, 胎仔の大脳皮質の神経細胞の生成や分化におよぼす影響を主に電子顕微鏡により検索し, 以下の結果を得た.1. 妊娠第8日目以後, 低蛋白食飼料で飼育し, 妊娠第16日目に屠殺した第1群の胎仔重量は, 全経過中繁殖用飼料で飼育した対照群にくらべ約20%の減少を示した. また, 第1群の胎仔大脳皮質では, 母細胞層および移動層内に変性中の細胞や少数の壊死細胞が観察された.2. 妊娠第8日目から15日目まで低蛋白食飼料で飼育し, 第16日目から再び繁殖用飼料にもどした第2群の新生仔マウスでは, 生下時体重や大脳皮質幅は対照群と同程度まで回腹していた.また大脳皮質第2層, 第3層領域の微細構造も対照群との間に差異は認められなかった.3. 妊娠第13日目より低蛋白食飼料で飼育した親マウスから生まれた第3群の新生仔は, すべて予定日より1日早く, 妊娠第19日目に出生した. この群の仔マウスの生下時体重は対照群の妊娠第19日目の胎仔と比較しても, 対照群の51%にすぎなかった.また, その大脳皮質幅も対照群の82%であった. 大脳皮質第2, 第3層領域では神経細胞間隙を占める突起の数が著しく減少していた.4. 以上の結果から, 妊娠中期および後期の高度な蛋白栄養障害により, 母細胞やきわめて幼若な神経細胞の一部は変性・壊死に陥ることが明らかにされた.また, 栄養障害が神経細胞の生成期以後におよぶと, 神経細胞の突起の萌出や伸展など, 神経細胞の初期の分化が高度に抑制されることが判明した.
著者
高橋 宏佳 今井 克美 高山 留美子 美根 潤 大谷 早苗 池田 浩子 久保田 裕子 高橋 幸利 井上 有史 藤原 建樹
出版者
The Japanese Society of Child Neurology
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.305-308, 2011-07-01

乳児期に発症した難治性のてんかんに対して緩和ケトン食が著効した1例を経験した. 生後8カ月からてんかん性スパズムが出現し, 一時ACTH療法にて発作は消失したが, 1歳1カ月時に部分発作で再発し, 2歳以後は部分発作とスパズムの複合発作となり, 種々の抗てんかん薬に抵抗性であった. 2歳6カ月時に絶食期間をおかず, カロリー制限・水分制限をせず, MCTオイルを使用した緩和ケトン食を開始し, 20日目に発作消失かつ脳波も著明改善した. 従来の古典的ケトン食を緩和した緩和ケトン食療法は副作用が少なく継続しやすいため, 難治性のてんかんにおいて試してみる価値のある治療法であり, わが国においても再評価されるべきである.
著者
舘野 昭彦 大村 育子
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.32, no.5, pp.420-423, 2000-09-01 (Released:2011-08-10)
参考文献数
10

Carbamazepineによる聴覚異常の認められた2症例を報告する.症例1は良性ローランドてんかんの9歳の男子であり, 知覚音の低下を訴えたが, carbamazepine血中濃度は治療域にあった.症例2は舌咽神経痛の33歳女性であり, 知覚音の半音低下を訴えた.舌因神経痛に対するcarbamazepineの服用は間欠的であったが, 再現性が確認された.2症例に認められた聴覚異常はいずれも可逆性であり, 服薬中止により速やかに消失した.今回の自験例2例を含め音高の異常を呈した12報告例があり, 頻度の高い副作用であることが示唆された.