著者
植松 海雲 猪飼 哲夫
出版者
社団法人日本リハビリテーション医学会
雑誌
リハビリテーション医学 : 日本リハビリテーション医学会誌 (ISSN:0034351X)
巻号頁・発行日
vol.39, no.7, pp.396-402, 2002-07-18
被引用文献数
19

リハビリテーション専門病院に入院した高齢脳卒中患者374症例を対象に,自宅退院のための能力的・社会的因子条件について,classification and regression trees(CART)を用いて分析した.対象患者の自宅退院率は82.6%.単変量の解析では退院時家族構成人数,配偶者の同居の有無,functional independence measure(FIM)18項目各得点において転帰先間で有意差を認めた.CARTによる解析の結果,FIMトイレ移乗,家族構成人数からなる決定木が得られ,トイレ移乗が要介助でかつ家族構成人数が2人以下の場合は自宅退院が困難(自宅退院率21.7%)などのルールが得られた.CARTは,連続変数,カテゴリー変数のいずれをも扱うことが可能であり,結果は直感的に理解しやすく分類や予測などの研究に有効な手法と考えられた.
著者
山下 泉 宮津 誠 宮武 泰正 小野沢 敏弘
出版者
社団法人日本リハビリテーション医学会
雑誌
リハビリテーション医学 : 日本リハビリテーション医学会誌 (ISSN:0034351X)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.267-270, 1988-07-18
被引用文献数
3

旭川医大式膝装具は内側型変形性膝関節症に対して処方される。今回処方後5年以上経過した40例50膝のうち, 死亡の5例, 行方不明の6例を除く29例37膝の長期成績を調査した(フォローアップ率82.9%)。処方時年齢は平均63.6歳。変形性膝関節症の病期分類ではIV期以上の重症例が19膝を占めていた。経過観察期間は5〜9年, 平均6年6か月であった。また処方後平均1年5か月の前回調査結果と比較した.装具装着率では前回調査23例31膝(83.8%)と高かったが, 今回調査では11例16膝(43.2%)に低下していた。装具使用群では, 除痛効果は保たれているが高齢化による歩行能力の低下が認められた。病期の重症度と成績との間に関連は認められなかった。
著者
今田 元 鈴木 堅二 中村 隆一
出版者
社団法人日本リハビリテーション医学会
雑誌
リハビリテーション医学 : 日本リハビリテーション医学会誌 (ISSN:0034351X)
巻号頁・発行日
vol.28, no.6, pp.491-494, 1991-06-18
被引用文献数
20

健常者と脳卒中片麻癖患者の男性各12名を対象として,AFOの有無,各自好みおよび最大の歩行速度の組み合わせによる4条件下で3分間歩行時のPCIを測定した.4条件とも患者のPCIは健常者に比べ有意に大きかった.AFO装着により,患者のPCIは減少,健常者は増加した.患者の歩行速度はAFO装着で増加したが,健常考は変化がなかった.最大歩行速度の遅い患者ではAFO装着によるPCIの減少が大きく,歩行速度が正常値に近づくと,その効果は減少した.AFOの効果は,最大歩行速度よりもPCIに鋭敏に反映する.
著者
鈴木 堅二 中村 隆一 山田 嘉明 工藤 浩一 宮 秀哉 半田 健壽 若山 由香利
出版者
社団法人日本リハビリテーション医学会
雑誌
リハビリテーション医学 : 日本リハビリテーション医学会誌 (ISSN:0034351X)
巻号頁・発行日
vol.31, no.5, pp.339-345, 1994-05-18
被引用文献数
20

脳卒中発症後6ヵ月以内の男性脳卒中片麻痺患者54例(年齢:28〜81歳)を対象として,8週間以上のCAGTプログラムによる歩行訓練を行い,毎週1回最大歩行速度を測定した.対象者を訓練開始時の最大歩行速度により,遅い群(18例,9.9±2.8m/min),中間群(18例,37.3±12.9m/min),速い群(18例,78.4±15.2m/min)に分けた.各群の訓練開始時と8週後の最大歩行速度,両足圧中心移動距離,前後および左右方向への随意的重心移動距離,患側および非患側の等運動性膝伸展筋力を比較し,これらの変数間の関連を検討した.逐次重回帰分析により歩行訓練開始時および8週問後における最大歩行速度の決定因を求めると,開始時に遅い群では年齢,中問群では前後方向重心移動距離比(対足長)であり,速い群では有意な変数はなかった.8週後には決定因は3群とも患側膝伸展筋力だけとなった.脳卒中片麻痺患者の最大歩行速度はこれらの生体力学的要因だけでなく,訓練期間や日常生活における歩行経験の有無によっても影響されることが示唆された.
著者
二木 立
出版者
社団法人日本リハビリテーション医学会
雑誌
リハビリテーション医学 : 日本リハビリテーション医学会誌 (ISSN:0034351X)
巻号頁・発行日
vol.19, no.4, pp.201-223, 1982-07-18
被引用文献数
29

脳卒中患者のリハビリテーション後の最終自立度が, (1)患者の年齢, (2)各時期の自立度, (3)臨床的諸因子の組み合わせにより, 早期にどの程度予測可能かを検討した.対象は発症後第30病日以内に入院した脳卒中患者406人で, 平均年齢は67.0歳である.自立度は, 屋外歩行, 屋内歩行, ベッド上生活自立, 全介助の4段階に分類し, 臨床的諸因子としては, 運動障害の他に, 意識障害, 痴呆, 夜間せん妄等12因子を選んだ.これら諸因子を組み合わせて作製した予測基準により, 入院時自立歩行不能患者のうち, 7割は入院時に, 8割は入院後2週時に, 9割は同1月時に, 最終自立度が予測可能であった.
著者
上月 正博 椿原 彰夫 前田 真治 山口 昌夫 高岡 徹 永田 雅章 渡邉 修 田中 尚文 渡部 一郎
出版者
社団法人日本リハビリテーション医学会
雑誌
リハビリテーション医学 : 日本リハビリテーション医学会誌 (ISSN:0034351X)
巻号頁・発行日
vol.43, no.12, pp.808-813, 2006-12-18

日本リハビリテーション医学会認定研修施設における心理関係業務の内容・臨床心理業務担当者の実態と望まれる資質に関するアンケート結果の報告と,それに基づく提言を行った.リハビリテーション(以下,リハ)診療において,臨床心理業務担当者のニーズは極めて高いことが確認された.対応疾患も脳血管障害,外傷性脳損傷,精神発達遅滞,自閉症のみならず,慢性疼痛,循環器・呼吸器疾患,骨・関節疾患,悪性腫瘍などにも及んでおり,臨床心理業務担当者がリハ関連医学(リハ概論,リハ医学など)をカリキュラムに組み込むことが必要であると考えられた.臨床心理業務担当者養成において診療現場のニーズにあったカリキュラムの導入と質の向上が,リハ診療の発展・質の向上のみならず,臨床心理業務担当者の国家資格の確立や心理関係業務に対する診療報酬のアップにもつながるものと期待される.
著者
月村 泰治 池田 珠江
出版者
社団法人日本リハビリテーション医学会
雑誌
リハビリテーション医学 : 日本リハビリテーション医学会誌 (ISSN:0034351X)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.25-32, 1982-01-18
被引用文献数
10 4

脳性麻痺における起立の不安定性(standing instability)を重心図により定量的に捉え, これを全体的な運動機能の評価法の一つとして採用し, その有効性については既に報告して来たが, 今回はこれらに加えて起立の安定域をCross Testにより検討してみた.正常成人にいおいてはCross Testにおける前後, 左右への体重心の動揺は足長, 足幅の60%程度であり, テスト前後の重心位置の戻り(復元能力)も極めて良好である.一方, 脳性麻痺においても起立の安定域は存在し, 機能障害の程度により, その重心動揺の拡がりと重心図のパターンは特有であり, 正常成人との比較を定量的に捉えることができた.機能的に良好なものではかなり正常に近い値を示し, 重心図におけるcrossもはっきりしているが, 機能障害の大きいものでは重心図の上では充分なcrossは描けず, 逆に前後へのshiftが逆転するものがみられた.また, これらの症例をみると, 重心図の上では起立の安定域とstanding instabilityとの差が少なく, 直立位保持のためのbody swayとCross Testの際の意図的body swayとがほとんど変わらないことを示している.このようにCross Testにおける重心動揺の拡がりとその重心図のパターンは患者の機能障害に応じていろいろな幅を示し, 単なる直立位の重心図よりも, より詳細にその機能障害の程度を表現してくれる.これらのことから機能障害の評価には単にstanding instabilityだけではなく, 起立の安定域を評価することが必要であり, これにより起立のバランス制御の様子を知り, 従来よりはより的確に機能の状態を重心図の上から捉えることが可能である.また逆にこれらを検討することにより患者の機能的予後を知り, 治療効果の判定などを定量的に行うことが可能であることを知った.今後定期的に検査を続行してフォローを重ね, 症例をふやして, よりよい評価法として確立してゆくつもりである.
著者
上村 智子
出版者
社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
リハビリテーション医学 (ISSN:0034351X)
巻号頁・発行日
vol.42, no.10, pp.714-720, 2005 (Released:2006-09-22)
参考文献数
20
被引用文献数
3 4

介護保険制度による改修サービスの課題を検討するために追跡調査を行った. 2002年度広島県三原市の改修申請者88名 (77.4±8.9歳, 女性61名・男性27名) を対象とした. 2002年度全申請者から死亡者39名と転居者7名を除く323名に調査を依頼した (承諾率27%). 改修541±120日後に利用者宅で実施した. 15名 (17%) が, 改修したトイレ・浴室・外出口いずれかの使用を6カ月以内に中断した. 3件は屋内で車いすを使うための改修であり, 改修直後に使用が中断された. 12件は段差解消以外の改修であり, 利用者の心身機能低下後に中断された. 認知障害者の改修設備の6カ月以内の使用中断のオッズ比は, 障害なしの者より高かった (p = 0.001). 車いす導入改修と認知症高齢者の改修の課題が明らかになった.
著者
渡邉 修 山口 武兼 橋本 圭司 猪口 雄二 菅原 誠
出版者
社団法人日本リハビリテーション医学会
雑誌
リハビリテーション医学 : 日本リハビリテーション医学会誌 (ISSN:0034351X)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.118-125, 2009-02-18
被引用文献数
1 11

厚生労働省は,2001年から2005年まで高次脳機能障害支次援モデル事業を実施した.そのなかで,都道府県の実態調査をもとに全国の高次脳機能障害者数をおよそ30万人と推定した.しかし,以後,高次脳機能障害者数を推計する報告は極めて少ない.そこで,東京都は,高次脳機能障害者支援施策を展開するうえで対象となる高次脳機能障害総数を把握する必要から,脳損傷者の発生数に関する調査および通院患者に関する調査を行った.方法:(1)年間の高次脳機能障害者発生数の推定:都内全病院(651病院)に対し調査票を配布し,調査期間(2008年1月7日〜20日)中に退院した都内在住の脳損傷者を調査し,性別年齢別に年間の高次脳機能障害者の発生数を推計した.(2)高次脳機能障害者総数推計:高次脳機能障害有病者数は,性別年齢別に平均余命に当該年齢の発生数を乗じ,これの合計を求めて都内の総数を算出した.結果:回収病院数は419で回収率は64.4%であった.東京都内の1年間の高次脳機能障害者の推計発生数は3,010人,都内の推定高次脳機能障害者総数は49,508人(男性33,936人,女性15,572人)であった.高次脳機能障害を引き起こす主な原因疾患は脳血管障害および頭部外傷であった.これらの疾患による高次脳機能障害の発生頻度を文献的に考察すると,本調査の結果は妥当な数値と考えられた.
著者
前島 伸一郎 種村 純 重野 幸次 長谷川 恒雄 馬場 尊 今津 有美子 梶原 敏夫 土肥 信之
出版者
社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
リハビリテーション医学 (ISSN:0034351X)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.123-130, 1992-02-18 (Released:2009-10-28)
参考文献数
22
被引用文献数
3 2 5

言語訓練をうけることができなかった脳血管障害による失語症患者30例を対象に,失語症状の自然経過を経時的に評価し,年齢,性,原因疾患,失語症タイプ等との関係を検討した,言語理解は,健忘型で3ヵ月まで改善を認め,他のタイプでは6ヵ月以降にも改善を認めた.発話は,健忘型で3ヵ月まで,表出型,受容型では6ヵ月以降にも改善を認めた.表出-受容型は初期よりほとんど改善を認めなかった.書字は表出-受容型を除くすべてのタイプで3~6ヵ月以降にも改善を認めたが,表出-受容型では初期より改善を認めなかった.重度の失語症では,非訓練例は訓練例のような改善を認めないため,体系的な言語訓練が必要と思われた.