著者
佐藤 信 大場 俊輝 高橋 康次郎 蓼沼 誠
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本釀造協會雜誌 (ISSN:0369416X)
巻号頁・発行日
vol.71, no.8, pp.593-599, 1976-08-15 (Released:2011-11-04)
参考文献数
2

清酒をもろみの汲水の全部または一部にして使用し醸酵させて造る新しいタイプの清酒, いわゆる貴醸酒について, それの製法, お酒の特微, 開発に致る経過をくわしく解説していただいた。醸造技術者にとって新製晶開発は1つの大きな仕事であリ, また願望でもある。しかし, それは単にアイデアのみで生まれるものではない。本誌には著者の長年にわたる清酒成分に関する研究の成果を基とした多様化の設計の手法, 新製品開発までのステップと新製品に与えるイメージ, 製造法の緻密な検討が紹介されている。是非一読をすすめたい。
著者
伊藤 清 太田 剛雄 原 昌道
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本釀造協會雜誌 (ISSN:0369416X)
巻号頁・発行日
vol.82, no.4, pp.289-293, 1987-04-15 (Released:2011-11-04)
参考文献数
11
被引用文献数
1 1

清酒もろみ中の香気成分の米粒への吸着について検討を行った。1.みかけの吸着定数を求めたところ, カプロン酸エチルは酢酸イソアミルの約10倍, カプリル酸エチルはそのさらに10倍吸着し易いことがわかった。2. 脂肪酸のエチルエステルは主に米澱粉中のアミコースによる包接作用で米粒に保持され, その他に香気成分全般について米蛋白質への吸着が関与していることがわかった。3.もろみ中でも, 香気成分は米粒に吸着し酒かすへ移行したが, ろ液仕込を行うことにより清酒への移行率を高めることができた。
著者
原 昌道 飯村 穣 浜田 康太郎 大塚 謙一
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本釀造協會雜誌 (ISSN:0369416X)
巻号頁・発行日
vol.75, no.12, pp.992-996, 1980-12-15 (Released:2011-11-04)
参考文献数
12

清酒 (Alc.10.0~14.5%) の表面におけるシェリー酒酵母の産膜の条件を検討したところ, 下記のような条件により清酒においても良好に産膜することがわかった。清酒への栄養分の強化として, ピオチン (2μg/l程度) とそれとの相乗効果を持つパントテン酸 (400μg/l程度) を添加すること, それにpHを3.5付近に調節することが必要であった。また, pHを調節する際に乳酸を用いること, 清酒に不足がちなK+ (250mg/l程度) を添加することも旺盛な皮膜を形成さぜるために有効であった。供試シェリー酒酵母6株とも良好に産膜したが, とりわけSF-1株とTOF-3株の2株は旺盛に産膜し, 生成酒の香味も良好であった。これらはいずれも培養温度15℃で最も良く産膜し, シェリー香も生成した。SF-1株を用いた小仕込試験の生成酒では, アセトアルデヒドの増加 (500~1,000ppm) が著しく, また有機酸の増加とアミノ酸の減少が見られた。
著者
難波 靖尚
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本釀造協會雜誌 (ISSN:0369416X)
巻号頁・発行日
vol.81, no.1, pp.2-7, 1986

栄養摂取面でも食糧供給面でも, 日本は正に飽食の時代にある。食生活環境の変化に連動して, 食生活そのものが変化し, 生活の力点は食より住, 余暇にシフトしつつある。物の豊かさから心の豊かさへの生活意識の変化である。しかし, と筆者は警告する。食の最大基本は栄養, 感覚, 保健の機能が充足されることであり, いたずらにファッション性を追うことは慎むべきであると。量から質への競争が望まれるゆえんであり, 健康づくりのための食生活指針を消費者, 食品産業ともども大事にしたいものである。
著者
菅間 誠之助 岡崎 直人
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本釀造協會雜誌 (ISSN:0369416X)
巻号頁・発行日
vol.77, no.3, pp.145-151, 1982-03-15 (Released:2011-11-04)
参考文献数
20

溝酒醸造において重要な地位を占めながら, 科学的な管理という面でやや遅れているのが麹づくりである。本稿はその最大の障害とされていた麹菌の増殖を定量的にとらえ, そこでえられた知見を解説したものである。麹づくりの科学的な管理へのよい道しるべとなろう。
著者
田崎 龍一
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本釀造協會雜誌 (ISSN:0369416X)
巻号頁・発行日
vol.77, no.1, pp.2-6, 1982-01-15 (Released:2011-11-04)
参考文献数
4

人の存在に関する基本は食生活である。それがどのような条件によってどのように変っていくかについて解説していただいた。過去をふり返えればそれなりに理解される変化の姿も,-寸先を見透すことはむつかしいといわれるときである。ぜひ, 御一読を-。
著者
今安 聰
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本釀造協會雜誌 (ISSN:0369416X)
巻号頁・発行日
vol.75, no.4, pp.255-262, 1980-04-15 (Released:2011-11-04)
参考文献数
7
被引用文献数
1 2
著者
蓮尾 徹夫 斎藤 和夫 寺内 敬博 蓼沼 誠 佐藤 信
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本釀造協會雜誌 (ISSN:0369416X)
巻号頁・発行日
vol.78, no.12, pp.966-969, 1983-12-15 (Released:2011-11-04)
参考文献数
10
被引用文献数
3

同一樽内に入れたエチルアルコール水溶液を温度15℃ 湿度を46%, 61%, 93%の3つにかえた1年間の貯蔵試験を行った結果, 湿度の低い場合には樽内のアルコール濃度は高くなり, 湿度の高い場合には樽内のアルコール濃度は低くなった。酢酸, 酢酸エチル, アセトアルデヒドは貯蔵中に増加するが湿度による影響は少なかった。フェノール化合物, 紫外部吸収, 着色度は時間とともに増加するが, 揮散量を補正した条件では, 湿度の低いところで最も少なかった。官能検査では条件Aが最も良く次いでB, Cの順となった。特にCは良好とはいえなかった。このことより熟成によるウイスキーの良化にはある程度の揮散を伴う条件が必要であることがわかった。最後にMOラクトンの合成をはじめとし, 本研究遂行に当り種々御教示いただきました大阪国税局鑑定官室吉沢淑室長に深謝いたします。
著者
田中 秀夫 千葉 秀雄
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本釀造協會雜誌 (ISSN:0369416X)
巻号頁・発行日
vol.77, no.11, pp.767-771, 1982-11-15 (Released:2011-11-04)
参考文献数
14
被引用文献数
2

しょう油の減塩の現状とその方法について沢山の資料データをもとに解説していただいた。減塩しょう油は業界にとって大きな問題である。塩分過多の責任はすべてしょう油と味噌にあるように人々から錯覚されない努力もまた大切であろう。
著者
秋山 裕一
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本釀造協會雜誌 (ISSN:0369416X)
巻号頁・発行日
vol.70, no.6, pp.381-386, 1975-06-15 (Released:2011-11-04)

生翫系酒母育成には極めて巧妙な自然淘汰の原理が潜んでいる。その原理をふまえて速醸酒母その他の酒母が生まれ, 遂には酵母仕込みにまで及んでいる。その何れを採るかはさておいて, 生翫の抱えている神秘性は未だ十分にべールがはがれていない。科学的に十分なメスを入れることなく幻の酒母としてしまうわけにはいかないであろう。
著者
坂口 健二
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本釀造協會雜誌 (ISSN:0369416X)
巻号頁・発行日
vol.78, no.6, pp.408-411, 1983

酵母ではなく細菌がアルコールを生産する。20世紀の初め, パウル・リントナー教授がメキシコの酒「プルケ」から分離した細菌が, 遺伝子工学の台頭とともに脚光をあびた。<I>Zymomonas mobilis</I>と命名されたこの細菌を通して, 遺伝子工学に対する著者の考えを披瀝していただいた。
著者
坂口 健二
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本釀造協會雜誌 (ISSN:0369416X)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.273-276, 1969

目的とする醸造特性を高能力に備えた微生物をつくることができたらという夢も最近の分子生物学の進歩によって, 近い将来必ずしも不可能ではないことを抑制解除変異株やhypem変異株, 大腸菌のλdvあるいは基質阻害排除変異株の造成の例から平易に解説された。また有用微生物の性質を安定化するための手段にもふれられている。
著者
好井 久雄
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本釀造協會雜誌 (ISSN:0369416X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.353-359, 1965

前報にひきつづき, みそ, しょう油醸造微生物の主要群別を目的とした選択分離技法を, 菌群のpB耐性, 食塩耐性, 酸素要求度について試験した。<BR>1) <I>Ped.halopkilus</I>の酸性pHに弱い特長をもととした酸性 (pH5.0以下) 培地の使用は, 他菌群の生育も弱化し, 選択分離には利用できない。<BR>2) <I>Ped.halopkilus</I>の好塩性を利用し, 食塩10%程度含有の分離培地を用いることは本菌群の選択分離に有効である。しかも食塩耐性はある程度環境 (食塩濃度) に生理的適応を示しているものとみなされ, 含塩下に生存する本菌の無塩培地での分離は若干のviable lossをおこすものと思われる。<BR>3) 生しょう油の添加は一般的に乳酸菌 (Micrococcusを含めて) の生育を向上させ, TNで0.2%程度の生しょう油をふくむ食塩10%添加培地が.<I>Ped.halopkilus</I>の分離に適している。<BR>4) 乳酸菌の分離は減圧 (真空) 法によらずとも重層法で充分目的を達し得る。この際の<I>Bacillus</I>の完全阻止にはソレビン酸添加培地の使用がのぞましい。<I>Micrococcus</I>は重層下にはかなり生菌数が減る。<BR>おわりにのぞみテスト<I>Streptococcus</I>菌株の一部を分譲いただいた農林省食糧研究所伊藤寛氏, <I>Pediococcus</I>菌株の分譲をいただいた野田産研坂口健二氏, 新潟県食品研本間伸夫氏ならびに終始御鞭漣を賜わった鳥山所長に深謝する。なお本報告の要旨は全国味噌技術会研究発表会 (昭38年5月20日) において口演し, 技法の要点のみは同会発行の味噌技術に摘記ずみである。