著者
畑田 智子 大浜 用克 新開 真人 武 浩志 北河 徳彦 工藤 博典 望月 響子
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.46, no.6, pp.915-919, 2010-10-20 (Released:2017-01-01)
参考文献数
17
被引用文献数
1

【目的】食道閉鎖症根治術後の吻合部狭窄に胃食道逆流症(GERD)を合併した場合,狭窄が増悪するために,拡張術による拡張効果が乏しいと言われている.食道閉鎖症根治術後にみられたGERD合併例とGERD非合併例の吻合部狭窄に対する治療方針について検討した.【方法】1974年から2006年8月までに当院で治療し,術後の追跡が可能な113例の中で術後に吻合部狭窄を合併した31例を対象に,GERD合併群と非合併群の2群に分け,吻合部狭窄に対する治療成績を比較検討した.【結果】吻合部狭窄例31例の内,GERD合併例は14例であり,GERD非合併例は17例であった.GERD合併群の上下食道断端距離(gap)は26.7±13.5mmであり,GERD非合併群は15.0±9.3mmで両群間に有意差を認めた.吻合部狭窄とGERDの合併群では14例中6例に吻合時に食道環状筋切開術(Livaditis)が付加された.吻合部狭窄に対しては拡張術を,GERDには制酸剤投与を行った.その結果GERD非合併群では平均2.4回の拡張術で吻合部狭窄症の症状が改善したのに対し,GERD合併群では平均7.3回の拡張術を行っても狭窄の改善がみられなかった.11例に噴門形成術を行い,3例には狭窄部切除を行った.噴門形成術後は8例が速やかに改善,3例はブジーを追加して改善した.狭窄部を切除した内の2例は間もなく噴門形成術を追加施行し,他1例はGERD症状が軽快したので経過観察とし,そのまま改善した.【結語】GERDを合併した吻合部狭窄に対しては,制酸剤の投与と拡張術だけでは狭窄に改善がみられないため,早期に噴門形成術を行うべきである.
著者
川久保 尚徳 三浦 紫津 高橋 由紀子 財前 善雄
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.49, no.5, pp.1008-1011, 2013-08-20 (Released:2013-08-20)
参考文献数
17

Mallory-Weiss 症候群は腹腔内圧の急激な上昇が原因となり食道胃接合部に裂創をきたす症候群である.今回,急性胃腸炎に伴う嘔吐で発症した本症の1 例を経験したので報告する.症例は6歳男児,頻回の嘔吐後の吐血を主訴に受診した.上部消化管出血を疑い,緊急で全身麻酔下に上部消化管内視鏡検査を行った.胃・十二指腸には病変を認めず,食道胃接合部に2 条の裂創を認め,Mallory-Weiss 症候群と診断した.検査終了後に発熱と多量の下痢便を認め,嘔吐の原因は急性胃腸炎であったと考えられた.保存的治療により軽快し,4 病日に退院となった.小児におけるMallory-Weiss 症候群の報告は少なく,若干の文献的考察を加えて報告する.
著者
大畠 雅之 田中 朋子 中越 享 永安 武
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.40, no.5, pp.687-690, 2004-08-20 (Released:2017-01-01)
参考文献数
13

症例は11ヵ月の男児.犬吠様咳嗽と発熱にて発症し胸部単純レントゲン写真で右中・下葉無気肺と上葉の過膨張を認めた.酸素投与,去痰剤投与を行ったが症状改善せず,気管支内祝鏡検査を行った.気管支ファイバーにて右中・下葉枝人口部に粘液栓を認め,硬性気管支鏡による異物鉗子にて摘出した.摘出標本は長さ4cmの白色ゴム状で中葉・下葉枝の気管支鋳型を呈していた.病理学的には炎症細胞浸潤を主体とする粘液様,フィブリン様物質でplastic bronchitisと診断された.術後呼吸状態は著明に改善し,その後の検査にて気管支系に異常を認めていない.
著者
寺島 和光 佐野 克行
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.782-786, 1994-06-20 (Released:2017-01-01)

膀胱尿管逆流防止術後に発生した膀胱破裂 (症候性自然破裂) 3例について報告した. 3例とも尿管膀胱新吻合術 (Politano-Leadbetter 法)を行ったが, 1例はその前に vesicostomy を, また他の1例では VUR 再発のために再手術を2回行っている. 膀胱破裂はそれぞれ術後10ヵ月, 1年8ヵ月および4年11ヵ月目に発生した. 症状は腹痛, 腹満, 嘔吐, 乏尿, 高窒素血症などであった. 診断は膀胱造影および開腹術にて確定したが, 3例とも腹腔内破裂であった. 破裂の原因は, 手術により膀胱壁に脆弱な部分が生じたためと考えられる. 全例膀胱の修復術により治癒した. 本症は膀胱頂部に発生しやすいので, 膀胱を切開する時はなるべく頂部は避けるようにし, やむをえず切開したら縫合閉鎖は十分に行うことが大切である.
著者
内山 昌則 岩渕 眞 大沢 義弘 松田 由紀夫 内藤 万砂文 広川 恵子 八木 実 飯沼 泰史
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.29, no.5, pp.952-961, 1993-08-20 (Released:2017-01-01)

小児奇形腫群腫瘍の54症例中,未熟奇形腫は8例,悪性奇形腫は10例で,その発生部位は卵巣21例中未熟3例,悪性5例であり,精巣1例中悪性1例,仙尾部18例中未熟4例,悪性3例で,後腹膜9例中未熟1例,縦隔3例中悪性1例であった.悪性の組織型は未分化胚芽腫4例,胎児性癌3例,卵黄嚢癌3例であった.これらのうち小児腹部腫瘍で鑑別を要する卵巣,仙尾部,後腹膜の奇形腫群腫瘍,特に未熟,悪性奇形腫につき診断と治療方針および成績を検討した.卵巣未分化胚芽腫症例は腫瘍および同側卵巣卵管摘除術を行い,さらに術後療法として,Stage III症例の1例にCPA大量療法,もう1例に照射療法を行い, Stage IV 症例の1例に縦隔リンパ節転移巣の切除とCPA大量および照射療法を併用し,全例再発なく生存中である.卵巣未熟奇形腫の腹腔内再発を来した1例は摘除とVAC療法を行い,成熟神経線維からなる腹膜播種は経過観察し,腫瘍付属器摘除術後2年で両側肺転移を来した1例は肺転移巣を切除し,両例とも以後再発はない.また胎児性癌の1例は術後T2療法を行い再発はない.全例11歳以降には月経も発来し,経過良好である.仙尾部未熟奇形腫の3例は完全摘除後化学療法は行わず,仙尾部卵黄嚢癌のStage III の1例はPVB療法後完全摘除術を行い,術後PVBとHigh dose VAC療法で再発の徴候はない.後腹膜の成熟奇形腫の腹膜播〓例は術後経過観察で,また未熟奇形腫の1例は腫瘍摘除術後化学療法を行わず,経過良好である.
著者
福井 花央 片山 修一 後藤 隆文 中原 康雄 大倉 隆宏 人見 浩介 青山 興司
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.1096-1100, 2018-08-20 (Released:2018-08-20)
参考文献数
13

卵巣広汎性浮腫massive ovarian edema(以下MOE)は正常の卵胞構造を有したまま,間質の浮腫により卵巣腫大を呈するまれな病態である.我々は女児に発症したMOEの2例を経験したので報告する.症例1は9歳,女児.主訴は食思不振,嘔吐,腹部腫瘤.下腹部正中から右側に,10 cm大の腫瘤を認めた.MRIで骨盤内腫瘤の被膜下にMOEに特徴的な所見であるネックレスサインと呼ばれる多数の小囊胞構造を認めた.術中所見では右卵巣が捻転しており,腫瘍や壊死の可能性を考え付属器切除術を施行した.症例2は4歳,女児.主訴は腹痛,嘔吐.MRIでネックレスサインを認めた.画像,臨床経験から術前にMOEと診断し,腹腔鏡下右卵巣捻転解除術および固定術を施行した.女児の急性腹症ではMOEの可能性を念頭におくべきである.
著者
大野 優紀 田中 圭一朗 馬場 優治 吉澤 穣治 三澤 健之
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.850-853, 2019-06-20 (Released:2019-06-20)
参考文献数
9

学童期の唾液腺芽腫を経験したので報告する.症例は12歳女児.出生時から左顎下部の腫瘤を認めていた.大きさの変化はなかったが,最近軽度の圧痛を伴うようになり,当院を紹介受診した.触診上,左顎下部に可動性良好で直径2 cmの弾性やや硬の腫瘤を認めた.本人・家族とも手術を希望したため,全身麻酔下に腫瘤を摘出した.病理診断は,唾液腺芽腫であった.唾液腺芽腫は,世界では50例ほど報告されているが,検索しえた範囲では本邦では初めての報告であった.ほとんどが4歳未満での報告であり,本症例のような学童期での診断例は非常に珍しい.術後1年半経過したが再発は認めておらず,外来にて経過観察中である.
著者
青木 勝也 杉多 良文 吉野 薫 谷風 三郎 西島 栄治 津川 力
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.36, no.7, pp.1086-1089, 2000-12-20 (Released:2017-01-01)
参考文献数
6

Penaが発表したtotal urogenital mobilizationは総排泄腔長が3.0cm以下の総排泄腔遺残症に対して施行される根治術で, 合併症が少なく, ほぼ正常に近い外観が得られると報告された.今回我々は総排泄腔遺残症の1例に対してtotal urogenital mobilizationを行い満足のいく結果を得たのでその手技を報告する.症例は9カ月女児.posterior sagittal approachにて総排泄腔後面に到達したあと, 総排泄腔より直腸を分離し膣と尿道を一体として受動せしめ会陰部に開口させ, 最後に肛門形成を行った.術後1年が経過して膣狭窄, 排尿障害などの合併症はなく, 外観的に正常に近い状態が得られている.total urogenital mobilizationは総排泄腔遺残症の患児に対して手術時間の短縮, 尿道膣瘻, 膣狭窄などの合併症の軽減が期待でき, 外尿道口と膣口が近接することからより正常に近い外観が得られる優れた手術法であると考えられた.
著者
藤村 匠 内田 豪気 春松 敏夫 加藤 源俊 石岡 茂樹 小森 広嗣 下島 直樹 佐藤 裕之 廣部 誠一
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.310-314, 2017-04-20 (Released:2017-04-20)
参考文献数
17

今回,我々は膣欠損を合併した直腸膣前庭瘻に鎖肛根治術と同時に小腸グラフトを用いた膣形成を施行した1 例を経験したので報告する.症例は9 か月の女児.出生時に肛門を認めず,日齢2 に人工肛門造設された後に当院紹介となった.直腸膣前庭瘻に対する術前造影で腟欠損に気づき,腹腔鏡による内性器精査で遠位膣欠損と左右に分かれた子宮,正常の卵巣を認め,染色体核型は46XX で,Mayer-Rokitansky-Küster-Hauser 症候群と診断された.本例は体重増加を待って1 歳11 か月時にanterior sagittal anorectoplasty(ASARP)と同時に小腸グラフトを利用した膣形成が行われた.女児鎖肛・前庭瘻症例は婦人科系臓器の形成異常をしばしば伴う.会陰部所見のみでそれらを把握することは困難で,術前造影時に膣造影で診断し,同時に肛門形成・膣形成を行うことは治療戦略として有用である.
著者
岡村 かおり 梶原 啓資 中尾 真 飯田 則利
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.7, pp.1278-1283, 2017-12-20 (Released:2017-12-20)
参考文献数
22

症例は胎児期に重複膀胱が疑われ,出生後に鎖肛を伴わない直腸膣前庭瘻の診断で人工肛門を造設した女児.術中に管状型回腸・全結腸重複症が判明し,また重複尿道,重複膣,重複子宮を合併していた.6生月に会陰部横切開で直腸膣瘻閉鎖術および重複直腸側々吻合術を施行したが,直腸膣瘻が再発し,8生月に後方矢状切開で直腸膣瘻再閉鎖術,10生月に重複回腸・上行結腸切除,隔壁部分切離および人工肛門閉鎖術を行った.術後2年の現在,腸管の通過障害はなく経過は良好である.今後,妊娠・出産を含めた長期的フォローアップが重要である.
著者
高橋 良彰 伊崎 智子 飯田 則利
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.75-79, 2017-02-20 (Released:2017-02-20)
参考文献数
13

子宮腟溜血腫はまれな疾患で,外陰および腟の奇形により,第二次性徴発現時期に達してから発症することが多い.当科で子宮腟溜血腫を呈した2 例を経験したので報告する.2 例ともに11歳で間欠的腹痛を主訴に前医を受診し,卵巣囊腫茎捻転が疑われ当院紹介となった.症例1 は卵巣囊腫茎捻転の術前診断で緊急開腹術を施行したところ両側卵巣は正常であったが,子宮および膣内腔が血液で充満しており子宮腟溜血腫と診断した.外陰部診察で腟横中隔と診断し,開窓術を施行した.症例2 は外陰部診察で腟口の閉鎖を認め,術前に腟閉鎖と診断可能であった.術中診断は下部腟欠損症で,腟盲端部を腟入口部まで牽引吻合する単純再建術を施行した.2 例ともに順調に月経がみられている.年長女児でTanner 分類がII~III 度であるにもかかわらず初経発来がなく,間欠的な下腹部痛を訴える症例は子宮腟溜血腫を疑うことが大切である.
著者
大澤 絵都子 北河 徳彦 新開 真人 望月 響子 町田 治郎 小林 眞司 馬場 直子 相田 典子 田中 祐吉 田中 水緒
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.6, pp.906-913, 2020-10-20 (Released:2020-10-20)
参考文献数
21

【目的】Lipoblastomaの適切な診療方針について検討する.【方法】1981年4月から2019年3月の期間に当院で外科的切除を行い,病理組織学的にlipoblastomaと診断された51症例を対象とし,発生部位,症状,手術所見(被膜・癒着・浸潤・全摘の有無),再発の有無,術後合併症,再発腫瘍の病理所見について後方視的に検討した.【結果】発生部位は四肢と体幹に多く,無痛性の増大する腫瘍として気づかれるものがほとんどであった.体腔内に発生した症例は4例でうち3例は咳嗽や嘔吐など周囲臓器の圧排症状を呈した.2例に術後2か月と5年で再発がみられ,いずれも被膜不明瞭もしくは周囲に癒着がみられたが全摘された症例であった.不完全切除となった4例に再発はなかった.周囲の正常組織も含めて腫瘍を全摘した症例の中には術後瘢痕による機能障害を残した症例もあった.再発腫瘍の病理組織はいずれも初回手術時より分化が進んでいた.【結論】Lipoblastomaは局所再発のリスクがあるが,良性腫瘍であり,また経過とともに消失したり組織が分化する可能性もあるため,癒着や浸潤傾向の強い症例では,全摘に執着せず,術後機能障害を起こさない程度の切除に留めることも考慮してよいと考える.また,全摘の有無に関わらず術後長期間経過してから再発することもあるため,術後は最低5年以上の慎重な経過観察が必要である.