著者
桐田 忠昭
出版者
一般社団法人 日本口腔腫瘍学会
雑誌
日本口腔腫瘍学会誌 (ISSN:09155988)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.38-40, 2012-06-15 (Released:2012-08-01)
被引用文献数
1 1
著者
上田 倫弘 林 信 新山 宗 秦 浩信 今待 賢治
出版者
一般社団法人 日本口腔腫瘍学会
雑誌
日本口腔腫瘍学会誌 (ISSN:09155988)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.135-143, 2018
被引用文献数
1

日本において,ニボルマブはプラチナ抵抗性の再発・転移頭頸部癌に対する治療薬として使用が承認された。ランダム化,オープンラベル,第Ⅲ相試験であるチェックメイト141試験にてその有効性は示され,治験参加医師が選択した単剤化学療法剤よりも優れた全生存率が得られた。<br>しかし,一方では,免疫に関係した有害事象は深刻である。特にわれわれがこれまでに経験したことがないような免疫関連の炎症に伴う有害事象(irAEs)が大きな問題である。口腔外科医は免疫チェックポイント阻害薬を使用する治療では医療連携が必要不可欠である。特に重要である医療連携は,<br>1. 腫瘍内科との適格例の診断<br>2. 腫瘍内科との有害事象管理<br>3. 各臓器障害に関する専門各科への対診<br>4. 病勢については必ず自分自身で把握しておくことの以上である。<br>今後,進行頭頸部癌において免疫チェックポイント阻害薬と他の殺細胞性化学療法剤の併用療法(同時あるいは順序を決めて)が期待される。
著者
仁村 文和 丸山 哲昇 村橋 信 丸山 修幸 新崎 章
出版者
一般社団法人 日本口腔腫瘍学会
雑誌
日本口腔腫瘍学会誌 (ISSN:09155988)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.91-96, 2019
被引用文献数
2

骨髄異形成症候群は,造血幹細胞の異常により,血球3系統に量的および質的異形成を来した病態であり,白血病に移行しやすい。同疾患は悪性腫瘍に対する化学療法や放射線治療の後に発症することがあり,治療関連骨髄異形成症候群(therapy-related myelodysplastic syndrome,以下t-MDS)と呼ばれる。今回われわれは,舌扁平上皮癌患者に対して化学放射線療法後にt-MDSを発症した1症例を経験したので報告する。症例は52歳男性,舌癌(T4aN2bM0 stage Ⅳ)でTPF療法による導入化学療法後に手術を施行した。頸部転移リンパ節の節外浸潤を認めたため術後化学放射線療法を施行した。一次治療終了後から3年3か月後,t-MDSを発症し死亡した。化学療法および放射線療法を施行した口腔癌症例ではt-MDSの発症を考慮し,長期の経過観察が必要と考えられた。
著者
高木 潤吉 大関 悟 後藤 圭也 大石 正道 小林 家吉 藤村 義秀 本田 武司
出版者
一般社団法人 日本口腔腫瘍学会
雑誌
日本口腔腫瘍学会誌 (ISSN:09155988)
巻号頁・発行日
vol.10, no.3, pp.128-134, 1998

Polymorphous low-grade adenocarcinoma (以下PLGA) は口腔内, 主に口蓋に発生する小唾液腺癌である。本腫瘍は比較的均一な細胞からなるが, 組織像は多彩な浸潤増殖像を呈する。今回著者らは3例のPLGAを経験したので報告する。<BR>症例1ではPLGAは右側舌下面に発生し, 症例2, 3では口蓋に発生していた。症例1では右側顎下リンパ節への転移が認められたため, 舌部分切除術および肩甲舌骨筋上頸部郭清術を行った。症例2, 3では原発巣の切除のみが行われた。症例1は術後7年, 症例2は術後4年経過するが, 再発, 転移は認めていない。症例3は術後8か月で老衰のため死亡した。これらの症例の病理組織学的所見では, 細胞は小型から中型で, 均一な円形の核を有するものの, 充実性, 管腔状, 篩状, 梁状, 小葉状構造などの多彩な増殖像がみられた。分裂像はほとんど認められなかった。<BR>免疫組織学的所見では, 症例1ではcytokeratinとS-100蛋白が一部の細胞に陽性を示し, 症例2, 3ではcytokeratin, S-100蛋白, vimentin, actinが陽性を示した。carcinoembryonic antigenとepitherial membrane antigenは3症例とも陰性であった。
著者
桐田 忠昭 山川 延宏 上田 順宏 柳生 貴裕 上山 善弘 今田 光彦 今井 裕一郎
出版者
一般社団法人 日本口腔腫瘍学会
雑誌
日本口腔腫瘍学会誌 (ISSN:09155988)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.41-48, 2015-09-15 (Released:2015-10-06)
参考文献数
16
被引用文献数
1

われわれは,腫瘍切除後の下顎再建法の選択について,1997年1月から2012年12月までの症例と特に下顎区域切除後に腓骨皮弁で再建した症例については,1987年7月から2012年12月までの症例について検討を行った。われわれの下顎切除後の下顎再建についての再建方針は,以下の通りである。1.腫瘍の進展が軟組織進展が主で下顎骨欠損が骨高径の1/4~1/3未満で残存骨高径が少なくとも15mm以上と予想される場合は,歯槽骨再建,軟組織再建ともになし,もしくは軟組織再建のみ。2.欠損が下顎骨高径1/3以上1/2未満または残存骨高径が10mm以上15mm未満と予想される場合は,(半側)腓骨または半側橈骨付き前腕皮弁による歯槽骨再建と軟組織再建。3.欠損が1/2以上または残存骨高径が10mm未満または区域切除となる場合は,腓骨皮弁による歯槽骨再建と軟組織再建を行う。症例数は,それぞれ77症例および47症例についてであり,腫瘍切除後の下顎再建におけるわれわれの再建方針と再建法の選択について,その妥当性を検討した。
著者
佐藤 徹 石橋 克禮 成瀬 裕久 永盛 孝 山近 重生 浅田 洸一
出版者
一般社団法人 日本口腔腫瘍学会
雑誌
日本口腔腫瘍学会誌 (ISSN:09155988)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.95-100, 1994-08-25 (Released:2010-05-31)
参考文献数
14
被引用文献数
1

根尖病巣より発生したと思われる下顎骨中心性癌の1例を報告する。症例は48歳の日本人女性で, 左下唇の知覚異常を主訴に紹介来科した。左下顎小臼歯部から大臼歯部歯肉頬移行部に硬い腫瘤を触知するも, 口腔粘膜に異常は認めない。X線写真では5の根尖を中心に境界不明瞭な透過像を認める。紹介医にて撮影された6年4か月と3年4か月前のオルソパントモX線写真では, 同歯に根尖病巣と思われる境界明瞭な小透過像を認める。生検により扁平上皮癌の診断を得た。全身精査の結果, 他に原発巣が見あたらないため, 左下顎骨区域切除と全頸部郭清術を施行した。術後1年3か月で再発や転移の兆候はない。切除物の病理検索にて, 腫瘍は5の根尖周囲から頬側皮質骨を破壊して頬部軟組織に及んでいた。しかし粘膜上皮はまったく正常で, 深部の腫瘍と接している部分も認めなかった。組織学的には歯根嚢胞が存在した証拠は得られず, リンパ節転移はなかった。
著者
片倉 朗
出版者
一般社団法人 日本口腔腫瘍学会
雑誌
日本口腔腫瘍学会誌 (ISSN:09155988)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.197-206, 2016-12-15 (Released:2016-12-29)
参考文献数
17
被引用文献数
1

本学では地域の歯科医師会と共同した口腔がん検診事業を1990年から開始し,本年で25年が経過した。現在までに本学の3つの附属病院の口腔外科,歯科・口腔外科ならびに口腔がんセンターが協力して,連携する各地域の環境にあった口腔癌検診事業を継続的に行ってきた。1992年に千葉市歯科医師会と本格的に開始した口腔癌検診事業は2015年9月現在,千葉県,東京都,埼玉県の14の市に広がり,それぞれの地域性に合わせた形式で年1~3回の集団検診を行っている。1992年から2008年までの集団検診において千葉県全域では7,030名の検診を行った。その中で,口腔癌8名,前癌病変60名,検査または治療が必要な口腔粘膜疾患(良性腫瘍,扁平苔癬など)707名が抽出され,口腔癌の発見率は0.11%であった。この発見率は各年の累計でもほぼ同様であった。また,口腔癌検診の普及のために以下のことに取り組んできた。(1)市民への口腔癌の周知活動,(2)地域歯科医師会の会員をはじめとした一般の歯科医師への生涯教育活動,(3)行政への口腔癌の予防,早期発見の重要性の説明,(4)口腔癌スクリーニングのためのインフラの整備ならびに検査機器や検査方法の開発,などである。これらの活動の成果として,4つの市区では行政からの予算の補助によって恒常的に歯科診療所における任意型の検診を実施するに至った。
著者
上田 順宏 今井 裕一郎 後藤 安宣 青木 久美子 山川 延宏 井上 聡己 山本 一彦 川口 昌彦 桐田 忠昭
出版者
一般社団法人 日本口腔腫瘍学会
雑誌
日本口腔腫瘍学会誌 (ISSN:09155988)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.37-44, 2014-06-15 (Released:2014-07-25)
参考文献数
28

本研究の目的は,術後の消化管運動と栄養状態に対する大建中湯(DKT)の効果について検討することである。2008年3月から2013年5月の間に,進行口腔癌の切除後に生じる欠損部に対して遊離組織移植による即時再建術を施行した40例を対象とした。20例には術翌日からDKT 15g/dを投与した。他の20例はDKTを投与しない対照群とした。消化管機能として腸蠕動音,排ガスおよび排便の確認時期,経腸栄養(EN)の開始時期,術後2週の体重減少量および体重減少率について後向きに検討した。その結果,腸蠕動音(p<0.001),排ガス(p<0.005),ENの開始(p<0.01),排便(p<0.005)はDKT投与群で早期に確認された。また,術後2週の体重変化量(p<0.05),体重変化率(p<0.05)ともDKT投与群で有意に抑えられていた。術前化学放射線療法や手術侵襲は,これらの指標に影響を及ぼさなかった。以上の結果より,DKTは進行口腔癌患者における遊離組織移植による再建術後の消化管機能の改善と体重の維持に有用であることが示唆された。
著者
柴原 孝彦 森田 章介 杉原 一正 箕輪 和行 山口 朗 山田 隆文 野村 武史
出版者
Japanese Society of Oral Oncology
雑誌
日本口腔腫瘍学会誌 (ISSN:09155988)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.171-181, 2009-09-15
被引用文献数
7 6

1995年1月から2004年12月の10年間に本学会評議員が所属する61施設で,エナメル上皮腫と診断,治療された947症例に対してアンケートによる疫学的調査を実施した。性別は男性581例,女性366例であり,年代別にみると男性は20歳代で18.6%とピークを示し,女性では10歳代で23.2%とピークを示した。また部位では臼歯部が最も多く55.6%であった。臨床症状では疼痛が46.6%と最も多く,次いで腫脹が13.6%であった。エックス線所見は単房性が50.7%,多房性が40.4%であった。2005年のWHO歯原性腫瘍組織分類ではsolid/multicystic typeが74.5%と最も多く,次いでunicystic typeが17.0%,desmoplastic typeが4.1%,extraosseous/peripheral typeが3.0%であった。治療法では,顎骨保存療法(開窓145例15.9%,摘出開放創187例20.5%,摘出・掻爬289例31.8%を含む)が74.0%,顎骨切除療法が24.1%であった。
著者
石井 純一 八木原 一博 桂野 美貴 住本 和歌子 宮嶋 大輔 柳下 寿郎 出雲 俊之
出版者
Japanese Society of Oral Oncology
雑誌
日本口腔腫瘍学会誌 (ISSN:09155988)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.129-135, 2012-12-15
被引用文献数
6

舌癌の正確な切除のためには術前に腫瘍の進展範囲についての情報が必要である。進展範囲は生体と切除標本超音波像を用いて計測された。二つの超音波像における腫瘍の進展範囲に関して相違は認められなかった。しかし,生体の超音波像と病理標本における腫瘍の進展範囲とは有意な差があった(<i>p</i> < 0.05)。しかしながら,生体超音波像の進展範囲とヘマトキシリンエオジン染色病理組織標本との間には大きさに関して有意な相関関係があった(<i>p</i> < 0.01)。さらに,回帰分析によると生体超音波像の腫瘍の進展範囲から病理標本の腫瘍の進展範囲を正確に予測することができた(<i>R</i><sup>2</sup>:0.52~0.88)。<br>このように超音波検査で腫瘍の進展範囲を正確に把握することは舌癌の患者の外科切除を計画するための検査として有用な方法であることが示された。
著者
日本口腔腫瘍学会学術委員会
出版者
一般社団法人 日本口腔腫瘍学会
雑誌
日本口腔腫瘍学会誌 (ISSN:09155988)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.13-85, 2005-03-15 (Released:2010-05-31)
参考文献数
164
被引用文献数
10 12
著者
前田 顕之 大関 悟 有地 榮一郎 出雲 俊之 大鶴 洋 岡部 貞夫 小村 健 川辺 良一 桐田 忠昭 草間 幹夫 迫田 隅男 佐々木 朗 篠原 正徳 田中 陽一 中村 太保 野口 誠 又賀 泉 山城 正司
出版者
Japanese Society of Oral Oncology
雑誌
日本口腔腫瘍学会誌 = Journal of Japan Society for Oral Tumors (ISSN:09155988)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.163-175, 2007-09-15
被引用文献数
1 1

舌癌治療ガイドラインの作成にあたり, 日本での舌扁平上皮癌治療の現状を把握するためアンケート調査を行い, 75回答の集計結果から本邦における舌扁平上皮癌治療の現状を報告した。<BR>有効回答の得られた75施設の過去10年間 (1995-2004) における総症例数は5, 906例であった。T, N分類ではT2が2, 700例 (45.7%) , N0が4, 367例 (73.9%) と最も多かった。<BR>手術療法では原発巣の切除範囲の適応基準, 頸部リンパ節転移に対する頸部郭清術および舌癌切除後の再建術における適応と術式については, 各施設とも適応基準がほぼ共通しており標準的な治療ガイドラインの作成は可能であるように思われた。<BR>一方, 原発巣や頸部の放射線や化学療法による, 術前・術後の補助療法の目的と適応が各施設それぞれに基準があり, その標準化はガイドライン作成の大きな問題点になると思われた。いずれにしても質の高いエビデンスを持つ治療法をガイドラインに盛り込む必要がある。
著者
田中 愼亮 赤澤 登 柚鳥 宏和
出版者
Japanese Society of Oral Oncology
雑誌
日本口腔腫瘍学会誌 (ISSN:09155988)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.43-48, 2012-06-15
被引用文献数
2

頭頸部癌症例では,上部消化管領域に重複癌を認めることが多い。2003年1月から2008年12月の期間に当科で加療を行った口腔癌のうち,上部消化管内視鏡検査を施行した133例について検討を行った。上部消化管領域に重複癌を認めた症例は,133例中16例(12.0%)で,全例男性で,食道癌12例,胃癌4例であった。口腔癌部位別では,舌癌67例中9例(13.4%),下顎歯肉癌19例中2例(10.5%),口底癌18例中3例(16.7%),頬粘膜癌12例中1例(8.3%),硬口蓋癌2例中1例(50.0%)に認めた。病期別では,stage I 38例中2例(5.3%),stage II 32例中8例(25.0%),stage III 19例中2例(10.5%),stage IV 44例中4例(9.1%)であった。また,喫煙歴と飲酒歴は68例中12例(17.6%),喫煙歴のみは14例中4例(28.6%)に重複癌を認め,飲酒歴のみ12例と喫煙歴と飲酒歴ともにない39例について重複癌はなかった。食道癌は12例中4例で上皮内癌であった。
著者
星名 由紀子 林 孝文 新垣 晋 齊藤 力
出版者
Japanese Society of Oral Oncology
雑誌
日本口腔腫瘍学会誌 (ISSN:09155988)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.25-36, 2010
被引用文献数
7

目的:舌扁平上皮癌症例における口底部の介在リンパ節への後発転移の画像所見について検討を行う。<br>対象と方法:1997年から2007年までの間に,口底部の介在リンパ節への後発転移と考えられる腫瘤性病変が出現した舌扁平上皮癌5症例を検討対象とした。いずれも1か月に1回の綿密な超音波診断による経過観察で検出されたものであり,CTとMRI検査が引き続き施行された。われわれは,転移巣が舌下隙後方で顎下腺内側に出現した場合に,外側舌リンパ節と同様の介在リンパ節への転移と考え,傍顎下腺リンパ節転移と呼称することとした。<br>結果:術前画像と頸部郭清で得られた病理標本との照合の結果,2例は外側舌リンパ節転移,2例は傍顎下腺リンパ節転移,1例はそれらの両方と推測された。同期間に口底部の介在リンパ節に転移を来たした症例は潜在的転移が認められた2例を含めて7例であり,頸部リンパ節転移が証明された舌扁平上皮癌43例の16.3%に及んだ。<br>結論:傍顎下腺リンパ節は,外側舌リンパ節とともに舌から上内頸静脈リンパ節にいたる経路の介在リンパ節の役割を有すると考えられた。N0舌扁平上皮癌の経過観察において,外側舌リンパ節と傍顎下腺リンパ節への後発転移を画像で検出するには,正確な解剖学的知識と注意深い観察が必要と考えられる。
著者
小村 健 原田 浩之 前田 顕之
出版者
一般社団法人 日本口腔腫瘍学会
雑誌
日本口腔腫瘍学会誌 (ISSN:09155988)
巻号頁・発行日
vol.12, no.4, pp.391-395, 2000-12-15 (Released:2010-05-31)
参考文献数
7
被引用文献数
3 3

顎関節部の悪性腫瘍は極めてまれであり, 顎関節に原発するもの, 周囲組織に発生し顎関節に進展するもの, および顎関節に転移するものに大別される。症状は他の顎関節疾患に類似しているが, 進行は急速である。診断には詳細な病歴聴取, 視診, 触診, CT, MRI, 99mTcや67Gaシンチなどの画像診断が必須であり, 確定診断には生検ないし細胞診を必要とする。その中で超音波ガイド下穿刺吸引細胞診は有用である。治療は, 原発性腫瘍では拡大手術が第一選択となり, 経耳下腺的アプローチが有用である。進展性や転移性腫瘍では原発腫瘍の状況により放射線治療, 化学療法あるいは手術を選択し, 転移性腫瘍でもQOLの向上のための手術を検討すべきである。
著者
小村 健 原田 浩之 島本 裕彰
出版者
一般社団法人 日本口腔腫瘍学会
雑誌
日本口腔腫瘍学会誌 (ISSN:09155988)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.61-68, 2010-06-15 (Released:2011-10-20)
参考文献数
17
被引用文献数
3 4

現在,下顎再建には金属プレート,遊離骨,有茎の骨筋皮弁,血管柄付き骨皮弁が用いられている。こうした中,血管柄付き骨皮弁は成功率が高いこと,骨量に制限がないこと,理想的な形態付与が可能である等,多くの利点を有している。1995年3月から2006年4月の間に遊離血管柄付き骨により下顎再建を施行した57例,59再建について検討した。下顎骨切除に至った原疾患は悪性腫瘍44例,良性腫瘍10例,放射線性下顎骨壊死3例で,Boyd分類による下顎骨欠損はL型が74.6%,軟組織欠損はm型が81.4%と多くを占めた。59再建中,58再建は即時再建であり,1再建のみが二次再建であった。骨皮弁は欠損部の形状と患者の要望とから選択し,16腓骨皮弁,43肩甲骨皮弁を用いた。下顎骨形態付与のために14骨弁に1部位の骨切り,3骨弁に2部位の骨切りを加えた。16腓骨皮弁再建例では,13骨皮弁は生着したが,2皮弁は部分壊死,1皮弁は全壊死を来した。一方,43肩甲骨皮弁再建例では,41骨皮弁が生着し,2骨皮弁が部分壊死を来した。術後の平均開口量は4.1cm,インプラント・義歯装着率は31.6%,常食摂取率は68.4%,顔貌満足率は85.4%であった。以上の結果から,下顎再建には血管柄付き骨が第一選択になるものと判断された。