著者
中根 俊成 樋口 理 向野 晃弘 前田 泰宏 松尾 秀徳
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.333a, 2014

【背景】抗ganglionicアセチルコリン受容体(gAChR)抗体は自己免疫性自律神経節障害(AAG)の病態において主たる役割を担っていると推測されている.我々は簡便,高感度,且つ定量性を備えた抗gAChR抗体測定系を確立し,2012年には全国からの抗体測定依頼を受ける態勢を整備した.【対象】全国の施設より送付された血清検体(自律神経障害を呈した248症例・331検体)を用いて抗gAChR抗体測定を行った.内訳はAAG(54例),AASN(23例)などであった.【方法】カイアシルシフェラーゼ免疫沈降(LIPS)を応用した検出法にて抗gAChR抗体(α3・β4サブユニット)測定を行い,臨床情報について解析した.【結果】全248症例のうち43症例で抗gAChRα3抗体が陽性であった(17.3%).43症例のうち12症例で抗gAChRβ4抗体が陽性であった.AAG/pandysautonomiaにおいて23/55例(41.8%)であり,抗体陽性症例の免疫治療内容について比較検討した.【考察】抗gAChR抗体陽性症例解析の基盤が整いつつあることを確認した.今後は中枢神経系に存在するnicotinic AChRを構成する他のサブユニットに対する抗体産生などを確認する必要がある.治療では複合的免疫治療が有効ではあるが,治療効果の症例間の差,同一症例においても治療反応性の良好な自律神経症状とそうでない自律神経症状が存在することなどが解決すべき問題である.
著者
清水 英樹 山田 明 吉澤 亮 福岡 利仁 平野 和彦 下山田 博明 今野 公士 駒形 嘉紀 要 伸也 有村 義宏
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.378a, 2012

[背景]近年IgG4関連疾患の診断基準が作成されているが,その病態,病像には不明の点も多い.<br> [目的と方法]2011年2月から2012年3月まで当科症例でIgG4高値を示した9症例を検討した.全例で口唇生検と障害臓器の組織生検を試み,臨床経過を腎症の有無・自己免疫疾患の有無に応じ比較検討した.<br> [結果]平均年齢68.1&plusmn;12.2歳(52-90),男女比は5:4.腎症ある症例は4例(うち2例は腎生検で診断)であった.ミクリッツ徴候を主体とした症例は3例(すべて女性)で,既存の自己免疫疾患合併症例は2例であった.9例ともに悪性腫瘍は除外され,8例でIgG4-RDと診断した(1例はRAと診断).IgG4-RDの診断には,口唇生検と涙腺生検を施行し,口唇生検の5/8例で,涙腺生検の2/2例でIgG4浸潤細胞を認めた.腎症のある症例は,多臓器障害を認め,抗核抗体高値と低補体血症とIgE高値を伴った.IgG4関連疾患否定のRA症例では,Th2サイトカインの上昇を認めなかった.全例で膵病変なく,IgG4関連疾患8例でステロイドに著効した.<br> [結論]IgG4関連疾患は症例ごとに多臓器障害を認めやすい.全身の臓器障害部位を評価の上,組織生検も施行すべきである.尿所見・CT所見から腎症を疑う際には,腎生検も考慮すべきである.<br>
著者
戸叶 嘉明
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.17, no.6, pp.919-921, 1994-12-31 (Released:2009-02-13)
参考文献数
7
著者
向野 晃弘 樋口 理 中根 俊成 寶來 吉朗 中村 英樹 松尾 秀徳 川上 純
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.36, no.5, pp.379a, 2013

【目的】シェーグレン症候群(SS)ではヒトムスカリン性アセチルコリン受容体M3(AChRM3)に対する自己抗体の関与が指摘されている.抗AChRM3抗体の検出は,細胞外領域に相当する合成ペプチドを用いたELISA法等が既に報告されている.今回,我々は複数貫通膜分子に対する抗体の検出に効果的であるカイアシルシフェラーゼ免疫沈降法(GLIP法)による抗AChRM3抗体測定系を評価した.【対象・方法】SS 37例,健常者39例を対象とし,GLIP法による測定を行った.全長ヒトAChRM3とカイアシルシフェラーゼ(GL)の融合組換えタンパク質をリポーターとしヒト血清(あるいは既製抗体)を反応させた後,プロテインGセファロースを用いて反応溶液中のIgGを回収した.免疫沈降物中のルシフェラーゼ活性の測定で,抗AChRM3抗体の有無を評価した.【結果】1.アミノ末端およびカルボキシル末端領域を標的とする2種類の既製抗AChRM3抗体でGLIP法を実施した結果,本法の抗AChRM3抗体検出における有効性を確認した.2.健常群血清を対象にGLIP法を実施し,カットオフをmean+3SDに設定した.3.SS 3例を抗体陽性と判定した.【結論】全長のヒトAChRM3を抗原に用いた新たな抗AChRM3抗体検出系を確立した.今後は各測定法によるvalidationを行うことを計画している.<br>
著者
中根 俊成 向野 晃弘 南 ひとみ 磯本 一 樋口 理 岡西 徹 村田 顕也 井戸 章雄 松尾 秀徳 中尾 一彦 安東 由喜雄
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.309c, 2017 (Released:2017-11-25)

【背景】Autoimmune gastrointestinal dysmotility(AGID)は2008年に米国より提唱された疾患概念であり,食道・胃の運動障害や慢性偽性腸閉塞(CIPO)の一部が相当する.抗自律神経節アセチルコリン受容体(gAChR)抗体による自己免疫性自律神経節障害(AAG)の限局型とも言われているが,臨床像および治療反応性に関する検討は世界的にも少なく,本邦における検討が急務である.【目的】本邦におけるAGIDの臨床像,治療反応性を明らかにする.【方法】1)抗gAChR抗体陽性AAG患者123症例における消化管運動障害(食道機能障害,胃不全麻痺,麻痺性イレウス)の頻度,臨床像,治療内容と反応性を調査する.2)新たにアカラシア28症例,CIPO14症例における抗gAChR抗体陽性頻度,臨床像を検討する.【結果】1)123症例のうち,上部消化管障害を48症例(39%),下部消化管障害を89症例(72%)に認め,そのうち食道機能障害6症例,胃不全麻痺1症例,麻痺性イレウス3症例を確認し,一部には免疫治療による改善症例が存在した.2)アカラシアでは6症例,CIPOでは7症例の抗体陽性者が存在し,自律神経障害(乾燥症状や膀胱機能障害など)の併存を確認した.【結論】AGIDは重度の消化管症状を呈するが,抗gAChR抗体陽性症例が存在し,それらでは自律神経障害の併存が確認された.AGIDがAAGの限局型に相当するか,さらなる集積と検討が必要であるが,免疫治療によって制御できる可能性が示された.
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.25, no.5, pp.428-438, 2002-10-31 (Released:2009-02-13)
著者
窪田 規一
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.296, 2016

<p>  移植医療の成功率を飛躍的に増大させたサイクロスポリンは通常のペプチドとは異なりD-アミノ酸やN-メチルアミノ酸が組み込まれた構造をもった特殊ペプチドであった.特殊ペプチドはその物理的特性から,多岐にわたるターゲットタンパクへのアクセスが可能であり,新しい創薬開発の可能性を示唆させるものであるが,今まで特殊ペプチドを体系的に創薬システムに組み込むことは困難であった.我々はフレキシザイム(Flexizyme)という人口リボザイムを開発する事により無細胞翻訳合成系による特殊ペプチドの大規模ライブラリー創製を可能とした.さらに独自のディスプレイシステムを組み合わせることにより世界で初めて,唯一の特殊ペプチド創薬開発プラットフォームシステム「PDPS(Peptide Discovery Platform System)」を完成させた.PDPSにより創出される特殊ペプチドは分子量1,500程度でありながら抗体に匹敵する特異性と結合力を持っており,細胞内を含めタンパク-タンパク相互作用(PPI)阻害剤などの機能を有することができる.今後,開発が進むことにより多くの次世代医薬品が提供できると確信している.本シンポジウムではPD-1/PDL-1特殊ペプチドなどの実例を踏まえ,特殊ペプチド創薬の可能性に関してその片鱗を紹介できればと考えている.</p>
著者
海田 賢一 楠 進
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.29-39, 2011 (Released:2011-03-01)
参考文献数
55
被引用文献数
2 2

ガングリオシドはシアル酸をもつ神経系に豊富なスフィンゴ糖脂質であり,細胞膜上でクラスターを形成しマイクロドメインを構成している.ギラン・バレー症候群(Guillain-Barré syndrome, GBS)において抗ガングリオシド抗体は発症および神経症状を規定する因子として作用している.GM1, GD1a, GalNAc-GD1aに対する抗体は純粋運動GBSに相関し軸索障害優位の電気生理所見を示す.抗GM1抗体はRanvier絞輪軸索膜上でNaチャンネルクラスターを補体介在性に障害し,抗GD1a抗体,抗GQ1b抗体は補体介在性に運動神経遠位および終末部軸索を障害することが実験的に示されている.古典的経路優位の補体活性化が推測され,これらの障害は補体活性化阻害剤で抑制される.一部の抗ガングリオシド抗体は補体非介在性にCaチャンネル機能障害をきたす.近年2種の異なるガングリオシドからなるガングリオシド複合体(GSC)に対する抗体がGBSの一部に見いだされ,抗GD1a/GD1b抗体陽性GBSは重症度の高さと相関している.またGQ1bやGT1aに対する抗体が90%以上に認められるフィッシャー症候群でも,約半数ではGQ1bまたはGT1aを含むGSCにより特異性の高い抗体が陽性である.抗ガングリオシド抗体の標的部位への到達性,結合活性は標的部位の糖脂質環境が影響し,同抗体の病的作用の発現を規定する可能性がある.本稿では抗ガングリオシド抗体,抗GSC抗体の病的作用について最新の知見を概説した.
著者
江里 俊樹 川畑 仁人 今村 充 神崎 健仁 赤平 理紗 道下 和也 土肥 眞 徳久 剛史 山本 一彦
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.36, no.5, pp.331a, 2013 (Released:2013-10-31)

抗核抗体は,全身性エリテマトーデスを始めとする種々の全身性自己免疫疾患の主要な特徴の一つであるが,その産生メカニズムは明らかではない.過去の報告によると,胸腺を欠いたヌードマウスでは抗核抗体産生とループス様の自己免疫が見られ,ヌードマウスにCD4+CD25−細胞を移入するモデルでは様々な自己抗体産生と臓器特異的自己免疫が見られる.我々はこれらのマウスモデルを用いて,lymphopenia-induced proliferation (LIP)を介した移入T細胞のfollicular helper T細胞(TFH)への分化,および腸内細菌の関与,という観点から抗核抗体産生について検討した.BALB/c野生型マウスからCD4+CD25−(conventional T)細胞を移入したBALB/cヌードマウスでは,IgG型抗核抗体を始めとする様々な自己抗体産生が早期に高率に見られた.移入されたconventional T細胞はLIPによってIL-21産生PD-1+TFH細胞へと分化し,germinal center形成と異常なB細胞応答を引き起こすことが観察された.さらに経口広域抗生剤投与によって腸内細菌を除去すると,LIPを介したTFH細胞分化の減少と,自己抗体産生の低下が見られた.腸内細菌が抗核抗体産生に重要な役割を果たしているという今回の新たな発見は,全身性自己免疫疾患の病態解明と新たな治療へつながる可能性がある.
著者
菅井 進
出版者
The Japan Society for Clinical Immunology
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.1-14, 1996-02-29 (Released:2009-02-13)
参考文献数
38
被引用文献数
5 5

全身性エリテマトーデス,慢性関節リウマチなどの全身性自己免疫疾患やSjögren症候群(SS)などの臓器特異的自己免疫疾患に悪性リンパ腫,特にB細胞性リンパ腫が多いことが注目されている. SSにおいてわれわれは種々の方法を組み合わせて検討したところ, 306例の患者の中に61例(20.0%)に単クローン性の非悪性リンパ増殖性病変(LPD)を認め,悪性リンパ腫13例,マクログロブリン血症2例を加えると76例(24.8%)にLPDがみられた.悪性化へ進展する要因として,リウマトイド因子遺伝子Vgなどの活性化やbcl-2プロト癌遺伝子の病変局所での活性化などが重要と考えられる.自己免疫疾患におけるLPDの好発は持続する病変局所での自己免疫反応によるリンパ球分裂がプロト癌遺伝子,癌抑制遺伝子などの種々の遺伝子の異常を引き起こし,これらが積み重なって多段階的に腫瘍化するものと考えられる.
著者
林 幼偉 三宅 幸子 山村 隆
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.146-153, 2014 (Released:2014-06-30)
参考文献数
44

免疫システムは複雑で様々な炎症性細胞や制御性細胞が存在してネットワークを形成している.自己免疫疾患は炎症性因子と制御性因子のバランスの破綻により発症するが,疾患ごとで異なるパターンで関与している.多くの自己免疫疾患が慢性に進行するが,そのメカニズムはまだ詳細が明らかになっていない.顕著な抗炎症作用を有する生物学的製剤は特異性が高く画期的だが,万能ではなく,治療手段によっては予想外の反応を示すこともあり,疾患活動性を完全に阻止するわけではない.また抗原特異的な治療は阻止効果が期待できる反面,自己免疫疾患は疾患ごとで抗原が多岐にわたり,汎用性に乏しい.さらに制御性細胞を利用する治療も有望だが,可塑性の点など未解決の部分がある.自己免疫疾患の一つである多発性硬化症(MS)は再発・寛解を繰り返しながらやがて進行するという特徴的な経過をとるが,その代表的モデルである実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)の研究は,歴史を紐解くと免疫学の発展に深く関与していることが分かる.再発・寛解のメカニズムの解明を通じてMSのモデルとしてのみでなく,上記治療の補完として自己免疫疾患の治療手段の多様化を期待したい.
著者
坪井 洋人 飯塚 麻菜 浅島 弘充 住田 孝之
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 = Japanese journal of clinical immunology (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.77-85, 2013-04-28
参考文献数
23
被引用文献数
4

&nbsp;&nbsp;シェーグレン症候群(SS)は唾液腺炎・涙腺炎を主体とし,様々な自己抗体の出現がみられる自己免疫疾患である.SSでは,種々の自己抗体が検出されるが,SSに特異的な病因抗体はいまだ同定されていない.外分泌腺に発現し,腺分泌に重要な役割を果たすM3ムスカリン作働性アセチルコリン受容体(M3R)に対する自己抗体(抗M3R抗体)は,SSにおいて病因となる自己抗体の有力な候補であると考えられ,近年注目されている.我々のグループの研究で,M3Rのすべての細胞外領域(N末端領域,第1,第2,第3細胞外ループ)に対して,抗M3R抗体の抗体価および陽性率は健常人と比較してSS患者で有意に高値であった.またSS患者において,抗M3R抗体はM3Rの細胞外領域に複数のエピトープを有することが明らかとなった.さらにヒト唾液腺(HSG)上皮細胞株を用いて,塩酸セビメリン刺激後の細胞内Ca濃度上昇に対する抗M3R抗体の影響を解析した.抗M3R抗体の細胞内Ca濃度上昇に対する影響は,抗M3R抗体のエピトープにより異なる可能性が示唆された.興味深いことに,M3R第2細胞外ループに対する抗M3R抗体陽性SS患者のIgGと,我々が作成したM3R第2細胞外ループに対するモノクローナル抗体は,ともにHSG細胞内Ca濃度上昇を抑制した.M3R第2細胞外ループに対する抗M3R抗体は,唾液分泌低下に関与する可能性が示唆された.<br> &nbsp;&nbsp;以上の結果より,抗M3R抗体は複数のエピトープを有し,唾液分泌への影響はエピトープにより異なる可能性が示された.抗M3R抗体はSSにおける病因抗体としての可能性のほか,診断マーカーや治療ターゲットとなる可能性も期待される.<br>
著者
牧野 聖也 狩野 宏 浅見 幸夫 伊藤 裕之 竹田 和由 奥村 康
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.350b, 2014

【目的】昨年本学会において,我々は<i>Lactobacillus delbrueckii</i> ssp. <i>bulgaricus</i> OLL1073R-1(1073R-1乳酸菌)で発酵したヨーグルトの摂取が男子大学生に対してインフルエンザワクチン接種後のワクチン株特異的抗体価の増強効果を発揮することを発表した.今回,より幅広い世代の男女に対して,1073R-1乳酸菌で発酵したヨーグルト(1073R-1ヨーグルト)がインフルエンザワクチン増強効果を発揮するか否かを明らかにすることを目的に二重盲検並行群間比較試験を実施した.【方法】インフルエンザワクチン株に対する特異的抗体価が40倍未満の20歳以上60歳未満の男女62名(25-59歳;平均年齢43.7歳;男性25名,女性37名)を2群に分け,1073R-1ヨーグルト群には1073R-1乳酸菌で発酵したドリンクヨーグルト,プラセボ群には酸性乳飲料を1日1本(112ml),インフルエンザワクチンを接種する3週間前から接種6週間後まで摂取させた.摂取開始前,ワクチン接種時,接種3週間後,接種6週間後,接種12週間後に採血を行い,接種したワクチン株に特異的な抗体価をHI法で測定した.【成績】インフルエンザA型H1N1,B型に対する抗体価はワクチン接種後にプラセボ群に比べて1073R-1ヨーグルト群で有意に高い値で推移した.【結論】1073R-1乳酸菌で発酵したヨーグルトの摂取は,幅広い世代の男女に対してインフルエンザワクチン接種の効果を増強する可能性が示された.
著者
佐藤 ルブナ 佐藤 洋志 西脇 農真 横江 勇 鶴田 信慈 原岡 ひとみ
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.183-188, 2014

症例は44歳,女性.2012年11月初旬から発熱,咳嗽が増悪し,11月下旬に意識障害を契機に当院搬送となった.初診時Ⅰ型呼吸不全,ショックを呈しており,両側中下肺野の湿性ラ音,右不全片麻痺,頭頚部や四肢に多発する紅斑と紫斑が認められた.肝腎機能障害,炎症反応上昇,凝固線溶系の顕著な異常,脳梗塞,両肺下葉の浸潤影を認め,重症肺炎や劇症型抗リン脂質抗体症候群(CAPS)に伴う多臓器障害,播種性血管内凝固を疑い加療を開始.シプロフロキサシン,ドリペネム,トロンボモジュリン,アンチトロンビンIIIの投与に加え,メチルプレドニゾロンパルス療法を行った.抗菌薬投与により炎症反応の改善を認め,入院時の抗リン脂質抗体価が正常であったため,CAPSは否定的であると考えプレドニゾロン投与を中止した.しかし,第7病日の検査にて抗カルジオリピンIgM抗体価が上昇しており,その後の再検査で抗カルジオリピンβ2GPI抗体価の一過性の上昇を認めた.さらに,第8病日に凝固線溶系の改善に相応しない血小板減少,肺胞出血が出現.CAPSの診断のもと,メチルプレドニゾロンパルス療法を行った後,プレドニゾロン投与を継続.炎症反応,呼吸不全,血小板減少の改善を認め,第12病日に抜管した.
著者
遠藤 平仁
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.156-161, 2013 (Released:2013-06-30)
参考文献数
32
被引用文献数
2 2

体外からの細菌感染や外傷などによる急性炎症は早期に血管浸過性亢進と好中球を中心とする炎症細胞の浸潤が起こる.炎症により破壊された組織は正常の組織に修復される.急性炎症で好中球の浸潤がおこりその後マクロファージ,リンパ球の浸潤と異物の貪食除去の炎症収束,組織修復と生体反応は展開する.急性炎症は自己制御され収束(Resolution)し組織修復する.この転換期に脂質メデイエータのLipoxinやResolvinや抗炎症サイトカインIL-10やアデイポカインChemerinなど多くの因子が作用する.Lipoxinはリポキシゲナーゼ(LOX)により合成される.急性炎症の早期は5-リポキシゲナーゼ(5-LOX)がロイコトリエンB4(LTB4)を合成し好中球の炎症部位に遊走させる.その後マクロファージの15-LOXや血小板の12-LOXが誘導され,5-LOX,と12-LOXまたは15-LOXの2つの酵素を介してLXA4またはLXB4が合成される.このLipoxinは強い抗炎症作用を有している.LXA4はG蛋白結合型受容体ALXに結合し好中球の遊走抑制,マクロファージの遊走活性化などを生じ炎症収束過程の早期に作用する.Chemerinは好中球からのプロテアーゼにより前駆蛋白より活性化されマクロファージ,樹状細胞遊走,抗炎症作用を起こす.またアセチルサリチル酸(アスピリン)の作用したシクロオキシゲナーゼ(COX2)はPGE2産生を抑制し,さらに5-LOXと共に15-epiLXA4を産生し強い抗炎症作用を示す.以上の炎症の収束(Resolution)は自然免疫と獲得免疫を繋ぐ能動的な過程であり新たな炎症治療の戦略の標的である.
著者
谷内江 昭宏
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.11-21, 2007 (Released:2007-03-02)
参考文献数
54
被引用文献数
7 8

ヘムオキシゲナーゼ(heme oxygenase ; HO)はヘム代謝に関わる酵素であると同時に,細胞を酸化ストレスによる傷害から守る細胞保護蛋白である.HOの内,誘導酵素であるHO-1を欠損する症例の病態解析により,このようなHOの働きが特定の細胞の保護にとどまらず,多様な組織や臓器における細胞保護に関与していることが示された.また,腎組織や腎由来細胞株を用いた検討では,HO-1蛋白が特定の細胞に局在していること,それらの細胞ではHO-1産生が特に重要な意味を持つことが示唆された.さらに末梢血単球を用いた解析では,特定の単球亜群で恒常的にHO-1蛋白が発現していること,これらの単球が急性炎症疾患で増加することが示され,単球/マクロファージによるHO-1産生が炎症制御に重要な役割を果たすことが明らかとされた.一方で,HO-1遺伝子導入により過剰にHO-1蛋白を発現させた場合には,むしろ細胞傷害を促進する可能性があることも示され,生体内ではHO-1産生の局在や量が巧妙に制御されていることが示唆された.最近の報告では,HO-1蛋白が制御性T細胞による免疫制御に深く関わっている可能性も示されており,HO-1産生の誘導を標的とした介入が多様な炎症性疾患に対する新たな治療戦略の一つとして期待される.
著者
岩渕 和也
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.317b, 2012

&nbsp;&nbsp;ベーチェット病は,医学文献としてはトルコのベーチェット博士の記述(1936年)を嚆矢とするが,疾患の特徴(アフタ・外陰部潰瘍・眼症状など)については既にヒポクラテス(紀元前5世紀)や張仲景(AD200年頃)の時代から記述があり,古くからヒトに関わりの深い疾患である(大野博士).未だに疾患発症に至る過程に不明の点も少なくないが,2010年には水木博士(横浜市大)・大野博士(北大)・猪子博士(東海大)のチームによるゲノムワイド相関解析により,HLA-B*51, A*26, IL-10, IL-23R/IL-12RB2,などの疾患感受性遺伝子が明らかにされ,また最近では何らかの自己炎症性症候群スペクトラムを有することも示唆され,大きく疾患理解が進んでいる.一方,マウスモデルについては,残念ながらベーチェット病の皮膚・眼症状,さらには特殊病型を再現するようなモデルは開発されていない.我々も,眼炎症を抗原(視細胞間レチノイド結合タンパク由来ペプチド)特異的に生じさせる実験的自己免疫性網膜ぶどう膜炎(EAU)をモデルに,眼炎症の病態理解とその実験的制御を試みているのみである.ただ,このように限界のあるモデルにおいても,ベーチェット病で見られると同様にTh17およびTh1が自己免疫病態に関わっていることが示されており,効用もまた存在している.本ワークショップでは,オステオポンチンやNKT細胞を標的とした,EAUの病態制御について紹介したい.<br>
著者
古江 増隆
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.268a, 2017 (Released:2017-11-25)

アトピー性皮膚炎は,慢性再発性の湿疹を主体とする疾患で,強い痒みを有するのが特徴です.特徴的な皮疹の分布,形態,経過を示せば,高IgE血症を伴わなくてもアトピー性皮膚炎と診断します.強い痒みは睡眠を妨げ,就学や就業や影響を与え,精神的社会的QOLは著しく障害されます.標準治療であるステロイド外用,タクロリムス外用,抗ヒスタミン剤内服は痒みを軽減しますが,患者の満足度を上げるには十分ではありませんでした.インターロイキン31(IL-31)が,マウス,イヌ,サル,ヒトで痒みを誘導することがわかり,IL-31 receptor(IL-31R)に対する抗体療法(nemolizumab)が注目され,臨床試験が行われ,有効であることが示されました.本講演では,IL-31の機能,前臨床試験そして臨床試験の成績について概説したいと思います.
著者
前田 裕弘 松田 光弘 森田 恵 正木 秀幸 白川 親 堀内 房成 小山 敦子 濱崎 浩之 藤本 卓也 入交 清博 堀内 篤
出版者
The Japan Society for Clinical Immunology
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.118-125, 1993-04-30 (Released:2009-01-22)
参考文献数
17

成人T細胞白血病(ATL)患者の血清を健常人の末梢血単核細胞(PBMC)に添加し,そのPBMCのCD 3抗原の発現を観察した. CD 3抗原の発現が低下している急性型ATL患者の血清を添加したときのみ健常人PBMCのCD 3抗原の発現が低下した.しかし, CD 3抗原の発現が正常の慢性型ATL血清では,この現象はみられなかった.同様の結果が細胞培養上清添加時にもみられた.細胞培養上清をSephacryl S-200を用いて分画し,健常人PBMCのCD 3抗原を低下させる活性を分子量40-60 kDの分画に認めた.各種抗サイトカイン抗体を用いた中和実験および各種サイトカイン添加実験より,この可溶性因子が既知のサイトカインとは異なる因子と考えられた.この因子が臨床的に急性型ATLに認められ,くすぶり型および慢性型ATLに認められないことより, crisisに関与している可能性も考えられた.
著者
井上 文彦 古川 裕夫 内野 治人
出版者
The Japan Society for Clinical Immunology
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.31-36, 1986-02-28 (Released:2009-01-22)
参考文献数
20

潰瘍性大腸炎患者大腸粘膜におけるラクトフェリンの分布を,螢光抗体法を用いて検討した.また,同時にペルオキシダーゼ染色を施行し,両者の分布を比較した.患者大腸粘膜の内視鏡的正常部では,ラクトフェリン陽性細胞とペルオキシダーゼ陽性細胞は,ともにほとんどみとめられず,内視鏡的境界部では,両者とも散在性にみられ,内視鏡的病変部では,両者とも多数みとめられた.正常対照者大腸粘膜では,両者ともほとんどみとめられなかった.また,ギムザ染色により,ペルオキシダーゼ陽性細胞は好中球であることが強く示唆された.静菌的,殺菌的作用を有する強力な鉄結合性蛋白の1つであるラクトフェリンは,主要な局所粘膜防御因子であるs-IgA系の減少した潰瘍性大腸炎大腸粘膜で,いわば代償的に出現,増加し,局所粘膜における感染防御機構の面において,何らかの意義を有するものと考えられた.