著者
佐藤 信 中村 欽一 蓼沼 誠 茂木 宏治
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本釀造協會雜誌 (ISSN:0369416X)
巻号頁・発行日
vol.65, no.5, pp.433-438, 1970
被引用文献数
1

各種酒類の日光および単色光照射時の着色度の変化をしらべて次の結果を得た。<BR>1. 日光照射において, 清酒, ミリン, 赤ブドウ酒は着色を増し, ビール, 白ブドウ酒, ベルモヅト, リキュール, ウィスキー, ブランデーでは退色した。ただし, ビールでは長時間の日光照射で着色を増し, 白ブドウ酒の新酒でも着色を増した。<BR>2. ミリン, 白ブドウ酒 (原料: セミヨン) の新酒およびビールの日光着色は照射フラスコの上部空間を窒素ガス置換することによって完全におさえられた。<BR>3. 日光照射による可視部吸収スペクトルの変化の特長は次のとおりであった。<BR>清酒: 370mμにおける増大と350mμ以下での減少<BR>ミリン: 清酒に類似<BR>ビール: 500-550mμに僅かな増大と400mμ以下での減少<BR>自ブドウ酒古酒 (原料: セミヨン): 380mμ以下での減少<BR>赤ブドウ酒 (原料: マスカット・ベリーA): 530mμ における増大<BR>4. 210mμから686mμまでの単色光照射において着色度の変化に関与する波長は次のとおりであった。<BR>ミリン: 320mμによる着色<BR>赤ブドウ酒: 283-357mμ による着色と613-650mμによる退色<BR>ベルモット (ガンチア): 320-430mμ による退色<BR>クレムドバイオレヅト: 283mnμによる退色<BR>ウィスキー: 430mμおよび283mμ による退色<BR>ブランデー: ウィスキーに類似
著者
田中 潔
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本釀造協會雜誌 (ISSN:0369416X)
巻号頁・発行日
vol.76, no.6, pp.374-377, 1981-06-15 (Released:2011-11-04)
参考文献数
8

過量の飲酒が健康を害することはいうまでもないが, 少量の飲酒は健康にプラスすることがある。本稿では少量飲酒有益論の医学的根拠について述べていただいた。本文中で解説されているように, 近年発見された血清リポたんぱくのHDL成分を増加させて動脈硬化を防ぐことと, 脳の新しい皮質の抑制で古い皮質系を解放し文明病を予防することは, 確実視されている。これは飲酒長寿論につながるもので, プロカイン長寿法とも関連があって, 寿命統計とも決して矛盾しない。問題は過量にならない飲み方にあり, その一法として家庭での晩酌が勧められる。
著者
斎藤 孔男
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本釀造協會雜誌 (ISSN:0369416X)
巻号頁・発行日
vol.79, no.11, pp.774-780, 1984-11-15 (Released:2011-11-04)

味噌の用途は90%程度が味噌汁の主原料というのがこれまでのパターンであり, 世界的にみてもユニーケな食品としての位置を保ってきた。しかしながら, 味噌には物理化学的, 食品化学的, および広義の栄養化学的見地から極めて興味あり, 食生活向上の面から有意義な特性のあることが, 次第に明らかにされつつある。このような個性豊かな伝統食品の用途を拡大するため, 考え得るあらゆる分野での可能性を具体的に沢山の事例を挙げて解説願った。
著者
鈴木 昌治 小泉 武夫 野白 喜久雄
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本釀造協會雜誌 (ISSN:0369416X)
巻号頁・発行日
vol.79, no.6, pp.439-442, 1984

水田の稲穂にしばしばみられる糸状菌の菌叢「稲麹」を, 昔, 一部の酒造蔵では種麹として使用し米麹を得, これで清酒を仕込んだという記録を古文書から多く見出したので, このことについて検討したところ次のような所見を得た。<BR>1) 福島県, 埼玉県, 東京都の水田から稲麹を採取してきて, そこから糸状菌を純粋分離したところ, 分離された菌の大半は<I>U. virens</I>で, それに混じって<I>Aspergillus</I>属も多数分離された。 この両菌以外の糸状菌はほとんど分離されなかった。<BR>2) 分離した<I>Aspergillus</I>属について, その形態的, 生理的性質の検討を多項目にわたって行ったところ, アニスアルデヒド培地上での胞子の変色, 梗子の形や状態, 頂のうの型, 胞子の大きさ, 菌叢の色調, アフラトキシンの生成などにおいて<I>A. oryzae</I>の性質を示した。
著者
根元 茂 杉本 仁太郎 薄井 隆 庵谷 治夫
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本釀造協會雜誌 (ISSN:0369416X)
巻号頁・発行日
vol.74, no.9, pp.579-584, 1979

洋酒は飲まれるだけでなく, クッキングワインなど調理用にも広く用いられている。我が国ではラムやキルシュの消費のほとんどが製菓用であるのを始め, 多くのブランデー, キュラソーなども使われている。<BR>本稿では洋酒の使用効果や使用法など洋酒と洋菓子の関係について権威者に解説していただいた。洋酒関係以外の方々にも御一読いただきたい。
著者
吉沢 淑 高橋 康次郎 ウィチェン ヨンマニチャイ
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本釀造協會雜誌 (ISSN:0369416X)
巻号頁・発行日
vol.80, no.1, pp.64-66, 1985

昭和58年度洋酒鑑評会に出品されたりキュール23点の成分を分析し, その特徴を比較した。<BR>(1) リキュールの品種により成分組織に特徴が認められ, 酸度は果実系リキュールが高く, 甘味度はクレムドカカオが高い。<BR>(2) アルコール分はキュラソーが約4%と最も高く, 梅酒が低い。その他のリキュールは24~30%に集中している。<BR>(3) キュラソーとクレムドカカオは全糖中砂糖の比率が80%以上と高く, チェリーブランデーは低い。<BR>(4) これらの特徴は55年度出品酒のそれと同様であった。
著者
宮地 秀夫
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本釀造協會雜誌 (ISSN:0369416X)
巻号頁・発行日
vol.78, no.2, pp.101-105, 1983-02-15 (Released:2011-11-04)

官能審査は酒質を均一化の方向に導くとする意見がある。それではタイプとスタイルから分類してきわめて多様性のあるワインを「国際コンクール」という場でそれぞれの個性を活かしつつどのように審査を行っているのか。国際的にも権威あるワインコンクールに審査員として出席した著者の経験は, 清酒についても参考となる点が少なくない。
著者
島津 善美 上原 三喜夫 渡辺 正澄
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本釀造協會雜誌 (ISSN:0369416X)
巻号頁・発行日
vol.77, no.9, pp.628-633, 1982-09-15 (Released:2011-11-04)
参考文献数
27

日本, ドイツおよびフランス産高級ワインの酒石酸, リンゴ酸乳酸, コハク酸, クエン酸の含量, 総有機酸含量 (TOA) およびリンゴ酸/酒石酸および (MIT) 比とワインタイプの関係ならびにこれら8囚子間の相関関係について検討した。日本白ワイン, ドイツ白ワイン (Kabinett, Spatlese, Auslese, Beerenauslese, Tr0ckenbeerenauslese, Eiswein), フランスシャブリ白ワイン, フランス赤ワインのタイプ別試料106点について, 上記8因子の平均値, 標準偏差を算出した。各タイプの酒石酸リンゴ酸酢酸, TOAおよびM/T比にかなりの差異が認められた。日本ワインは, ドイツおよびシャブリワインよりTOAが少なく, MLFの発生は, ほとんどみられなかった。ドイツワインの上記6タイプのリンゴ酸含量は, 有機竣6成分のなかで最も多く, またそれらのMIT比は, 日本およびシャブリワインより高い値を示した。ドイツワインの乳酸含量は, 比較的少なかったが, フランスのシャブリと赤ワインの乳酸含量は, かなり多く, MLFの発生が高いことが認められた。さらに上記8因子問の相関関係を検討した。試料全体 について相関を求めた結果, リンゴ酸は酒石酸のほかに, MLFに起因する乳酸と酢酸およびコハク酸と1%危険率で相関関係があり, ワインの有機酸組成を決定する中心的役割を演じていることが明らかにされた。またタイプ別の相関分析の結果, ドイツワインの酒石酸とクエン酸, リンゴ酸と酢酸乳酸とクエン酸ならびにシャブリのリンゴ酸とクエン酸, 乳酸と酢酸との間にそれぞれ5%危険率で相関関係が認められた。酒石酸とクエン酸の相関関係は, 原料のブドウ果汁の有機酸組成の差異に, また他の4つの間の相関関係は, MLFによるものと考えられた。また各タイプの酒石酸およびリンゴ酸は, TOAと相関関係にあることが示された。
著者
本間 伸夫
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本釀造協會雜誌 (ISSN:0369416X)
巻号頁・発行日
vol.82, no.7, pp.480-488, 1987

多品種から成る味噌の香気もまた多種多様であり, 感覚的に把えられるそれぞれの味噌の香気成分がどのような物質から成立っているかは古くから興味を持たれていたが, 研究による解明は遅々としていた。近年食品の香気成分を解明する手法が, 機器の開発を伴って急速に進歩し, 味噌についても, 著者らによって組織的研究が進められてきた。香気成分解明の手法と, 味噌についての香気成分の解明とそれらの官能評価に及ぼす影響等について解説していただいた。
著者
小泉 幸道 羽鳥 久志 柳田 藤治 伊藤 明徳 山口 元之
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本釀造協會雜誌 (ISSN:0369416X)
巻号頁・発行日
vol.76, no.3, pp.206-210, 1981-03-15 (Released:2011-11-04)
参考文献数
5

酵母と乳酸菌の添加割合を変えた時の菌の増殖に及ぼす影響を, 液体培地と味噌醸造において検討し, 同時に成分の変化についても調べた。1. 液体培地と味噌醸造においては, 初発菌数に関係なく, 始めに乳酸菌の増殖が著しかった。また初発乳酸菌数が多い程, pH下降も早く, maximum stateに達する日数も早かった。2. 味噌醸造において, 熟成初期にアルコールが急激に生成されると, 乳酸菌の増殖はみられなかった。3. 味噌醸造における遊離アミノ酸については, 菌数の添加割合に関係なく全体的に増加し, 特にLys・Arg・Glu・Leuが多く生成された。4. 味噌醸造における有機酸と色の冴えについては, 乳酸菌の添加割合が多い程, 含量も多く冴えもよかったが, 乳酸菌の増殖が緩慢な場合は有機酸の変化はみられなかった。5. 官能試験においては, 乳酸菌の添加割合が多い程, 塩馴れ, 味のしまりが良かったが, やや酸味が強く感じられた。

1 0 0 0 漬物の科学

著者
住江 金之
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本釀造協會雜誌 (ISSN:0369416X)
巻号頁・発行日
vol.62, no.7, pp.705-709, 1967

漬物は発酵食品である。また酒粕の重要な販路であり, 食塩を用いる点では味噌・しょう油の製法に近い。しかも食生活の上では, 酒・味噌・しょう油と切っても切れない縁がある。さらに漬物中に繁殖し活躍する菌群の動態は, 微生物を扱う者にとって興味深々たるものがある。醸造にたずさわるものが, 知っておかねばならない漬物の知識をお届けする。
著者
原 昌道
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本釀造協會雜誌 (ISSN:0369416X)
巻号頁・発行日
vol.62, no.8, pp.803-808, 1967-08-15 (Released:2011-11-04)
参考文献数
105

マロラクチック発酵により, ブドウ酒の品質が改良されるが, この反応は, 微生物特に乳酸菌群の生育を通して, また微生物を酵素の袋として取り扱うため, 種々環境の影響をうける。また酵母によっても, リンゴ酸は分解される。この解説は, マロラクチック発酵の全貌と, 品質との関係をのべている。