著者
辛 徳 嶋田 修 佐藤 誠 小池 康晴
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.87, no.9, pp.1860-1869, 2004-09-01
被引用文献数
12 3

これまで,人腕のインピーダンスは,マニピュランダムにより摂動を与えることで計測されてきた.これらの実験結果はいずれも摂動区間の平均値なので,時間に対して連続的に変化するスティフネスは測定不可能であり,その摂動区間以外には測定できない.更に,このような摂動実験環境では運動中や接触作業中の変化するスティフネス特性を解析することは難しい.そこで,本研究では表面筋電信号を運動指令とする筋肉骨格系のモデルを作成して,このモデルから直接スティフネスを推定する方法を提案する.このモデルは筋肉の長さの変化項及び筋肉の硬さの変化項を線形関数で表現し,関節トルクを運動指令に関して2次まで表現した.そして,このモデルのパラメータは,筋電信号と力センサから計測した関節トルクを用いて最小二乗法により求めた.その結果,パラメータの推定に使用していないデータに関しても関節トルクを推定できるようになり,スティフネスの連続的な変化値やスティフネス楕円体を推定することができた.
著者
松井 利一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.79, no.5, pp.889-898, 1996-05-25
被引用文献数
24 5

視覚系の基本現象(ボケと視野の相互依存作用)に着目して定式化した視覚モデルは, 提示画像の性質や提示条件に依存して変化する視覚系の視知覚応答特性を正確かつ定量的に再現する能力をもっている. しかし, 今の視覚モデルそのままでは画面サイズに依存してコントラスト感度特性が変形する視覚現象の理論的再現は困難であり, 視覚系の他の基本的特性を導入し, より汎用的なモデルに拡張する必要がある. 本論文では, 視覚系の一つの基本的特性として, 空間周波数弁別能力の限界(空間周波数弁別不可能領域の存在)という画面サイズ依存特性とは一見何の関係もなさそうに見える特性に着目し, この特性を視覚モデルに導入すれば画面サイズ依存特性に関しても理論的に再現可能な視覚モデルに拡張でき, 実測結果ともよく一致するようになることを示す. また, シミュレーションから得られた空間周波数弁別不可能領域の理論幅と実測で得られている値とが同程度であることからも, 画面サイズ依存特性が空間周波数弁別能力の限界により生じている可能性が強いと判断できる.
著者
赤穂 昭太郎
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.86, no.7, pp.934-942, 2003-07-01
被引用文献数
12

オリジナルのSVMでは特徴空間(ヒルベルト空間)でのマージンを最大にする識別面を求めるが,本論文では入力空間でのマージンを最大にする枠組みについて考察する.この枠組みは特に,事前知識が入力空間の計量として埋め込まれているような場合に有効と考えられる.本論文でとるアプローチでは,入力空間のマージンをテイラー展開によって近似することが本質的である.得られるアルゴリズムは,ニュートン法的にサンプル点から識別面へ射影を求めるステップと凸2次計画によって識別空間のパラメータを定めるステップからなる交互最適化の一種となる.アルゴリズムは比較的緩やかな条件で安定に局所最適解に収束する.また,解くべき最適化問題はオリジナルのSVMを特殊な場合として含む.ただし,提案アルゴリズムは入力空間の次元が高くなるにつれて計算量が多くかかるため,オリジナルのSVMと提案アルゴリズムを折衷した簡略化アルゴリズムも示す.
著者
川崎 順治 飯島 泰蔵
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.80, no.6, pp.1333-1342, 1997-06-25
被引用文献数
24 4

私たちがものを見るとき, 特に細かい部分に注目しない限り, まず対象全体を大まかにとらえている. 例えば, 1画素ごとには白黒の2値画像を見ても距離をおいて全体を眺めると, もとの鮮明な画像に近い擬似濃淡画像を認識できる経験をしている. 本論文の目的は, このように情報処理が自然に行われ, 画像を強調してより鮮明に見える視覚モデルを構築することである. 我々は今までに, 外界・網膜・脳を通じて階層的に行われる視覚モデルを定式化した. 本論文では外界からの入力画像のパルス密度変調されたディジタル画像が, 方形画像と余弦画像と三角画像の精度の良いアナログ画像に復元できたシミュレーションの結果を示す. 次に, 任意の画像の復元を求めるために, パルス間隔が最も疎となる間隔で等間隔に並べた方形画像の最良近似項Moを用いる等価近似法を提案する. この方法によって良好な復元画像が求まり, 等価近似法の有効性が明らかになった. 以上のことにより, 1次元視覚モデルが構築できたと考えている.
著者
近藤 拓也 山際 貴志 山中 光司 山本 正信
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.80, no.1, pp.247-255, 1997-01-25
被引用文献数
27

これまでの動画像の解析では, 連続する画像間の対応付けに始まり, もっぱら対象の運動パラメータや3次元情報といった物理的・幾何学的情報の抽出が中心課題であった. これに対して, 我々は人間の動作について「上手である」とか「美しい」とかの印象を定量的に把握することを目指している. 本論文ではスキーにおける滑りを取り上げ, 滑りの動画像を解析することにより, 滑りの上手さを判定することを試みた. 実際, 動画像から得られた動作の運動パラメータから, 動作の対称性や滑らかさなど動作の特徴を抽出した. これらの特徴を用いて滑りの上手さを判定することができた. この判定結果は, 同じ動作を観察したときの人間の受ける印象と一致している.
著者
杉本 和英 富田 文明
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.76, no.3, pp.524-533, 1993-03-25
被引用文献数
11 3

ステレオは,テクスチャのある面やシェージングのある曲面を復元することはできるが,多くの人工物がそうであるように,一様な平面で構成された物体に対しては,その境界線を検出できても特徴のない面の内部を直接対応によって復元することはできない問題がある.従って,境界線の復元の後,面を復元する処理が必要となる.しかし,物体の輪郭線と稜線を区別しない単純な面内挿アルゴリズムでは,偽の面を生成してしまう.そこで,本論文では,この面の復元問題を解決するために,ステレオ画像の境界表現の対応から得られる物体の3次元境界線の構造から,一意的に存在可能な面を決定する方法について述べる.本方法は,平面で構成された物体すべてに対して有効であり,面上に模様や影があっても構わない.また,欠損があるために面を一意的に決定できない境界線を局所的に区別することができ,それを補償するように後の観測にゆだねることが可能となる.そして,結果として,物体/環境の幾何モデル(境界表現)が得られる.
著者
呉 海元 陳 謙 谷内田 正彦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.80, no.7, pp.1774-1785, 1997-07-25
被引用文献数
35 8

本論文は, ファジイパターン照合による色彩画像から個数, サイズ, 位置, 姿勢が未知である顔の検出法を提案する. 本手法では, まず色情報をFarnsworthが提案した均等知覚色空間で表現し, 多種多様な環境で撮影された多数の顔画像より, その色空間における肌の色の分布と髪の色の分布を調べて, 肌の色および髪の色を表現できるモデルを構築する. 次にそれらを用いて, 入力画像から肌色らしい領域と髪色らしい領域を抽出し, 前もって用意された5種類の頭部形状モデルの大きさを変化させながら, 我々が提案したファジイパターン照合の手法により, 顔候補を検出する. 実験から, 複雑な背景をもつ室内および屋外シーンの場合でも, 複数の人が存在する場合でも顔が正確に抽出できることが確認でき, 本手法の有効性が示された.
著者
上條 俊介 松下 康之 池内 克史 坂内 正夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.83, no.12, pp.2597-2609, 2000-12-25
被引用文献数
51

画像上での車両のトラッキングは, 画像処理をITSにおける事故などの異常事象検出に適用するための基礎技術として重要である.しかし, 車両トラッキングでは, 従来から最も困難な課題の一つとしてオクルージョンの問題があり, 安定したトラッキングを実現することが困難な状況であった.特に, 我々の研究では大きな交差点を対象としているため, 平均20台程度の様々な大きさ, 形状の車両が様々な動きをし, オクルージョンも様々な条件で生じる.こういった状況でのトラッキングには, 従来の直線走行や空いている状況に適用していた.線形軌道予測や車両形状モデルを仮定するものとは異なるパラダイムが必要とされる.この問題を解決するために, 我々はMarkov Random Fieldモデルを時空間画像に拡張適用し, 1枚の画像中のみならず, 時空間画像中の隣接した画像同士でテクスチャの相関や移動物体軌跡の連結の確からしさを評価するアルゴリズムを考案した.更に, この時空間MRFでの表された画像のエネルギー分布を確率緩和過程で最適化した結果, 様々な状況でのオクルージョンに対しロバストなトラッキングが可能となった.この時空間MRFを混雑状況での約25分間の交差点画像に適用し, 3214台の通貨車両をトラックした.その結果, オクルージョンが生じていない車両に関しては99%以上の確率でトラッキングが成功し, オクルージョンを生じている541台に対しては95%程度の確率で複数台の車両を分離したトラッキングに成功した.このアルゴリズムでは, 車両形状モデルなども仮定せず, 濃淡画像から得られる情報のみを用いることで実現できるため汎用性が高く, また安定性も高いことから, 交差点における事故検出などへの応用が期待される.
著者
森 偉明 鈴木 智 安野 貴之 堀越 力
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.78, no.3, pp.409-419, 1995-03-25
被引用文献数
8

3次元物体を認識する際,階層的にマッチングしていくのが最も効率的である.従来,詳細な3次元構造を抽出した後,わざわざそれを粗くすることによって階層的な構造を作ることがよく行われている.しかし,最初に詳細な3次元構造を得るのは非常に困難であり,かつ大量な計算が必要であるため,このようなアプローチは極めて非効率である.本論文では,まず,直接に粗い3次元構造から順次に多重スケール3次元構造を抽出できる手法を提案する.物体が存在する空間を最初に粗いボクセルに分割し,カメラのレンズ中心と画像上の特徴点を結んだ逆投影線の通るボクセルに対してある値を加算するという3Dボーティングを行う.加算値の高いボクセルは実際に3次元特徴点が存在する領域として抽出する.更に,3次元特徴点が存在するボクセルを再分割し,3Dボーティングを行うことを繰り返すことによって,効率的に粗いボクセルから細かいボクセルまでの物体の階層的な構造を抽出できる.次に,本論文では,画像上の特徴点の位置ずれとカメラレンズ中心の位置ずれによる3Dボーティングへの影響を解析する.そして,これらの誤差の影響を抑えるために,3Dボーティング後のボクセル空間に対して◸^2Gフィルタを掛けることが有効であることを示す.提案した手法を実画像に適用した結果では,複雑なシーンの6枚の画像から正確に階層的な3次元構造を抽出できた.
著者
辻 敏雄 吉田 靖夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.85, no.3, pp.406-415, 2002-03-01
被引用文献数
6 4

この論文はスペクトルモーメントを用いてテクスチャ平面の回転と傾き角を検出する方法を述べる.テクスチャ平面が回転し,傾くと,その角度に応じて画像の2次元パワースペクトルが変化し,スペクトルモーメントも変化する.標準のテクスチャ平面と角度検出されるテクスチャ平面のスペクトルモーメントを比較すれば,その角度依存性からテクスチャ平面の回転と傾き角を検出することが可能となる.Brodatzのアルバムより取り出したテクスチャ平面画像によるシミュレーション実験とCCDカメラでとらえた実画像による実験を行い,この方法の有効性を示す.
著者
佐賀 聡人 牧野 宏美 佐々木 淳一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.77, no.8, pp.1610-1619, 1994-08-25
被引用文献数
24 9

本論文では,ペン入力システム上での手書きによる直接的な図形入力ヒューマンインタフェースを実現するための基礎技術として,手書き描画動作をあいまいな曲線としてモデル化する手法「ファジースプライン補間法」を提案している.本手法によって得られるあいまいな曲線のモデル「ファジースプライン曲線」は,曲線の幾何モデルとして有用なスプライン曲線をファジー理論に基づいて拡張することによって定義され,幾何学的な取扱いとファジー集合としての取扱いが同時に可能な手書き曲線の内部表現モデルを与える.従ってこれは,書き手の本来意図した理想的な曲線を必ずしも忠実に表していない手書き曲線をもとにして書き手の意図の幾何学的な意味を推論する問題を考える場合の基礎を与える.本論文の後半ではファジースプライン補間法の一応用として,一筆書きされた手書き曲線を書き手の意図したストロークごとに分割する手法を提案し,本手法の必要性を実験的に示す.
著者
塩 昭夫 青木 康浩
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.82, no.3, pp.431-439, 1999-03-25
被引用文献数
5 2

定規などを用いずに手書きされた建築間取り図面を, スキャナから読み取って認識し, 建具, 収納, 階段などの建築要素に自動変換するシステム(Sketch Plan)を開発した. 本論文では, このシステムの入力条件, 図面認識/理解処理アルゴリズム, 及びシステム評価の結果について述べる. 筆記変動を含む手書き図面を自動認識するため, 図面上の線分情報と領域情報を独立に処理し, それらの結果を統合する独自の図面認識処理アルゴリズムを考案した. このアルゴリズムを実際の手書き間取り図面を用いて評価した結果, 認識率93%を得た. また, 認識結果の確認・修正も含めた図面入力時間を実測した結果, マウスを用いたマニュアル入力の約1/9になることがわかった.
著者
浅海 賢一 竹内 章 大槻 説乎
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.J80-D2, no.10, pp.2848-2859, 1997-10-25

本論文では,物理量間の因果関係について学習者と対話を行うことにより,物理則を系に適用したり物理量の系における役割を理解する訓練を行うための学習支援方法について述べる.ある物理量が他の物理量へ与える影響を因果関係として導出するために,定性推論の一手法である比較推論を用いる.比較推論で求めた因果の連鎖と学習者モデルに基づいて,適切な話題を選定したり,因果をたどる方向を決定したり,因果の概略から詳細へ誘導するための対話戦略を提案する.また学習者の因果関係についての説明が完全でない場合,もとの系と類似の系を対比させることにより,学習者自らに因果関係を発見させる方法について提案する.
著者
岡 隆一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 = The transactions of the Institute of Electronics, Information and Communication Engineers (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.76, no.5, pp.921-931, 1993-05-25
被引用文献数
9

本論文は文スポッテングに基づく不特定話者を対象とした連続音声認識系を提案する.系は,(1)3連続音素片標準パターンの作成,(2)音素片のネットワークによる文集合の記述,(3)「部分整合法」と「ベクトル連続DP」による文スポッティングの三つの部分からなる.OPEN話者10名が各人11文,計110文(平均単語分岐数は4.1,単語数113のタスク)を発声した文スポッティング認識実験で,文認識率76.4%(文中の単語認識率94.5%)を得ている.この系は3連続音素片標準パターンを492種類のバランス単語セットのみで作り,連続音声による学習を行っていない.系は波形分析から文スポッティング出力まで完全にフレーム同期となっている.
著者
水上 嘉樹 古賀 和利 鳥岡 豊士
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.80, no.1, pp.63-72, 1997-01-25
被引用文献数
22

本研究では階層的変位抽出アルゴリズムを用いてパターン間の対応変位を抽出し, 得られた変位関数に基づいた認識を行う手書き文字認識システムを提案する.階層的変位抽出アルゴリズムにおいては,計算対象画像間の対応誤差を表す項と抽出された変位の滑らかさを表す制約項からなるエネルギー汎関数を定義し, これより導出されるGauss-Seidel型の漸化式の反復演算によりパターン間の変形変位を抽出する. また, 大局的変位からより局所的な変位へと段階的な変位抽出を実現するために階層的構造を用いている. 文字パターンに対する階層的変位抽出アルゴリズムの妥当性, 提案した手法の認識性能を計算機実験により明らかにした. 更に, 類似パターン間の過対応が良好な認識を妨げることを考慮して, 変位抽出能力の大きさと認識性能の関係について検討を行い, 変位抽出能力を決定するシステムパラメータの与え方について一考察を与える.
著者
木竜 徹 加藤 元樹 斉藤 義明 Kiryu Tohru Katoh Motoki Saitoh Yoshiaki
出版者
電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D-2 情報・システム (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.73, no.10, pp.p1779-1785, 1990-10
被引用文献数
5 3

誘発波は生体システムのインパルスレスポンスであり,神経系の状態を探る貴重な情報源として種々の研究に使われている.本論文では疲労時の誘発筋電図に着目し,その詳細な解析により筋疲労機序の解明を試みる.従来,筋疲労は一定負荷時の表面筋電図に見られるパワースペクトルの低域化のみで特徴づけられ,種々の生理的要因が報告されている.誘発筋電図は一定負荷時よりも活動している筋線維の数が多く,しかも疲労しやすいFT(fast twitch)系筋線維の活動が顕著である.従って,早期に疲労の兆候が現れる可能性がある.これまで誘発波はその形状,生成過程ゆえに,種々の工学的波形解析法が試みられてきた.しかし,その範ちゅうは時不変,線形システムであることが多く,本研究の対象には合わない.本論文では一定負荷状態を持続しながら,疲労に至る過程で外部刺激による誘発筋電図を繰り返し計測し,これらの波形に対し,興奮電位の伝導速度をDPマッチングパス,また筋線維組成にかかわる活動レベルを瞬時周波数パターンで詳細に解析する.その結果,瞬時周波数パターンに2段階の変化が観察でき,シミュレーションによれば,FT系筋線維の活動停止が伝導速度の低下よりも早期に現れているものと思われた.
著者
佐藤 雄隆 金子 俊一 丹羽 義典 山本 和彦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.86, no.5, pp.616-624, 2003-05-01
被引用文献数
60 32

本論文では,背景画像を用いて出現物体を背景から分離するための新しいアルゴリズムについて報告する。従来,単純背景差分は処理コストの低さやインブリメントの容易さから広く用いられてきた。しかし,対象と背景の明度パターンのみに依存する方法であるため,明度の不良条件に対する耐性が低い,対象と背景の明度か近い部位が検出されない,などの問題があった。本論文ではこれらの問題を解決するために,新しいフィルタ処理Radial Reach Filter (RRF)を提案する。そこにおいて我々は,背景画像と対象画像との間の類似部分と非類似部分を画素ごとに判定するための新しい統計量Radial Reach Correlation (RRC)を定義し,明度変動の影響を抑えながら画素単位の分解能で局所的なテクスチヤを評価する。また,RRCでは背景画像の局所的な特性に依存して適応的に定義域を調整するメカニズムを導入することによって,情景内の多様な背景や出現物体に対処することを可能としている。理論的検討及び実画像を用いた実験を行い,手法の有効性を示す。
著者
竹内 亮 MacKay David J.C. 中沢 進 松本 隆
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.80, no.9, pp.2502-2511, 1997-09-25
被引用文献数
6 2

正則化とは, 適当に重み付けされた拘束条件(regularizer)を付加することにより, 逆問題の不良設定性を解消する手法である. 正則化をベイズ推定の枠組みでとらえる際生じる周辺ゆう度の微分公式とregularizer比較(モデル比較)の陽な公式を与え, 数値実験でその有効性を示す.
著者
井ノ上 直己 帆足 啓一郎 橋本 和夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.84, no.6, pp.1158-1166, 2001-06-01
被引用文献数
5

学校などの教育現場へインターネットが普及するにつれ, インターネット上の有害情報へのアクセスが問題となる.この問題に対処するため, 既にいくつかのフィルタリングソフトウェアが開発されているが, これらの多くのソフトはアクセスを制限すべきURLを登録したリストを用い, このリスト中のURLへのアクセスを制限する方式を採用している.しかし, URLは頻繁に変動するため, この方式ではリストの変更が間に合わないという問題がある.そこで, 筆者らは, コンテンツ内に出現する単語の分布を調査し, 自動的に有害か否かを判定してアクセスを制御するソフトウェアを開発した.本論文では, 開発したソフトウェアの概要を示すとともに, 当研究所の位置する上福岡市の小中学校10校に導入して実施したフィールド試験結果について述べる.
著者
鈴木 敏 安藤 広志
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.79, no.7, pp.1291-1300, 1996-07-25
被引用文献数
11

本論文では2次元射影像のみから複数の3次元物体の認識・類別を行う神経回路モデルを提案する. 本モデルは複数のモジュールからなり, モジュール間で競合を行いながらそれぞれのモジュールで入力射影像の圧縮・復元を学習する. その結果, 各モジュールはそれぞれ一つの物体の射影像のみを復元できるようになり, その復元精度から物体の類別を行うことが可能となる. この過程では物体のラベル等の教師信号は不要である. 更に, 本モデルでは入力特徴を限定していない. すなわち, 入力情報を画像濃淡値としても, 各特徴点の座標としても同様のネットワーク構造で扱うことができる. 本論文では本モデルの詳細を説明すると共に, 計算機実験の結果も併せて提示する. この実験結果は, 視点方向によらない3次元物体の認識が教師信号なしに可能であり, 各モジュールの内部表現 (圧縮表現) は視点方向に等価であることを示している. これは2次元情報のみからの3次元情報の推定を意味している. また, 脳内の神経結合と比較して, 情報の圧縮・復元過程は二つの視覚領野間の双方向結合に, モジュール間の競合は視覚領野内の水平方向の結合に対応づけて考えることができる.