著者
林 京子 田中 昭弘
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.108, no.6, pp.401-412, 2013 (Released:2018-01-12)
参考文献数
14
被引用文献数
2

収穫直前のマイタケを冷蔵保存した後に凍結乾燥し,アミラーゼによる分解を防ぐために,80℃以上の高温で熱水抽出したαーグルカン(YM-6A)が生体防御機能を介したマウスへのインフルエンザさらにタミフル耐性株に対しても治療効果があることを見出したので,解説いただいた。
著者
岩本 將稔
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.108, no.5, pp.318-325, 2013 (Released:2018-01-12)
参考文献数
21
被引用文献数
1 2

柿渋は従来,防水及び防腐効果を有するため染色に使用されてきたが,醸造用の清澄剤として用いられている事実について知らない人も多い。この点について筆者は,柿渋の歴史的背景から,柿渋の製造方法を含め清酒への応用について詳しく解説している。また,新しい手法(UF膜)を用いて,従来からの課題であった柿渋の酪酸臭等の発酵臭(不快有機酸)の除去を可能とし,高分子柿タンニンを効率良く分離するとともにゲル化防止にも成功した。この2つの事例は,柿渋の新たな可能性を示唆するものであり,たいへん意義がある。歴史好きな人や醸造に携わる人,ならびに研究者にとっても参考になることも多く一読願いたい。
著者
細井 知弘
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.98, no.12, pp.830-839, 2003-12-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
61
被引用文献数
5 4

プロバイオティクス (probiotics) とは,「宿主の腸内菌叢のバランスを改善することにより, 宿主にとって有益な作用をもたらす生きた微生物, 並びにそれらを含む食贔」と定義される。プロバイオティクスの効果としては, 腸内菌叢の改善, 腸管感染症下痢症の改善, 便秘の解消, 免疫機能向上, 血圧低下などが報告されている。ここでは, 腸内菌叢と腸管免疫システムについての概説と, 大豆発酵食品である納豆に関与する納豆菌や納豆のプロバイオティクスとしての作用について, 解説していただいた。
著者
谷本 亙
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.92, no.3, pp.169-175, 1997-03-15 (Released:2011-09-20)

地域と酒蔵との深い関係が忘れ去られようとしたことがある。ところが, 近年, 各地で「酒蔵 (酒造場)」の存在意味を問い直すような様々な事業活動, 支援運動が行われており, いま正に, 地域の中での酒蔵を再認識すべき時に来ている。そこで, 地域振興活動に詳しい筆者に, 21世紀に向けて酒蔵の維持・発展の方向性及び方策について提示願った。
著者
堀越 昌子
出版者
日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 = Journal of the Brewing Society of Japan (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.107, no.6, pp.389-394, 2012-06 (Released:2013-10-08)
著者
柳田 藤治
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.85, no.3, pp.134-141, 1990-03-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
36
被引用文献数
1

酢の薬効については古くから伝えられているが, 科学のメスが加えられたのはごく最近のことといえる。黒酢や酢大豆に代表されるように, 健康食品としてマスコミに登場する機会も多い。酢の機能性とは何か, 数多くの研究結果を引用して解説していただいた。
著者
山田 修
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.103, no.9, pp.665-669, 2008-09-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
13
被引用文献数
4 3

麹菌と近縁のA. flavusはカビ毒アフラトキシンを生産する。麹菌はアフラトキシンを生産しないことはすでに多くの研究により証明されているが, ゲノム解析に使用されたRIB40株には, アフラトキシン生合成に関与する遺伝子群が染色体上にクラスタを形成していることが報告された。そこで, 酒類総合研究所に保存されている多数の醸造用麹菌株について調べ, 麹菌がアフラトキシンを生産する能力を持たないことを分子生物学的に明らかにした。筆者らの研究は, 麹菌の安全性を示すとともに, 麹菌のルーツをさぐる糸口を与えるものである。
著者
吉田 元
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.101, no.11, pp.862-866, 2006-11-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
16

終戦の翌年 (昭和21年), 奄美諸島は突然鹿児島県から切り離されて, 米軍政下におかれることになった。 以来, 紆余曲折を経て, 昭和28年に宿願の本土復帰をはたしたが, 軍政下の8年間は奄美の歴史のなかでも極めて特異な時期であった。 すなわち, 軍政下という小さな独立国のなかで, 奄美島民が主体的に行政, 経済, 文化を担うことになったからである。本稿では, 奄美群島政府の行政資料や新聞記事などにもとついて, 軍政下における奄美の酒造史, 特に 「黒糖焼酎」 誕生までの前史について2回にわたって解説していただいた。
著者
高橋 美絵 磯谷 敦子 宇都宮 仁 中野 成美 小泉 武夫 戸塚 昭
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.102, no.5, pp.403-411, 2007-05-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
21
被引用文献数
5 7

製麹工程における麹の香りの変化を明らかにした。1.製麹工程中の香りは, 麹らしい香りの全体的強度, キノコの香りの強度は経時的に増加する傾向を示し, 甘い香りは出麹時に最も強くなり, 栗香は出麹以降に強くなることが認められた。2.栗香については, Phenylacetaldehydeが床もみ後40時間で最大となり, 1-Octen-3-one, 1-Octen-3-olは菌体量の増加とともに44時間から49時間の出麹にかけて約2倍に増加したことから, これらの成分のバランスで栗様の香りになるものと考察した。3.製麹工程において麹中のアミノ酸は出麹に向けて経時的に増加する傾向を示したが, 香気成分の前駆物質と考えられるアミノ酸 (Val, Leu, Met及びPhe) において固有の動向は見られなかった。4.製麹工程における脂肪酸の動向を検討したところ, 脂肪酸は菌体量の増加, 菌体外タンパク質量と共に増加する傾向を示し, 脂肪酸は麹菌の増殖の指標となると考えられた。5.リノール酸を基質として麹から抽出した粗酵素液を反応させたところ, HOD及び1-Octen-3-olの生成が確認された。1-Octen-3-ol生成酵素活性は製麹後半 (リノール酸の増加開始約4時間後付近) で約10倍高くなり, 基質であるリノール酸に制御されていることが示唆された。6.1-Octen-3-olを基質として粗酵素液を反応させたところ, 1-Octen-3-oneの生成が確認された。1-Octen-3-one生成酵素活性は盛仕事以後の製麹工程中において一定であり, 香りに強弱がある麹間においても差は認められなかった。7.製麹後期の麹の香りは, リノール酸を前駆体として生産されるものであり, この香りを製麹管理及び麹の品質評価の指標として活用できることが確認された。
著者
宮尾 茂雄
出版者
日本醸造協会
巻号頁・発行日
vol.112, no.6, pp.386-396, 2017 (Released:2017-10-02)
著者
後藤 奈美
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.107, no.4, pp.210-216, 2012 (Released:2017-12-11)
参考文献数
36

国産ワインのレベル向上などからワインに関する研究が多く行われている。最近,赤ワインの渋みに関する研究も多く報告されている。ここでは,渋み成分の生合成から,渋みを感じる仕組み,ぶどう栽培やワイン醸造を含めて最近の知見や筆者の取り組みも交えて,詳細に解説いただいた。
著者
宮尾 俊輔
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.103, no.10, pp.742-749, 2008-10-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
5
被引用文献数
1 2

吟醸酒の製造にカプロン酸エチル高生産酵母は不可欠な存在になっている。カプロン酸エチル高生産酵母は醒後半のキレが鈍る傾向にあり, そのため発酵能が高い酵母との混合仕込が普及している。最近, 日本醸造協会が開発し, 頒布しはじめたカプロン酸エチル高生産酵母のきょうかいm1号は, 発酵能が高い酵母として注目されている。筆者らはかねてからカプロン酸エチル高生産酵母の混合仕込について詳しく調べており, 今般きょうかい1801号の混合仕込を行い, 発酵能や香気成分の生成量などを検討した。混合仕込全般を含めきょうかい田1号について得られた最新の知見を詳しく解説していただいた。
著者
松井 徳光 大杉 匡弘
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.101, no.11, pp.833-838, 2006-11-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
15
被引用文献数
6

古来より味噌は麹カビを用い, 耐塩性酵母および耐塩性乳酸菌の働きで造られてきた。筆者らは, 子嚢菌類 (麹カビ) とともにいわゆる真菌類の主体をなす担子菌類 (きのこ類) がアミラーゼ, プロテアーゼ, 乳酸脱水素酵素, アルコール脱水素酵素を有することを見出だし, きのこを用いるワイン, ビール, 清酒などの製造も試みておられる。さらに, きのこには抗ガン作用や抗血栓作用などもあり, 機能性食品素材としても注目される。筆者らは, 食品素材としてのきのこに着目し, 機能性食品の開発を主目的として大豆素材の特性を活かしながら, 機能性に優れ独特の風味を有するきのこ味噌 (無塩味噌, むしろ味噌様食品と呼ぶべき食品) の製造を試みられた。知恵と経験を活かしながら, 今迄にない食品素材と微生物組み合わせることによって, 新しい風味を呈し種々の疾病予防に効果を示す発酵食品の製造が可能の好例として大いに参考になるものと思われる。
著者
好田 裕史
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.110, no.2, pp.81-85, 2015 (Released:2018-04-12)
参考文献数
9
被引用文献数
1

ウイスキーは長期貯蔵後,製品化され,その複雑な香味が特徴的で大きな魅力のひとつである。このウイスキーの豊かな香り成分は単に味わいとなるだけでなく,ストレスを緩和させる作用があることが明らかにされつつある。筆者らの内分泌,神経科学,生理学的検証から,その作用を解説して頂いた。
著者
鰐川 彰
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.98, no.4, pp.241-250, 2003-04-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
21
被引用文献数
8 6

ウィスキーの製造工程全般にわたり酒質に及ぼす影響を検討したところ, 乳酸菌がモルトウィスキーの新規香気成分生成に関与することを解明した。乳酸菌は, 従来汚染菌として発酵停止やオフ・フレーバー生成の原因となることは知られていた。一方, 新しく他の微生物と協調してファッティな甘い香気成分を生成し, 同定の結果γ-decalactoneとγ-dodecalactoneと判明した。その生成経路につき, また伝統的に使用しているビール余剰酵母の酒質に及ぼす影響をも検討した。
著者
石田 秀人
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.98, no.1, pp.23-30, 2003-01-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
17
被引用文献数
1 1

本稿は, 古代エジプトの壁画に表されたビール造りを再現実験によって意味付けを行う実験考古学的アブローチを用いて, 古代ビールを復元した貴重な研究である。復元された古代ビールは, アルコール分約10%, 高い乳酸濃度のためボディーがあり, 白ワインに似た味のものであった。筆者は, この研究によって, パンを粥にしたものからビールが出来たとする従来の自然発酵説を否定し, 乳酸を含むサワーブレッドを用いることによる静菌作用が, 酢酸発酵を防止しビール製造に必要であったとしている。この乳酸による静菌技術は, 日本酒の生翫造りだけではなく, 開放発酵系の酒造りに必要な共通技術であるとする等, 非常に興味深い内容である。
著者
伊豆 英恵 鎌田 直樹 髙橋 千秋
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.110, no.4, pp.198-206, 2015 (Released:2018-04-23)
参考文献数
103
被引用文献数
1 1

近年の消費者の健康意識の高まりとともに,日本酒の機能性や健康効果に関する論文や報告が数多く出されている。本稿では清酒だけでなく酒粕関連も含め,また研究報告に限らず解説や学会発表と特許も含めて網羅的に調査し,有用な機能性について項目ごとにまとめられている。是非ご一読いただき,科学的な裏付けのある日本酒の健康効果を消費者に広めるための参考にして戴きたい。
著者
渡辺 正澄 藤原 正雄
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.83, no.3, pp.171-176, 1988
被引用文献数
2

酒をおいしく味わうには, 飲酒に最適な温度と酒に合った料理を選ぶことがポイントであるが, 特にワインの場合には両者の関係がよリ厳しく要求される。本稿では, ワインの酸組成と飲酒適温との関係並びに料理との相性についてこれまでの知見を要約して紹介いただいた。<BR>ワインがなぜ温度と料理にこだわるのかを科学的に解き明かしてくれた興味ある解説である。