著者
齋藤 康一郎
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.119, no.1, pp.68-69, 2016-01-20 (Released:2016-02-06)
参考文献数
10
被引用文献数
1
著者
荻原 仁美 湯田 厚司 宮本 由起子 北野 雅子 竹尾 哲 竹内 万彦
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.114, no.2, pp.78-83, 2011 (Released:2011-07-12)
参考文献数
11
被引用文献数
3 3

背景と目的: スギ花粉症にヒノキ科花粉症の合併が多く, その原因として両花粉抗原の高い相同性が挙げられる. しかし実際の臨床の場において, ヒノキ科花粉飛散期にスギ花粉飛散期にはみられない強い咽喉頭症状のある例に遭遇する. そこで, ヒノキ科花粉症の咽喉頭症状について検討した.方法: スギ・ヒノキ科花粉症患者で2008年のスギ・ヒノキ花粉飛散期の咽喉頭症状を1週間単位のvisual analog scale (VAS) で検討した. また, 2008年と2009年に日本アレルギー性鼻炎標準QOL調査票No2で鼻眼以外の症状を調査し, 花粉飛散数による相違を検討した.結果: VASによる鼻症状は花粉飛散数に伴って悪化し, スギ花粉飛散期でヒノキ科花粉飛散期より強かった. 一方, のどの違和感と咳は, ヒノキ科花粉が少量飛散であったにもかかわらず, ヒノキ科花粉飛散期で悪化した. また日本アレルギー性鼻炎標準QOL調査票No2の鼻眼以外の症状において, スギ花粉症では飛散総数が多いと全般に症状が悪化したが, ヒノキ科花粉症は少量飛散でも強い咽喉頭症状を示し, 大量飛散年に類似した.結論: ヒノキ科花粉症はスギ花粉症と同一のように考えられているが,スギ花粉症とは異なる鼻眼以外の症状を呈する. 特にヒノキ科花粉症において咽喉頭症状が強く, 少量の飛散でも強い症状がある.
著者
秋定 直樹 石原 久司 藤澤 郁 竹内 彩子 赤木 成子 山口 麻里 妹尾 明美
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.122, no.5, pp.770-776, 2019-05-20 (Released:2019-06-12)
参考文献数
16

梅毒は Treponema pallidum によって引き起こされる性感染症である. 口腔咽頭領域の梅毒病変は特徴的であり, 医療者側に知識があれば比較的容易に鑑別できるとされている. しかし, 中には典型的な所見を欠く症例も存在する. 特に, 抗菌薬が既に投与されている場合には診断に至らず無症候梅毒に移行し, 感染拡大の要因となることが懸念されている. 今回われわれは頸部腫瘤を主訴に受診した2例の梅毒を経験した. 2例とも典型的な粘膜病変を欠いていた. 本邦では2013年以降梅毒患者が急増しており, 梅毒は決して過去の疾患ではない. われわれ耳鼻咽喉科医は頸部腫瘤の鑑別に梅毒性リンパ節炎を挙げる必要がある.
著者
大前 由紀雄 安達 仁 磯田 幸秀 前川 仁 北川 洋子 唐帆 健浩 田部 哲也 北原 哲
出版者
Japanese Society of Otorhinolaryngology-Head and neck surgery
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.109, no.7, pp.594-599, 2006-07-20 (Released:2008-12-25)
参考文献数
12
被引用文献数
12 13

気管切開は,呼吸や下気道の管理を容易にすることはあっても嚥下機能にとっては負の要因となる.著者らは,気管切開に伴う呼気流の変化が喉頭腔に流入する食塊や分泌物の処理能力の低下に繋がり,経口摂食への導入を困難にする一因になると考えてきた.このため,気管切開症例にはスピーチバルブの装着を進め経口摂食への導入を試みてきた.今回は,喉頭腔への分泌物の貯留状態を喉頭クリアランスと定義しスピーチバルブ装着に伴う嚥下機能の変化を検討した.対象は,嚥下訓練の過程でスピーチバルブを装着した16症例で,スピーチバルブの装着前後の嚥下機能と経口摂食確立の成否との関連を検討した.初診時の喉頭クリアランスは全例で低下し,14例に喉頭流入を認めた.スピーチバルブ装着後は,喉頭クリアランスと喉頭流入の改善を有意に認めたが,咽頭期の嚥下出力自体には有意な変化を認めなかった.一方,経口摂食の成否は,喉頭挙上障害および喉頭流入•誤嚥の有無が有意に相関した.気管切開孔の造設による呼気流の変化は喉頭クリアランスの低下や喉頭流入の原因となり経口摂食導入への大きな阻害因子となる.こうした病態では,可能な限り呼気を喉頭腔に導き喉頭クリアランスの改善を目指すことが経口摂食導入に向けて大きな一助になる.
著者
森 浩一
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.118, no.12, pp.1472-1473, 2015-12-20 (Released:2016-01-15)
参考文献数
4
被引用文献数
1
著者
吉開 泰信
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.114, no.6, pp.539-546, 2011 (Released:2011-09-10)
参考文献数
17

T細胞は胸腺で分化して, T細胞レセプター (TCR) で自己の主要組織適合性抗原 (MHC) に提示された抗原を認識してサイトカイン産生や細胞障害活性を通じて, 免疫応答の中心的役割を担う. MHCクラスIIに結合したペプチドを認識する典型的なヘルパーCD4Th細胞はそのサイトカイン産生の特徴によってIFN-γ (γインターフェロン) を産生するTh1細胞, IL-4 (インターロイキン4) を産生するTh2細胞, IL-17を産生するTh17細胞, TGFβ/IL-10を産生する調節性Treg細胞に分類される. さらに最近はIL-9を産生するTh9細胞やIL-22を産生するTh22細胞, リンパ節のB細胞濾胞に局在するIL-21産生Tfh (follicular helper) 細胞などのサブセットの存在も提唱されている. MHCクラスIaに結合したペプチドを認識する典型的なヘルパーCD8T細胞は, 短い寿命のエフェクターT細胞, 末梢へホーミングするエフェクターメモリーT細胞, リンパ節にとどまりIL-2を産生して増殖するセントラルメモリーT細胞に分類され, パーフォリン, グランザイムを産生して細胞障害活性を示す. これらの典型的なCD4/CD8T細胞と異なる自然免疫T細胞 (innate T cells) は, 多型性に乏しいMHCクラスIb様分子に提示される核酸代謝物や糖脂質などペプチド以外の微生物抗原や自己抗原をクロスして認識する. NK関連レセプターやメモリー型の表面形質をもつことが特徴であり, クローン増殖なしにTCR刺激で早期に活性化されエフェクター分子を発現する点で自然免疫に近いT細胞と考えられ, NKT細胞, γδ型T細胞, MAIT細胞, MHCクラスIb拘束性CD8T細胞などがある.
著者
内田 育恵
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.122, no.5, pp.744-749, 2019-05-20 (Released:2019-06-12)
参考文献数
16

超高齢社会を迎えた日本では, 要介護原因の1位が認知症となり, 一方, 認知症の分野で ‘難聴’ が一気に社会的注目を集めるきっかけとなった Lancet 国際委員会の報告では, 医学的介入により認知症発症を予防できる要因として難聴が筆頭に挙げられた. 認知症や認知症以外の不利益に対し, 難聴が関連しているというエビデンスは積み重ねられており, 健康寿命の延伸のために, 中年期以降の聴力維持はますます重要性を増すと考えられる. 認知症だけでなく認知機能障害や認知機能ドメインと聴力, 就労や所得と聴力, 不慮の事故による負傷リスクと聴力, に関する先行研究の報告を概説し, 補聴器の使用がいかに影響するかを検討した研究を取り上げた. 補聴器の認知症予防に対する効果は, 集団規模の大きな, 長期間の追跡プロジェクトが各国で実施されているものの, 結果は必ずしも一定しない. われわれが遂行中の, 補聴器使用と認知機能に関する研究も中間解析について紹介した. それらを踏まえて, 超高齢社会の難聴ケアについて期待を込めた今後の展望を述べた.
著者
伊原 史英 大塚 雄一郎
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.117, no.1, pp.41-45, 2014-01-20 (Released:2014-02-22)
参考文献数
7
被引用文献数
1 2

破傷風は皮膚の創傷部位から芽胞が侵入・発芽し, 神経毒素を産生することで発症する. 一般的には外傷歴と臨床症状から診断するが, 外傷歴の明らかではない症例では, 臨床症状のみで診断しなければならない. 今回, われわれは外傷を伴わない2症例を経験したので報告する. 症例1は両頸部・肩部の痛み, 開口障害を主訴に受診し破傷風1期の診断となり, 治療を行った. 症例2は抗破傷風ヒト免疫グロブリンの使用を治療開始時に拒否したが, 翌日より症状が悪化したため, 翌日に抗破傷風ヒト免疫グロブリンを使用した. 入院5日目より数回の頸部の部分的な硬直性痙攣を起こしたが, 気道確保などは行わず治癒した.
著者
余田 敬子
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.118, no.7, pp.841-853, 2015-07-20 (Released:2015-08-01)
参考文献数
33
被引用文献数
2

梅毒は, 口腔・咽頭に初期硬結, 硬性下疳, 粘膜斑, 口角炎が生じる. 性器や皮膚の病変を伴わない場合が多く, 特徴的な口腔咽頭病変は梅毒診断の契機になりやすい. DEBCPCG 40万単位または AMPC 500mg を1日3回, PC アレルギーの場合は MINO 100mg を1日2回, 第1期は2~4週間, 第2期は4~8週間, 感染後1年以上または感染時期不明の場合は8~12週間投与する. HIV 感染者の口腔粘膜病変には感染症, 腫瘍, 炎症性疾患, 非特異的潰瘍などがあり, 無症候期以降の初発症状として現れやすい. 特に HIV 感染を強く示唆するものに, カンジダ症, 口腔毛様白板症, HIV 関連歯肉炎・歯周炎, カポジ肉腫, 非ホジキンリンパ腫, ドライマウスがある. 淋菌とクラミジアの咽頭感染は無症候の場合が多く, 少数の感染者に非特異的咽頭炎, 扁桃炎, 上咽頭炎を発症する. 診断には核酸増幅法を用いる. 当科では, 淋菌には CTRX 2g 1回/日を1~3日間, クラミジアには CAM 200mg を1日2回14日間, 投与している. 淋菌もクラミジアも性器感染は不妊の原因となり得るため, 治療終了後から2週間以上あけて, 核酸増幅法による治癒確認検査を実施する. HSV 性咽頭・扁桃炎は10~30歳代の初感染者の一部に発症する. アフタ・びらん・白苔を伴う咽頭炎と偽膜を伴う扁桃炎がみられ, 強い咽頭痛と高熱を伴う. 治療には, 経口でバラシクロビル1回500mg, 1日2回を5日間, またはアシクロビル1回200mg, 1日5回を5日間, 経口摂取困難例ではアシクロビル注5mg/kg/回を1日3回8時間ごとに7日間投与する. HPV は中咽頭癌の約半数から検出される. HPV 感染そのものは無症候性で, 診断は腫瘍性病変からの HPV の検出による. HPV 感染への治療法は確立していないが, ワクチン接種の普及により HPV 関連癌患者が減少することが期待される.
著者
畑中 章生 立石 優美子 本田 圭司 鎌田 知子 田崎 彰久 岸根 有美 竹田 貴策 川島 慶之
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.117, no.2, pp.111-115, 2014-02-20 (Released:2014-03-20)
参考文献数
17
被引用文献数
1 3

従来, 野生株によるムンプスウイルス再感染はまれとされていたが, 近年, 主に小児科領域において, ムンプスウイルス再感染の報告が散見されるようになった. 再感染の診断基準の一つとして, 初診時のムンプスウイルス血清IgM抗体価<2.5, かつ同IgG>25.8が提唱されている. 2010年7月から2011年6月までの12カ月間に, 土浦協同病院耳鼻咽喉科を受診した大唾液腺腫脹症例のうち感染によるものと考えられた45例に対して, 初診時にムンプスウイルス血清抗体価を測定した. ムンプスウイルス初感染と考えられた症例は10例, 上記診断基準からムンプスウイルス再感染と考えられた症例は7例であった. 今回の検討から, ムンプスウイルス再感染はありふれた病態である可能性が示唆された.
著者
神崎 晶
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.119, no.7, pp.937-940, 2016-07-20 (Released:2016-08-06)
参考文献数
16

急性内耳障害を中心とした感音難聴に関する病態, 検査, 治療など最近の知見について総説としてまとめた. 多施設共同で行われた解析では突発性難聴の予後に関連する血液検査項目としてフィブリノゲンが挙げられた. また, 聴力型に応じて予後に関連する血液項目が異なっており, 病態が異なることが示唆された. さらに PDE5 阻害薬による突発難聴の発生から最近新たに提唱されている突発性難聴の病態機序を紹介した. その病態と, フィブリノゲン, 細胞ストレスに関する転写因子などを含んだ新しい病態について仮説を提唱した. 今後期待されるような薬物治療として抗酸化物質などの基礎研究の現状を挙げた. また急性感音難聴が一側高度難聴に至る場合に人工内耳埋込み術がヨーロッパでは行われており, その成果について報告をまとめた. 国内でも今後実施されることが期待される. ステロイド, 特に糖質コルチコイドは内耳に保護的に作用することが明らかになってきている. 同時に突発性難聴などに対するステロイドの局所投与が見直されている. 今後期待される治療薬は副作用の観点から内耳局所に投与を行うことが重要である. ところが全身と局所投与について内耳への薬物動態が不明である. それぞれの投与法に応じて基礎的データから臨床的意義について論じた. 局所と全身投与では薬物動態が異なるため, 両者併用が薬物を内耳に到達させるために効果的である. また, 全身投与では多量の方がより内耳に到達することが示唆された.
著者
兵頭 政光 西窪 加緒里 弘瀬 かほり
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.113, no.8, pp.670-678, 2010 (Released:2011-05-13)
参考文献数
14
被引用文献数
14 83

今日, 嚥下障害は高齢化社会の到来とともに, 医療的にも社会的にも大きな問題となっている. 嚥下障害患者に適切に対応するためには, 患者ごとに嚥下機能を客観的に評価することが必要である. 嚥下機能検査法の一つである嚥下内視鏡検査は近年, 広く普及しつつあるが, 客観的な評価基準がないことが大きな問題点である. そこで今回, 嚥下障害の病態を簡便かつ客観的に評価することを目的として, 外来でも簡便に行える嚥下内視鏡検査スコア評価基準を作成し, その臨床的有用性について検討を行った.スコア評価では, 非嚥下時の観察項目として「喉頭蓋谷や梨状陥凹の唾液貯留の程度」および「声門閉鎖反射や咳反射の惹起性」を, 嚥下時の観察項目として「嚥下反射の惹起性」および「着色水嚥下後の咽頭クリアランス」を取りあげ, それぞれ0 (正常), 1 (軽度障害), 2 (中等度障害), 3 (高度障害) の4段階に評価した. この評価基準に従って嚥下障害例を対象としてスコア評価すると, 「専門外来担当医」と「一般耳鼻咽喉科医」または「言語聴覚士」の間で有意な相関があり, 嚥下障害の診療を専門とする耳鼻咽喉科医でなくても嚥下障害の病態を客観的に評価できることが示された. また, スコア評価結果は嚥下造影検査による咽頭クリアランスや誤嚥の程度とも有意な相関があった. スコア評価結果に基づいて経口摂取の可否の判断を行うことも可能と考えられた. 以上より, 今回提唱した嚥下内視鏡検査スコア評価法は, 嚥下障害の重症度や障害様式を評価する上で簡便かつ信頼性があり, 嚥下障害患者の診療において十分有用であると結論した.
著者
竹田 潔
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.114, no.1, pp.1-6, 2011 (Released:2011-07-12)
参考文献数
14
被引用文献数
1

生体防御を担う免疫系は自然免疫系と獲得免疫系から成り立っている. 抗原を非自己として認識する獲得免疫系に対し, 自然免疫系では, Toll-like receptor (TLR), RIG-I-like receptor (RLR), NOD-like receptor (NLR) などのパターン認識受容体が, 私たち哺乳類には存在せず, 微生物の生命維持に必須の構造を認識していることが明らかになってきた. これらパターン認識受容体による自然免疫系の活性化が, 抗原特異的な獲得免疫系の活性化も制御し, 生体防御を担っている. さらには, 自然免疫系の過剰活性化が, 種々の免疫疾患の発症にも関与していることが明らかになりつつある.