著者
森沢 知之 岩田 健太郎 上野 勝弘 北井 豪 福田 優子 高橋 哲也
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.10-17, 2016

【目的】回復期リハビリテーション(リハ)病院における心臓リハ実施状況および実施にかかわる問題点を明らかにすること。【方法】全国の回復期リハ病院194施設に対し郵送法にてアンケート調査を実施した。【結果】アンケートの回収率は61.9%で,心臓リハ実施率は7.5%(9施設)であった。心臓リハ非実施の理由は「循環器専門医の不在」や「心臓リハ経験者の不在」など人的要因が半数以上を占めた。今後の心臓リハ拡大には「回復期リハ病棟入院対象者患者の基準緩和」,「心臓リハに関する卒後教育体制の充実」,「心臓リハ施設基準の緩和」が必要とする意見が多かった。【結論】回復期リハ病院での心臓リハ実施施設の増加のためには急性期-回復期病院の連携システムの構築,心臓リハにかかわるスタッフの教育体制の充実などが今後の課題であると思われた。
著者
遠藤 和博 浜田 純一郎 藤田 和樹 五十嵐 絵美
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, 2008-04-20

【はじめに】肩・肘障害で当院を受診する高校野球選手の多くは, 大胸筋, 三角筋, 大腿四頭筋など大筋群の発達がみられ, それと比較して下肢柔軟性および体幹機能の低下などのコンディショニング不足がみられた. それらへ理学療法を実施し, 症状の改善がみられた. <BR>【目的】肩・肘障害とコンディショニングの関係を調査し, その原因と予防法を考察することである. <BR>【方法】対象は高校野球部員45名で障害なし群31名, 障害あり群14名(肩障害10名, 肘障害6名, 重複障害2名)であった. 障害なし群と障害あり群とを比較するとともに, 障害で投球離脱になった9名を分析した. コンディショニング調査は18項目で, 1)左右開脚, 2)股割り, 3)スクワット1, 4)スクワット2, 5)広背筋テスト, 6)全身関節弛緩, 7)Straight leg raising test(SLR), 8)股関節内旋角度, 9)Heel buttock distance(HBD), 10)肩抜きテスト, 11)動揺肩, 12)骨盤入れ換えテスト, 13)Elbow extension test(EET), 14)Elbow push test(EPT), 15)股関節内転筋力, 16)前鋸筋筋力, 17)僧帽筋上部筋力, 18)僧帽筋下部筋力である. <BR>【結果】スクワット1, スクワット2, 僧帽筋下部筋力に有意差があった(p<0.05). 障害あり群ではEET, EPT, 股関節内転筋力で低い傾向がみられた(p<0.1). 離脱者はスクワット2, 広背筋テスト, HBD, 僧帽筋下部筋力において重複して成績不良であった. <BR>【考察】スクワット2では, 下肢筋緊張下での柔軟性を評価できる. 後ろ手を組むスクワット2では, 脊柱が屈曲位, 骨盤後傾位になりやすく, かつ上肢が後方にあり後方重心になりやすい. そのため前脛骨筋や大腿四頭筋などの下肢筋緊張下での柔軟性がないと深くしゃがみ込めない. 肩のゼロポジションを保つ重要な筋である僧帽筋下部の筋力低下により, 投球時にゼロポジションを保持できず, 肩甲上腕関節に負荷がかかる. EET, EPT, 股関節内転筋力の低下は肩甲骨, 骨盤を介した体幹機能を評価している. 体幹機能が低下した障害あり群では投球時や打撃時に上体が開き, 肩・肘に負荷が加わる. HBDは下肢柔軟性低下, 広背筋テストは広背筋柔軟性低下を表し, これらがあると離脱者は, 投球時に上体が開き肩・肘に負担をかける. <BR>【まとめ】肩・肘障害予防のためには下肢, 広背筋の柔軟性, 僧帽筋下部筋力, 体幹機能を中心としたコンディショニングが必要である.
著者
福山 勝彦 小山内 正博 関口 由佳 上野 詠子 根岸 康至 矢作 毅 二瓶 隆一
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, 2005-04-20
被引用文献数
1

【目的】腰痛を主訴に整形外科外来を受診する患者に、浮き趾を呈している症例が多くみられる。浮き趾は立位時に足趾が地面に接していない状態、つまり歩行時に足尖まで体重移動が行なわれず、地面に対する踏み返しが適正に行なわれない状態である。このような場合、後方荷重となり骨盤、腰椎の正常なアライメントが崩れることで傍脊柱筋の緊張が高まり、腰痛の原因になるものと推察する。我々は浮き趾治療の一つとして、浮き趾治療用の草履を着用させている。本研究は、この草履が歩行時、筋活動にどのように影響しているか検討することを目的とした。<BR>【対象】浮き趾を呈する成人女性20名(20~25歳、平均21.3歳)を対象とした。浮き趾に関しては、改良型PedoscopeならびにFoot printにて検出した。<BR>【方法】裸足歩行、我々の作製した草履を1趾と2趾の根元まで鼻緒を挿入して着用した歩行、1趾と2趾の間で浅く挟みつまむようにして着用した歩行、また市販のサンダルを着用した歩行をメトロノームを用い、同じ速度で歩行させた。測定前に草履に慣れさせるよう、十分練習を行なった。脊柱起立筋、大殿筋、腹直筋、大腿直筋、下腿三頭筋、足趾屈筋を導出筋として、電極を運動点中心に30mm幅で貼付し、足底にフットスイッチを装着した。各筋活動を表面筋電計(Mega Electronics社製 ME―3000)にて導出、AD変換しパーソナルコンピューターに保存、波形解析ソフト(Mega-win)にて解析した。1歩行周期における各筋の積分値を正常歩行100%として正規化し、各歩行における筋活動量について比較検討した。<BR>【結果】サンダル歩行に比べ草履を浅く着用した歩行では、脊柱起立筋で有意に筋活動量が低下し、大腿直筋、下腿三頭筋、足趾屈筋では有意に増加した(p<0.01)。大殿筋では、減少傾向がみられた(p<0.05)。草履を深く着用した歩行に比べ浅く着用した歩行でも、脊柱起立筋で有意に筋活動量が低下し、大腿直筋、下腿三頭筋、足趾屈筋では有意に増加した(p<0.01)。大殿筋では、減少傾向がみられた(p<0.05)。<BR>【考察】我々が作製した草履は、底の部分に「アメ底」と呼ばれる塩化ビニール製の硬めな材料を使用することで、柔らかい素材を使ったビーチサンダルのように勝手に折れ曲がり、不適切なToe breakがおこるのを防止している。また、適度にヒールアップさせることで趾尖に体重が乗りやすくしている。履き方として、足趾の根元まで挿入せず浅めに履いて、1趾と2趾で鼻緒を挟み、つまむようにして歩くようにしている。これにより、Toe break時に足趾で床を踏み込むようになり、下腿三頭筋や足趾屈筋の筋活動量が増加したものと考える。また、後方にあった重心が前方に移動したことで、骨盤、腰椎のアライメントが矯正され、歩行時、傍脊柱筋の緊張が軽減され、筋活動量も減少したものと考える。以上の点から、草履を使用した浮き趾の改善は、腰痛治療にも効果的なことが示唆された。
著者
米ヶ田 宜久 中島 喜代彦 国中 優治
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, 2008-04-20

【目的】<BR>診療報酬管理の効率化と他部門とのデータ共有の必要性に伴うIT導入化が進み、全国的な普及と便利なソフト発売にまで至っている。そのような状況においても、コスト面や施設毎による書類管理の相違によりエクセル(以下Excelとする)を用いるのが主流のようである。理学療法士個人レベルのITに対する知識や技術の向上は認められるが、最終的には台帳への転記などの手作業(アナログ的)を要する場面も多く見受けられ、処理時間の増大や誤算などの問題が生じることも多い。そこで、Excelを用いて1度の入力により出力まで終結するプログラムを作成したので、その一例を提示する。<BR>【方法】<BR>ソフトはMicrosoft社のExcel2003の標準機能と独自のプログラムをVBA(Visual Basic for Applications)にて作成し、疾患別リハビリテーション料、疾患別リハビリテーション医学管理料を算定している施設基準IとIIを対象とした。Excelシート(以下シートとする)の縦軸に患者氏名、横軸に日付を入力し、治療施行済のチェックとして単位時間を入力し、それが別シートの日報・月報として算出できるような仕組みを組み込んだ。<BR>管理の全体像は設定シート・担当者別の疾患別患者マスタ(日次管理シート含む)・担当者別医学管理患者マスタ(日次管理シート含む)・担当者別単位および治療時間シート・日報シート(担当者別・総合計)・月報シート(担当者別・総合計)・加算(評価・指導)シート・データ保存シートとした。<BR>最大の特徴は、マスタシートに患者名・算定開始日・算定種目・点数を入力することで、すべての集計・算定結果が出力可能になるようにした点である。また、日付の管理・逓減管理等も全てモニター上に表示し誤入力の防止を容易にした。入力は治療単位を該当患者名の欄に入力し、担当者別単位および治療時間シートに患者名・治療時間をリストから選択式に入力し、業務終了時にデータシートにデータをコピーするだけで日次処理は終了する。月次処理は月報を印刷するだけとした。<BR>【結果および考察】<BR>当院では70%(月単位)の労務時間を短縮でき、集計結果の間違い等は皆無となった。また院内のファイルサーバーを活用することで、各部署からリハビリテーションの進捗状況の確認・診療報酬の確認がリアルタイムに可能となった。また、ユーザビリティが非常に高いExcelという既存ソフトの機能を最大限に活用することで、新たなコストが発生しなかったことはもちろんのこと、これといったスキルを要せず、データの整理及び活用の活性化につながった。<BR>これらのことにより、Excelの標準機能を用いても処理の流れを適切に一元化することにより、正確で効率的な管理と、データ共有を容易に実現することが可能であるといえる。また、来年度(平成20年)に予定されている診療報酬の改正にも柔軟に対応していく予定である。
著者
合田 明生 福田 寛二 上田 昌美 本田 憲胤 大城 昌平
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.102-103, 2013-04-20

【目的】本研究は,理学療法における運動処方の効果を神経細胞レベルで検討した。近年,運動が神経細胞の分化,成熟,生存の維持を促進する神経成長因子ファミリーの一種である脳由来神経栄養因子(Brain-derived Neurotrophic Factor:BDNF)を増加させ,認知機能を維持改善する可能性が示唆されている。ヒトにおける運動時のBDNF分泌増加のメカニズムの要因として,有酸素運動による交感神経活動亢進がBDNFの分泌を増加させることが仮説として考えられ,本研究ではその仮説検証を行った。【方法】健常成人男性10名を対象とした。対象者は,最高酸素摂取量の60%の中強度有酸素運動を30分間実施した。運動の前後で採血を実施し,末梢血液中のBDNF,ノルアドレナリン(Noradorenaline:NA)を測定した。運動中の交感神経活動指標としてNAを用いた。以上の結果から,運動前後のBDNF変化と交感神経活動の変化(NA)の関連性を検討した。【結果】中強度の有酸素運動介入によって,10名中5名では運動後に血清BDNFが増加したが,運動前後のBDNF量に有意な差は認められなかった(p=0.19)。またBDNF変化量と交感神経指標の変化の間(r=0.38,p=0.27)には有意な相関は認められなかった。【結論】健常成人男性における30分間の中強度有酸素運動は,末梢循環血流中のBDNFを有意に増加させず,運動によるBDNF変化には,交感神経活動は関連しないことが示唆された。
著者
菅原 憲一 鶴見 隆正 笠井 達哉
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.48-56, 2000-03-31

経頭蓋磁気刺激による運動誘発電位(Motor Evoked Potential:MEP)の変化を指標にして, 遠隔筋随意収縮および関節肢位変化により生じる促通動態を, 橈側主手伸筋(ECR)と橈側主根屈筋(FCR)を対象筋として検討した。被検者は健常男性8名であった。運動課題は咬筋の一過性の随意筋収縮で, 収縮開始から100, 200, 300, 600msecの各時間遅れ(delay)で磁気刺激を与え, それぞれの筋からMEPを誘発した。また, この条件下で前腕肢位変化を回内位と回外位の2つで行った。咬筋の収縮のないRESTの状態でのMEP記録を基準に, 各条件下で誘発されたMEPの振幅および潜時の変化を調べた。その結果, 咬筋の収縮開始からの時間経過に伴う効果は, REST時のMEPと比較して, 振幅においてはECRで回内位・回外位ともにdelay100, 200, 300にて有意(各p<0.05)に増大した。また, FCRでは回内位ですべてのdelayにおいて有意(p<0.05)な増大を示したが, 回外位ではdelay100, 200のみで有意(p<0.05)に増大した。潜時については, ECR, FCRともに回内位と回外位の両肢位delay100, 200で有意(p<0.05)に短縮した。肢位変化による特異的な変化として, FCRにおいて各delayとも回内位でより大きな促通を示した(p<0.05)。また, ECRでは, 回外位でより大きな促通傾向を示したが有意な増大ではなかった。これらの結果から, ある筋に促通効果を及ぼすこの2つの方法は, 脊髄の運動細胞のみならず, 錐体路細胞にも促通効果を生じさせることが明らかになった。特に, 遠隔筋促通に関しては, その中枢性ファシリテーションにおけるタイミングの重要性が再確認され, 肢位変化に関しては, 神経細胞の興奮性に対する肢位特異性があることが示唆された。
著者
杉原 俊一 田中 敏明 宮坂 智哉 前田 佑輔 泉 隆 伊福 部達
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, 2008-04-20

【はじめに】半側空間無視(USN)の空間認知には複数の座標系の関与が考えられ,我々はHMD(Head Mounted Display)による視覚呈示方法を用い,身体を中心に対象物の方向を位置づける身体中心座標と身体以外の対象物,または参照枠を中心に位置づける物体中心座標を人工的に作り,机上検査と動作分析より空間認知の障害として捉えたUSN障害像について検討を進めている.先行研究ではHMDを用いて座標系の違いにおける無視状況の変動を報告した.本研究は異なる座標条件でのより詳細な検討を試みるため,HMDの評価に加え,眼球運動および頭部・体幹運動の同期計測を含めた新しい検査システムを開発した.そこで本システムを用いた症例検討として左USNに対する評価・治療へのHMD応用について報告する.<BR>【症例紹介】被験者は研究内容を理解し同意を得られ,右脳梗塞後遺症により左USNを有する62歳男性である.石合らによる日常生活動作・訓練場面におけるUSN評価では10項目中7全項目で無視症状を認めた.<BR>【方法】机上検査には行動性無視検査(BIT日本語版)の線分抹消試験を用いた.被験者は椅座位を基本測定肢位とし,1)通常の机上検査,2)上方に固定した小型CCDカメラで机上の検査用紙のみを撮影しHMDの眼鏡状液晶ディスプレーに投影する物体中心条件,3)小型CCDカメラ内蔵のHMDで机上の検査用紙を投影する身体中心条件,の3条件で検査を実施した.更に2)・3)に関して,(A)HMDに投影する映像を画面の両端を基準に左右方向に75%および60 %に縮小した条件,(B)映像の左側に点滅する矢印を表示する条件の画像修正で検査を実施した.分析方法は線分抹消試験の中央列4本を除き紙面を左と右に2分割し,抹消した線分の抹消率を求め,各条件について比較検討した.また,検査前には超小型CMOSカメラを搭載した重量85gのヘッドユニットで両眼球運動を撮影し,検査中はデジタルビデオカメラを用い体幹・頭部の運動を同時記録した.<BR>【結果】通常検査と物体中心の抹消率は共に左紙面は0%,右紙面は各々100%で,身体中心は左紙面抹消率89%,右紙面抹消率94%であった.物体中心(A)の右縮小60 %は同様の傾向を示し,更に(B)により左紙面の末梢率が上昇した.身体中心でも(A)に(B)を加えると左紙面の末梢率が上昇した.通常検査時の眼球運動では左側への眼球運動を認めず,物体中心条件の(A)では頭部は縮小方向への回旋位で保持し,身体中心では縮小方向に係わらず左回旋位での保持を認めた.<BR>【考察】HMD使用に加え眼球・頭部・体幹運動分析により,通常検査に比べよりUSN障害度を統合的に評価できるシステムを構築した.また,画面縮小,注意喚起用矢印などを加工してHMDによる視覚情報呈示を行うことにより無視環境を改善させ得る可能性が示唆された.<BR><BR><BR>
著者
西田 まどか 沖田 実 福田 幸子 岡本 直須美 中野 治郎 友利 幸之介 吉村 俊朗
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.31, no.5, pp.304-311, 2004-08-20
参考文献数
13
被引用文献数
7

本研究では,関節固定法と後肢懸垂法を組み合わせたラットの実験モデルを用いて,持続的伸張運動と間歇的伸張運動が拘縮と筋線維におよぼす影響を検討した。Wistar系雄ラット17匹を対照群3匹と実験群14匹に分け,実験群は両側足関節を最大底面位で固定した上で後肢懸垂法を2週間行った。また,実験算は固定のみの群(固定群,4匹),固定期間中に麻酔下で毎日30分問,ヒラメ筋に持続的伸張運動を実施する群(持続群,6匹),同様に間歇的伸恨運動を実施する群(間歇群,4匹)に分け,実験終了後は足関節背面角度とヒラメ筋の組織病理学的変化を検索した。足関節背面角度は持続群,間歇群が固定群より有意に高値を示したが,この2群のヒラメ筋には著しい筋線維損傷の発生が認められた。よって,持続・間歇的伸張運動ともに本実験モデルの拘縮の進行抑制に効果的であるが,ヒラメ筋に対しては悪影響をおよぼすことが示唆された。
著者
池田 崇 増田 真希 辻 耕二 鈴木 浩次 北原 侑奈 野田 玄 平川 和男
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.37, no.7, pp.453-459, 2010-12-20
参考文献数
22

【目的】本研究の目的は,低侵襲性人工股関節全置換術(MIS-THA)における術前身体活動量と術前・術後の下肢機能との関係を明らかにすることである。【方法】MIS-THAを施行した女性66例を対象に,国際標準化身体活動量問診票を用いて1週間の消費kcalを求め,高活動群と低活動群に分類した。術前から術後6ヵ月間まで理学療法介入を行い,追跡調査した。等尺性外転筋力,疼痛,10m歩行時間,関節可動域,日本整形外科学会股関節機能判定基準(JOA),生活状況(就業状況と環境因子)の評価を実施した。【結果】高活動群は,術前の10m歩行時間は有意に短く,JOA,立ち仕事の割合は有意に高値を示した。他の項目は差を認めなかった。身体活動量と外転筋力に相関は認めず,術前と術後2ヵ月の外転筋力に有意な正の相関を認めた。【結論】術前身体活動量は,就業状況と関係し,10m歩行時間と相互に関係する可能性が示唆された。外転筋力と疼痛は,影響を認めなかった。一方,術前の外転筋力は術後2ヵ月の外転筋力に関わることが示唆された。術前の理学療法は,身体活動量の維持よりも,筋再教育・筋力増強練習の実施が望ましいと考えられる。
著者
牧迫 飛雄馬 古名 丈人 島田 裕之 赤沼 智美 吉田 裕人 井平 光 横山 香理 鈴木 隆雄
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 = The Journal of Japanese Physical Therapy Association (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.27-33, 2011-02-20
被引用文献数
4

【目的】75歳以上の高齢者における新規要介護認定の発生に対する歩行能力の影響を明らかにすることを目的とした。【方法】要介護認定を受けていない75歳以上の地域在住高齢者190名を対象とした。ベースライン調査として5m歩行時間(通常速度)を測定し,以降39ヵ月間の要介護認定発生状況との関連を調べた。【結果】39ヵ月間で34名(17.9%)が新規に要介護認定を受けた。5m歩行時間を男女別に4分位で速い群から遅い群のI〜IV群に分類し,要介護発生率曲線の差をLog-rank検定にて検討した結果,5m歩行時間が遅いIV群(男性5.2秒以上,女性5.8秒以上)では,それ以上に速い歩行速度を有する群(I〜III群)と比べて有意に高い要介護認定発生率を認めた(p<0.01)。Cox回帰分析の結果,新規要介護の発生と有意な関連を認めた変数は,BMIと5m歩行時間(秒)であり,5m歩行時間のハザード比は1.65(p<0.01)であった。【考察と結論】地域在住後期高齢者の歩行速度は,将来の要介護認定発生に影響を与える要因のひとつであることが確認された。
著者
松尾 篤 冷水 誠 前岡 浩 森岡 周
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.138-139, 2011
参考文献数
3

我々は,経頭蓋直流電気刺激(tDCS)が,健常者の上肢の運動機能を向上させるかどうかを検証した。健常若年者20名(平均年齢21.5 ± 1.2歳,男性16名,女性4名)を対象者とし,研究デザインはシングルブラインドクロスオーバーコントロール研究とした。tDCS刺激条件は,陽極tDCS条件と偽性tDCS条件とし,陽極を右運動関連領域(C4)に設置し,1 mAで20分間の刺激を実施した。測定アウトカムは,左上肢での円描画課題による軌跡長とはみ出し面積,左手握力とした。陽極tDCS後に円描画課題のはみ出し面積に有意な減少効果を認めた。他の測定項目,および偽性tDCS条件においては有意な変化を認めなかった。本結果より,陽極tDCSが健常者の非利き手での運動の巧緻性を変化させることが示唆され,tDCSによる運動関連領野の興奮性増大が関係したことが推察された。
著者
亀井 隆弘 広田 美江 梶原 秀明
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.19-23, 1994-01-31

Duchenne型筋ジストロフィーに対する治療の中で, 運動療法が有効であるかどうかを明らかにするため, 週5回を原則に運動療法を行っている入所中と, ほとんど運動療法を行っていない春休み・夏休み・冬休みの長期外泊中で, 運動機能の変化の仕方に差があるか比較検討した。当院に入所した, または入所中のDMD患者のうち, 10名に3m四ばい移動時間を, 11名に3mずりばい移動時間を, 32名に握力を1年間を通して測定した。1年間の変化としては四ばい移動時間が平均9.6秒, ずりばい移動時間が平均21.5秒増加し, 運動機能の低下がみられた。しかし, 握力に関してはほぼ変化がなかった。また, 1年間を長期外泊中と, 入所中の2つに分け, 各測定項目につき, 1ヶ月当り平均変化率を計算して比較した。その結果, 四ばい移動時間・ずりばい移動時間・握力とも, 長期外泊中に悪化傾向が強まることが明らかになり, 運動療法その他, 病院内の身体活動が運動機能の維持に役立っていることが示唆された。