著者
吉岡 秀人 後藤 隆文 秋山 卓士
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.37, no.5, pp.831-836, 2001
被引用文献数
9

症例は12歳男児で仙尾部の腫瘤を主訴として来院したhuman tailであった.神経症状はなく, さらにCT, MRIを施行し脊髄との連絡がないことを確かめた後, 単純切除を行い術後経過は順調である.human tailの定義は, 現在も曖昧であるが, 真のhuman tailとは, 腰部付近から肛門縁までに存在する突起物で, 病理学上他の腫瘍性病変を除外した腫瘤に用いられる総称と定義した.通常は仙尾部付近に腫瘤を認めることが多く, その組織像は骨・軟骨などを含むことはまれで脂肪組織のみのものが多い.また様々な合併症が報告されているが, 本邦例ではその約35%に二分脊椎の合併があり, 時に腫瘤は脊髄と連絡を持つため術前に神経学的症状, 直腸膀胱障害の有無を確かめ, MRI, CTを施行し二分脊椎や脊髄との連絡がないことを確認した後, 摘出術を行う必要がある.
著者
福澤 太一 西 功太郎 和田 基 佐々木 英之 風間 理郎 田中 拡 工藤 博典 安藤 亮 山木 聡史 石田 和之 仁尾 正記
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.48, no.5, pp.854-859, 2012

呼吸困難を呈した巨大後縦隔成熟奇形腫の1例を経験した.症例は生後4か月,女児.周産期,新生児期に異常は指摘されていなかった.4か月時,発熱と不機嫌を主訴に近医を受診したが,翌朝から哺乳不良,傾眠となり,画像上,右巨大縦隔腫瘍を認め精査加療目的に当科に紹介された.入院時,頻呼吸および陥没呼吸を認め,白血球数30,400/μl, CRP 9.7mg/dlと高度の炎症所見を認めた.胸部CTで右胸腔を占め縦隔を左方へ圧排する最大径9cmの内部に粗大な石灰化を伴う巨大充実性腫瘍を認めた.呼吸循環が保たれていたことから炎症のコントロール目的に待機手術の方針とし,入院から5日目に右開胸縦隔腫瘍切除術を施行した.腫瘍は後縦隔原発と思われ,周囲との癒着は軽度で全摘しえた.摘出標本は9×6.5×6cmで病理組織学的に成熟奇形腫と診断された.術後創感染を合併したが,呼吸循環に関しては合併症なく経過し,23病日に退院した.術後2年再発無く外来経過観察中である.
著者
小森 広嗣 広部 誠一 新井 真理 東間 未来 大場 豪 大野 幸恵 鎌形 正一郎 林 奐
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.361-364, 2011
被引用文献数
1

症例は4歳女児,生後10か月時に脂肪組織を内容とする白線ヘルニアと診断され,経過観察にて軽快しないため手術を行う方針とした.ヘルニア門は剣状突起と臍のほぼ中間点で,1×1cm大の腫瘤として触知した.手術は腹腔鏡下でヘルニア門の直接閉鎖を行った.臍下に5mmカメラ・ポート,左側腹部に5mmワーキング・ポートを挿入.肝円索に覆われた1×1cmのヘルニア門を同定,ヘルニア内容は腹膜前脂肪織であった.ヘルニア門の閉鎖にラパヘルクロージャーを用い同じ穿刺部から左右に向きを変えて挿入したラパヘルクロージャー針で糸をループ状に左右の腹直筋に運針し,皮下で結紮固定した.ヘルニア門を含む上下2cmの距離を左右の腹直筋を非吸収糸にて計7針で縫合閉鎖した.術後経過は良好で,手技的に安全,簡便で,整容性においても満足な結果であった.
著者
三松 謙司 大井田 尚継 西尾 知 堀井 有尚 野中 倫明 越永 従道 宗像 敬明 富田 涼一 天野 定雄 福澤 正洋
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.34, no.6, pp.1023-1028, 1998
被引用文献数
13 14

目的 : 1971年1月から1996年12月までの25年間に経験した小児腸重積症713例について年齢, 性差, 症状, 診断, 治療方法, そして重積型式, 重積原因疾患, 再発に関して臨床的に検討した.結果 : 年齢は平均15.2カ月で男児に多く, 症状では, 腹痛, 嘔吐, 血便の三主徴が半数に認められた.非観血的整復率は平均61.0%であったが, 発症から12時間以内では平均83.7%と高く, 早期診断, 早期治療が重要であると思われた.観血的整復術施行例において, Hutchinson法のみ施行した症例が71.2%, 腸管切除例は11.5%であった.重積型式は, 回腸結腸型, 回腸回腸結腸型が多く, また重積原因として器質性疾患によるものは2.4%と少なく, 器質性疾患のうちではMeckel憩室が10例と最も多かった.結論 : 再発率は観血的整復後の4.0%に比べ, 非観血的整復後は10.0%であった.このことは, 高圧浣腸による不完全整復と器質性疾患が関与している可能性が考えられた.
著者
伊藤 伸一 小野 充一 多村 幸之進 長江 逸郎 野牛 道晃 只友 秀樹 青木 達哉 小柳 〓久
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.35-40, 1999

jugular phlebectasia(本症)はまれな疾患であり和文名称も頸静脈拡張症, 静脈脈瘤, 頸静脈奇形, 真性血液嚢胞と統一されていない.また, 本症はその概念を理解されていなければ, 頸部リンパ管腫, 側頸嚢腫, 正中頸嚢腫および他の頸部腫瘤との鑑別に難渋する可能性がある.今回, われわれが経験したのは8カ月の女児で, 患者は頸部の巨大軟性腫瘤でリンパ管腫疑いで当院に入院となった.入院時所見として頸部腫瘤は患児の怒責, 号泣で増大する特徴を有し, 局在診断には超音波, CTおよびMRI, 確定診断には直接穿刺法が有用であった.しかし, 穿刺による血栓形成には十分留意する必要があった.本症の病因については明らかでないが, 先天的または後天的な血管の脆弱化や構造異常および頸部の解剖学的要因が関与していると思われる.
著者
甲谷 孝史 高橋 広 堀内 淳 藤原 和博 河内 寛治
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.335-340, 1998
被引用文献数
3

症例は生後2日の男児で, 主訴は嘔吐, 血便.現病歴は1997年1月7日在胎36週3190 g, 帝王切開で出生した.生直後に胎便排泄はみられた.生後8時間の哺乳後より胆汁性嘔吐を認め, 嘔吐, 血便が続くため1月9日当院小児科より当科に紹介入院する.腹部単純X線の立位像で, 鏡面形成像があり, 虚血性変化を伴う下部消化管の通過障害で絞扼性イレウスの疑いの術前診断のもと, 1997年1月9日緊急手術を行った.回腸末端より約40 cm口側の腸間膜に2×3 cmの裂孔が存在し, 裂孔内に回腸末端より約20 cm口側の回腸が約30 cm入り, 嵌入・捻転した回腸腸間膜裂孔ヘルニアによる絞扼性イレウスであった.壊死部を含め25 cmの回腸を切除, 端々吻合術を行った.術後経過は良好であった.本疾患は術前に確定診断が困難で, 新生児例でもイレウス症状を呈する症例は本疾患も念頭におく必要性があると考えられた.
著者
大畠 雅之 徳永 隆幸 吉田 拓哉 望月 響子 永安 武
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.46, no.7, pp.1151-1155, 2010
参考文献数
8

瘻孔再発を繰り返した直腸尿道瘻術後の高度排便障害に多孔性ポリウレタン肛門用装具(アナルプラグ)使用でQOLの改善が得られた症例を経験したので報告する.症例は10歳男児.直腸尿道瘻の診断で生後9か月に根治術を受けたが術後直腸尿道瘻が再発した.3回の瘻孔閉鎖術不成功の後,7歳5か月時に腹仙骨会陰式Endorectal pul-through法による直腸尿道瘻閉鎖が行われた.その後難治性の便失禁に陥り,人工肛門,MACE法による排便管理を予定したが家族の希望で多孔性ポリウレタン肛門用装具の使用を試みた.使用開始当初の肛門違和感克服後便失禁症状の著明な改善がみられた.成長期の小児にとってアナルプラグの長期効果は不明であるが,肉体・精神発達時期の小児にとって一時的とはいえ失禁の不安から解放される時期を提供できる有効な治療法の一つと思われる.
著者
河本 陽介
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.16-25, 1999
被引用文献数
1

【目的】近年, 癌化と細胞周期調節との関わりが注目されている.細胞周期を負に制御しているサイクリン依存性キナーゼ(cyclin dependent kinase ; CDK)インヒビターであるp16遺伝子は, 種々の成人悪性腫瘍において, ヘテロ接合性消失(loss of heterozygosity ; LOH)や変異が高頻度に検出され, 癌抑制遺伝子と考えられている.一方, 小児悪性固形腫瘍である肝芽腫, Wilms腫瘍, 横紋筋肉腫において, しばしば染色体11p15.5領域の欠失が報告されているが, p57遺伝子はこの領域に存在し癌化に関与する遺伝子として注目されている.今回, 小児悪性固形腫瘍におけるp16遺伝子およびp57遺伝子の関与の有無を検討した。【方法】教室で経験した小児悪性固形腫瘍を対象として, (1)polymerase chain reaction-single-stranded conformation polymorphism (PCR-SSCP)法, 直接塩基配列法によるp16遺伝子の変異, および(2)定量的PCR法を用いたp16, p57遺伝子の発現を解析し, 各腫瘍の病期ならびに生命予後と比較検討した.【結果】p16遺伝子変異は, DNAを抽出し得た111例中Wilms腫瘍1例, 肺芽腫1例の計2例に認めたが, いずれもコドン127の変異(GGG→GGA)であり, コードするアミノ酸には変化がみられなかった.p16, p57遺伝子発現に関しては, その多寡と特異的な関連を有する特定の腫瘍種はみられず, また各腫瘍における病期, 生命予後との間にも明らかな関係は認められなかった.さらに各腫瘍におけるp16, p57両者の発現の相関を検討したが, 両遺伝子の発現量の間には有意な相関は認められなかった.しかしながら, 神経芽腫, 肝芽腫, Wilms腫瘍, 横紋筋肉腫のいずれの腫瘍においても, その一部にp16, p57のいずれか, あるいは両者とも発現の低下した症例を認めた.【結論】小児悪性腫瘍においては, p16, p57の遺伝子変異の関与は低いものの, これら遺伝子の発現低下によりCDKの活性化が維持され, 腫瘍増殖につながる症例のある可能性が示唆された.
著者
椛澤 由博 石川 正美 岡松 孝男
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.32, no.7, pp.1104-1109, 1996
被引用文献数
6

腸回転異常症に対する手術の緊急性は,腸軸捻転の程度によって左右される.上部あるいは下部消化管造影検査は,腸回転異常症の診断には欠かせないものではあるが,特に腸軸捻転が強く存在する際には,その診断に難渋し,いたずらに被曝線量を多くしてしまうことがある.すなわち消化管造影のみでは,腸回転異常症と診断されても,腸軸捻転の有無やその程度については十分に判断できないことがある.一方,腹部超音波検査およびカラードップラー検査では,腸軸捻転が存在する場合には,whirlpool sign といわれる上腸間膜動脈を腸管,腸間膜,上腸間膜静脈が取り囲む像をとらえることができた.われわれは,これらの所見は,腸回転異常症における緊急手術の指標になると考える.
著者
佐藤 正人 浜田 吉則 棚野 晃秀 井上 健太郎 福田 秀明 高田 晃平 日置 紘士郎
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.47-51, 2001
被引用文献数
3

【目的・方法】1996年7月より, われわれは非観血的整復が不可能であった腸重積症患児8例に対し腹腔鏡下腸重積整復術を試みてきた.それ以前の開腹腸重積整復術(ハッチンソン手技)施行症例14例において手術時間, 入院期間などを比較検討することにより, 腸重積症治療における腹腔鏡下腸重積整復術の意義を検討した.【結果】手術時間は腹腔鏡下腸重積整復術完遂症例(以下LR)において70分から110分(87.0±17.9分)であり, 開腹腸重積整復術施行症例(以下OR)においては50分から125分(82.4±23.7分)であった.入院期間はLRで3日から11日(6.0±3.2日), ORでは6日から12日(8.5±1.8日)であった.手術時間には統計学的有意差は認められなかったが, 入院期間はLRのほうが有意に短かかった.LR8例の病型は6例が回腸結腸型であり, 残り2例がそれぞれ回腸回腸結腸型, 結腸結腸型であった.結腸結腸型の1例が術中に腹腔鏡下整復が不可能であると判断され開腹術に移行された.回腸結腸型, 回腸回腸結腸型それぞれ1例ずつにおいて器質的疾患の合併が確認されたので腸重積整復後に腹腔鏡補助下小腸切除術が施行された.OR14例の病型は全例が回腸結腸型であった.【結論】LR症例には手術完遂不可能な症例が存在することが判明したが, 器質的疾患の合併が認められた症例においては腹腔鏡補助下小腸切除術が可能であることから, われわれはLRの位置づけを非観血的整復術とORの間におき, Minimally Invasive SurgeryとしてのLRの利点を器質的疾患合併症例に認めた.
著者
岩崎 稔 橋本 和廣 上村 良 池田 幸広 小林 久人 花房 徹兒 田中 紘一
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.470-479, 2006

【目的】新生児未熟児の胆汁うっ滞症に対し,胆道閉鎖症に対する除外診断の重要性と治療戦略の妥当性を研究すること.【対象と方法】胆汁うっ滞を認めた新生児未熟児2例(超低出生体重児:胆道閉鎖症,極低出生体重児:胆汁うっ滞症)の臨床経過を後方視的に調査分析し,確定診断のための諸検査の妥当性および治療指針に対する正当性を分析した.1990年より京都大学で始まった生体肝移植の移植患児の内,肝移植時の体重が5kg以下の患児は20名(男児:5名,女児:15名)であった.原疾患は,胆道閉鎖症9例,劇症肝炎5例,代謝性肝疾患4例,肝硬変2例であった.それらの患児に対する肝移植の治療成績と治療の妥当性を検討し,今回の症例に対する治療の適合性を検討した.【結果】超低出生体重児の胆道閉鎖症の患児は,生後187日目に葛西手術を受けるも術後36日目に多臓器不全にて死亡.一方,胆汁うっ滞症の極低出生体重児の患児は内服薬を併用し,精査・加療中である.京都大学医学部附属病院で行われた生体肝移植手術時の体重が5kg以下の患児(20例)の治療成績は,10名が生存で10名が死亡であった.肝移植時の体重3.7kg以下の5例は全例死亡であり,3.8kg以上の症例での生存率は66.7%であった.【結論】新生児未熟児の胆汁うっ滞症では,腹部超音波検査,肝胆道シンチグラフィーを施行し,胆道閉鎖症を早期に除外することが重要である.葛西手術時期を逸した症例や,胆汁酸の代謝障害による高度の肝機能障害を呈した疾患では,確定診断のための詳細な検査を行いつつも,確定診断には至らず肝硬変が高度に進行するようであれば,肝移植術も考慮した治療手段を考えることが患児の救命にとって重要である.
著者
小角 卓也 米倉 竹夫 保木 昌徳 佐々木 隆士 山内 勝治 大割 貢
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.41, no.7, pp.963-968, 2005
被引用文献数
1

症例は11ヵ月の男児.10ヵ月検診にて左頚部腫瘤を認め本院紹介された.左頚部に3cm大の境界不明瞭で柔らかい無痛性の腫瘤を認めた.腫瘍マーカーは, NSEが21.9ng/ml軽度上昇し, フェリチンが18.9μg/dlと軽度低下を示した.また, VMA/CREが10.77μg/mg Cr, HVA/CREが17.0μg/mg Crと軽度高値であった.CT・MRI検査では, 左側傍咽頭間隙から胸鎖乳突筋の前方に広がる境界明瞭で均一な腫瘤を認めた.^<131>I-MIBGの集積はなかった.神経原性の腫瘍を疑い, 腫瘍摘出術を施行し, 病理検査にて異所性胸腺と診断された.本疾患は胸腺原基の咽頭嚢からの下降異常が原因で, 本症例も画像検査より左前縦隔に胸腺組織が認められないことから, 左側胸腺の下降異常が原因と推測された.
著者
中川 賀清 植村 貞繁 矢野 常広 中岡 達雄
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.43, no.5, pp.683-687, 2007
被引用文献数
1

【目的】漏斗胸と自然気胸は,身長が高く痩せ型という共通した体型に多い疾患である.われわれはNuss手術後の自然気胸を6例経験したが,その頻度は比較的高く,Nuss手術の影響もあるのではないかと考えた.これらの自然気胸の特徴について調べた.【対象と方法】2006年12月までにNuss手術を施行した漏斗胸症例382例のうち,約2年間のバー留置期間中に自然気胸を発症した6例の特徴およびNuss手術との関連について検討を行った.【結果】6例のうち5例は10代男性で,1例は20代女性であった.6例の身長は170.2±4.9cm,体重は47.6±3.2kgであり,BMIは16.5±1.6で,すべて長身痩せ型であった.男性の1例はマルファン症候群を合併していた.Nuss手術前のCT indexは7.2±3.1で,全382例の5.2±2.8と比べ大きかった.また胸部レントゲン画像から計測したvertebral index, frontosagittal indexの術前値および変化率は,気胸を起こさなかった同年代の患者群に比べて,有意差がそれぞれ認められた.自然気胸を起こした群は陥凹が高度で,手術の改善度も大きかった.気胸発症までの期間は術後1から22か月で,右気胸が3例,同時性両側例が2例,異時性両側例が1例であった.5例に胸腔鏡下肺ブラ切除を行い,1例は様子観察で軽快した.非手術症例も含め,すべて肺ブラの破裂によって生じたと考えられたが,肺ブラは漏斗胸術前のCT検査で指摘されていなかった.【結論】Nuss手術後のバー留置期間中の自然気胸は,全漏斗胸症例の1.6%に発生した.自然気胸の原因は肺ブラであるが,胸腔を拡げるNuss手術が肺ブラへ影響を及ぼした可能性が考えられた.自然気胸はNuss手術後に起こりうる合併症として留意すべきと考えられた.
著者
大浜 和憲 下竹 孝志 石川 暢己 廣谷 太一 宮本 正俊 岡田 安弘 山崎 徹
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.199-205, 2009
被引用文献数
1

【目的】漏斗胸は胸郭異常の中で最も多く,胸骨と下部肋軟骨が陥凹している状態である.2005年私たちは漏斗胸治療にVacuum Bellを用いた保存的治療(VB療法)を導入した.本稿では今までの治療経験を報告し,VB療法の有用性を検討する.【対象と方法】対象は漏斗胸11例,男性9例,女性2例で,年齢は6歳から29歳であった.11例中4例ではNuss手術が行われており,1例はバー感染のためバーが早期に抜去された症例で,3例はNuss手術後も前胸壁の陥凹を認めた症例であった.残る7例は未治療例であった.VB療法はベル型をしたVacuum Bellを患児の前胸壁陥凹部に押しあてて,持続的に大気圧より15%低い値まで陰圧をかけて陥凹部を持ち上げるものである.装着時間は朝夕30分ずつから開始して,副作用のないことを確認して,装着時間を徐々に延長する.【結果】経過観察期間は4か月から2年8か月(平均1年5か月)であった.治療前の胸骨陥凹は2mmから30mmで平均18mmであった.3か月後には0mmから20mm,平均10mm,そして経過中に0mmから20mm,平均9mmとなり,胸骨は有意に持ち上がった.副作用は1例で軽度の皮膚炎を認めただけで,重篤な副作用は認めなかった.【結論】漏斗胸11例に対してVB療法を行い,未だ観察期間は短いが,良好な結果を得た.適応を選べば有効な治療手段と考える.
著者
矢内 俊裕 久保 雅子
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.62-69, 1998
被引用文献数
1

Peutz-Jeghers症候群の兄弟例を呈示し, 小腸ポリープに対する手術を中心に報告する.症例1は8歳の男児(弟)で, 1歳時に直腸ポリープ切除, 5歳時に小腸ポリープによる腸重積症のため小腸部分切除の既往がある.嘔吐・腹痛を主訴に来院, 腹部超音波検査にて小腸ポリープによる腸重積像を認め, 観血的整復・空腸部分切除を施行した.先進部にはφ7mm&acd;2cm大のポリープが6個集蔟しており, 組織学的には過形成であった.症例2は15歳の男児(兄)で, 13歳時より大腸・胃の内視鏡的ポリペクトミーの既往がある.小腸造影にてφ3cmと4cm大の空腸ポリープを2個認め, 開腹ポリープ切除を施行した.組織学的には過形成であった.術中全小腸内視鏡検査では回腸に小ポリープが散在していた.本症の予後因子は腸重積と悪性腫瘍であり, 再手術回避のためにも, 小腸ポリープで開腹の際には他の部位の小腸ポリープに対する術中内視鏡検査とその切除も考慮すべきである.