著者
金 鍾元 渡辺 賢治 金 成俊 全 修亨
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.251-267, 2014 (Released:2015-03-30)
参考文献数
29

本研究は日本人を対象とした四象体質の分類と体質による疾病及び症状の関連性について検討する上で,参考となる情報を得る目的で行った。慶應義塾大学医学部漢方医学センター(以下「慶應大学漢方センター」と略)外来受診患者を対象に設問票を用い,四象体質診断を行い,また患者のカルテより疾病と症状を分類した。四象体質設問票は韓国のSSCQ-Pを改良したSSCQ-Jを用いた。慶應大学漢方センターの四象人分布は韓国人の四象人分布と異なった結果であり,少陰人の比率がかなり高かった。疾病分類においても,「Ⅴ.精神及び行動障碍」,「ⅩⅠ.消化系統の疾患」,「ⅩⅤ.姙娠,出産及び産後期」,「ⅩⅧ.別途分類できない症状,兆候と臨床及び検査の異常所見」の冷症疾患において少陰人の有病率が統計的に高かった。
著者
中田 敬吾
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.43-46, 1983-07-20 (Released:2010-06-11)
参考文献数
4
被引用文献数
1
著者
夏秋 優 武田 裕美子 矢野 倫子
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.255-259, 2000-09-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
11
被引用文献数
2 2

顔面の皮疹に対して紫雲膏, 太乙膏を外用していたところ, 激しい皮膚炎を生じた50歳の女性症例を報告した。皮膚炎はステロイド療法にて約2週間で略治し, 以後, 再発を認めていない。パッチテストの結果, 紫雲膏, 太乙膏, およびそれらの成分である紫根とミツロウで陽性反応を認めた。このことから, 自験例はこれらの外用剤によるアレルギー性接触皮膚炎と診断した。漢方外用薬による接触皮膚炎は少ないものの, 使用中に皮膚症状が悪化した場合はその外用剤による接触皮膚炎を疑う必要がある。
著者
後藤 博三 藤本 誠 渡辺 哲郎 引網 宏彰 小尾 龍右 野上 達也 永田 豊 柴原 直利 嶋田 豊
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.189-197, 2010 (Released:2010-07-01)
参考文献数
19
被引用文献数
3 4

視床痛は視床出血や視床梗塞後に伴う難治性中枢性疼痛として知られている。しかし,薬物療法や外科的治療法が試みられているが確実な治療法がない。我々は難治性の視床痛6例に漢方治療を試み,症状の軽減した4例を経験した。症例は年齢27才から70才の男性4例,女性2例であった。診断は右視床出血3例,左視床出血1例,右視床梗塞2例で,発症後から漢方治療までの期間は6カ月から12年と幅があった。改善した4例では症状がほぼ消失から4割程度減弱した。改善例は全例,烏頭・附子含有方剤が用いられていた。抑肝散加陳皮半夏が精神症状の強い2例で有効であった。また,駆瘀血剤のみで十分改善を認めた症例もあった。症状が長期にわたる症例では,有効例でも症状は残存した。さらに難治例は症状が固定しており,強い麻痺等を伴う症例であった。
著者
王子 剛 並木 隆雄 三谷 和男 植田 圭吾 中口 俊哉 貝沼 茂三郎 柴原 直利 三潴 忠道 小田口 浩 渡辺 賢治 藤井 泰志 喜多 敏明 小暮 敏明 小川 恵子 田原 英一 萩原 圭祐 矢久保 修嗣 南澤 潔 村松 慎一 和辻 直 花輪 壽彦
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.224-230, 2014 (Released:2014-11-26)
参考文献数
16
被引用文献数
1 4

漢方医学では舌の色や形状を観察する舌診が患者の体質や病状を知る重要な手掛かりになると考えている。我が国において,舌診に関する書籍が複数発行されているが,記載内容が不統一で臨床的な舌診所見の標準的な記載方法はまだ確立してない。舌診の研究および学生への漢方教育において標準的な舌診臨床所見は必要である。そこで舌診の日本の文献(計12文献)を用いて,色調や形態の記載について比較検討した。その結果を用いて舌診に習熟した多施設の漢方専門医のコンセンサスを得た上で,舌診臨床診断記載の作成に至った。作成にあたり,実際臨床において短時間で観察し得る舌所見を捉える事と初学者でも理解し易いよう,微細な所見の違いよりも確実に捉えやすい舌診所見に重点を置いた所見記載とした。
著者
堀場 裕子 吉野 鉄大 渡辺 賢治
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.298-301, 2014 (Released:2015-03-30)
参考文献数
15

月経困難症の漢方治療では,駆瘀血剤が処方されることが多く,大柴胡湯が第一選択になることは少ない。今回,月経困難症に大柴胡湯単独で奏効した2例を報告する。症例1は19歳,大学入学後から月経痛が悪化し,市販の鎮痛剤が無効であり,頭痛や嘔吐のため講義に出席できないこともあった。腹力充実,腹部膨満,胸脇苦満,左右臍傍の圧痛を認め,実証,熱証,気うつ証・瘀血証とした。大柴胡湯エキス内服4週後には月経前の頭痛や嘔気が軽減し,20週後には月経痛に対する鎮痛剤が不要となった。症例2は35歳,息子の進学問題と転居を契機に月経痛や頭痛,いらいらが出現した。腹力やや充実,腹部膨満,胸脇苦満,心下痞鞕,左右臍傍の圧痛を認め,実証,熱証,気うつ証・瘀血証とした。大柴胡湯エキス内服8週後には頭痛やイライラが消失し,20週後には月経痛は気にならなくなった。2例とも大柴胡湯にて「気うつ」が消失し,月経痛が改善した。
著者
八坂 達臣
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.331-337, 1994-10-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
15
被引用文献数
2

東洋医学的腹証の客観的評価及び解析の試みとして超音波エコーを用い臍下不仁の腹壁での変化を観察した。臍下不仁では腹直筋の厚さ, 白線部の厚さが共に菲薄化し, 両側腹直筋間の距離 (白線部の広さに相当) は開大した。この所見は臍下不仁を腹証上示し易い, 臍と恥骨上縁の中点で著明だった。これらの臍下正中部の浅い腹壁組織での変化により, 腹壁の緊張低下を生じ触診上臍下不仁として腹証に現れるものと考えられた。また, 超音波エコー法は臍下不仁の補助診断や経過観察に有効な手段のひとつになりえる事が示された。
著者
桂 敏夫
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.293-299, 1995-09-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
10
被引用文献数
1 2

腹痛に対しては普通, 芍薬甘草湯 (以下芍甘湯とする) が用いられるが, 甘草湯もこれに劣らず有用である。外来で日頃遭遇する腹痛の中では, 急性の感冒やこれに伴う胃腸炎による一過性のものが多いが, 1年間子供を主とする130例に対してこの両者を内服と口に含むだけの2通りの方法で止痛までの時間を測定した。この2薬方と2方法の4通りのいずれにもほとんど差がなく, 大部分のものは数分から10分以内で腹痛が消失した。
著者
伊藤 隆 仙田 晶子 井上 博喜 斉藤 康栄 鏡味 勝 松原 史典 青柳 晴彦
出版者
社団法人日本東洋医学会
雑誌
日本東洋醫學雜誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.56, no.6, pp.933-939, 2005-11-20
参考文献数
9
被引用文献数
1 6

外来を受診した肥満患者127例に―律に防風通聖散 (Bo) を投与し, 6ヵ月以上服薬できた33例についてエキス剤の体重減量効果を検討した。対象例の腹力は5段階で (4) 以上の強が多かったが, これは腹痛下痢などの副作用で長期投与ができなかった9例で中間 (3) が多かったのに比較して, 腹力の強さの点で有意に高かった。服薬後の食欲低下は16例に認められた。食欲低下例と食欲不変例の投与前の体重はそれぞれ67.1±2.5kg, 75.9±2.4kgであり, 推計学的有意差を認めた。食欲低下例の体重の変化は-4.8±1.0kgで, 食欲不変例の-1.4±0.7kgに比較して明らかな差がみられた。血中中性脂肪値はBo投与後有意に低下した。作用機序として麻黄, 荊芥, 大黄, 連翹, 甘草による Adrenalin β<sub>3</sub> receptor の活性化だけでなく, 大黄と山梔子による向精神作用が推測された。近年本薬に関する重篤な副作用報告がなされている。本剤の投与対象は腹力が強 (4) 以上が望ましく, 長期投与は食欲低下が認められる例によいと思われた。
著者
寺澤 捷年
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.61, no.7, pp.889-896, 2010 (Released:2011-03-01)
参考文献数
26

現代・日本漢方の基盤の一つに「古医方」の思想がある。これは江戸期に中国における復古運動の影響を受けて勃興したが,同時期に起こった文芸復興運動と連動している。この儒教を中心とする革新運動の影響の下に,日本独自の展開がなされた。それは思弁性の排除であり,「親試実験」による実証性の追求であった。本稿では,「古医方」と古義学・古文辞学・古学との関連を総合的に俯瞰し,両者の関連性を明らかにした。
著者
堀野 雅子
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1-2, pp.41-46, 2002-03-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
10
被引用文献数
1

傷寒論, 金匱要略において, 振り出し薬として唯一記載されているのは, 傷寒論の大黄黄連瀉心湯である。振り出し薬とした意味は, 緊急性が要求されているからであろうと思われる。筆者は, 大黄, 黄連, 黄苓三味の瀉心湯の振り出し薬を当院受診の高血圧患者32名 (男性5名, 女性27名) に使用し, 服用前, 服用後30分間経時的に血圧測定した。その結果, 収縮期圧10mmHg以上の降圧効果は, 全体の68.8%であった。平常時, 陽実証と思われない人においても降圧効果があった。今回の投与において, 下痢をした人はいなかった。振り出し薬は瀉下作用よりも, 鎮静作用が強調されていると思われた。緊急的に血圧上昇した場合の降圧剤として有用と思われる。
著者
二宮 文乃
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.59, no.6, pp.799-807, 2008 (Released:2009-05-15)
参考文献数
20
被引用文献数
2 2

心因的ストレスはアトピー性皮膚炎の病勢に影響を与える。このことに着目して気剤を併用し,精神症状や自律神経系の異常だけでなく,皮膚症状の改善を認めた6症例を報告した。これらの異常に対する気剤の効果を客観的に評価する目的で手掌足底発汗検査やSDS検査を用いた。皮膚症状の標治治療に加えて,症例1では桂枝加竜骨牡蛎湯,症例2と3では四逆散,症例4は抑肝散加陳皮半夏と桂枝加竜骨牡蛎湯,症例5では四逆散から桂枝加竜骨牡蛎湯へ転方,症例6では柴胡桂枝乾姜湯を併用した。アトピー性皮膚炎の治療では,皮膚所見だけでなく,気の異常を治療することは重要であると考えられた。
著者
山下 仁 高橋 昌巳 西條 一止 一幡 良利
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.457-464, 1996-11-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
16

黄色ブドウ球菌に対する生体の感染防御活性に及ぼす灸の効果を明らかにするため, 黄色ブドウ球菌 Smith 株を用いてウサギに免疫し, 施灸群4羽と非施灸群4羽の血清中の抗体産生能を enzyme-linked immunosorbent assay (ELISA) により比較検討した。施灸群のIgM抗体価は非施灸群よりも有意な上昇 (P<0.05) が認められた。また同株の感染防御抗原である Smith surface antigen (SSA) を用いた ELISA inhibition test では, 初回免疫後9週目における施灸群血清のIgMおよびIgGの抗体活性が有意 (P<0.05) に高かった。このことから灸は黄色ブドウ球菌 Smith 株に対する生体の抗体産生能を昂進させるとともに, 同株に対する感染防御活性も増強させることがわかった。
著者
永田 豊 小山 俊平 長坂 和彦
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.68, no.3, pp.245-249, 2017 (Released:2017-12-26)
参考文献数
22
被引用文献数
2

吃逆はときに難治性となる。我々は棘下筋の硬結(寺澤ポイント)への鍼施術が有効であった吃逆症例を2例経験したため報告する。症例1は85歳の男性で,細菌性胸膜炎の入院症例。吃逆が11日間持続していた。薬物治療が部分的に有効であったが、吃逆は消失しなかった。寺澤ポイントへの置鍼で翌日に吃逆が消失した。症例2は68歳の男性で,特に契機なく吃逆が発症した。吃逆が前日から持続し,夜間睡眠障害を経験した。寺澤ポイントへの刺鍼と電気温鍼器による加温で吃逆が施術中に消失し,再発せずに経過した。吃逆症例に対して,寺澤ポイントへの鍼施術は治療法の選択肢のひとつとなり,迅速な効果が期待できる。
著者
木村 容子 清水 悟 田中 彰 藤井 亜砂美 杵渕 彰 稲木 一元 佐藤 弘
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.59, no.5, pp.707-713, 2008 (Released:2009-04-30)
参考文献数
27
被引用文献数
3 4

釣藤散が有効な頭痛の患者タイプを多変量解析により検討した。51名の頭痛患者に対して随証治療にて釣藤散を投与し,このうち1カ月間服用した46名(男性13人,女性33人,中央値48歳,範囲19-77歳,片頭痛31例,緊張型頭痛14例,混合型頭痛1例)を対象とした。随伴症状,体質傾向,舌所見,腹部所見,年齢,性別,身長,体重,高血圧の有無の計38項目を説明変数とし,頭痛改善の有無を目的変数として,多次元クロス表分析により最適な説明変数とその組み合わせを検討した。この結果,単変量解析では,重要な順に「朝の頭痛」,「めまい・ふらつき感」,「不眠」,「体重」,「耳鳴」,「舌下静脈怒張」となった。これは,「朝の頭痛」という口訣を統計学的に支持する結果となった。多変量解析では,「朝の頭痛」,「舌下静脈怒張」と「頸肩こり」の組み合わせが,釣藤散による頭痛改善を予測する最適なモデルとなった。抑肝散証では「背中の張り」を重視するのに対して,釣藤散では「頸肩こり」が頭痛改善を予測する情報として有用であったことは,両者の鑑別に役立つものと考えられた。
著者
矢久保 修嗣 小牧 宏一 八木 洋 上松瀬 勝男
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.47, no.5, pp.795-802, 1997-03-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
8
被引用文献数
2 3

葛根湯を肩こりに対して投与し, サーモトレーサーを用いて検討を行った。健常成人9例と肩こり患者19例に対しカネボウ葛根湯エキス細粒 (葛根湯) を投与し, 投与前, 投与30分後, 60分後, 90分後, 120分後にサーモトレーサーを用いて側頸部領域の体表温度の平均値を求めて検討した。投与120分後に肩こり患者群を対象にして, 葛根湯の肩こりの改善度と有用性を評価し, 副作用については全28例を検討した。葛根湯の投与により, 下痢が3.7%に認められた以外に副作用はなく, 肩こりに対しては, 著明改善21.1%, 改善42.1%, やや改善15.8%となり, 有用以上が63.2%, やや有用以上が78.9%であった。葛根湯投与前の健常成人群と肩こり群には側頸部の体表温に差はなく, また, 葛根湯により肩こりの改善した群と, 肩こりの改善が不充分な群の投与前にも差がなかったが, 葛根湯投与後の側頸部体表温の推移は異なっており,肩こりの改善群では葛根湯投与による側頸部体表温の上昇が大きかった。側頸部体表温の上昇が大きいものには葛根湯により肩こりの改善するものが多く, 葛根湯による頸部の血液循環改善がその効果の機序として考えられた。