著者
原田 勝二
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.96, no.4, pp.210-220, 2001-04-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
19
被引用文献数
1

著者は飲酒様態と遺伝子型の違いについて永年にわたって研究され, アルコール飲料に対して強いか弱いかは遺伝的要素が大きく, 人種, 民族による差異も関連する遺伝子型から説明づけられることを明らかにしてこられた。また, 関連する遺伝子型の解析により, われわれの遠い祖先のルーツを探ることもできるという。さらに, 現代の都市型高度情報化社会における個人の行動パターンも遺伝的多型の面から解析する必要があり, これらの研究成果はアルコール依存症などに対する予防医学の確立にもつながると説かれる。
著者
山下 勝 西光 伸二 稲山 栄三 吉田 集而
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.88, no.10, pp.818-824, 1993-10-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
26
被引用文献数
2 2

1. 回分発酵式口噛醪においては, 特別な酵母集積法を使用しない場合, 酵母の増殖に約5日, 発酵に約5日, 合計10日位の醪日数を必要とし, 短時日にアルコールを生成することはなかった。しかし, 前醪利用方式や連醸方式を利用すると, 3~5日の短時日で1~5%のアルコール生成が可能となった。大部分の口噛酒は, 後者の方法を利用していたものと推察できた。2. 唾液アミラーゼ活性に男女間の有意差はなく, 男女別口噛醪でも生成アルコールに有意差はなかった。3. 口噛時間3分で精白生米では約2%, 精白蒸米では約6%の還元糖が生成した。また, この3分間の口噛の間に, 口噛前米量の約200~300%の唾液が加わることが認められた。4. 口噛酒に関与する微生物としては, 唾液中に数十/mlの酵母と107/mlの乳酸菌が常に存在し, 発酵に関与した。この他に, 生米を使用した場合には, 生米中の酵母 (102~103/ml) が発酵に関与した。男女が学生は全般に唾液中の酵母数が少なく, 発酵性酵母を持っていない人も半数位認められた。唾液中の酵母数は個人差が大きかったので, 朝のハミガキの影響はないか調べたところ, ハミガキの影響は少なく, 酵母数の少ない人は常に少ない傾向が認められた。5. 生成した口噛酒は, デンプン質が多く残存しているために泥状を呈し, 酸が多いために多少すっぱめであり, アルコール量は1~5%位と少量であった。
著者
小松 明
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.86, no.10, pp.745-750, 1991-10-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
7

アルコール発酵の主役である酵母にも最適な生育環境があるし, 感情はなくとも生命体である限リストレスがあるはずである。クラッシク音楽を仕込蔵に流し酵母の生育境を好ましいものにし, 酒質を向上させるという話を聞く。音楽を振動に変換波及し, 発酵あるいは熟成を好条件に導くことが出来れば, 人間の飲酒環境にもプラスになる。本報はこのような試みについてまとめていただいた。
著者
有田 正規
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.108, no.2, pp.98-103, 2013 (Released:2017-12-28)
参考文献数
9

今回の原発事故により,人々は放射線に関して大きな不安を感じることになった。一方,被災地の生産者は風評被害の影響を大きく受け,今もなお苦労されている。本稿では放射線に関する科学的な知見をわかりやすく紹介していただいた。放射線対策を正しく考えるきっかけになると思う。
著者
吉田 晋弥
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.107, no.10, pp.710-718, 2012 (Released:2017-12-15)
参考文献数
20
被引用文献数
3

酒米の醸造適性については酒米研究会による膨大なデータの蓄積があり,これまで気候条件との関係のほかクラスター分析による品種間の類似性などが報告されている。しかし,その遺伝的な背景についてはまったくの手付かずであった。現在,SSRマーカーのDNA多型データを収集し,集団構造解析という新たな手法で遺伝的背景に基づいた集団の分類を行った上で酒米品種群でのコアコレクションの選定が進められている。今後,ゲノムワイド関連分析によりDNAマーカーと形質との相関関係の解析を進ることで,これまで蓄積されてきた酒米の醸造適性に関する遺伝子の解析を大きく進めることができ,酒米育種での選抜効率を飛躍的に高めることが期待される。
著者
舩山 淳
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.111, no.12, pp.801-807, 2016 (Released:2018-08-15)
参考文献数
11
被引用文献数
1

清酒の製造に豊富でよい水は欠かせない。名水あるところ名酒ありとも言われる。水は,清酒の重要な原料である。この水の成分は,全国一律ではない。それは,降った雨が地面に浸み込み通ってきた地層等に関係しているからである。今回は,水と酒質の関係をさらに進めて,地質学の専門家に日本列島全体を俯瞰して地質と清酒の酒質との関係について解説いただいた。
著者
恩田 匠
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.110, no.5, pp.306-317, 2015 (Released:2018-04-23)
参考文献数
7
被引用文献数
2

フランス北部,ベルギーとの国境に近いシャンパーニュ地方は,寒冷な気候でワインブドウが完熟するには厳しい条件だが,逆にその条件を活かしたシャンパンは世界のスパークリングワインをリードしている。このシャンパン造りを支えるブドウの栽培方法は,厳しい自然環境のなかで先人たちの努力と試行錯誤の積み重ねによって見出されたものと言えるだろう。シャンパン醸造について研修・情報収集をされた筆者に,この地方のブドウ栽培の概要とシャンパンの品質と名声を維持するために設けられている種々のルールについて解説していただいた。
著者
岩田 博 磯谷 敦子 宇都宮 仁 西尾 尚道
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 = Journal of the Brewing Society of Japan (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.99, no.7, pp.534-538, 2004-07-15
参考文献数
8
被引用文献数
3

口噛み酒製造工程への米α-グルコシダーゼの働きを検討するため, 生米と炊飯米で口噛み試験を行い, 糖組成, α-グルコシダーゼ活性, pH及び有機酸組成の各変化を調べた。<BR>糖組成について, 24時間後で, 生米はグルコースが5%, マルトースが0%であったのに対し, 炊飯米ではマルトースが5%, グルコースが0.8%で両者は全く異なっていた。この理由は, 糖組成とα-グルコシダーゼ活性の測定結果から, 唾液アミラーゼにより生成されたマルトースが, 生米のα-グルコシダーゼによりグルコースに分解されたためと推定された。また, 有機酸組成の検討から, 微生物が生成した乳酸などによるpH低下と酵素抽出促進効果がおこり, α-グルコシダーゼが有効に機能する環境条件下で口噛み試験の反応が起こっていることが分かった。<BR>以上から, 口噛み酒は生米のα-グルコシダーゼを巧みに利用した酒造りであると推定された。
著者
松本 秀樹
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.95, no.5, pp.341-346, 2000-05-15 (Released:2011-09-20)

日本中の食卓にあって当たり前のような空気みたいな存在になっている醤油!醤油はお茶についで摂食頻度の高い食品である。醤油は万能調味料であるが故に使い方・使われ方もいろいろである。ここでは醤油を科学的に捉え, 色味香りの生成経路から意外な使われ方までその詳細を紹介していただいた。
著者
橋本 直樹
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.105, no.8, pp.492-499, 2010 (Released:2016-01-25)
被引用文献数
1

日本の酒について,現在に至るまでの各時代において酒の果たした役割,人との関わりあるいは飲まれ方などを改めてまとめて戴いた。特に最近の酒類の消費動向を詳細に解析して,日本人の飲酒に対する考え方が大きく変化し,かつその方向性をも見失っている時期に突入している事に警鐘を鳴らすとともに,今まで日本が辿ってきた酒の歴史を再度振り返る事の中に各酒類が低迷から抜け出すヒントがあるのではとのご指摘を戴いた。
著者
金 鳳燮
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.87, no.9, pp.629-634, 1992-09-15 (Released:2011-09-20)

中国に味噌があるか。今回全国味噌技術会の招きで, 来日した著者と話しあったところ, 日本の味噌に相当するものとして醤, 鼓が古くからあったことがわかり, それぞれが豊富なバラエティーを持っている。それに, 味噌とは定義上は異なるが, 豆腐乳という豆腐発酵食品も加えて解説していただいた。
著者
河辺 達也
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.102, no.6, pp.422-431, 2007-06-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
18

日本醸造協会が関係する醤油, 味噌, 清酒, みりん, 酢は, 和食の「うまみ」を支え合う仲間といえる。麹を使用しアミノ酸が多いことが, これらの相性の良さにつながっていると考えられている。さて, みりんや清酒を使うと, 料理がおいしくなることは経験的に知られていたが, 科学的解明が行われるようになったのは最近のことである。筆者らは, 本みりん・清酒の調理効果について, 客観的なデータを基に検証を進め, また, 新たな効果や機能を見いだしている。若い人たちや海外の日本食レストランの方々にも, これらの調理効果をより一層PRしたいものである。
著者
藤井 建夫
出版者
日本醸造協会
巻号頁・発行日
vol.106, no.4, pp.174-182, 2011 (Released:2012-12-06)
著者
森山 達哉
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.106, no.10, pp.645-655, 2011 (Released:2017-03-13)
参考文献数
21
被引用文献数
1 1

近年,花粉症,アトピー性皮膚炎等のアレルギー症や食物アレルギーが増加し,その治療法のために原因究明の研究が精力的に行われている。中でも大豆アレルギー等の食物アレルギーについて抗原蛋白質が同定されるなど研究が進んでいる。近年の研究によってアレルギー発症機構からクラス1,クラス2の食物アレルギーが存在することがわかってきた。味噌,醤油,納豆等のわが国の伝統発酵食品と大豆アレルギーとの関連性が注目されているが,アレルゲン蛋白質の消長に関する研究が進んでいる。本解説では,食物アレルギー研究をご専門とする著者に,最新の研究成果の一端を紹介していただくとともに食物アレルギーの多様性と味噌のアレルゲン蛋白質の低減化について分かり易く解説していただいた。
著者
Ayako HASHIMOTO Taiho KAMBE
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
JOURNAL OF THE BREWING SOCIETY OF JAPAN (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.106, no.12, pp.811-817, 2011 (Released:2017-03-28)
参考文献数
37
被引用文献数
4

本解説では人体における亜鉛(Zn)の生理機能について概説し,Znの摂取の重要性及び最近発見されたZn輸送タンパク質(ZIP4)の機能についてわかりやすく解説していただいた。つづいて,著者らが実施した,各種の味噌を添加することによるZIP4発現促進に関する研究を中心にして,味噌成分がZIP4発現促進効果をもつ可能性,ならびに近年の都市型生活の中で懸念されるZn欠乏に対する発酵食品の有用性についての期待と展望を示していただいた。味噌の新しい機能性の概要と有用性についてわかりやすく解説していただいた。
著者
伊藤 一成 辻 麻衣子 三宅 剛史
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.110, no.10, pp.670-677, 2015 (Released:2018-05-21)
参考文献数
14

現在普及している速醸?や生もと系酒母の原型とされる菩提もとは,速醸もとの技術が全国に普及したのと同時に姿を消したとされている。近年,奈良県において菩提もとの製造メカニズムが解析され,菩提もとを用いた清酒が再現復活している。これと同時期に岡山県内の蔵元において,独自の方法で製造したそやし水を使用するもと造りが確立されていた。本稿では,このそやし水の解析から明らかになったことを解説していただいた。

11 0 0 0 OA ホップの探究

著者
村上 敦司
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.105, no.12, pp.783-789, 2010 (Released:2016-02-05)
参考文献数
33
被引用文献数
1

ホップは苦みと香りを与えビール醸造には欠かせないものである。ホップはどのように進化してきたのだろうか。これまで原産地等は不明であったが,著者は世界的なネットワークを使って多くの野生種を集め,遺伝子レベルで解析した。
著者
吉田 元
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.101, no.1, pp.17-22, 2006-01-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
15

世界中にその品質の良さが認知されている日本のりんご。そのりんごの最大生産地である青森県の津軽地方。りんごを原料として醸成されたシードルは, まさに飲むりんごそのものである。筆者は, 本稿で津軽におけるリンゴ酒の歴史 (日本のシードルの歴史とも言える) を膨大な資料をもとに纏められた。先人のリンゴ酒への思い, 開発魂が今に伝わってくる貴重な資料である。

11 0 0 0 OA ビールの泡

著者
蛸井 潔
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.111, no.4, pp.195-203, 2016 (Released:2018-06-29)
参考文献数
21
被引用文献数
1 1

ビールの泡はおいしさと深い関係がある。感触として口当たりが良くなり,まろやかな味になるだけでなく,ビールが空気に触れるのを防ぐ「ふた」の機能により,ゆっくりと時間をかけておいしいビールを味わうことができる。ビールの泡持ちは非常に複雑な現象である。その現象,およびそこで何が起こっているかを,筆者らのこれまでの研究を含め,非常にわかりやすくまとめていただいた。