著者
山本 和英 増山 繁 内藤 昭三
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-2, 情報・システム 2-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.79, no.11, pp.1968-1972, 1996-11-25
参考文献数
8
被引用文献数
4

複数のテキストに対する要約について述べる.日本語新聞記事を対象として,単一のテキストの要約にはない,重複部分の把握,およびその除去という固有の問題に対して,連体修飾語,類似節,名詞句の言換えを利用した要約手法とその実験結果について述べる.
著者
松下 康之 西野 恒 池内 克史 坂内 正夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 = The transactions of the Institute of Electronics, Information and Communication Engineers. D-II (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.86, no.8, pp.1186-1195, 2003-08-01
参考文献数
16

天候の変化に伴う影の動き及び静的な影の影響は,ビデオ監視システムの物体追跡アルゴリズムや認識アルゴリズムの精度低下の要因として問題視されている.本論文では,このようなシーンの照明による影響を入力画像中から頑健に取り除くために,イントリンシック画像を用いた照度成分の正規化に関するフレームワークを提案する.これまでに提案された手法とは異なり,本手法ではシーンの照明変化に伴う反射成分の変化を考慮することにより,より正確な照明画像を推定することができる.この照明画像を用いた照明成分の正規化手法について述べると同時に,入力画像から直接的に照明成分を推定するために照明固有空間を用いる手法を提案する.最後に照明成分を正規化した画像において車両のトラッキング性能を評価することにより,本手法の有効性を確認した.
著者
永江 孝規 長橋 宏
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-2, 情報・システム 2-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.80, no.7, pp.1834-1842, 1997-07-25
参考文献数
27
被引用文献数
8

等値面の構成と陰影付けは3次元空間内のスカラ値の分布を視覚化する際に用いられる手法の一つである. スカラ値の3次元格子状配列として与えられたボリュームデータから等値面を構成する手法は, 与えられたしきい値に応じて格子点間に線形補間点を計算し, それらの補間点を適当に連結して得られる三角形パッチの集まりとして等値面を近似するという方法がほとんどである. 本論文では理論的にもコーディング的にも簡潔で, 高速かつ正確に等値面を構成する方法として, ボリュームの各単位格子を構成する八つのボクセル値の3重線形補間によって得られる3次曲面を直接構成し, 滑らかに陰影付けする手法を提案する.
著者
石川 聖二 竹田 照人 加藤 清史 後藤 昌昭 野口 信宏 香月 武
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-2, 情報・システム 2-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.80, no.10, pp.2655-2662, 1997-10-25
参考文献数
12
被引用文献数
7

本論文は, 対称に近い非対称形(潜在的対称形)の解析法と, 人の頭蓋骨の非対称性解析への本法の応用について述べている. 形の対称性は物体の著しい形状的特徴であり,それをコンピュータで認識する意義は大きい. しかし, 完全な対称形を解析する手法は数多く提案されているが, 潜在的対称形の解析法はほとんど研究されていない. 本論文では, 面対称に注目し, 鏡映対称像を利用して, 潜在的面対称形に潜在的対称面を設定する手法を提案する. 次に本手法を用いて, 人体頭部のCTデータから復元される頭蓋骨上に潜在的対称面を設定し, その面の左右の非対称部位の抽出を行い, 非対称の程度の数量化を試みる. このような頭蓋骨の形状解析法は, 口腔外科のように頭蓋顔面領域の疾患を治療する領域で有益な手段を与える. 提案法を合成データおよび頭蓋骨データに適用し, 良好な結果を得た.
著者
竹上 健 後藤 敏行 大山 玄
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.J86-D2, no.2, pp.252-261, 2003-02-01

赤外線眼球運動観測装置などで観測された,頭部とカメラの相対位置が変化しない眼球画像において,瞳孔像を高精度に検出する手法について提案する.眼球の形状を球,瞳孔の輪郭を円とみなすと,瞳孔は眼球の動きに伴って見えの形状が楕円となる.この楕円形状をした瞳孔像の検出精度を高めることで安定した視線方向検出が可能となる.楕円を検出するには様々な手法が提案されており,その一つとしてハフ変換がある.ハフ変換は雑音や隠蔽などの影響を受けにくいという特徴を有しているが,一般の楕円検出では,決定すべきパラメータの自由度は5次元となるために,演算量やメモリ要求量が問題となる.一方,瞳孔は眼球中心を基準として回転するために,観測される瞳孔像は一般の楕円形状とならずに,眼球中心からの位置と方向に依存する.本論文では,この拘束条件を利用して,高精度に瞳孔を検出するための眼球モデルをベースとしたアルゴリズムについて述べる.そのアルゴリズムでは,システム全体の処理効率を考慮して,まず複数の観測画像からエッジに基づく楕円フィットによる瞳孔の初期検出を行い,それらの結果に基づいて眼球モデルのパラメータを推定する.その後,その眼球パラメータに基づいてハフ変換を行うことにより,瞳孔輪郭を高精度に再検出する.実験の結果,瞳孔輪郭検出の精度と安定性が向上しており,提案手法が有効であることが確認できた.
著者
伴野 明 岸野 文郎
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.J75-D2, no.5, pp.861-872, 1992-05-25

顔の向きや視線の検出を将来のインタフェースの基本機能と位置付け,これらを画像処理を用いて検出するアルゴリズムを開発した.この手法では,利用者の頭部の自由な動きを許容し,また,注視点検出に必要なパラメータ(眼球中心位置)を推計により求める際,利用者に提示する指標数を少なくして使いやすくすることをねらいとしている.まず,顔の3点と瞳孔の空間位置をステレオ画像計測により求める.次に,利用者が指標を注視しているときのこれら特徴点の位置情報を用いて,眼球中心を推計し,これと瞳孔を結ぶ線を視線と近似して求める.本アルゴリズムの検出精度に影響する要因としては,ステレオ画像計測の精度,固視微動,および推計時の指標提示方法などが考えられる.そこで,これらをパラメータとして,眼球中心推計精度,注視点検出精度を計算機シミュレーションにより求めた.眼球中心の推計では,指標パターンの寸法と指標の提示回数が精度に大きく影響する.眼を大きく回転させる5点程度の指標パターンを用いると,精度の良い推計ができる.特徴点の位置計測誤差と注視点検出精度との関係についても求め,モデル実験の結果と比較した.
著者
竹上 健 後藤 敏行 大山 玄
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.J84-D2, no.8, pp.1580-1588, 2001-08-01

赤外線眼球運動観測装置などで観測した頭部とカメラの相対位置が変化しない眼球画像を対象として,被験者に特定の指標を固視させるキャリブレーションを回避し,入力の時系列画像だけを用いて自動的にキャリブレーションを進める簡便かつ高精度な視線方向検出法を提案する.カメラとの相対位置が変化しない眼球画像には,瞳孔の中心座標と扁平率という視線方向を推定するための二つのキューがある.本手法は,絶対方向の推定が可能であるが検出精度や安定性に問題がある扁平率の情報を複数の画像フレームにわたって観測することにより,眼球の回転半径や回転中心などの眼球パラメータを校正することで,安定な視線方向検出を可能にするものである.実際の眼球画像を用いて評価実験を行った結果,偏平率に基づく視線方向の推定と比較して高精度な計測が可能になり,本手法の有効性を確認した.
著者
金子 拓也
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.88, no.4, pp.675-686, 2005-04-01
参考文献数
12

本論文は, データに含まれる欠損値の対処に際し, 有力な補完方法を提案するものである.この提案する補完方法は, 実際のデータを用いた数値実験から, いくつかの既存法よりも, 判定精度, 平均対数ゆう度の二つの観点から最も優れた対処法であることが確認された.理論的な背景は, この補完法が, 欠損ではないデータの内部的な構造に依存せずに処置を施すためである.これによって, 学習用データに対するオーバフィットを回避し, 結果として実証用データに対しても判定精度の高いモデルを構築することが可能となった.本論文の構成は, まず, 削除法, 平均値補完法, k-NN法, 重み付きk-NN法, の既存4手法と, 提案する新しい手法の概要を紹介する.次に欠損値をもたない実際の医療データに対し, 様々な割合で任意の位置に故意に欠損を発生させ, 先に紹介した5手法によりデータを整備する.そしてこれらのデータに基づいてモデルを構築し, 判定精度, 平均対数ゆう度の二つの観点から5手法の有効性を判定する.最後に, これらの結果が得られた理論背景について各手法の特性を比較しながら検討するという内容となっている.
著者
佐藤 誠 平田 幸広 河原田 弘
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.J74-D2, no.7, pp.887-894, 1991-07-25

計算機上での3次元形状モデリングを効率よく行うためのヒューマンインタフェースを実現するには,実際の3次元物体と同じように形状モデルを直接に操作できるような環境を構成することが必要である.このような環境を仮想作業空間と呼ぶ.人間が手を用いて物体を操作する場合,視覚や触覚・力覚などの感覚を無意識のうちに用いている.仮想作業空間を構成するためには,これらの感覚情報を人間に対して統合的に与えることが重要である.そしてこれらはすべて計算機処理により人工的に生成する必要がある.以上のことに基づき,本論文では,仮想作業空間を構成するために必要な入出力装置として,空間インタフェース装置SPIDARを新たに提案する.この装置は,指先の位置情報を得ることができると共に,指先に力覚情報を与えることができる.このSPIDARを用いて3次元形状の生成・加工のための仮想作業空間を構成する.そして,この仮想作業空間での3次元形状の直接操作性に対する力覚情報の効果を調べる実験を行い,その有効性を確認する.
著者
安本 護 池田 尚志 堀井 洋
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.J80-D2, no.11, pp.2930-2939, 1997-11-25

パーソナルコンピュータや日本語ワープロを用いた文書作成において,ユーザ自身の個性的なフォントを使いたいという要求が潜在している.ところが,日本語文書の表現には数千もの文字が必要であるため,個人でフォントを登録することは困難である.本論文では,少数の手書き入力文字をもとにユーザの個性を反映した手書き風フォント一式を生成する手法を提案する.この手法は,複数の人が筆記した手書き文字データを基準パターンとし,これに非線形の幾何学的変形を加えた後,線形結合して手書き風文字の生成を行うものである.大域的個人性を表現する非線形変換のパラメータと局所的個人性を表現する線形結合のパラメータは少数のユーザ手書き文字から決定する.また,これら二つの個人性を個別に調整するパラメータを導入し,ユーザによる個人性制御も可能とした.文字間距離に基づく客観的評価と19名の被験者による主観的評価の結果,ユーザの個人性を反映した手書き風文字が生成できることが確認できた.
著者
青木 一真 黒柳 奨 クグレ マウリシオ ヌグロホ アント サトリヨ 岩田 彰
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 = The transactions of the Institute of Electronics, Information and Communication Engineers. D-II (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.88, no.12, pp.2291-2300, 2005-12-01
参考文献数
12
被引用文献数
4

本論文ではSVMにおけるマージンをベースとした特徴選択手法を提案する.しかし一般的なマージン(Normal Marginと呼ぶことにする)の場合,マージンの大きさとSVMの学習により得られる識別関数の良さが適切に対応しない場合があることが明らかとなった.すなわち,Normal Marginを評価値とした特徴選択を行って得られた特徴セットが,必ずしも最良の識別関数を与えるとは限らない.そこでこの問題を解決するために Confident Margin(CM)という新しい評価基準を導入し,それを用いた特徴選択アルゴリズム SBS-CM を提案する. SBS-CM による人工データや実データを用いた実験を行った結果,従来手法よりも良い結果を得ることができた.また評価値CMの値の変化から最適な特徴セットをおおよそ求めることが可能であった.
著者
川村 春美 乾 敏郎 鈴木 智 徳永 幸生
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-2, 情報・システム 2-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.80, no.5, pp.1046-1056, 1997-05-25
参考文献数
7
被引用文献数
5

カラー画像から, 照明光の色を推定する手法の一つに, 物体の平均の色が灰色であると仮定(灰色仮説)し, 画像の平均の色を照明光の色として推定する手法がある. この手法は, 照明光の推定値が物体の平均の色に依存するため, 仮説が成り立たない場合, 推定精度が低下することが問題であった. 本論文では, 相異なる照明光下における共通物体からの反射光の平均の色が, 黒体放射軌跡上にある場合に, 灰色仮説が局所的に成立すること, および, その場合に, 共通物体からの反射光の平均を照明光の色として推定できることを示す. 更に反射光の平均と照明光の色とが知覚的に同一である場合の照明光推定の方法および実験結果を示す. また, 相異なる複数物体における反射光の中から灰色仮説が成立するような色の組合せを選択する方法も示す
著者
森山 剛 斎藤 英雄 小沢 慎治
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.J82-D2, no.4, pp.703-711, 1999-04-25

本論文では,感情を含むことによって音声に生ずる物理的変動と,そこから 知覚される感情とを線形に対応づけるモデルを提案する. 本モデルでは,日常の感情語と物理パラメータを直接対応づける代わりに, それぞれから抽出した物理的基底及び心理的基底を対応付けに用いている ため,感情語や物理パラメータの選び方に依存しないという特長を有する. また,話し手の抱いた感情ではなく聞き手側に存在する感情のステレオタイプ を基準とすることで,感情を可観測で一般性を有するものとしている. 本研究では統計的な手法を用い,まず種々の感情が含まれた音声の韻律 パラメータと心理実験によって得た主観評価値を用いて,それぞれ物理的 基底(主成分)及び心理的基底(因子)を求めた. 更にこれらの基底空間に写像した物理量及び心理量に重回帰分析を施す ことにより,音声の物理量と感情を双方向に変換することの可能な対応情報 を獲得した.
著者
住谷 正夫 安久 正紘
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.J80-D2, no.9, pp.2556-2564, 1997-09-25

K. L展開の手法を用いて,安静状態,音楽聴取時のリラックスした状態と不快な音(雑音等)による心理的ストレス負荷状態での脳波を,音刺激開始後の約2分間のα波の変化に着目して短時間での快・不快の解析を試みている.頭皮上の16箇所から同時測定された脳波のα波帯域(8~13Hz)の脳波をK. L展開を用いて16軸の固有ベクトルに分解し,それぞれのベクトル方向とその固有値の寄与率の変化について検討している.その結果,固有値の大きい三つの固有ベクトルの寄与率の合計が全体の96%程度を示し,寄与率の大きな順に並べた第1ベクトルから第3ベクトルが,各被験者で,安静状態やさまざまな音刺激状態にかかわらず安定しており,各被験者の脳波パターンを表現する座標系として有効であることを見出している.次に,第1ベクトルの方向の違いを用いてA,Bの二つのグループに分けて,各刺激による各固有値の寄与率の変化を解析した.その結果,Bのグループで音楽を聞かせた状態において,不快な音刺激に比べ第1ベクトルの固有値の寄与率が有意に減少し,第2ベクトルの固有値の寄与率が有意に増大することを見出している.更に,第1ベクトルと第2ベクトルの寄与率の差によって,心理的ストレス状態の違いをより大きな有意な変化としてとらえることができることを示している.また,被験者全員の解析においても有意な差として同じ結果になることを見出している.更に,Aグループでも同じような傾向があることを見出している.
著者
疋田 真一 笠井 健
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 = The transactions of the Institute of Electronics, Information and Communication Engineers. D-II (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.85, no.6, pp.1114-1123, 2002-06-01
参考文献数
16
被引用文献数
3

視覚目標注視中に頭部が左右に運動すると,前庭性の補償性眼球運動(LVOR)に続いて視覚による追従性眼球運動(パシュート)が起こり,視覚の安定化が図られる,これら二つの眼球運動系の相互干渉の機構を明らかにするため,頭を突然左右に加速する刺激を与え,視覚目標ありの場合と消えた目標を想起したときのLVORの速度,及び頭を静止させ目標のみを動かしたときのパシュート速度を調べた.LVORの潜時はパシュートに比べて有意に短く,目標の有無はLVORの潜時に影響を与えなかった.しかしながら,パシュート系が働き始める時刻以降は,視覚のフィードバックによりLVORの速度に大きな違い(視覚目標あり>目標想起)が現れた.並進運動中のゲイン(眼球速度/目標の相対速度)は,視覚目標ありのLVORが最も大きく,パシュート,目標想起のLVORの順に小さくなった一また,頭の運動開始直後の時間帯(〜216ms)について,目標を想起したときのLVORとパシュート速度の和は,目標ありのLVORの速度にほぼ一致した.これらの知見は,otolith系とパシュート系のそれぞれの中枢で生成された信号が重畳されて最終的な眼球運動指令がつくられていることを示唆する.
著者
野添 潤一 五味 裕章 党 建武 本多 清志
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 = The transactions of the Institute of Electronics, Information and Communication Engineers. D-II (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.88, no.9, pp.1944-1953, 2005-09-01
参考文献数
21
被引用文献数
7

人は, 舌・顎・唇などの複数の調音器官を巧みに操ることで発話を行っている. 特に, 唇は舌と並んで, 柔軟な変形や微妙なせばめを実現し, 音声の共鳴を制御している. 本研究では, この発話時における口唇形状の形成メカニズムを構成的に探るため, MRIデータから唇, 上・下顎などの器官及び口唇周囲筋の構造データを抽出し, 3Dばね-ダンパ-マス系及び筋収縮ダイナミックスモデルを用いて口唇の力学モデルを構築した. 特に口輪筋は, 従来から知られている機能的4分割に加え, 口輪筋辺縁部と周辺部に分割し, それらの詳細な形状をモデルに反映させた. その結果, それらの筋の部分的収縮により, 唇の突出しやすぼめなどの様々な発声に必要な豊かな口唇形状形成が可能になることを示した.
著者
伊藤 彰則 牧野 正三 城戸 健一
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.J74-D2, no.9, pp.1147-1155, 1991-09-25

連続音声認識のための新しい統語処理アルゴリズム「機能語予測CYK法」について述べる.機能語予測CYK法は,CYK法をベースとし,これに機能語の予測機能を加えたものである.機能語を予測しながらマッチングすることにより,効率的な処理を行うことができる.次に,この機能語予測CYK法にビームサーチを導入したアルゴリズムを提案する.また,機能語を効率良く予測するための正規文法(機能語オートマトン)を導入する.これは,従来の文節処理に用いられてきた有限オートマトンと同じものが使用できるため,文節内文法での各種の制約が利用できる.ビームサーチと機能語オートマトンの導入によって,非終端記号数の増加に伴う記憶容量および計算量の増加を抑えることができる.このビームサーチを用いた機能語予測CYK法と,文節検出+統語処理の2段階の認識方式との比較実験を行った結果,計算量・精度ともに機能語予測CYK法が優れていることがわかった.