著者
野田 伸司 渡辺 実 山田 不二造 藤本 進
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.55, no.12, pp.891-897, 1981-12-20 (Released:2011-09-07)
参考文献数
11

生体試料中のNDVおよびワクチニァウイルスに対するイソプロパノール (IP) の不活化作用を検討した.IPは各種の生体試料により, 強い不活化阻害作用を受けるが, 試料の状態により不活化阻害の傾向には, 大きな違いが認められた.血清, 尿および脱線維血液等の液相において, エタノールの場合と同様に, IPの濃度の低下と共セこ, 試料による不活化の阻害が強く示された.しかし, 脱線維血液と同じ水分を含む凝固血液中のウイルスに対しては, 50~80%に不活化の至適濃度が示され, いずれの試料中のウイルスに対しても, 高濃度ほど強い不活化効力を示したエタノールとは, 不活化阻害の機序を異にすることが推測される.乾燥血清中のウイルスは, エタノールの場合と同様に, 40%前後の比較的低濃度のIPにより, 最も効果的に不活化された.エンベロープウイルスに対しては, 生体試料中においても, IPは効果的な殺ウイルス剤と考えられるが, 含水, 乾燥いずれの状態にも対応できる実用的な濃度としては, 50%が適当と思われる.
著者
徳野 治 藤原 美樹 中上 佳美 山之内 すみか 足立 昌代 池田 明子 北山 茂生 高橋 敏夫 加瀬 哲男 木下 承晧 熊谷 俊一
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.83, no.5, pp.525-533, 2009-09-20 (Released:2016-08-20)
参考文献数
15
被引用文献数
2 4

インフルエンザ迅速診断キットは,その初期診断と治療に有用であり多種市販されている.しかし検査結果の精度に関しては,各キット間の検出感度差も示唆される.今回8 社から販売されているキットの特性を明らかにすることを目的として,ワクチン株及び臨床分離株を用いて検出感度や性能等を比較検討した.供試したウイルス株は分離培養したA 型H1N1,A 型H3N2,B 型のワクチン株5 株,臨床株6 株を用いた.各ウイルス株原液を生理食塩水で10 倍段階希釈し,キット添付文書記載の用法に基づき測定を行い,陽性検出限界を求めた.これをさらに2 倍希釈系に調製して測定し,最小検出感度を比較した.各試料中のウイルスRNA コピー数をリアルタイムreverse transcriptase-polymerase chain reaction(RT-PCR)法にて測定した.同時に各キット添付の専用綿球と専用容器でのウイルス抽出効率の評価も実施した.各分離株に対する最小検出感度のウイルス抗原量平均値〔log10 コピー数/mL〕は,A 型H1N1 が5.68~7.02,A 型H3N2 が6.37~7.17,B 型が6.5~8.13 であり,一部のキット間で感度に有意差が認められ,ウイルス抽出効率についてもキット間に差が認められた.ウイルス検出感度はA 型に対して比較的高く,B 型には低い傾向が認められた.各キット間の検出感度差については,用いられている検出原理の違いや,あるいはそれぞれのウイルス抽出方法の違いによるものと推察される.
著者
藤原 弘之 中西 正教 山木 健市
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.92, no.1, pp.76-79, 2018-01-20 (Released:2019-10-26)
参考文献数
14

A 79-year-old female with a history of liver cirrhosis was admitted to our hospital with dyspnea on exertion and right hip pain. Her chest CT showed a combination of pulmonary infiltration and multiple nodules and her head MRI showed 3 nodules in the cerebrum. We obtained bacteriological specimens from the hip abscess and lung abscess. Gram staining showed the presence of branching gram positive rods, which suggested Nocardia. We administered sulfamethoxazole - trimethoprim and imipenem/cilastatin, and her condition and radiology findings promptly improved. Nocardiosis is commonly seen in immunosuppressed patients but is also seen in the immunocompetent. Malignancy, HIV infection, diabetes mellitus and chronic pulmonary disease are common underlying diseases and some report the presence of nocardiosis together with liver cirrhosis. Disseminated nocardiosis has high mortality and it is important to make an initial assessment appropriately and to administrate proper antibiotic agents as early as possible. The gram-stain is an effective way to evaluate nocardia infection because a long time is usually needed to obtain the result of bacterial cultures.
著者
北村 明子 成澤 忠 林 明男 芦原 義久 石古 博昭 箕原 豊 徳竹 忠臣 加藤 達夫 栄 賢司 武田 直和
出版者
社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.71, no.8, pp.715-723, 1997-08-20 (Released:2011-09-07)
参考文献数
7
被引用文献数
2 4

夏に日本で流行する手足口病は, コクサッキーウイルスA16 (CA16) とエンテロウイルス71 (EV71) が主な病因ウイルスである. 簡便にCA16とEV71を型同定する方法を確立するため, VP4領域の塩基配列を解析し特異プローブの作製を試みた. CA16とEV71の標準株, CA16分離株4株, EV71分離株17株, 手足口病と診断された患者の咽頭拭い液2検体のVP4領域の塩基配列を直接解読し, VP4領域の3'側に存在する2カ所の血清型特異的なアミノ酸配列からCA16混合プローブとEV71混合プローブを設計した. エンテロウイルス標準株39株, CA16分離株7株, EV71分離株66株を用い, VP4領域を含む51非翻訳領域とVP2領域をエンテロウイルス共通プライマーで増幅し, サザンハイブリダイゼーションを行った. CA16混合プローブはCA16標準株を含むすべてのCA16分離株由来のPCR産物とのみ反応し, 他の血清型とは反応しなかった. また, EV71混合プローブはEV71分離株とのみ反応し, EV71標準株を含むすべての標準株やCA16分離株とは反応しなかった. 1995年の臨床検体を本法により直接型同定を行ったところ咽頭拭い液78例中70例 (89.7%) はCA16混合プローブと, 1例はEV71混合プローブと反応し, 水庖内容物15例のうち13例 (86.7%) がCA16混合プローブと反応した. 本法は臨床検体からのウイルス分離を必要とせず, 中和法よりも迅速かつ高感度に同定できる方法と考えられる.
著者
丹生 徹 沖永 功太 丹生 茂 安部 茂 山口 英世
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.70, no.5, pp.463-469, 1996-05-20 (Released:2011-09-07)
参考文献数
16

ヒト好中球のCandida albicans発育阻止能が, 中心静脈栄養 (IVH) に用いられる高カロリー輸液によりどのように影響を受けるか検討した.ヒト好中球が, C.albicansの発育を阻止するin vitro実験系において, グルコース濃度を1~2%に高めることによって, ヒト好中球の抗Candida活性は強く抑制された.これに対して, 市販高カロリー輸液の添加により, グルコース濃度を上昇させても, ヒト好中球の抗Candida活性の低下は, ほとんど認められなかった.この中に含まれるグルコース拮抗物質について検討を行った結果, アミノ酸分画に有効成分が存在することが明らかになった.このアミノ酸分画には, dexamethasoneの好中球機能抑制をも緩和する効果が認められた.さらに再機構アミノ酸混液でも同様の結果が得られた.したがって, 高カロリー輸液にアミノ酸液が混入されているのは, 通常の栄養補充の目的以外にも, 好中球機能の保持という面でも有用であり, 適切な濃度のアミノ酸液を投与することが重要と考えられた.
著者
島田 馨 岡 慎一 鈴木 宏男 稲松 孝思 浦山 京子
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.59, no.5, pp.459-463, 1985-05-20 (Released:2011-09-07)
参考文献数
11
被引用文献数
5 3

東京都養育院付属病院の黄色ブ菌敗血症は1973~79年までは年間2~9例であったが, 1980~83年は年間11~20例と増加した. この血液から分離された黄色ブ菌に対するDMPPCとCEZのMICを測定すると, 1977年以前の分離株はすべてDMPPCとCEZに感性であったが, 1980年以降分離した63株中39株が両者に耐性をしめした. メチシリン・セフェム感性の黄色ブ菌敗血症は1973~83年の間, とくに増加していないが, これにメチシリン・セフェム耐性黄色ブ菌敗血症の加わって, 1980年以降の黄色ブ菌敗血症が増加したと解された. メチシリン・セフェム耐性黄色ブ菌敗血症例は, メチシリン・セフェム感性黄色ブ菌敗血症例に比して低蛋白血症が多く, また発症前2週以内にβ-lactam剤を使用された例が有意に多かった (p<0.01).
著者
野口 昌幸 木脇 圭一
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.82, no.3, pp.161-167, 2008-05-20 (Released:2011-02-07)
参考文献数
18
被引用文献数
2 5

PI3K-AKTシグナル伝達系は細胞外からの様々な刺激により膜リン脂質を介して活性化される細胞内シグナル伝達系で, PTEN, LKB1, TSC1/2などのがん抑制遺伝子ならびにPI3K, AKT, FOXA, TCL1eIF4Eなどの原がん遺伝子の制御をし, これらの遺伝子群の変異や活性化はヒトの様々な悪性腫瘍の原因となることが知られている. 最近ウイルス感染をはじめとする感染症において細胞内にあるこのPI3K-AKT活性シグナル伝達系をウイルスあるいは感染病原体がたくみに利用し, 細胞死 (Apoptosis), 感染の遷延化 (latent infection), 腫瘍化 (malignant transformation) さらには結核菌における多剤耐性の成立などに関与していることが注目されている.我々はヒトT細胞リンパ芽球性白血病の原因遺伝子であるTCL1が細胞内のアポトーシス制御の要のセリンスレオニンキナーゼAKTの活性化補助因子であることを示した.このTCL1遺伝子は, HIVウイルス感染症, EBウイルス感染症などのウイルス感染症において其の活性が上昇し, AKTの活性化を介してこれらウイルス感染症の病態の発現や修飾に関与している.感染症におけるPI3K-AKTシグナル伝達系の働きを明らかにすることにより新たな薬剤耐性菌問題などの難治性感染症に対する新しい治療への道標を与える可能性がある.
著者
池松 秀之 鍋島 篤子 鄭 湧 林 純 後藤 修郎 岡 徹也 原 寛 柏木 征三郎
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.74, no.1, pp.17-23, 2000-01-20 (Released:2011-02-07)
参考文献数
20
被引用文献数
4 5

高齢者において, 1996/97年インフルエンザ流行期における不活化インフルエンザワクチンの予防効果及び接種回数とワクチン効果との関連について検討した. 対象は60歳以上のワクチン未接種者104名, 接種者166名の計270名で, ワクチン接種者中, 前年度接種を受けた患者104名中56名は今回1回, 58名は今回2回接種を受けた. 前年度接種を受けていない52名は, 今回2回接種を受けた.流行後のHI抗体価の4倍以上の上昇よりインフルエンザ感染と診断された患者の率は, 未接種者ではA/H3N2が16.3%, Bが8.7%であった. ワクチン接種者のインフルエンザ感染率は, A/H3N2が3.0%, Bが0.6%であり, 未接種者に比し有意に低かった (p<0.001, p<0.01). ワクチン接種者中, 前年度ワクチン未接種者にはインフルエンザ感染者は見られなかった.前年度ワクチン接種をうけ, 今回1回接種者および今回2回接種者のインフルエンザ感染率は, A/H3N2がそれぞれ5.2%および3.0%で, Bが0%および1.8%であり, 前年度ワクチン接種者においても, インフルエンザ感染率は, 未接種者に比し低く, 1回接種と2回接種に, 有意の差は認められなかった.以上の成績より, 不活化インフルエンザワクチンは, 高齢者のインフルエンザ予防に有効と考えられた. 高齢者において, インフルエンザワクチンの毎年の接種が勧められ, 1回接種も, 感染予防に有効であると考えられた.
著者
保阪 由美子 木村 琢磨 鈴木 亮 鄭 東孝 荘司 路 青木 泰子
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.84, no.5, pp.592-596, 2010-09-20 (Released:2017-08-18)
参考文献数
15

A 64-year-old man with prostate cancer and bone metastasis admitted for nausea, left abdominal pain showed no abnormal, and fever, abdominal ultrasound or chest X-ray findings. Despite antibiotics, left abdominal pain persisted for several days. Abdominal computed tomography (CT), showed splenic infarction. Transesophageal echocardiography suggested infectious endocarditis (IE) as a possible infarction cause, and roth spots were found on the retina. Gemella morbillorum was detected from blood culture. IE commonly causes Fever of Unknown Origin found by infarction. G. morbillorum, an anaerobic grampositive, viridans group streptococci, is indigenous to the oropharynx, upper respiratory, urogenital, and gastrointestinal tracts, and is thought to have weak toxity and pathogenicity in the body.
著者
飯島 義雄 秋吉 京子 田中 忍 貫名 正文 伊藤 正寛 春田 恒和 井上 明 安藤 秀二 岸本 寿男
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.83, no.5, pp.500-505, 2009-09-20 (Released:2016-08-20)
参考文献数
10
被引用文献数
1 2

2005 年12 月,神戸市内において鳥類展示施設の従業員の間でオウム病が発生した.従業員は,オウム病等の人獣共通感染症に関する研修等を受けておらず,鳥の糞の始末等を行う場合にも,マスク,手袋,作業着等の使用は限られていた.67 名の従業員のうち,4 名が肺炎を呈しており,2 名がオウム病肺炎と確定診断された.それ以外に19 名が発熱や咳などの症状を訴えたが,オウム病とは診断されなかった. オウム病発生時,約970 羽が検疫もされず,個体識別もされず飼育されていた.餌や水に混ぜてのドキシサイクリン投与に効果がなかったため,全鳥の個体識別とPCR にてクラミジアの検査を実施した.比較的大量のクラミジアを排出していたトリに,ヒムネオオハシ1 羽,オシドリ1 羽,マガモ3 羽がいた.また,死亡したオキナインコ1 羽の臓器からも大量のクラミジアが検出された. 肺炎患者1 名の気管支肺胞洗浄液がPCR でクラミジア陽性であったことより,主要外膜タンパク質(major outer membrane protein : MOMP)の塩基配列を決定した.上記のトリ由来のMOMP の配列と比較したところ,ヒムネオオハシから検出したMOMP の塩基配列が,患者のそれと完全に一致した.それ以外のトリ由来のものは,1~5 塩基異なっていた.ヒムネオオハシは,閉鎖的な部屋に放たれており,作業中にその排泄物を吸い込んで感染したものと推察された. 今回のオウム病集団発生を通じて,①オウム病など人獣共通感染症に対する知識と感染対策の必要性,②迅速診断の難しさ,③血清診断の難しさ(PCR でオウム病が確認できても,抗体価の上昇が起こらない症例の存在),④糞からのクラミジア検出の難しさ(PCR 阻害物質の残存)を経験した.また,パルスフィールド電気泳動等が確立されていないクラミジアにおいては,MOMP の塩基配列の解析が菌株を比較する方法として有用と考えられた.
著者
白石 眞 関 一平 安藤 裕康 中澤 暁雄 伊巻 尚平 長嶋 淳三 高木 妙子 山中 郁男
出版者
The Japanese Association for Infectious Diseases
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.75, no.8, pp.692-695, 2001
被引用文献数
4

A 62-year-male presented a high fever and a dry cough during a trip to Australia. He was admitted to a hospital as soon as be returned to Japan. The next day after returning to Japan, he was transferred to our hospital with septic shock and loss of consciousness. <I>Neisseria meningitidis</I> was cultured from his blood. <I>N. meningitidis</I> is rare in Japan. However its seems common, in some foreign countries. With these findings, it can be postulated that <I>N. meningitides</I> might be one of the etiological agents of the imported infectious disease.
著者
江田 邦夫 大田黒 滋 松嶋 喬 品川 敦彦 池松 秀之 柏木 征三郎
出版者
The Japanese Association for Infectious Diseases
雑誌
感染症学雑誌 : 日本伝染病学会機関誌 : the journal of the Japanese Association for Infectious Diseases (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.86, no.3, pp.274-281, 2012-05-20
参考文献数
12
被引用文献数
3

長崎県壱岐市(人口約30,000 人の島)におけるA(H1N1)pdm09 の流行状況を調査した.流行は,2009 年8 月に始まり2010 年3 月に終ったが,流行が始まる以前より市医師会では対策委員会を立ち上げていた.流行開始後各医療機関ではインフルエンザと診断した患者について,その日のうちに保健所にFax で連絡した.保健所はその報告患者数を毎日集計し,流行状況により医師会は学校長及び教育委員会と協議し,学級・学年閉鎖,休園・休校を行った.本市での流行は,ピークが分散し2 峰性となったが,これらの措置が迅速かつ徹底して行われたためと考えられた. <BR> A(H1N1)pdm09 ウイルスの罹患者は2,024 例で全人口の6.6%であった.年齢群別の人口における罹患率は10~19 歳が最も高く849 例(26.8%),ついで0~9 歳の594 例(21.3%)で,19 歳以下が全罹患者の71.3%を占めた.60 歳以上の高齢者の罹患率はきわめて低かった.A(H1N1)pdm09 ウイルスの抗体保有状況をみるため,流行終息後の2010 年9 月21 日~11 月15 日までに一般住民358 例の採血を行い,A(H1N1)pdm 09 ウイルスのHI 価を測定した.HI 価≧1 : 40 は全体の57.3%で,7~49 歳までが約70%と高率であった.これらのHI 価≧1 : 40 の要因を検討したが,最も多いのはワクチン接種,次いでA(H1N1)pdm09 罹患で,不顕性感染は11.7%と低かった. <BR> 以上から,壱岐市でのA(H1N1)pdm09 の流行について, <BR> 1.罹患率は全人口の6.6%であった. <BR> 2.罹患者の71.3%は19 歳以下であり,高齢者の罹患率はきわめて低かった. <BR> 3.流行に対して学級・学年閉鎖,休園・休校が有効であり,2 峰性となった.
著者
寺田 喜平 尾内 一信 庵原 俊昭 岡田 賢司 沼崎 啓
出版者
社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.82, no.5, pp.414-418, 2008-09-20 (Released:2011-02-07)
参考文献数
6

麻疹・風疹混合 (MR) ワクチン2回接種における安全性と有効性について検証を行った. 対象は約5年前1歳で接種したMRワクチン (ミールビック, 財団法人阪大微生物病研究会) 治験対象者うち了解の得られた75名であった. 方法は追加接種前後に採血して抗体価の変動を調べ, 接種後28日間の健康状態観察表から有害事象を調査した. その結果, 重症な有害事象は認められなかった. また発熱の頻度は1回目の接種時より有意に (p<0.05) 27.3%から14.9%, 発疹の頻度も122%から6.8%に減少したが有意差はなかった.接種部位の発赤や腫脹は, それぞれ7.3%から10.8%, 29%から&1%に増加したが, 有意差はなかった.有効性において, 追加接種前後で麻疹NT抗体 (2n) の平均±標準偏差は5.5±12から64±1.0に増加し, p<0.0001の有意差があった. 風疹HI抗体 (2n) の平均±標準偏差は4.5±1.3から6.3±0.9に増加し, 統計学的にはp<0.0001の有意差があった. 2回目接種後麻疹抗体はNT法およびEIA法で, 風疹抗体はHI法ですべて陽性となった. 接種後平均で2管以上の有意な増加を認めた接種前抗体価は, 麻疹NT抗体8倍以下, 風疹HI抗体16倍以下であった. 以上より, MRワクチン2回接種は安全で有効な方法と考えられた.