著者
前田 知佳子 小寺 一興 長井 今日子 三浦 雅美 矢部 進
出版者
Japan Audiological Society
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.276-282, 1992

CD (TY-89) の57語表と, 57Sテープについて, 校正用純音と検査語音との関係を求めた。 検査語音のVUメータ相当レベルは, 校正用純音に対して, TY-89では10.2dB小さく, 57Sテープでは2.1dB大きかった。 検査語音のVUメータ相当レベルに比べたTY-89の語音の最大振幅は13.1dB高く, 57Sテープでは5.0dB高かった。<br>ついで, 正常者8例の雑音下の明瞭度をTY-89と57Sテープで, SN比を一致させて検討した。 全体明瞭度および無声子音, 有声子音, 半母音の明瞭度は, TY-89の結果は57Sテープより良好な傾向があった。 鼻音については, TY-89の結果は57Sテープより悪い傾向があった。<br>CD (TY-89) の57語表を雑音下の明瞭度検査に用いる際には, 本研究結果を考慮すべきである。
著者
伊藤 彰紀
出版者
日本聴覚医学会
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.142-147, 1983 (Released:2010-04-30)
参考文献数
10

Tinnitus is an otological symptom which is often encountered and is yet difficult to treat.Transtympanic anesthesia with 1ml of 4% Lidocaine was performed in 86 patients (119 ears) suffering from cochlear tinninus.The results are summarized as follows:1) Tinnitus was completely abolished or considerably ameliorated in 37 ears (31%)2) Tinnitus was moderately ameliorated in 52 ears (44%)3) Tinnitus was slightly ameliorated in 30 ears (25%)Consequently, we found the therapeutic effectiveness of the transtympanic anesthesia in 75% of our cases.It is not elucidated whether the therapeutic effect of the transtympanic anesthesia was attributed to anesthetic blockade of the tympanic plexus or the inhibition of cochlear cell activity.However, it is undeniable that the transtympanic anesthesia has a remarkable therapeutic effect to tinnitus without any significant side effects.It is hoped that this therapeutic method would be used more often for the patients suffering from tinnitus.
著者
岩崎 聡
出版者
日本聴覚医学会
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.261-268, 2013-08-30 (Released:2013-12-05)
参考文献数
26

要旨: 新生児聴覚スクリーニング検査の普及により一側性難聴と診断される機会は増えてきたが, その頻度はまだ不明と言える。小児の場合, 主な原因として内耳・内耳道奇形, ムンプス難聴, 先天性CMV感染症があげられる。その他, 髄膜炎, auditory neuropathy spectrum disorder, 内リンパ水腫があるが, 半数以上は原因不明である。CTとMRIによる画像検査は今後必須になると思われる。保存臍帯によるCMV DNA解析の結果, 一側性感音難聴児の約9%にCMV DNA (+) が認められたが, 難聴遺伝子変異は1例もみられなかった。一側性難聴は心因性難聴が関与する場合もあるので, 特に小児においてはABR, ASSR, OAEなどの他覚的検査を実施する必要がある。 一側性難聴児は言語発達遅滞や学業成績への影響, 人間関係のトラブルを生じる場合があるため, 周囲の気遣いが重要である。成人発症の一側性高度難聴が残った突発性難聴は, SF-36によるQOL, HHIAによるハンディキャップの検討により, 生活面のQOLの低下とハンディキャップを認めた。最近片側聾に対する介入方法として埋め込み型骨導補聴器や耳鳴りを伴った片側聾に対する人工内耳が行われている。
著者
神崎 仁 増田 正次
出版者
日本聴覚医学会
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.137-152, 2013-04-28 (Released:2013-09-06)
参考文献数
59
被引用文献数
1

いわゆるストレスがどのようにして蝸牛に限局した障害を惹起するかは不明である。一方, 心筋梗塞などではストレスが視床下部-下垂体-副腎軸, 交感神経系を介した免疫系の変化を生じ, 病態の形成に関与していることが分かっている。本稿ではまずストレスがどのようにして免疫系の変化, 睡眠障害, 慢性疲労をもたらすかを紹介する。そしてこうした変化がどのようにして突発性難聴を生じるか, 血管内皮障害仮説やStress response仮説を用いて考察する。特にStress response仮説の中心となる転写因子NF-κBの蝸牛外側壁における異常活性化に関しては詳しく論じる。また, この仮説が聴力の低下に関わっていた可能性のあるステロイド依存性難聴症例も提示する。ストレスはメニエール病の発症にも関与していることが知られている。このことはストレス以外にも様々な要因が存在し, 異なる病態を形成していることを示しており, それが何であるかが今後の検討課題である。
著者
立木 孝
出版者
日本聴覚医学会
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.53, no.6, pp.653-663, 2010 (Released:2011-01-27)
参考文献数
36

ストレプトマイシンの発見以来, 我が国では結核の死亡率が著明に減少したが, 同時に副作用としての難聴が発生した。ストレプトマイシンによる難聴は個人差が大きく, 難聴になる人は少なくても, 高度の難聴になった。難聴の症例が増加するうちに, その中に同じ家族, 或は家系内に複数の難聴者が発生する場合が少なくないことがわかった。いわゆる家族性ストマイ難聴である。家族性ストマイ難聴症例の家系図を仔細に検討するうちに, 難聴者は必ず母系に発生する (母からのみ伝わり, 父からは伝わらない) ことがわかった。母系に遺伝する遺伝病として, ミトコンドリアの異常が検討され, その結果, ミトコンドリアDNAの1555変異によるものと判明, 家族性ストマイ難聴は遺伝疾患であると結論された。更に家族性ストマイ難聴の家系メンバーを詳細に検討して行くと, その中にはストマイを使用せずに同じような難聴になる人がいて, その数は必ずしも少なく無いことがわかった。その結果, ストマイ難聴は, 生まれながらの内耳の素因 (家族性内耳性難聴) を持つ者にストマイが絡んで生じたもの, という考えが生まれた。家族性内耳性難聴自体は必ずしも母系ではないので, 「ストマイ難聴が家族性にあらわれる母系の難聴」, 更に今後ストマイなき時代の家族性ストマイ難聴, はどう出現するのか, 臨床聴覚学のひとつの問題である。
著者
中島 務 植田 広海 三澤 逸人 伊藤 彰英 冨永 光雄
出版者
日本聴覚医学会
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.98-103, 2000-04-28 (Released:2010-04-30)
参考文献数
8
被引用文献数
4 3

厚生省特定疾患急性高度難聴調査研究班は, 平成10年度に突発性難聴の重症度基準を作成した。 今回, 我々は, この重症度基準を用いて今まで行われた3回の突発性難聴の全国疫学調査結果の解析を行った。 この重症度基準を用いた分類は, 突発性難聴の治療経過の解析に有用な指標であると考えられた。
著者
阿部 隆 立木 孝 村上 裕 遠藤 芳彦 伊藤 俊也
出版者
Japan Audiological Society
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.110-117, 1990

Kemp & Bray製作のILO88を用いて内耳性難聴者90名154耳のclickに対するeOAEを測定し, 内耳性難聴の程度との関連を検討した。 (1), eOAE波形が認められかつ再現性が40%以上の場合をeOAE (+) とすると, 0.5k-4kHzの4周波数平均聴力が35dB未満の81耳では, 94%の確実性でeOAE記録が可能, 35dB以上の73耳及び40dB以上の63耳では, 89%及び92%の確実性でeOAE記録が不能であった。 1kHzと2kHzの2周波数平均聴力が40dB以上の64耳では, 94%の確実性でeOAE記録が不能であった。 (2), eOAE記録可能の84耳では, 内耳性難聴の程度とeOAEパワー (total echo power及びFFT解析図のhighest peak power) の間に負の相関 (r=-0.44) が認められた。 以上の結果から, ILO88を用いて, 4周波数平均聴力レベル35-40dB以上の内耳性難聴のスクリーニングが可能と思われた。

1 0 0 0 OA 蝸電図検査

著者
原 晃 和田 哲郎
出版者
日本聴覚医学会
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.45-53, 2008-02-28 (Released:2010-08-05)

音刺激により生じた内耳及び蝸牛神経由来の電気的反応を, 鼓室内あるいは外耳道深部に電極をおいて検出する方法が蝸電図検査 (Electrocochleogram, ECochG) である。誘発される電気現象の構成成分として蝸牛マイクロホン電位 (CM), 加重電位 (SP), 蝸牛神経複合活動電位 (CAPまたはAP) があり, 音刺激からおおよそ3msec以内に認められる。聴性脳幹反応 (ABR) に比べ, 電極留置にやや煩雑な面はあるものの, より蝸牛近傍の情報が得られ, 病態の理解・診断に有用である。本稿では蝸電図検査の意義, 検査法, 適応について概説した。
著者
大原 卓哉 泰地 秀信 守本 倫子 本村 朋子 松永 達雄
出版者
Japan Audiological Society
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.289-294, 2011

Auditory neuropathy spectrum disorder (以下ANSDと略) は, 耳音響放射が正常であるにもかかわらずABRが無反応あるいは異常となる病態であり, 聴力に比し語音聴取力が低いことが特徴とされている。ANSDの遺伝的原因の解明が近年進んできており, 遺伝的原因として<I>OTOF</I>遺伝子変異などの報告がある。ANSDに対する根本的治療は確立されておらず, 人工内耳の効果や適応などについてまだ意見の一致がみられていない点が多い。今回我々は<I>OTOF</I>遺伝子変異を認めるANSDの乳幼児3症例に対し人工内耳埋込術を施行し, その臨床経過, 装用効果について検討したので報告する。3症例ともDPOAE両側正常, ABR両側無反応であり遺伝子検査にて<I>OTOF</I>遺伝子変異を認めた。補聴器装用効果は不十分であったが, 人工内耳装用により良好な聴取能が得られており言語も発達してきている。
著者
三上 純一
出版者
Japan Audiological Society
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.36, no.6, pp.764-771, 1993

補聴器誘導コイル入力の周波数特性はマイク入力特性と差があり, 特に低音域感度の低い傾向がある。 低音部の増幅を必要とする難聴者の中には磁気ループを使用すると音質の違いに不快を感じる者も多い。 そこで, 感度不足を補正できるよう低周波数帯域の磁波を大きくできる磁気ループ回路を開発し, 誘導コイル入力の周波数特性をマイク入力特性にそろえる実験をした結果, 多くの器種が満足できる範囲内に補正できることを確認した。 応用例として試作した磁気ループ内蔵電話機と小型磁気ループを平均聴力レベル80dBから105dBまでの難聴者 (年齢5歳以上で, 補聴器を十分に活用し会話音域を広範囲に聞き取れている者) に試した結果では, 音質とS/Nの良さが確認された。 回路にトリマーを加えた小型磁気ループでは, 聴きたい音源ごとに磁波特性の微調整が可能で従来では考えられなかった性能も確認できた。
著者
松田 圭二 牛迫 泰明 春田 厚 東野 哲也 安達 裕一郎 深江 陽子 堀之内 謙一 森満 保
出版者
Japan Audiological Society
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.187-192, 1992
被引用文献数
1

騒音レベル80-100dB (A), 中心周波数250Hz-4kHzの某新聞社輪転機室就業員24人の聴力レベルの変動を8年間にわたり追跡した。 24人中21人は聴力レベルに大きな変化なく, 年齢による生理的聴力損失にほぼ添う経過であった。 3人にc<sup>5</sup> dipがみられたが, 難聴の発現, 進展時期に関しては個人差が大きく, 一定の傾向はなかった。 4kHzと8kHzの聴力レベルは, c<sup>5</sup> dipのある者で各年ごとのばらつきが大きく, 聴力正常な者ではばらつきが小さかった。 また, 2例にc<sup>5</sup> dipの深さに左右差があった。 これらはこの個体が 「c<sup>5</sup> dipが始まり固定するまでの期間内」 にあること, 言い換えれば内耳損傷がなお現在進行していることを示すものと思われた。 また, 耳栓使用で騒音性難聴発生が抑制できることが改めて確認できた。
著者
田中 美郷
出版者
Japan Audiological Society
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.36, no.5, pp.383-384, 1993
被引用文献数
2
著者
西山 彰子 村上 匡孝
出版者
日本聴覚医学会
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.213-221, 2003-06-30 (Released:2010-04-30)
参考文献数
10
被引用文献数
1 1

ステロイド治療で不変, もしくはステロイド減量に伴って聴力閾値上昇を認めた急性感音難聴112例にイソソルビド投与を行い, 改善が認められた54例について以下の結果を認めた。 1) 26例が急性低音障害型感音難聴であった。 2) 28例は低音3周波数の合計が70dB以上でかつ高音域の閾値上昇も認めた。 3) イソソルビド開始後, 平均3日で自覚症状改善を認めた。 4) イソソルビド減量に伴う聴力変動を40%に認めた。 5) 減量時の聴力変動はイソソルビド増量のみで改善する場合とステロイド併用が有効である場合があった。