著者
長谷川 明洋 中山 俊憲
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.189-195, 2010 (Released:2010-08-31)
参考文献数
11
被引用文献数
7 7

CD69分子はc-type lectinファミリーに属するII型の膜分子で,早期活性化マーカー分子としてリンパ球の活性化の指標として広く用いられている.機能の詳細はこれまであまり明らかにされていないが,炎症局所に浸潤する炎症細胞のほとんどがCD69を発現していることから,さまざまな炎症反応の誘導・維持に重要な役割を果たしていると考えられる.著者らはこれまでに生体内でのCD69分子の役割を解析する目的でCD69ノックアウトマウスを作製し,疾患との関わりの解析を進めてきた.その結果,CD69ノックアウトマウスでは関節炎やアレルギー性喘息が起きないことを見出した.アレルギー性喘息は抗CD69抗体の投与でも抑制され,治療効果が認められた.CD69分子はその他の炎症性疾患の発症にも関与している可能性が高く,難治性の炎症性疾患に対する新規治療法の開発において新しいターゲット分子になる可能性が示唆された.
著者
野間 剛
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.33, no.5, pp.262-271, 2010 (Released:2010-10-31)
参考文献数
69
被引用文献数
11 11

炎症性疾患・アレルギー疾患の発症・病態形成には,組織に遊走する炎症細胞や組織居住細胞に作用する活性化T細胞が大きな役割をもつ.T細胞が産生するサイトカインはカスケードを形成しTh細胞パラダイムを展開する.   Th1, Th2細胞は相互に制御してバランスをとり生命の恒常性を保つが,Th2細胞優位のインバランスはマスト細胞による即時型アレルギー反応を誘導し,好酸球を中心とするアレルギー性炎症,気道過敏性,リモデリングを促進する.Th1細胞は遅延型過敏反応など,細胞性免疫反応を誘導する.また,アポトーシスを促進し上皮細胞の剥離やアトピー性皮膚炎の海綿状形成を誘導する.Th17細胞は,IL-17, IL-17F, IL-21, IL-22, IL-6, TNF-αを分泌して,Th1, Th2細胞とは対照的に,組織の炎症に関わり,自己免疫疾患など炎症性疾患を誘導する.これらの反応は,好中球増多を招来し,病原菌防御に効果がある.アレルギー疾患では気道炎症でみられる好中球浸潤に伴う炎症に関わる.一方,アレルギーのリモデリング進行には有利に働き,また,気管支肺胞液中のIL-5や気管支の好酸球増多を減弱し気道過敏性を抑制する.Treg細胞は,TGF-β, IL-10を分泌し樹状細胞やリンパ球系細胞を制御する.Th1, Th2, Th17, Treg細胞の分化経路には正の増幅機能が存在し,また,相互の調節機構が存在する.持続的なバランスにより疾患の発症・病態が決定される.
著者
戸田 佳孝 竹村 清介 森本 忠信 小川 亮恵
出版者
The Japan Society for Clinical Immunology
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.44-51, 1997-02-28 (Released:2009-02-13)
参考文献数
18
被引用文献数
3 4

慢性関節リウマチ(以下, RA)患者に対する経口II型コラーゲン(以下, C II)の効果をHLA-DRB 1*0405遺伝子を有する群(0405群)とそれを有しない群(非0405群)に分類して評価した. 38例のRA患者を1日32mgのC IIを含む鶏軟骨スープを3カ月間投与した群(C II群)と,プラセボスープを投与した群(placebo群)に分類した. 0405/C II群は11例, 0405/placebo群は11例,非0405/C II群は9例,非0405/placebo群は9例であった. C II群では, placebo群に比べて,有意に抗ヒトC II IgG抗体値が低下し(p<0.0001),抗ヒトC II IgA抗体値が有意に増加した(p=0.003).腫脹および疼痛関節数の変化は, 0405/C II群と0405/placebo群間(腫脹関節数p=0.03,疼痛p=0.03), 0405/C II群と非0405群/C II群間(腫脹p=0.006,疼痛p=0.01)に有意差があっため, HLA-DRB 1*0405遺伝子陽性の症例では経口C II療法が有効であると結論した.
著者
松本 功
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.28, no.6, pp.365-371, 2005 (Released:2005-12-31)
参考文献数
26

関節リウマチ(RA)は世界で有病率約1%と頻度の高い自己免疫疾患であるが,病因については不明な点が多い.昨今B細胞表面抗原に対する抗体である抗CD20抗体がRAにも効果が強いことが証明され,自己抗体やB細胞の重要性が示唆されている.RAでは30年以上前よりリウマトイド因子(RF)を自己抗体のマーカーとしてとらえてきが,その病原性については明らかでなく,病勢を反映しないことも臨床上しばし見かける.抗環状シトルリン化ペプチド(CCP)抗体は多くの症例に認められ注目を集めているが,その他にも抗glucose-6-phosphate isomerase (GPI)抗体,抗カルパスタチン抗体,可溶型gp130に対する抗体,II型コラーゲンに対する抗体などがRA患者血清に同定されている.今回の総説ではRAにおける上記自己抗体の病原性と産生機構に焦点をあて,特にそれらを考える上で重要な自己反応性T細胞,免疫複合体やFcガンマ受容体(FcγR)などについて,主にヒトの解析から判明してきた最近の知見を含めて述べさせていただく.
著者
菅谷 誠
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.91-98, 2011 (Released:2011-05-31)
参考文献数
38
被引用文献数
2 2

ケモカインとその受容体は,特定の臓器や細胞集団に発現する.皮膚のリンパ腫は腫瘍細胞が皮膚という特定の臓器に限局することから,ケモカインがその病態に関与していることが考えられる.皮膚のリンパ腫の代表的な疾患である菌状息肉症・セザリー症候群において,CCL17,CCL27,CCL11,CCL26などのケモカインが病態に関与していることを,これまで我々は報告してきた.これらは皮膚病変部で発現しているだけでなく,血清中でも正常人と比べて上昇しており,病勢マーカーとして有用である.またCXCL9,CXCL10は表皮向性,CCL21はリンパ節への浸潤,CXCL12は腫瘍細胞のCD26発現低下と関係していることが知られている.さらにCXCL13は皮膚へのB細胞の浸潤,CCR3はCD30陽性リンパ増殖症との関与が考えられている.CCR4を治療のターゲットとした抗体療法が,CCR4陽性T細胞リンパ腫とアレルギー性疾患に対して開発されつつあり,今後もケモカインと受容体に関する研究よってリンパ腫の分類や病態解明,新しい治療の開発が進むことが期待される.
著者
天野 浩文
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.1-7, 2011 (Released:2011-03-01)
参考文献数
29
被引用文献数
1 1

全身性エリテマトーデス(SLE)をはじめとする全身性の自己免疫疾患では,IgGクラスの自己抗体の産生及び免疫複合体形成に伴う組織障害がその病態形成に重要である.IgG型Fcγレセプター(FcγR)は,IgGのFc部分を認識し,沈着する免疫複合体に対する免疫応答にとって重要な役割を担っている.さらにFcγRは,抗原と複合体を形成したIgGと結合したのち,活性型FcγRと抑制型FcγRであるFcγRIIBとがバランスを取りながら免疫応答を調節している.BXSBマウスで生じる末梢血での単球増加とともにSLE様の自己免疫疾患の発現は,これらの正と負のFcRに依存している.またヒトSLEにおいても,FcγRIIBの発現の低下がメモリーB細胞で報告され,さらに遺伝子多型とコピー数多型の関連についても多くの報告がある.今後はこれらの活性型や抑制型のFcγRをターゲットとした自己免疫疾患の新規治療の開発が望まれる.
著者
中村 雅一 千原 典夫 山村 隆
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.277, 2014 (Released:2014-10-07)

自己免疫疾患におけるプラズマブラスト(PB)は自己抗体,あるいはサイトカイン産生により病態形成に寄与すると考えられる.実際に,全身性エリテマトーデスなどいくつかの自己免疫疾患では,末梢血PBの増減と病勢との関連が報告されている.また,PBはCD20の発現を欠くためRituximabの標的外であり,関節リウマチや特発性血栓性紫斑病などにおける同薬抵抗性例の存在は,自己免疫疾患におけるB細胞除去治療の標的としてのPBの重要性を示唆する.  私達は,中枢神経系の自己免疫疾患である視神経脊髄炎(NMO),及び多発性硬化症(MS)の臨床検体を用いてPBと病態との関連を検討してきた.NMOでは,CD138+ PBがCXCR3介在性に中枢神経系に浸潤し,IL-6依存性の生存,及び自己抗体産生により病態形成に寄与することを明らかにするとともに,Tocilizumab治療の有効性を確認した.また,古くから自己抗体介在性亜群の存在が指摘されるMSにおいても,一部の患者で末梢血IL-6依存性PBの増加を認め,これらの患者は既存治療抵抗性であることを見出した.従って,MSにおいてもPBは有力な治療標的になる可能性があり,MSにおけるPB研究は,これまでのランダム化比較試験結果に基づく画一的な治療薬選択から病態に応じたテーラーメイド治療への発展の契機となることが期待される.
著者
日高 利彦 針谷 正祥 鈴木 王洋 石塚 俊晶 原 まさ子 川越 光博 中村 治雄
出版者
The Japan Society for Clinical Immunology
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.203-210, 1991-04-30 (Released:2009-01-22)
参考文献数
22

症例: 27歳,女性.昭和63年9月,紫斑,多関節痛,咳嗽が出現した.平成元年3月症状増悪し,当科に入院となった.入院時,低酸素血症,顕微鏡的血尿,低色素性貧血,高γ-グロブリン血症,低補体価,免疫複合体高値,胸部X線上,両下肺野の網状影を示した.肺機能検査にて閉塞性換気障害,肺拡散能力障害,腎生検にて糸球体への補体,免疫グロブリンの沈着を認めた.また,皮膚生検にてleukocytoclastic vasculitisの所見を得た.過敏性血管炎と診断し,プレドニゾロン60mg/dayの投与を開始したが,肺出血を合併したため,急速な免疫複合体除去を目的として免疫吸着療法を行った.その後,血中免疫複合体の低下と諸症状の改善を認めた.本症のような,免疫複合体高値かつ多臓器障害を伴う過敏性血管炎に対し,免疫吸着療法は有効な補助療法と考えられた.
著者
川名 敬
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.251, 2015

子宮頸癌は30歳代に罹患ピークがあり,年間約7000人が発症し,約3000人が死亡する癌である.ヒトパピローマウイルス(HPV)が原因であることは周知であり,HPVを標的とした癌免疫療法が期待されてきた.20年以上の開発の歴史の中で製剤化されたものはない.我々は,粘膜免疫を誘導する免疫療法を開発し,子宮頸癌前癌病変(CIN3)を対象とした臨床試験を実施した.HPV癌蛋白質E7を表出した乳酸菌をCIN3患者に経口投与し,HPV特異的細胞性免疫を腸管粘膜に誘導し,腸管粘膜由来のintegrin beta7陽性リンパ球を子宮頸部病変に見出した.そのうち,HPVE7特異的IFNgamma産生リンパ球の子宮頸部粘膜の集積と臨床的病変退縮は相関した.この臨床試験のデータをもとに,E7表出乳酸菌を改良し,現在第二世代乳酸菌ワクチンを製剤化している.一方,integrin beta7陽性リンパ球が子宮頸部粘膜上皮にホーミングし,かつ集積することがCIN3病変を排除することに寄与することを見出したので,細胞療法として,これらの細胞に山中因子を導入するT-iPS技術を応用することをめざしている.本講演では,これまでの粘膜免疫を介した新しい免疫療法の臨床成果と今後の新技術(特に再生医療)との複合について紹介したい.
著者
久松 理一
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.246, 2015

ヒトの腸内には100種類以上,100兆個以上といわれる腸内細菌が存在し,絶妙なバランス(synbiosis)を保ちながら共存している.衛生仮説を裏付けるように日本でも社会環境の変化とともにIBD患者が急増している.IBDの疾患感受性遺伝子は欧米人を中心にすでに100以上同定されているが,人種によって差があることもわかっており日本人では関与が確認されたものは比較して少ない.日本人における戦後のIBD患者の急増を疾患感受性遺伝子で説明することはできず,環境因子の変化がもたらした腸内細菌叢のdysbiosisが患者急増の原因として注目されている.宿主側であるIBD患者の腸管免疫細胞では腸内細菌への免疫応答が過剰になっており,特にクローン病においては腸管マクロファージの腸内細菌刺激に対する過剰なTNFα,IL-23産生が病態に関与していることが明らかとなっている.いっぽう,腸内細菌叢側の因子としてIBD患者ではdysbiosisが認められること,特に潰瘍性大腸炎患者においてはTreg誘導能をもつClostridium cluster XIVaが減少していることも明らかとなっている.宿主側の過剰な応答を制御する治療としては抗TNFα抗体製剤をはじめとする分子標的治療の開発が進んでおり,いっぽう腸内細菌のdysbiosisをも根本から是正するというストラテジーとしてfecal microbiota transplantation(FMT)の試みが注目されている.
著者
岩田 慈 田中 良哉
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.38, no.5, pp.398-402, 2015 (Released:2016-01-04)
参考文献数
25
被引用文献数
1

自己免疫疾患病態においてB細胞は病態形成に極めて重要な役割を担うが,その機能発現にはT細胞との相互作用が極めて重要である.著者らは,ヒト末梢血B細胞を用いたin vitro実験により,BCR/CD40/TLR/サイトカイン(IL-4, IL-21)刺激は,Syk, Btk, JAKなどのチロシンキナーゼを介したシグナルの活性化により,サイトカイン産生,分化誘導・クラススイッチに重要なgene network,抗体産生などを多様に制御していることを明らかにした.またRA,SLE患者末梢血B細胞のSyk, Btkのリン酸化は,健常人に比し有意に亢進しており,特にRA患者においては,ACPA強陽性例において有意に亢進していた.T細胞選択的共刺激調節剤,CTLA-Igアバタセプトの投与により,RA患者末梢血CD4陽性T細胞中のTfhの割合は有意に減少し,さらにB細胞のSykのリン酸化も有意に抑制された.これらの結果より,B細胞,B-T細胞の相互作用を標的とした生物学的製剤,さらにSyk, Btk, JAKなどのチロシンキナーゼを標的とした阻害剤は自己免疫疾患の制御に有用である可能性が示唆された.本編では,RAやSLEを中心に,B細胞,B-T細胞相互作用を標的とした生物学的製剤やSyk, Btk, JAK阻害剤の最近の知見についても概説する.
著者
齋藤 滋 島 友子 中島 彰俊
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 = Japanese journal of clinical immunology (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.35, no.5, pp.424-428, 2012-10-31
参考文献数
13
被引用文献数
1

&nbsp;&nbsp;Semiallograftである胎児を許容するために,妊娠時には父親抗原に対するトレランスが存在することが知られていたが,その詳細な免疫学的機構は明らかではなかった.最近の研究により,妊娠時には父親抗原特異的もしくは男性抗原であるHY抗原特異的制御性T細胞が増加していること,精漿のプライミングが父親抗原特異的制御性T細胞の誘導に重要であることが判明している.またヒトならびにマウスの流産や,ヒトでの妊娠高血圧腎症では末梢血ならびに,妊娠子宮での制御性T細胞の減少が報告されている.妊娠初期子宮内膜では,特殊なNK細胞がリンパ球の主要な成分(約80%)を占める.我々は,マウス妊娠子宮ではCD25<sup>+</sup> NK細胞が増加すること,CD25<sup>+</sup> NK細胞はIL-10やTGF-&beta;を産生すること,本NK細胞は樹状細胞上のMHC class II抗原発現を抑制させ,細胞傷害性T細胞の誘導を抑制し,制御性NK細胞と呼べる性状を有することを見い出した.<br> &nbsp;&nbsp;このように妊娠初期において,制御性T細胞と制御性NK細胞は協同的に作用し,胎児を母体免疫系の攻撃から守っている.<br>
著者
考藤 達哉 榊原 充 竹原 徹郎
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.36, no.5, pp.301, 2013

&emsp;樹状細胞(DC)を用いた癌ワクチン療法は消化器癌でも効果が期待されているが,既報の臨床効果は充分でない.これはDCの誘導法が検証されておらず,その抗腫瘍活性が低いことが一因である.そこで我々は遊走能・NK活性能・抗原特異的CTL誘導能に優れた新規DC(OPA-DC)を開発し,有効性と安全性の評価を目的とする大腸癌に対するOPA-DCワクチンの臨床試験を行った.<br> 【方法】CEA陽性かつHLA-A2402陽性Stage-IV大腸癌患者10例を対象とした.単球をIL4/GMCSF存在下で3日間培養した後,OK432,PGE1,IFN&alpha;で刺激してOPA-DCを得た.HLA-A24拘束性CEAペプチドを抗原として添加した.これを計4回鼠径部リンパ節近傍に皮下注射し,臨床効果と免疫学的効果を評価した.<br> 【結果】10例中2例は原疾患悪化で脱落したが,投与完遂8例では重度の有害事象は認められなかった.8例中6例でNK細胞の頻度上昇を認めた.またNK細胞傷害活性の上昇を認めた2例でCEA抑制効果が得られた.うち1例でRECIST基準でのSDが得られ,同症例ではCEA特異的CTL頻度が上昇した.しかし誘導されたCTLは,大半がセントラルメモリー細胞(Tcm)であった.有効例では開始前の転移巣が他に比して小さかった.<br> 【結論】OPA-DCは安全に投与可能である.NK細胞刺激能が高く,CEA抑制や腫瘍抑制効果に寄与したと考えられる.一方,誘導されたCTLはエフェクター作用の低いTcmであり,これが充分な臨床効果が得られない一因と考えられた.更に臨床効果を高めるためには,早い段階での投与や免疫抑制因子の制御などの工夫が必要と考えられた.<br>
著者
尾崎 承一
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.17, no.6, pp.696-698, 1994-12-31 (Released:2009-02-13)
参考文献数
7
著者
赤真 秀人
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.34, no.6, pp.464-475, 2011 (Released:2011-12-31)
参考文献数
85
被引用文献数
1 2

Henchが関節リウマチ(RA)患者に初めてステロイド(コルチゾン)を試用したのは1948年であった.諸刃の剣であるステロイドの歴史を繙くと,21世紀のリウマチ医も改めて学ぶべき点が少なくない.本稿では基礎研究からは,脂肪組織などの細胞内でコルチゾン(不活性型)からコルチゾール(活性型)への変換を促進する11β-hydroxysteroid dehydrogenase type 1について簡潔に概説する.さらにステロイドのnon-genomic作用機構とメチルプレドニゾロンパルス療法との関係も推察する.臨床面では,わが国の大規模コホート研究と生物学的製剤の全例調査で得られる実地臨床データを利用して,ステロイドの使用実態を紹介する.近年,日本でも各種生物学的製剤が続々と登場している.ステロイド併用率・投与量の変遷を追跡すること,RA低用量ステロイド療法におけるeffectivenessの詳細を明確化すること,などは今後の課題といえる.いくつかの用語の定義や解説も加え,ステロイドに関する話題を提供する.
著者
水品 研之介 小倉 剛久 亀田 秀人
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.328b, 2015 (Released:2015-10-25)

関節リウマチ(RA)の治療にメソトレキセート(MTX),生物学的製剤が導入されている中で生じるニューモシスチス肺炎(PCP)は,急激な経過をとり重症の呼吸不全を呈することが知られている.RAのような,非ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症例で生じるPCPでの肺障害は主に宿主の免疫応答によって生じることが知られている.サラゾスルファピリジン(SASP)はRAの治療に用いられる薬剤だが,非HIVモデルのマウスのPCPにおいて,SASPの投与が,肺における免疫応答を減弱させたり,マクロファージの貪食を促進させ,PCPの重症度を改善させた報告がある.しかし,実臨床の現場でSASPとPCPの発症について検討された報告は未だに無い.そこで,MTX内服中のRA患者がSASPを内服することにより,PCPの発症を抑制できるかどうかを検討した.【方法】対象は2005年1月から2013年10月までに当院にて加療されたRA患者とした.MTXを内服している対象患者合計210人が抽出され,SASP併用のない群と,SASP併用のある群に分け,両群間においてPCP発症率に差があるか統計学的に検討した.【結果】SASP(−)群では149例中10例にPCPの発症が認められたのに対し,SASP(+)群でのPCP発症はなく,両群間には有意な差が認められた(P = 0.0386).【結論】SASPの内服はRA患者においてPCP発症抑制効果があることが示唆された.今後,更なる大きなコホートやRCTによる検証が望まれる.
著者
楠原 浩一
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.34, no.5, pp.401-407, 2011 (Released:2011-10-31)
参考文献数
28
被引用文献数
3 3

PFAPA症候群(periodic fever, aphthous stomatitis, pharyngitis and adenitis syndrome)は,アフタ性口内炎,咽頭炎/扁桃炎,頸部リンパ節炎を主な随伴症状とする3~6日程度の発熱発作を比較的規則的に繰り返すことを特徴とする,非遺伝性の自己炎症疾患である.わが国では周期性発熱症候群の中で最も高頻度であると考えられている.本症には明らかな遺伝性はみとめられず,原因となる遺伝子も同定されていないが,何らかの遺伝的要因が発症に関与している可能性がある.鑑別診断として遺伝性周期性発熱症候群と周期性好中球減少症が重要である.病因はいまだ不明であるが,最近の研究結果から,環境因子により補体系とIL-1β/IL-18の活性化が誘発されて,同時にTh1ケモカインの誘導とそれに引き続く活性化T細胞の末梢組織への集積がおこっていることが推定されている.また,IP-10/CXCL10は他の周期性発熱症候群との鑑別に有用なバイオマーカーである可能性がある.治療法はまだ確立していないが,これまで不明であった病因,病態の解明が進んでおり,それに基づいて治療法の見直しや新規治療法の開発が進められていくものと考えられる.
著者
川村 肇 武田 昭 権田 信之 隅谷 護人 押味 和夫 狩野 庄吾 高久 史麿 酒井 秀明
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.3, no.3, pp.159-165, 1980
被引用文献数
1

食道狭窄を合併し, 10年の長い経過後に腎症状を呈したWegener肉芽腫症の1例.<br>39才の女性. 10年の経過中,関節痛,紅斑,遊走性肺陰影,鼻汁,口咽頭びらん,鞍鼻,嚥下困難が出現し,第7頸椎の高さに限局性食道狭窄を認めた.入院中尿蛋白・顆粒円柱出現と腎機能低下がみられ, cyclophosphamide大量投与により軽快した.<br>本例の食道狭窄は, Wegener肉芽腫症の活動期に発症しており,他の誘因もないのでWegener肉芽腫症によるものと考えられる. Wegener肉芽腫症の食道狭窄合併例の報告はないが,食道に円周性びらんを呈し,組織学的に血管炎を認めた剖検報告例があり,本症も血管炎によるびらん形成後の瘢痕化による食道狭窄と考えられる.<br>また本例は10年間限局型Wegener肉芽腫症として経過した後でも古典的Wegener肉芽腫症にみられるような糸球体腎炎を呈する可能性があることを示唆している.
著者
中田 光 竹内 志穂 橋本 淳史
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.277b, 2017 (Released:2017-11-25)

前世紀末,我々は,特発性肺胞蛋白症の血液及び肺に大量のGM-CSF自己抗体が存在することを発見した(J. Exp. Med, 1999).GM-CSFあるいは受容体欠損マウスが同症を発症することから,同抗体が本症の病因であると唱えた(N. Engl. J. Med, 2003).その後,米国で患者自己抗体をサルに投与した疾患モデルができ,仮説が証明された.その後の検討で,本GM-CSF自己抗体は,GM-CSFに対して非常に強い親和性をもつこと,また,エピトープはGM-CSF分子の複数箇所にまたがり,ポリクローナル抗体であることが分かった.この抗体の多様性の起源として,1)複数のgermline alleleをもつnaiive B cellに由来するという考え方と,2)リンパ濾胞における体細胞超変異に由来するという考え方がある.そのどちらが正しいのかを明らかにするため,自己抗体陽性B細胞の軽鎖/重鎖可変部配列を次世代シークエンスと情報処理技術により大規模解析した.これにより,本症の発症機序解明に寄与したい.