著者
古谷 陽一 渡辺 哲郎 永田 豊 小尾 龍右 引網 宏彰 嶋田 豊
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.62, no.5, pp.609-614, 2011 (Released:2011-12-27)
参考文献数
9
被引用文献数
3 1

目的:冷え症の危険因子となる身体症状を明らかにする。研究デザイン:2008年7月7日から11月14日にかけて前向きコホート研究を行なった。対象と方法:観察開始時に冷えを認めない女子短期大学生70名(年齢中央値20歳)。冷えの苦痛の程度をNumerical Rating Scale(NRS)で7月および11月に5日間ずつ記録した。身体症状は気血水スコア(寺澤)で評価した。冷え症の判定基準は冷えNRSの平均値5以上とした。結果:11月に17名が冷え症と判定された。有意な関連を示した自覚症状は「体がむくむ」で,多変量オッズ比[95%信頼区間]11.6[1.9 to 97.5]であった。また,冷え症群は非冷え症群より低身長であった(身長差[95%信頼区間]-5.9cm[-8.6 to -3.1])。結語:「体がむくむ」と「低身長」は冷え症の危険因子である可能性が示された。
著者
中西 美保 岸田 友紀 田上 真次 馬場 孝輔 萩原 圭祐
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.68, no.4, pp.352-357, 2017 (Released:2018-02-07)
参考文献数
21

妄想型統合失調症の治療中に出現した,無為,自閉,倦怠感,抑うつ等の陰性症状に対して,加味逍遥散と補中益気湯が奏功した症例を経験した。陰性症状に対する治療は,薬物療法や心理社会的療法の有効性が示されつつあるが,これらの治療に抵抗性を示す症例も多い。統合失調症に対する漢方薬治療は,従来の陽性症状に対する補助的治療に留まらず,陰性症状にも幅広く有用な治療であると考えられた。
著者
福嶋 裕造 井藤 久雄 田頭 秀悟 栁原 茂人 中村 陽祐 藤田 良介 山下 和彦
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, pp.35-41, 2018 (Released:2018-07-04)
参考文献数
15
被引用文献数
1

急性腰痛症に対して非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAIDs, non-steroidal anti-inflammatory drugs)を用いたが効果が得られないため,大黄牡丹皮湯と四物湯を併用して用いて効果が得られた3症例を経験したので報告する。 症例1は86歳の男性で,症例2は56歳女性でありいずれも急性腰痛症と診断した。症例3は69歳男性で急性腰痛症,軽度の左根性坐骨神経痛と診断して治療した。全症例とも1から2週間の投薬で腰痛等の症状が軽快した。『万病回春』の調栄活絡湯の方意に準じて,大黄牡丹皮湯と四物湯を併用した。急性腰痛症に対する漢方治療において大黄牡丹皮湯と四物湯の併用による治療は有用であると考えられる。
著者
村井 政史 伊林 由美子 堀 雄 森 康明 古明地 克英 八重樫 稔 今井 純生 大塚 吉則 本間 行彦
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.68, no.3, pp.227-230, 2017 (Released:2017-12-26)
参考文献数
12

症例は31歳の女性で,出産後に上下の口唇に黄白色の痂皮ができ,剥けるようになった。剥脱性口唇炎と診断し,陰証および虚証で,出産後で気血ともに虚した状態と考え帰耆建中湯で治療を開始したが無効で,同じく気血両虚の十全大補湯に転方したが改善せず,胃の調子が悪化した。胃腸への負担が少ない虚証の方剤がよいと考え補中益気湯に転方したところ,口唇の痂皮は著明に改善しほとんど目立たなくなった。剥脱性口唇炎は慢性に持続した炎症性疾患であることから少なくとも口唇の局所は陽証と考えられ,少陽病をもカバーしうる補中益気湯が奏効したものと思われた。また,剥脱性口唇炎には何らかの精神医学的要因が関与している可能性があり,柴胡の解鬱・抗ストレス作用や陳皮の理気・鎮静作用もまた,本症例で補中益気湯が奏効した一因であると思われた。
著者
木下 恒雄
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.607-611, 1994-04-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
22

柴葛解肌湯 (浅田家方) は小柴胡湯と葛根湯の合方から人参と大棗を去り石膏を加えた合方的薬方であり, 薬方の構成や出典の記載内容から太陽病と裏的少陽証の併病に運用されるべきものと思われる。一方, 併病の治療において, このような病態に対しては太陽病と陽明病の治療原則に倣い先表後裏で対応するのが原則と思われるが, 本方証では例外的に表裏双解的効果を狙ったものと思われる。呈示した, かぜ症候群の症例は当初麻黄湯証と思われたが, 初診の翌日には裏的少陽証への転属すなわち太陽病と裏的少陽証の併病に移行したと診断した。そこで本方を用いたところ, 短時日で症状軽快をみた。このことは太陽病と裏的少陽証の併病の一病態に対する本方の有意性の一端を示すものではないかと思われる。併病治療に際しては治療原則を勘案の上, 本方証の如き例外的な薬方の運用もあることを念頭に置いておくべきではないかと思う。
著者
永井 良樹 増田 寛次郎
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋醫學雜誌 = Japanese journal of oriental medicine (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.60, no.5, pp.527-531, 2009-09-20
参考文献数
19
被引用文献数
1

桂枝茯苓丸が卓効したベーチェット病の65歳の男性例を報告する。患者は38歳の時眼痛,ぶどう膜炎を発症,ベーチェット病と診断された。一年余りの後,潰瘍性の舌炎を発症,ベーチェット病の一症状と診断された。56歳の時足関節に関節炎が発症,ついで口内炎,舌炎を発症,コルヒチンとサイクロフォスファマイドが投与された。その後,口内アフタ性潰瘍,関節炎を繰り返し発症した。西洋医薬に抵抗する難治の口内潰瘍を発症したため,漢方治療を紹介された。桂枝茯苓丸が投与され,難治の口内潰瘍は完全に消失,関節炎に襲われることもなくなった。患者はベーチェット病の諸症状から解放された。<br>ベーチェット病を治療するにあたり,桂枝茯苓丸の使用が考慮されなければならない。<br>また,治療初期に,黄連解毒湯によると思われる肝障害が発症した。肝障害は黄連解毒湯を中止することによって消失した。薬剤疫学的に,黄連解毒湯に含有される黄芩が原因として疑われる。
著者
高山 真 岩崎 鋼 渡部 正司 神谷 哲治 平野 篤 松田 綾音 沼田 健裕 楠山 寛子 沖津 玲奈 菊地 章子 関 隆志 武田 卓 八重樫 伸生
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.63, no.4, pp.275-282, 2012 (Released:2013-02-13)
参考文献数
10
被引用文献数
2 2

古くからヨーロッパでは自然療法を取り入れて健康を保つ方法が一般的に行なわれてきており,特にドイツでは統合医療に補完・代替医療が積極的に導入されている。ドイツでも有名な4つの施設,ミュンヘン大学麻酔科ペインクリニック,TCM Klinik Bad Ko¨tzting, Immamuel Krankenhaus, ZenHaus Klinik を視察し統合医療の現状を報告する。各施設では,慢性疼痛に対する4週間プログラム,中国伝統医学中心の治療,自然療法主体の治療,日本伝統医学にアロマテラピーを加えた治療など,各々の施設で特徴的な治療方法が行なわれていた。ドイツでは多くの病院,クリニックで補完・代替医療が盛んに行なわれているが,その広がりの一つにドイツにおける医療保険制度が挙げられる。公的保険では治療の一部,プライベート保険では広い範囲で補完・代替医療に対する保険償還が行なわれる。歴史的背景に加え,このような制度も統合医療の広がりに影響を与えていると考える。
著者
王 元武 赤堀 幸男
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.49-64, 1988-07-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
29

中国の薬酒は疾病の治療・予防のために創製された方剤であり, 中医弁証に基づく組方原則により組成され, 多くの種類の疾病に対応できる方剤体糸を構成する。このような中国薬酒の本質を解明するために, 歴代典籍の記述を参照して, 酒と薬酒の歴史を考証し, 酒の種類・薬性・宜忌についての記述を引用して酒の本性と特徴を詳しく論述した。これら基礎資料をもとにして, 中医学基礎理論の組方原則に基づく薬酒方剤の組成解析を実施し, 薬酒中における酒の地位は君・使両薬としての二重性を持つことを明らかにした。君薬とは定義通りの主薬であり, 使薬とは引薬・行薬勢・薬性制約・薬効改変の四種の作用を包含する。この方中地位の二重性は, 極めて特殊な事例であり, 薬酒方剤の特質を構成する最も本質的な因子である。さらに, 薬酒方剤の分類を提示し, 著名な薬酒についての解説を行い, 薬酒使用上の注意点を指摘して安全有効な使用法を提言した。
著者
関口 由紀 畔越 陽子 河路 かおる 長崎 直美 永井 美江 金子 容子 吉田 実 窪田 吉信
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.268-272, 2014 (Released:2015-03-30)
参考文献数
4

間質性膀胱炎/慢性骨盤痛症候群の疼痛緩和と自律神経失調症状の治療に漢方薬を西洋薬に併用した症例を4例提示した。1例目は42歳女性で,膀胱部痛・陰部痛にたいして竜胆寫肝湯を投与し,自律神経失調症状の改善と慢性疼痛による血流障害の改善に加味逍遥酸を用いた。2例目は51歳女性で,内臓を温めて下腹部痛を改善する安中散を用いた。3例目は49歳女性で,全身の冷えに対して真武湯合人参湯を用いた。4例目は27歳女性で,下半身の冷えに対して当帰四逆加呉茱萸生姜湯を用いた。間質性膀胱炎/慢性骨盤痛症候群の自律神経症状改善をめざす漢方治療が結果的に患者の気血水のバランスを整えていた。
著者
春田 道雄 井上 文明 水嶋 丈雄
出版者
社団法人日本東洋医学会
雑誌
日本東洋醫學雜誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.665-672, 2000-01-20
参考文献数
20
被引用文献数
1

アカシジアに対して西洋薬の抗パーキンソン病薬を投与しても効果がなかった症例に, 三黄瀉心湯や桃核承気湯を投与した。非定型精神病1例, 精神分裂病3例, いずれも女性で身体的な証は全て実証であり, 4例とも便秘を認めた。三黄瀉心湯6g (EK-13) をベースに症例1と症例4にはさらに桃核承気湯7.5g (TJ-61) を併用した。4例とも「ムズムズする。いてもたってもいられない」というアカシジアを疑わせる訴えは共通しており,『大黄』を含む三黄瀉心湯を処方することにより数日で症状が消退した。精神科における薬物療法では,アカシジアなどの錐体外路症状への対処が大切であるが, 抗パーキンソン病薬などが奏効しない症例がみられる。このような場合に三黄瀉心湯などの漢方薬を使用することにより, 服薬履行が高まるものと期待された。さらに『大黄』には向精神作用や瀉下作用もあるため, 薬物総量を減量できると思われた。
著者
松崎 茂
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.261-266, 1999-09-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
6
被引用文献数
1

高度の腹水と下肢浮腫を伴う重症アルコール性肝障害患者を漢方エキス剤で随証治療をし, 著効を得た。下肢の浮腫が治療に抵抗したが,「気鬱傾向」と「腓腹筋の握痛」を主たる目標として, 九味檳榔湯を主体とした治療をしたところ下肢の浮腫は速やかに消失した。また, 心理状態と肝機能, 特に蛋白合成能も改善した。肝硬変で, 水毒兆候と気鬱傾向を示す患者では, 九味檳榔湯の適応があると思われた。
著者
森 裕紀子 鈴木 邦彦 及川 哲郎 花輪 壽彦
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.250-255, 2015 (Released:2015-11-05)
参考文献数
29

白朮附子湯は『傷寒論』に「風湿相摶身體疼煩」1)と記載があるが報告は少ない。今回梅雨時に発症した四肢の痛みの再発例に対して白朮附子湯が著効した症例を経験した。症例は45歳女性。X-1年6月に,両手足の痛みとしびれが出現し暖まると痛みは改善し,疲れると痛みは増し筋肉痛のようなだるさがある。1年半前に同じ症状で主に駆瘀血薬を1年間服用し症状が消失していた。前回同様に瘀血所見が強く駆瘀血薬を処方したが症状は消失しなかった。以前の痛みの発症も梅雨時だったことに注目し,表湿に冷風が加わり生じた痛みと考え白朮附子湯に転方したところ2週で痛みは消失した。翌年6月も痛みが再発し白朮附子湯を処方し11日で治癒した。痛みの性質と発症時期から初診時の痛みも湿による痛みだったと推測する。梅雨時に発症する痛みは,冷房設備の整った環境で生活する現代において今後増える病態であり,白朮附子湯は考慮すべき処方の1つである。
著者
松橋 俊夫
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.33-41, 1989-07-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
24
著者
松本 克彦
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.241-248, 1998-09-20 (Released:2010-03-12)

滋陰とは陰を潤すという意味で, 結局は体液を補う方剤ということになる。このような方剤群を歴史を追って整理すると, まず金匱要略に麦門冬湯, 白虎加人参湯があり, また陰陽双補剤と考えられる八味丸がある。次いで和剤局方には清心蓮子飲があり, ほぼ同年代の小児薬証直訣では六味丸が八味丸の受方として独立する。その後明代に滋陰清熱の概念が確立するとともに, 多くの処方が現れるが, 代表的なものとしては万病回春の滋陰降火湯があげられよう。これらの滋陰剤の適応となる陰虚証の診断には, 望診でるい痩, 皮膚の乾燥, 問診で口渇,足腰の弱り, 粘稠な痰などがあるが, 舌苔の減少, 舌質の萎縮を主とする舌診所見が最も簡単である。陰虚証は老化, 糖尿病, 慢性炎症性諸疾患等に一般的に見られ, 今後の高齢化時代における漢方治療に極めて重要な意味を持つと考えられる。
著者
正山 勝 向井 誠 後山 尚久
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.61-66, 2016-01-20 (Released:2016-05-27)
参考文献数
24

酸棗仁湯が睡眠時遊行症に有効であった一例を経験した。症例は55歳女性。小児期に睡眠時遊行を認め一時消失していたが,成人後の精神病症状の出現とともに時々,夜間の行動異常を認めるようになった。クローン病の合併,統合失調感情障害の残遺状態の診断で当院に長期入院中,55歳時に夜間の徘徊,異常行動が目立つようになった。 抑肝散エキス製剤2.5g/日で一時的に改善したかにみえたが再発し,酸棗仁湯エキス製剤7.5g/日への変更後,不眠が改善し,夜間の異常行動が消失した。睡眠時遊行症では,五臓論の心の病態が重要であると考えられた。
著者
伊藤 隆
出版者
社団法人日本東洋医学会
雑誌
日本東洋醫學雜誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.29-46, 2003-01-20
参考文献数
29
被引用文献数
2 1

呼吸器疾患の随証漢方治療について症例をふまえて報告した。適切な漢方方剤を検討するためには, 呼吸器症状の原因が, 咽喉, 鼻, 胸部, 呼吸機能低下のいずれにあるかを鑑別する必要がある。咽喉部の息苦しさが半夏厚朴湯により改善した症例を紹介した。目標として咽喉部の不安感が重要であった。この方剤は睡眠呼吸障害に対しても応用できた。慢性鼻炎の治療では水毒の脈候が診断上重要であり紹介した。胸部ではかぜ症候群, 慢性気管支炎, 気管支喘息, 間質性肺炎について述べた。慢性気管支炎に対する漢方方剤は, 咳嗽の乾湿と虚実により分類した。気管支喘息では小児例で小建中湯などの補剤適応例の増加が考えられた。間質性肺炎では茯苓杏仁甘草湯の有効例を提示し, 漢方治療報告例を紹介した。呼吸機能低下例に対しては八味地黄丸のピークフロー値改善作用を述べ, 適応病態の相違について麦味地黄丸料と比較検討した。