17 0 0 0 OA 中意識の意味

著者
盛山 和夫
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.2_51-2_71, 1990-11-01 (Released:2009-03-31)
参考文献数
14
被引用文献数
2

階層帰属意識は長い間研究者を魅了してきた「謎」であった。なぜかくも多くの人々が「中」と答えるのか。なぜ「中」の分布は1975年にかけて増大し、その後やや減少しているのか。それらについて「社会学者は、まだ明確な解答を出していないように思われる」(原,1986:247)。本稿は、求められている謎の解明の一つの試みである。それはまた、高度経済成長とそれにつづく低成長という戦後日本社会の歴史的体験の意味を読み解く作業でもある。
著者
浦川 邦夫
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.35-52, 2013 (Released:2014-09-01)
参考文献数
80

本稿では,経済学の研究分野における「健康研究」の分析事例について近年の研究を中心にサーベイを行い,それらの学術的意義を評価・検討した.これまでの経済学の健康に対するアプローチの代表例は,健康を人的資本の一部とみなし,労働者や企業の生産性しいては一国の成長を促す重要なファクターとして捉えてその役割を評価するものであった.特に,ゲイリー・ベッカーやマイケル・グロスマンが提唱,発展させた人的資本理論は,「国民の健康水準と経済成長」の関係や「労働者の不健康な行動(飲酒・喫煙など)と彼ら(彼女ら)の賃金水準」の関係など,「健康と生産性の関係」についての実証的考察をより積極的に促してきたと言える.また,近年は,所得,学歴,職業などの社会経済変数に加えて,地域要因や企業要因と健康との関連を分析する事例が多く見られるようになってきており,健康の決定要因に関する研究は多様性を増している.また,医療経済学の分野では,「費用便益分析」や「費用効用分析」の手法を用いることにより,健康を「その達成に要する負担」と「それを享受することで得られる便益」の双方の観点から経済評価する試みが進められている.健康研究の発展に向けて経済学の果たす役割は大きいが,近年の「健康研究」は,高度化・専門化した分析課題に対応するため,医学,疫学,社会学,心理学など様々な学問分野の研究者との間での共同研究が積極的に進められている.今後も,健康の決定要因や健康の諸効果の多面的・本質的な理解を進める上で,多様な学問分野の融合が進むことが期待される.
著者
毛塚 和宏
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.337-354, 2013 (Released:2014-09-01)
参考文献数
17
被引用文献数
1

教育達成の階層間格差を説明する相対リスク回避仮説(Breen and Goldthorpe 1997)の検証は世界各国で行われたが,日本においてはおおむね否定的な結果が得られている.本稿では,日本における受験制度を考慮して,下降回避仮説の代替モデルとして,定員と自分の成績を参照して,進学するか否かを決定するという「単純進学モデル」を構築し,マクロ・ミクロの両面から下降回避仮説と比較・検討を行った.下降回避仮説としては,BreenとGoldthorpeの相対リスク回避モデルと,学歴に対する下降回避を考慮した二重回避モデルを想定した.マクロレベルでは,数理モデルを構築し,各モデルに基づいて大学進学率を導出した.これを経験的データと照らし合わせてモデルの妥当性を検討する.ミクロレベルでは,数理モデルから導出された個人の意思決定に関する命題に対して,JGSS-2000, 2001データを用いて検討を加えた.ミクロレベルの分析には,ロジスティック回帰モデルを用い,モデルを同定するために,一部の変数に対しプロビット変換を施した.結果,下降回避仮説を導入した2つのモデルは現実のデータに対する説明力を欠き,,単純進学モデルが最も妥当性が高いことが示された.特に,相対リスク回避モデルはマクロレベルの検討において棄却された.
著者
数土 直紀
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.225-242, 2012 (Released:2013-08-12)
参考文献数
36

本論文の目的は,社会変動をつうじて地位が形成される過程を明らかにすることにある.本論文では,以下の条件が満足されるとき,ある個人属性は地位としてみなされるようになると仮定した: (1) その属性は個人の能力によって獲得されている,(2) その属性のばらつきが社会変動によって大きくなっている.この仮説を検証するために,本論文では婚姻状態に注目し,1985年SSM調査データ(N = 2,650) とSSP-I 2010データ(N = 1,502)をもちいて婚姻状態が階層帰属意識に及ぼす効果について分析をおこなった.分析結果は,結婚年齢に関するばらつきが相対的に大きい2010年では未婚であることが階層帰属意識に対してネガティブな効果をもっている一方で,結婚年齢に関するばらつきが相対的に小さい1985年では未婚であってもそれは階層帰属意識に対して何も効果をもっていないことを明らかにしている.しかしその一方で,分析結果は,未婚であることが階層帰属意識に対してもっている効果は社会階層間で異なっていることを明らかにしている.これらの事実は,本論文の仮説を限定的に支持するものといえるだろう.
著者
三輪 哲
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.345-356, 2009-09-30 (Released:2010-03-30)
参考文献数
8
被引用文献数
9

10 0 0 0 OA 権力の予期理論

著者
宮台 真司
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.2_3-2_30, 1988-10-09 (Released:2009-03-06)
参考文献数
25
被引用文献数
1

社会学の主流的伝統では,権力が服従者の了解を経由して働くことを,暗黙にせよ前提する。ウェーバーの定義は周知であるが,パーソンズでさえ,機能的側面として資源配分機能に着目したとはいえ,機能の帰属先である対象的外延としては「シンボルによって一般化された」権力(=公式権力)だけを問題化した。権力に想定される了解構造は,権力についての様々な問題設定を境界づけるが,了解構造自体を明確に主題化した業績は実に少ない。 我々は第1に,この了解構造を明確に取り出して,従来の諸定義を比較可能にすると共に,それ自身を権力の定義に据える。その結果,権力は権力者の意図や自覚から分離されて,服従者の体験にだけ定位した概念となる。 第2に,それを利用して,伝統的な権力理論の様々な主題──威嚇/報償の差異・予期の機能・正当性/公式性/合法性の差異・国家権力など──を相互に関係づけて論じ,発見された諸問題を記述する。(*前半部(10. 迄)は1987年10月の社会学会報告のレジュメとほぼ同一である)
著者
保田 時男
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.85-98, 2012 (Released:2013-03-18)
参考文献数
26
被引用文献数
2

本稿では,社会学者によるパネルデータの収集と管理に関して,日本の調査環境が直面するいくつかの方法論的な課題を提示し,その理想像について考察する.パネルデータの収集については,3つの論点を示した.第1に,パネル調査においても回顧法の視点が必要なことを主張した.第2に,カレンダー面接が正確な記憶の取り出しに役立つことを説明した.第3に,computer assisted interview(CAI)が多方面に有効性を発揮することを示した.次に,パネルデータの管理に関する2つの論点について議論した.第1に,データクリーニングの問題を取り上げ,Fellegi and Houtの原則に沿った手続きの重要性を主張した.第2に,分析者にとってユーザビリティの高いデータを構築することまでが,調査設計者の役割であることを訴えた.最後に,これらの論点の中で,CAIの導入がもっとも重要で,パネルデータの理想的な収集・管理を議論するための要石であることを訴えた.
著者
鈴木 鉄忠
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.49-61, 2006-04-30 (Released:2007-08-01)
参考文献数
36
被引用文献数
1

本稿の目的は、「共通利益と個別利害のジレンマ」の解決に「連帯集団」が及ぼす効果と社会的メカニズムを、マイクロ・レベルに基礎付けて解明することにある。利己的な行為者を仮定する社会理論では、ジレンマを解決する主要因として、「連帯集団」の存在がたびたび取り上げられてきた。しかしそれが行為者の意思決定状況や行動に及ぼす効果と社会的メカニズムについては十分な分析がなされていなかった。そこで本稿では、ジレンマが生じる問題状況を「n人チキンゲーム」によって定式化し、プレイヤー間の提携を考慮に入れた「強ナッシュ均衡」を用いて新たに分析した。分析の結果、「連帯集団」がコミュニケーション回路として機能することで行為者同士の共同行動が促されることによりジレンマが解決されるという、マイクロ-マクロ・レベルの社会的メカニズムが明らかになった。そしてこれは、「連帯集団」を通じた「集団まるごと加入」によって効率的な動員が可能になるという資源動員論の主張からも実証的に裏付けられることがわかった。
著者
武藤 正義
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.89-104, 2002-06-30 (Released:2009-02-10)
参考文献数
22
被引用文献数
7 13

本稿の目的は、集団において行為者がランダムに繰り返し相手を替えて1回限りの2人囚人のジレンマをプレイしている場合、行為者が僅かな利他性をもつならば、集団は、協力率が高く安定な状態になりうる、ということを示すことにある。分析の結果、相互協力から逸脱する誘因が小さい場合、利他性の平均が低いときでも、その分散を小さくしていくと、突然、協力率が高く安定な均衡が現れ、初発の協力率が高いという条件付だが、集団はその均衡に収束することがわかった。
著者
盛山 和夫
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.199-214, 2006-09-30 (Released:2007-08-02)
参考文献数
20
被引用文献数
5

数理社会学は何の役に立つのか。経済学と比べると、社会学において数理の役割は依然として小さい。ここには、社会学という学問の特性が関わっており、数理社会学の意義はそれを踏まえて再定義される必要がある。そもそも、社会学が探究すべき社会秩序は、パーソンズが主張したように単なる事実的秩序ではなくて規範的秩序である。ただし、パーソンズの述べた理由によってではなく、社会的世界が人々にとって先験的な意味世界として構成されているからだ。規範的に秩序づけられている社会的世界を探究するのは「解釈」という営みであり、それは純粋には経験主義的ではありえない。なぜなら、「意味」は外的世界にモノとして存在するのではないからである。解釈による探究は、基本的に対象としてある意味世界に対して、新しい意味世界を重ね書きするような営みであり、それは新しい秩序構想の提示に等しい。この意味で、社会学は規範科学であり、数理社会学の意義も、経験的説明としてよりはむしろ規範的構想のための可能性の論理的探究にあるといえる。
著者
芹沢 浩 雨宮 隆 伊藤 公紀
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.405-420, 2011 (Released:2012-09-01)
参考文献数
15

エントロピーに関しては,その増減を支配する2つの重要な法則がある.外界から隔絶された閉鎖系で成り立つ熱力学の第2法則と物質やエネルギーが絶えず出入りする開放系で成り立つエントロピー生成率最大化(MEP)の原理である.前者はエントロピー増大の法則として以前よりよく知られているが,後者は近年の非平衡熱力学,複雑系研究の成果として得られた新たな知見で,社会科学の研究者の間で,その存在を知っている人はそれほど多くない.エントロピーについて深く理解するためには双方を熟知している必要があり,前者だけではエントロピーの破壊的な側面は理解できても,創造的な側面は見落とされてしまう.本論文はあまり知られていないMEP原理に焦点を当て,それを社会科学に移植する試みである.簡単な人間社会モデルによってMEP原理の基本的な考え方を説明した後に,社会現象においてもこれが機能すると仮定し,地球上に存在する社会形態の多様性とMEP原理の関連を考察する.
著者
野家 啓一
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.3-17, 2001-03-31 (Released:2016-09-30)
参考文献数
24

「実証主義」および「実証的方法」の起源、歴史的展開、現状を科学史・科学哲学の観点から概観する。科学における実証的方法は、17世紀の科学革命を推進した「実験哲学」の精神に由来し、19世紀半ばに「観察-実験」および「検証-反証」の手続きを組み合わせた「仮説演繹法」として定式化された。社会科学の領域に実証的方法が導入され、古典的実証主義が成立するのも、この19世紀半ばのことである。20世紀に入ると、「論理実証主義」を標榜するウィーン学団が「統一科学」を目標に掲げ、自然科学と社会科学の方法的統合を試みた。しかし、物理学の統一言語によって社会科学をも自然科学に同化吸収しようとするラディカルな還元主義は、種々の困難から中途で挫折せざるをえなかった。論理実証主義に代わって登場した「ポスト実証主義」の潮流は、「観察の理論負荷性」や「決定実験の不可能性」などのテーゼを提起することによって、「実証性」の理解に重大な変更を迫った。それを踏まえるならば、自然科学と社会科学の関係もまた、「階層関係」ではなく「多元的共存」の形で捉え直されねばならない。

9 0 0 0 OA 書評

出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.373-388, 2014 (Released:2016-07-10)
著者
敷島 千鶴 安藤 寿康 山形 伸二 尾崎 幸謙 高橋 雄介 野中 浩一
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.2_105-2_126, 2008-11-30 (Released:2009-01-05)
参考文献数
45

観測された形質の分散を、「遺伝」「共有環境」「非共有環境」という3つの潜在変数の寄与に分割して推定させる行動遺伝学の方法論を用いて、権威主義的伝統主義の形成に関わる要因について検討した。4111名(12~26歳の男性双生児1279名、女性双生児1889名、および双生児の父親83名、母親860名)から権威主義的伝統主義尺度の回答を得た。一卵性双生児912組、二卵性双生児630組を対象とした双生児モデルによる分析は、権威主義的伝統主義の分散を遺伝33%、非共有環境67%で説明し、双生児親子モデルによる分析においても、結果は同等であった。これより、権威主義的伝統主義の家族内伝達を媒介するのは専ら遺伝であり、文化伝達ではないことが示された。権威主義の形成を親の養育、あるいはその家の社会背景によって説明するこれまでの理論には異議が唱えられる。遺伝を説明変数に含めた、より精緻な伝達モデルの有用性が提起される。
著者
石田 浩
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.2_41-2_63, 2008-11-30 (Released:2009-01-05)
参考文献数
25
被引用文献数
4

本研究は、世代間の階層継承の趨勢を生存分析の手法を用いて分析した。上層ホワイトカラー階層と非熟練ブルーカラー階層の再生産(世代間の継承)に焦点を当て、従来の分析のように調査年を趨勢の単位とするのではなく、初職入職年度、職歴の発生年度によって4つの時代を区分し、時代的なコンテクストをより明確にした分析を行った。上層ホワイト階層と非熟練ブルー階層への入職の仕方に関して、学校教育修了または中退後に初職からすぐに入職する場合と、職業キャリアの中で昇進・転職・起業などを経て入職する場合の2つを区別し、別々の分析を行った。 初職での上層ホワイト、非熟練ブルー階層への入職は、父と同じ階層であることが強く影響していることが分析から明らかになった。しかし、父階層の初職への効果は、4つの時代で有意に異なることはなかった。初職の時点ではなくて、職業キャリアを通して上層ホワイト、非熟練ブルー階層に入職した場合を取り上げると異なる結論が導きだされる。40歳時点までの職業キャリアを分析すると、上層ホワイト階層への入職と非熟練ブルー階層への入職の双方に関して、同じ出身階層であることの強い継承効果があることがわかる。さらに、父階層の効果は、1996-2005年にかけて上昇した可能性がある。すなわち、上層ホワイト階層と非熟練ブルー階層の閉鎖性(継承の度合い)が近年(1996-2005年度)高まっていることを示唆している。
著者
内藤 準
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.155-175, 2009-09-30 (Released:2010-03-30)
参考文献数
68

リベラリズムの制度的秩序の基礎である「自由と責任のルール」は,われわれの社会的世界を構成する日常言語に組み込まれている.そのルールに依拠するわれわれの社会は,いかなる秩序のあり方を示すのか.本稿ではまず,リベラル・パラドクスの枠組みを応用して,自由と責任のルールおよび契約の自由からなる制度が,相互行為を規範的に秩序づける仕組みをまとめる.そのうえで,(1)リベラリズムに立脚する「近代市民社会の秩序」の基本的性格を検討する.そして,(2)貧困や格差の文脈における自由と責任のルールの意味と,いわゆる「自己責任論」の問題点を,社会の規範的な秩序形成という観点から,全国調査データの知見もふまえて検討する.分析の結果,(1)近代市民社会の秩序は人びとの十分な自由を前提とすること,その秩序は排除的な性格を持つことが明らかになる.さらに,(2)社会の規範的な秩序形成という観点からみると,拡大する貧困や格差の文脈において自己責任を理由に弱者支援や再分配政策を拒絶することが,むしろ秩序の基礎である自由と責任のルールそのものを掘り崩す可能性があることが分かる.
著者
盛山 和夫
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.57-76, 1988-05-01 (Released:2009-03-06)
参考文献数
13
被引用文献数
6 5

理解社会学の基本的な理論仮説は、(1)社会的行為者は彼らを取り巻く自然的および社会的世界に関する彼ら自身の理論的知識を有しており、社会現象はこうした理解を媒介とする社会的行為によって形成されている、(2)社会科学的探求の対象は、このような行為者の理解およびそれによって形成される社会現象である、というものである。ギデンズ(1976)は、これを二重の解釈学と呼んだ。この理論仮説は社会学的探求の反照的性格を表現しているが、理解社会学者たちはこれに基づいて、いくつかの方法論的主張を行った。シュッツは主観的視点をとるべきことを主張したし、ウィンチは社会科学は所与の生活様式のもとにおけるルールを理解しなければならないと主張した。しかし、理解社会学者たちの理論仮説は妥当なものであるけれども、彼らの方法論的主張はそれから論理的に導かれるものではなく、不合理なものである。社会学的探求は、その反照的性格にもかかわらず、行為者の世界理解とそれがもたらす社会現象に関する「正しい」理解をめざしたものとして、自律した認識活動をなしている。