著者
市川 英治
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.88, no.2, pp.101-105, 1993-02-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
14
被引用文献数
3 5

多量の香気成分を生産する酵母の育種は, 従来, 優良な醪からの選抜によって行われてきたが, 最近は, バイオテクノロジーのさまざまな手法が利用されるようになってきている。本稿では, 吟醸酒の主要な香気成分のひとつであるカプロン酸エチルを高生産する酵母を脂肪酸合成酵素の阻害剤を用いて育種した例について解説していただいた。
著者
古田 吉史 丸岡 生行 中村 彰宏 大森 俊郎 園元 謙二
出版者
公益財団法人 日本醸造協会・日本醸造学会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.104, no.8, pp.579-586, 2009 (Released:2016-02-09)
参考文献数
27

焼酎製造の副産物である蒸留粕の有効活用は,依然として焼酎業界が抱える重要な課題の一つである。本稿では,焼酎蒸留粕の新規用途開発を目指して大麦焼酎粕から得られる上清液:醗酵大麦エキスFBEを乳酸菌の増殖培地素材として乳酸菌バクテリオシンの一種である抗菌物質ナイシンAを生産し,FBEの有効物質生産への応用及び大麦焼酎粕の高付加価値化の取組みについて概説していただいた。
著者
広常 正人
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.99, no.12, pp.836-841, 2004-12-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
15
被引用文献数
2 3

清酒の美肌効果は日本酒をよく飲む相撲取の肌の張りや艶に現れていると言われている。 実際, 手の甲に垂れた清酒のひとしずくを摺り込むことによりなんとなくしっとりとした感じを受けるものである。 今回, これらの効果をもたらす物質が清酒中に特異的に存在し, この物質を酵素化学的に増強させる方法について解説していただいた。 今後, この物質についての機能性への注目度が高まり, 清酒の食品機能性の-つとしてクローズアップされるテーマと思われる。
著者
数岡 孝幸
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.110, no.5, pp.298-305, 2015 (Released:2018-04-23)
参考文献数
18

清酒業界においては,清酒の需要低迷・消費激減から危機感を感じ,今までに無いタイプの清酒を製造する事を模索している。その解決策の一つとして,純粋培養酵母を使用した清酒製造ではなく,広い自然界から有用な清酒酵母を分離し清酒製造に応用する方法である。このような自然界からの酵母分離は,様々な分野で試みられているが目的とする酵母の分離が難しいのも現実である。しかしながらその困難さを克服し,製品化に至った成功例として筆者が行っている花から分離した「花酵母」による清酒製造であることは間違いないところである。筆者は解説文の中で清酒製造用酵母の過去と現在行われている酵母分離方法を紹介し,分離酵母を用いて製造された清酒の特徴を細かく紹介している。また,スクリーニング源採取月,平均気温と分離効率の関係など興味あるデータも掲載されていて研究者にとっては参考になることも多い。是非とも一読願いたい。
著者
好田 裕史
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.101, no.12, pp.927-934, 2006-12-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
9

アルコール飲料の主成分であるエタノールは中枢神経系を介してリラックス効果を高め, ストレス解消に役立つことは良く知られている。 最近, ワイン, ビール, ウイスキーに含まれる香気成分がストレス緩和に役立つとの報告がなされている。 本稿ではビールに含まれる様々な香気成分とGABA受容体応答がどのような機序でストレス緩和に関係するか著者らの実験データをもとに解説して戴いた。

3 0 0 0 OA ビールろ過 (1)

著者
乾 祐哉
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.96, no.3, pp.151-164, 2001-03-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
18
被引用文献数
2 3
著者
川崎 恒
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.84, no.8, pp.525-528, 1989-08-15 (Released:2011-09-20)

酒造技術は時代の流れとともに大きな変遷をたどってきたが, その中でも酒母造りは, その意義が純粋酵母の大量培養ということから, より簡易な方向に収束してきたということがいえる。しかし, 当社では時代の流行に影響されず, 昔からの生翫造りをかたくなに守ってきた。そこで, この生翫造りの意義を技術的な面から解説していただいた。高度化する最近の嗜好に対応するには, このような話題性や物語も必要な要素と考えられる。
著者
西村 顕
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.88, no.11, pp.852-858, 1993-11-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
18

夏場のヒット商品として登場した生酒, 生貯蔵酒も今ではすっかり定着し, フレッシュさを特徴に, 吟醸生酒なども市場に登場してきている。しかし, 新たな商品の開発には必ず問題点がつきまとうのが常で, 生酒, 生貯蔵酒の最も大きな欠点であった「ムレ香」の解決が今日の商品を定着させたといってもよいであろう。明らかになった「ムレ香」の生成機構と防除法を解説していただき, さらに今後の研究の方向を示していただいた。
著者
境 博成
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.102, no.5, pp.339-351, 2007-05-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
16

フランス北西部, ノルマンジー地方のリンゴの生産地で造られるリンゴ酒シードルと隠れた蒸留酒カルバドスの歴史と現状を紹介。歴史, 製造方法のみならず, リンゴの産地・晶種, AOC規則, 酒税までを含めて言及した内容は醸造技術者はもちろん, カルバドス, シードルの愛好者までを満足させる解説となっている。
著者
境 博成
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.102, no.3, pp.187-196, 2007-03-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
17

現在, 日本の酒類業界では第3のビールと呼ばれる発泡性飲料とチューハイ類の新製品が市場を賑わしている。これらのジャンルの開発は正にメーカーの知恵の勝負で, 多岐に渡る素材が集められ, 使われている。サイダーも日本ではフランス風にシードルと言う名称で商品化されているが, その販売数量は極小さい。一方, 英国では伝統的なサイダーが, ビールと共に国酒とも言える存在として脈々と飲まれ続けている。近年リンゴの健康に対するメリットが次々と明らかにされていることも考え合わせれば, 英国サイダーの現状について詳述されたこの総説は, 単にサイダーの紹介というだけでなく伝統的な酒類の生き残り戦略に多くの示唆を与えてくれる。
著者
伊豆 英恵
出版者
公益財団法人 日本醸造協会・日本醸造学会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.105, no.2, pp.56-62, 2010 (Released:2012-02-13)
参考文献数
10

清酒のおいしさには,きき酒による「口の中で感じられるおいしさ」と「摂取したときのおいしさ(生理的おいしさ)」があり,両者の関係を筆者は,マウス,飲酒経験の浅い初心者群及び官能検査経験を有し長期飲酒経験者群について検討した。その結果,清酒の美味しさを決定する因子として,初心者群はマウスと同様,生理的美味しさが重要であるのに対し,経験者群は生理的美味しさの占める部分は少なく,情報や文化,経験など味覚以外の情報も影響していることを明らかにした。そのほか,空腹時と摂食後の嗜好の違いや美味しさを左右する要因についても言及しており,人間の嗜好判断の複雑性が理解できる。熟読をお勧めしたい。
著者
小崎 道雄 飯野 久和 岡田 早苗 関 達治
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.95, no.3, pp.193-198, 2000-03-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
10

ラオスは周辺諸国のタイやインドネシアなどに比べて, まだ近代化の波にそれぽど洗われてなく, 古くからの生活文化を残している。今回は, そのラオスにおける酒と麹について解説していただいた。

2 0 0 0 OA 酒母 (1)

著者
黒須 猛行
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.93, no.5, pp.334-343, 1998-05-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
2

優良酵母を安全かつ大量に培養する工程が, 酒母造りである。酒母にはいろいろな種類があるが, 重要ポイントは共通である。そこで, 今回は酒母の基本技術について, 著者に解説していただいた。
著者
金田 弘挙
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.109, no.6, pp.417-425, 2014 (Released:2018-03-14)
参考文献数
37
被引用文献数
3 3

ビールの香味は,従来,官能評価により行っており,その美味しさを表現する言葉として,「こく」「きれ」「のどごし」などあるが,これらを定量的に分析値として示すことは困難であった。筆者らは,「味覚センサー」や「脳波」「筋肉の動き」などを測定することで,ビールの美味しさとの相関を発見し,さらにはお客様の気分との関係を明らかにしてきた。これらビールの美味しさを解明する一連の取組みについて解説いただいた。
著者
須見 洋行
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.96, no.8, pp.513-519, 2001-08-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
15
被引用文献数
2 3

昔から酒は百薬の長と言われる。お酒が持つ健康上の機能についてはお酒好きのみならず大変興味があるところであり, また酒類業界としても需要拡大を図る上で大きな期待がある。筆者は酒類の飲酒の比較実験の中で, 本格焼酎と泡盛には人間の血栓溶解活性を増大させる高い機能があることを明らかにした。そこでその実態を記述していただくとともに, 適正飲酒についても言及していただいた。
著者
秋山 稔 三上 慶浩
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.101, no.3, pp.178-185, 2006-03-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
10

貯蔵に伴う蒸留酒のクラスターサイズの変化を定量的に決定するために(1) マクロなクラスターサイズを (1) 式と (2) 式で定義した。(2) エタノール水溶液での水分子とエタノール分子の水和クラスターへの分率であるPwとPEとを贋-NMRにおける化学シフト値の濃度変化から (5) 式により求めた。(3) 蒸留酒として, ウィスキーを選び, ウィスキーでの分率Pw*とPE*とをPwとPEを基礎にし, ウィスキーとエタノール水溶液から蒸発する水分子数の比とエタノール分子数の比を測定することによって, (12) 式から算出した。(4) 算出されたPw*とPE*から (4) 式により, ウィスキーでの3種のマクロなクラスターサイズを求めた。(5) 本研究で定義されたマクロなクラスターサイズの25年の貯蔵に伴う変化はエタノールクラスターで大きく減少しているが, 水和クラスターと水クラスターではそれに較べて小さい。
著者
松浦 一雄
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.89, no.1, pp.13-17, 1994-01-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
6

食品加工分野ではマイクロ波, 高周波, 遠赤外線, 超高圧, 超音波などの様々な物理エネルギーが利用されるようになってきた。超音波は魚群探知, 洗浄, 医療診断等の産業分野へ広く利用されているが, 食品産業分野への利用は最近のことである。ここでは酒類醸造分野での利用について, 超音波により酵母に阻害的に作用する溶存炭酸ガスを低減させることによって発酵制御を試みた例について解説していただいた。
著者
中屋 慎 小谷口 美也子 北村 進一
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.110, no.5, pp.288-297, 2015 (Released:2018-04-23)
参考文献数
11

定量分析を行うと,必ず「有効数字」や「誤差」が付きまとう。そして,統計学や推計学のやっかいになることになるが,なかなか教科書を開く気になれない。本解説は,身近な実例を引きながら,分かり易くそれらの概念を紹介したもので,定量分析に関わる方に(私も含めて),一読をお勧めしたい。
著者
岡田 俊樹 前田 安彦 角田 潔和 鈴木 昌治 小泉 武夫
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.94, no.8, pp.674-681, 1999-08-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
8
被引用文献数
1 1

Kona-koji was prepared without the addition of a koji starter (Tanc-koji) for the production of Imo-shochu. The spores of molds carried in the air affected growth during the preparation of koji. So, we isolated the spores of molds from the vicinity of the places used for the preparation of koji and production of shochu.As shown by the results, a 103 order of colonies per gram·koji of A. oryzae were isolated from kojimuro solids, shochu distillery solids and from the leaves of N. antiqua that are used to wrap the koji A. oryzae spores were also isolated from the air of the koji-muro and shochu distillery. In addition spores of A. niger and other molds were also isolated.We measured the enzyme activity of these strains and investigated their physiological characteristics. Their acidity was higher than that of the standard strains. The characteristics of these strains agreed with those of strains isolated from kona-koji. Therefore, we found that spores of Aspergillus sp. were mixed with the raw material for koji from the leaves of N. antiqua or airborne spores, and these spores grew during the preparation of koji.Further more, spores of other mold contaminating koji were isolated from the leaves of N. antiqua, but they were not detected in the koji. We found that their mold were selected against as the temperature of koji rose to 40C during its preparation.
著者
岡田 俊樹 前田 安彦 金内 誠 角田 潔和 鈴木 昌治 小泉 武夫
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.94, no.10, pp.849-852, 1999-10-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
12
被引用文献数
1 1

青ヶ島の芋焼酎製造に用いられる粉状麹の諸性質を調べた。(1) 粉状麹の製麹過程中の水分含量の変化は, 引込み時に45.0%であったものが, 7日目の出麹時は, 32.0%まで減少した。これは, 一般的な散麹の値より10%程度高かった。(2) 粉状麹の製麹中の酸度は, 出麹まで増加し続け, 4.0meに達した。これは, 一般的な焼酎用麹の酸度よりわずかに低いものであった。(3) 粉状麹の出麹時の各種酵素力価は, AAは1, 100U/g・麹, GAは260U/g・麹であり, 白麹菌を用いて製麹した焼酎用麦麹と比べて, AAで約12倍, GAで約1.4倍高かった。APは11,900U/g・麹で, 焼酎用麦麹と同等であり, ACPは9, 800U/g・麹で, 約3倍高い値を示した。また, 耐酸性α-アミラーゼは530U/g・麹だった。(4) 粉状麹の製麹過程中の細菌酸度は, 製麹開始後, 4日目に3.1meに達したが, その後減少し, 出麹時は2.4meだった。これは, 一般的な散麹の値より高い値だった。以上の結果より, 青ヶ島の芋焼酎製造に用いられている粉状麹は, 酸度が高いことや各種の酵素力価より, 焼酎用麹として十分な品質を有していることが明らかとなった。