著者
高山 卓美
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.102, no.3, pp.172-186, 2007-03-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
25

マルコポー口の「東方見聞録」は, 13世紀末の25年間にわたるシルクロード周辺地域を含む元朝中国や南海諸島でつくられていた酒とその飲酒風俗を現在に伝える貴重な資料である。著者は, 同書に記録された酒の種類や製法, 地域などの情報から, ユーラシア大陸における酒文化圏の形成を次の類型から説明した。(1) ユーラシア大陸ワイン街道, (2) 米酒文化圏, (3) 乳酒文化圏, (4) 椰子酒文化圏, これらの酒文化圏をマルコポー口の旅行地図上に印した,「酒文化圏マップ」(Fig.1) は, 著者の独創史料である。
著者
童 江明 李 幼均 伊藤 寛
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.92, no.11, pp.815-821, 1997-11-15 (Released:2011-09-20)

日本の味噌・醤油のプロトタイプといわれる醤は古い歴史の中で発展してきただけあって, その種類は多岐にわたり, 今日では非発酵のドロドロした調味料も含まれる。その醤の歴史, 原料と製造法, 製品の品質特性および用途などについて, 中国で製造と研究の実務を担当している著者の情報を中心に纏めていただいた。その1は原料別に異る醤についての総論であり, その2, 3は代表的生産地における醤の各論である。
著者
猪谷 富雄
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.107, no.10, pp.719-732, 2012 (Released:2017-12-15)
参考文献数
70

日本人は普段コシヒカリに代表される限られた品種のお米ばかり食べているが,稲の世界は多様である。本稿では,「古代米」をきっかけに,稲の多様性から稲と稲作のルーツまで解説いただいた。是非ご一読を。
著者
成澤 直規 池田 真有花 竹永 章生
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.114, no.9, pp.550-556, 2019 (Released:2023-12-10)
参考文献数
22

魚醤油は,生産量は醤油の僅か0.2%にも満たないが,国際化が進むにつれて,調理における隠し味として人気を博してきている。今回は海外の魚醤油の中でも,中国の魚醤油 魚露(イールー)について焦点を絞って,その成分の特徴について日本の魚醤油と比較して丁寧に解説いただいた。同じ調味料の仲間として醤油や醸造の研究開発に関わっている関係者の皆様には是非ご一読をお勧めする。
著者
近藤 高史 小野 武年 西条 寿夫
出版者
日本醸造協会
巻号頁・発行日
vol.112, no.12, pp.812-821, 2017 (Released:2018-04-20)
著者
松橋 通生 遠藤 成朗 大島 英之
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.95, no.12, pp.892-898, 2000-12-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
19

醸造物の品質は醸造用微生物の増殖と深くかかわっており, 増殖制御は重要な管理ポイントである。現在の増殖制御は発酵温度などの温度を主体に行われているが, その他の制御法についても興味があるところである。本稿では, 微弱な音波の微生物の増殖に対する作用という新分野に取り組んでおられる筆者に, これまでの研究成果を中心に解説していただいた。b
著者
吉田 元
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.88, no.1, pp.56-61, 1993-01-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
15

日本に伝来した洋酒の歴史を紹介した文献は刊行されているが, 逆に外国人が日本酒をどのように自国に紹介していたかは, 大変興味深いテーマであるがまとまった文献はない。本稿は16~19世紀にかけて日本に渡来した宣教師, 貿易商, 外交官などの著作を調査し, 考証を加えたものである。(I) では16世紀を中心に, (II) では17, 18世紀, (III) では19世紀と3部作の膨大なものである。読み物として興味があるばかりでなく, 経営・製造の両面に有益なヒントが含まれている。
著者
喜多 常夫
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.110, no.9, pp.604-616, 2015 (Released:2018-05-18)
参考文献数
8

日本は世界的に見て,稀に見る長寿企業の多い国であるという。その中でも,とりわけ清酒製造業は長寿である。欧州では,ドイツなどでもワインやビール醸造業には長寿企業が多い。その理由は那辺にあるか,著者も長寿酒造業者のリストを整理・解析し考察を加えているが,明確な答えは見つかっていないようにも窺える。しかし,我が国の清酒製造業者が何代にもわたって酒造業を脈々と続けて来たことは厳然たる事実である。 貴重な調査記事の一読をお勧めするとともに,読者諸賢におかれてはそれぞれ考えをめぐらせ,将来への清酒製造業の維持・発展のよすがとして頂くことを希望したい。
著者
田中 秀夫
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 = Journal of the Brewing Society of Japan (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.93, no.6, pp.432-452, 1998-06-15
参考文献数
407

平成9年の醤油ならびに醤油関連の研究業績は, 日本経済の沈滞, 醤油需要の低迷をそのまま反映するかのように目覚ましい進歩があったとするにはほど遠い。醤油本来の研究が少ない上に他の食品産業同様に環境問題, 食品衛生などの周辺の問題対応が多く, 地道な発展が阻害されているかのように感じられる。より一層基礎を固め目前に迫った21世紀に向け, 発展への確実な道が切り拓かれることを期待する。
著者
蛸井 潔
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.110, no.7, pp.479-488, 2015 (Released:2018-05-10)
参考文献数
43
被引用文献数
1

分析機器の発展とともに,ビールの香り,ホップの香り,酸化劣化臭,それらがヒトに与える影響などについての研究が盛んに行われ,今では多くの知見が得られている。本内容は,過去に行われたそれら研究について振り返り,酒類が醸し出す香りについて論じたものである。
著者
吉田 元
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.92, no.8, pp.579-587, 1997-08-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
6

筆者は, 発酵食品を中心とした日本科学技術史を研究しており, 東アジア諸国へ出かけて行った日本人がその国の伝統的な酒をどの様に紹介しているか等, 日本人とアジアの酒の歴史的なかかわり方について興味深い調査を行っている。台湾の米酒は日本人の手でアミロ法が導入され近代的製造法に切り換えられた。筆者は, 本年春再度台湾を訪れて米を原料とする伝統的な地方酒づくりの現場を約1週間にわたり見学し, 詳細な説明を受け新しい知見を得た。本稿ではあまり知られていない台湾の酒造工業の現状について御紹介していただいた。読み物として興味があるばかりでなく, 我が国の製造にも有益なヒントが含まれており参考になると思われる。
著者
髙山 卓美
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.111, no.4, pp.204-218, 2016 (Released:2018-06-29)
参考文献数
36

中国の蒸留酒は,固体発酵,大曲,泥窖地発酵,固体醪蒸留など他に見ない特徴を持ち,その酒質も高アルコール度,高い香気など独特の個性を有している。しかしながら,その起源については諸説あり謎に包まれた部分も多い。中国では近年,遺跡の発掘が相次ぎ貴重な発見がなされているが,著者は2007年に発見された劉怜酔焼鍋遺址の出土遺物をもとに,これまでの古記録を整理しつつ,その歴史的意義と酒造法変遷についての考察を行った。本論文は中国酒史を考える上で重要な知見と示唆を与えるものである。
著者
藤沢 英夫
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.105, no.10, pp.628-640, 2010 (Released:2016-02-04)
参考文献数
28

本報告は,平成21年5月に独立行政法人国立科学博物館によって発行された「技術の系統化調査報告第14集–ビール醸造設備発展の系統化調査」をもとに,要点を再編集して報告するものである。

5 0 0 0 OA お味噌の効能

著者
渡邊 敦光
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.105, no.11, pp.714-723, 2010 (Released:2016-02-04)
参考文献数
46
被引用文献数
3 2

わが国の代表的発酵食品の一つである味噌について,健康や長寿に良いことが伝承されてきたが,食塩の過剰摂取による弊害のおそれも指摘されてきた。これまで味噌等の発酵食品の健康・栄養に関する知見については伝承的な説明が広く知られていたが科学的な研究の発展が遅れていた。近年,動物を用いた臨床研究,分子生物学,分子栄養学の研究が進展し,味噌を含む発酵食品の健康機能性が急速に明らかにされつつある。本解説では,味噌の抗癌効果を長年に亘って研究し味噌の生理機能研究を牽引してきた研究者の一人である著者に,これまでのご自身の研究成果と国内外の研究成果を紹介していただき,味噌の健康機能について幅広くわかりやすく解説していただいた。
著者
岡本 隆典
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.89, no.9, pp.704-709, 1994-09-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
10

バイオリアクターによるビ-ル連続醸造に関する研究は1970年代前半から始まり, 数多くの研究結果が発表されている。しかし, 商業べースでの実用化はほとんど例がなく (ビールの後発酵工程で7インランドのビール工場が実用化している), キリンビールがサイパンにおいて世界で初めて主発酵も含めたビール醸造を連続発酵法により成功させている。バイオリアクターを用いると酵母密度等が従来の回分式発酵と大きく異なるため, 品質や成分も大きく影響を受ける。これらの問題点をどのようにして解決し, 実用化に槽ぎつけたか。その興味ある経過を解説していたたいた。
著者
鈴木 崇
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.102, no.2, pp.98-108, 2007-02-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
1

醸造用水は酵母やもろみ中の酵素作用, 緩衝作用及び酵母の生育と醗酵, 最終的には製成酒の色沢, 風味に多大なる影響を及ぼすことは古くから周知されていることであるが, 今回あらためて酒質に影響を与える成分や, 近年の経済発展にともない, 有害化学物質の水への汚染が懸念されていることから, それらの汚染物質の安全な水質基準についてもあわせて解説していただいた。
著者
Du DONGDONG 海老澤 香里 宮本 悠紀 吉永 真理子 上原 誉志夫
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.109, no.3, pp.126-136, 2014 (Released:2018-03-06)
参考文献数
14
被引用文献数
1 1

わが国の伝統的発酵調味料として「和食」の味を支えている味噌は,多くの生理機能成分を含むと考えられているが,同時に食塩を含むことから高血圧症の原因となるとして,消費者から敬遠され,消費量が年々漸減する傾向にある。しかし,最近の研究から,味噌汁として摂取する量では高血圧症の原因とはなりにくいことが解りつつある。味噌の食塩を敬遠するよりも味噌の成分がもつ機能性をより有用と考えて,おいしく食事をいただく方が,より健康によいことがわかり始めている。本解説では,味噌汁を摂取することが食塩による血圧上昇には直接つながらないことを動物実験により示し,むしろ味噌にふくまれる成分の複合的作用による血圧上昇抑制について解説していただいた。味噌には多くの成分が含まれ,それらの複合的作用について今後の研究へ期待が大いにもたれる。
著者
堀越 昌子
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.107, no.6, pp.389-394, 2012 (Released:2017-12-12)
参考文献数
9
被引用文献数
2

なれずし(馴れずし・熟れずし)は,コイやフナなどの川魚に米飯を混ぜ,重石をして数ヶ月から数年かけて保存する。この間,乳酸菌の作用でpHが下がり,雑菌の繁殖を抑えつつタンパク質の分解により旨み成分が増加するが,独特の香りを持っている。琵琶湖の「鮒ずし」や東北・北海道の「いずし」を始め,各種のものが知られている。そこで筆者に琵琶湖のナレズシを中心に,文化・栄養・製法・位置づけ・抗菌性について解説して頂いた。