著者
渡部 大輔
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画. 別冊, 都市計画論文集 = City planning review. Special issue, Papers on city planning (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.631-636, 2010-10-25
参考文献数
23
被引用文献数
1

本研究では、古代において国府と京を結んでいた七道駅路を中心として、古代物流ネットワークの形態解析と物流システムの移動利便性として移動距離や日数、運賃との関係について分析した。七道駅路ネットワークを構築した上で、本路・支路によって結ばれている国府の隣接グラフを構築した。そして、最小木と重複しない隣接グラフの辺は、地方と京をなるべく短い距離で結ぶように、放射・縦断方向に長い辺が構築されていることが明らかになった。七道駅路を用いた物流システムについて、運賃は距離と線形に比例する関係が見られ、往復日数の方が距離よりも運賃と比例関係が強いことが明らかになった。海上輸送は、陸上輸送と比べて、所要日数が少なく、運賃も大幅に低いことが明らかになった。このように、地形の起伏や広大な河川、海上輸送を含むかどうかが、移動に大きく影響していることが明らかになった。現在価値への換算すると、現代のトラック運賃と比べて、遠距離に行くほど差が広がっていることが明らかになった。このように、古代の物流においては、現代より日数、費用ともに大きくコストをかけて運ばれていたことが定量的に明らかになった。
著者
舛田 晃 真野 洋介
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.953-960, 2015-10-25 (Released:2015-11-05)
参考文献数
8

時代変化に伴い伝統的工芸品が衰退して行く中、産業従事者の取り組みが変化している。取り組みの変化に伴い産地における従事者の地域的役割も変化している。そこで、従事者による新たな取り組みが近年見られ始めている富山県高岡市を対象に、取り組みの発生経緯と、地域での展開プロセスを明らかにすることで、産地における従事者の新たな役割を示唆することを本研究の目的とする。従事者へのヒアリング調査をもとに、従事者組織である高岡伝統産業青年会及び従事者周辺組織の活動と個々の従事者の取り組みの変化の関係を分析することにより、新たな従事者の役割として以下の結論を得た。1)従事者の活動が対外的になることで、産地に交流人口を増加させる役割を担う可能性がある。2)従事者が異業種分野と結びつく流れと、個人の関わりを組織に反映する動きが見られることから、従事者組織が、業種の垣根を越えて産地の人々を結びつける役割を担える可能性がある。3)県外から移住した作家が生計を立てるため新たな従事者となる中で、安価な製作場所、住まいとして空き家を活用する動きがあり、新たな従事者は空き家活用の担い手としての役割があると考えられる。
著者
細田 真一 瀬田 史彦
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.18-27, 2017-04-25 (Released:2017-04-25)
参考文献数
34

本論文は柏市中心市街地において、民間主体により道路区域内広場の整備及び維持管理が実施された事例に対して、文献調査及びヒアリング調査によって、その整備から維持管理までの過程を明らかにし、成功要因を探るとともに民間主体によってどの程度計画の自由度が高まり、魅力的な公共空間の創造に繋がったかを検証するものである。成功要因としては、商店街連合代表理事のリーダーシップ、地元専門家を中心とした整備及び維持管理の体制づくり、行政内の第三者的立場のセクションの参画等が資金調達、行政協議の推進に大きく影響したことが明らかになった。民間主体によるメリットとしては公費が削減されたこと、計画内容に対する利用者の評価が概ね高いものであったことが明らかになった。またその一方で、整備段階における資金調達や民間同士の協議の不調等が課題として残った。今後は新たに設立されたエリアマネジメント組織による状況改善が望まれる。
著者
田中 由乃 神吉 紀世子
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.309-314, 2013-10-25 (Released:2013-10-25)
参考文献数
14
被引用文献数
3

戦後の都市周辺部におけるまとまった規模での住宅開発は世界各地で見られるが、現在開発から数十年が過ぎ住宅地の物理的老朽化が進んでいる。本研究の調査対象地であるチェコ共和国では社会主義体制下において都市周辺部の住宅開発が進んだが、その住宅開発地は現在でも多くの居住者の生活の基盤となっており、地域の状況に応じた生活環境の改善は重要な問題であるといえる。そこで本研究では、社会主義時代の住宅開発地再生に関わるプラハ市市役所と、プラハ11、13区役所の施策から、各地域の状況に応じた多様な施策がどこに生じ得るのかを明らかにする。 現地調査とヒアリング、公式文書による調査の結果、プラハ市市役所は2001年には社会主義時代の住宅開発地に対して環境再生のための調査事業を行い、全域的な事実資料をまとめていたことが分かった。また、プラハ11、13区では開発当時の地域独自のマスタープランが現在でも重要な意味を持っていること、11区役所が区主体の施策を行う一方で13区は市役所の土地利用計画に従うといった区レベルでの取り組みに違いがあることなどが分かり、これらが各地域の状況に応じた多様な施策につながると考えられる。
著者
羽鳥 剛史
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.991-996, 2012-10-25 (Released:2012-10-25)
参考文献数
11
被引用文献数
3

本研究では、地域コミュニティにおける「離脱」と「発言」という地域住民の持ち得る2つの行動手段に着目し、ハーシュマンの理論を基に、これらの行動手段の間の関連について実証的に検討することとした。さらに、地域住民の離脱を緩和し、発言を促進する機会として、地域経験に関する「記憶」の役割に着目し、地域経験に関わる記憶の想起が離脱と発言に及ぼす影響を検討することを目的とした。この目的の下、松山市在住の市民145名を対象に質問紙調査を用いた実験を行った。その結果、離脱と発言との間に相互代替的な関係が成立する可能性が示された。また、地域経験の記憶の想起が地域住民の発言傾向を促進する効果を持つ可能性が示された。最後に、本研究の知見が地域計画に示唆する点について検討した。
著者
ファン ル 松本 邦彦 澤木 昌典
出版者
The City Planning Institute of Japan
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.866-871, 2015

2008年5月に中華人民共和国四川省汶川県でマグニチュード8.0の四川地震が発生した。水磨鎮は震源地から5kmの距離に位置する甚大な被害を受けた被災地の一つである。地震の前は農業や工業が主な産業であったが、地震の後は町の持続的発展を目的とした観光開発による復興が計画され、2008年から2010年にかけて建物の再建、新たな商業街区の整備、被災者の移転・入居などの様々な事業が実施された。その結果、水磨鎮は人気の高い観光地となったが、2012年以降は観光業がやや不振に陥り、店舗の経営状況の悪化、新設住宅での居住環境上の問題などが見られる。 そのため本研究では、水磨鎮における震災復興の背景やプロセスを調べた上で、新規に観光を導入した地域復興の状況を把握する。その上で、店舗経営者及び住民の居住環境に対する満足度、観光開発に対する意見・評価を把握し、居住上・経営上の問題を明らかにすることを目的とする。そして、現存する問題の解決策を検討し、今後の観光産業の振興に基づく被災地復興計画に参考となる知見を得る。
著者
岡松 道雄 毛利 洋子
出版者
The City Planning Institute of Japan
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.1069-1076, 2015
被引用文献数
2

モータリゼーションの進展、中心市街地の空洞化、少子高齢化等により近隣型商店街が衰退している。同時に集約型都市構造への転換が望まれ、「歩いて暮らせる街づくり」の必要性が唱えられている。近隣型商店街はこの課題に重要な役割を果すと考えられることから、本稿ではまず、鹿児島県いちき串木野市にある近隣型商店街の現状を調査し、地域活性の取組み状況を明らかにする。次に商店街に生じた空き地を、朝市イベントの「賑わい広場」として活用し、商店街に賑わいを取り戻すための仮設実験を行った。その有用性を確認するため仮設物の使われ方の効果を検証した。
著者
西浦 定継 佐藤 栄治 大西 隆 木下 瑞夫
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.889-894, 2011-10-25 (Released:2011-11-01)
参考文献数
15
被引用文献数
1 1

タイは80年代から目覚ましい経済成長を遂げてきている。1997年にアジアの金融危機により一時停滞したものの2000年代に入ってアジアの生産拠点として再び成長軌道を歩んでいる。首都バンコクには、外資の工場立地を起爆剤として人、物が集中し、大きく変容してきている、本研究では、バンコク大都市圏について、1988年から2008年の20年間の都市変容を調査分析、考察した。調査対象としては、過去3年代の総合計画においてサブセンターとして計画されている地区を抽出し、そこに立地する商業業務機能をカウントし、1988年、98年、08年のデータを総合的に分析し、その相対的関係より考察した。従来からの集積地は規模が縮小し、拠点的な役割を担ってきた集積地は姿を消し、中規模程度の集積地が広く分散する構造に変わってきている。今後は、衰退する集積地の再開発などが課題となる。
著者
伊藤 雅
出版者
The City Planning Institute of Japan
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.381-386, 2014

近年、世界各地の都市内幹線道路において、高架道路の撤去や車道の地下化によって地上部を歩行者中心の断面構成に再整備する事例が相次いでいる。本研究では、地下トンネル整備の中止を決定しながらも、住民投票を通じて地下トンネル整備を再開したミュンヘン市の「中環状道路」を事例として取り上げ、地下トンネル整備の中止とその再開に至った経緯の資料調査に基づいて、その決定に至った背景と要因について考察を行った。また、トンネル整備再開後の道路空間整備のコンセプトづくりに関するヒアリング等の現地調査に基づいて、新たな道路空間整備を志向した背景と沿道環境整備が都市に及ぼした影響に関する考察を行った。その結果、住民投票に至る背景には住民グループによる報告書の内容に表わされている通り、高度な実行力と構想力が市民の間に存在していたことがわかった。また、その後、市民の意向を汲み取って作成されたマスタープランと実施プログラムは中環状道路沿道の住環境を向上させるのみならず、都市全体の価値向上につながる取り組みがなされたことがわかった。
著者
岡村 祐
出版者
The City Planning Institute of Japan
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.687-692, 2013

London View Management Framework: LVMFは、大ロンドン庁(GLA)により2007年に策定されたロンドン中心部の歴史的ランドマークや町並みに対する眺望景観保全計画である。英国内外からの規制強化の要請にしたがい既に2度の改訂が行われている。本研究では、その計画内容の変化や運用実績から、高い都市開発圧力の下で、LVMFがどのような景観像を求め、いかなる手法を用い、いかなる価値判断で景観コントロールを行っているか、その実態を明らかにした。特徴としては、第一に、高さへの柔軟な対応であり、基準高さが適用される「保護ヴィスタ」であっても、ランドマークへの視認性や鑑賞性の向上に貢献すると判断されれば、多少の高さ超過も許容されている。第二に、景観の質的評価を担保するものとして、精緻な景観アセスメント手法: QVAが確立されている。第三に、ランドマークの視覚的独立性の向上や既存要素との相対的関係など、開発と保全の調和を目指すための判断基準が適用されている。
著者
孫 立 大西 隆 城所 哲夫
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.469-474, 2011-10-25 (Released:2011-11-01)
参考文献数
5

21世紀に入り、1980年代後半から生まれてきた中国の特色的な低所得者地域である城中村に対する再開発事業が各地において次々と行われ始めた。本研究は現行の城中村再開発の政策・手法のモデルの解明、ケーススタディを通じて改造効果などを把握した上で、現行事業の到達点の解明に試みた。調査・分析の結果、再開発事業における制度改革(無形改造)は、形式的なものであり、名称上の変更に止まってしまい、福祉、社会保障などの実質的な問題の抜本的な解決には及ばなかった。物的再開発(有形改造)は、物的住環境の抜本的な改善を通じ、村民の生計維持・向上の問題を解決した。一方、低所得な借家人は住み続けることが困難となっており、社会的公平性や都市経済発展の鈍化等の問題をもたらす恐れがある。
著者
中島 直人
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.283-288, 2011-10-25 (Released:2011-11-01)
参考文献数
15

本研究の目的は、根岸情治の履歴と業績を明らかにすることを通して、「都市計画事業家」の実質的内容について考察を行うことである。根岸は幾つかの区画整理事業の現場を渡り歩きながら、区画整理実務を身につけ、キャリアを形成していったが、その仕事内容は単なる事務仕事に留まらず、各種の折衝、啓蒙宣伝、事業後の宅地の販売促進までを含む広いもので、創造性や根岸の人格が反映されたものであった。池袋駅東口地下街の建設においても、都市計画事業の民間代行による地下街建設という新しい試みに際し、事業の進展に応じて、政治的活動を含む柔軟な活動を展開した。こうした姿から浮かび上がる「都市計画事業家」の存在は、公的セクターによる強力な土地利用規制ではなく、民間の地権者の協同による事業に支えられた我が国の都市計画の特質と深く関係している。
著者
佐藤 貴大 円山 琢也
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.345-351, 2015-10-25 (Released:2015-10-25)
参考文献数
9
被引用文献数
1

2013年11月から12月に熊本都心部においてスマホ・アプリ型回遊調査を実施し,1083人の参加者を得た.データに含まれる膨大なGPSの軌跡情報を効率的に処理する方法が求められる.本研究は,カーネル密度図を利用して,簡易に回遊行動圏を推定する方法を提案する.GPS軌跡の95%のカーネル密度図を行動圏域と定義しているが,それは測位誤差に頑健となることも確認した.最後に,提案した行動圏の面積と回遊時間を比較し,評価指標としての違いや,政策含意を議論した.
著者
奈良井 武 土井 幸平 水口 俊典 五條 敦
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.697-702, 1991
被引用文献数
3

<p>IN SAITAMA PREFECTURE, THE CITY PLANS OF URBANIZATION PROMOTION AREA (UPA) AND URBANIZATION CONTROL AREA (UCA) WERE MADE IN 1970, AND WERE MODIFIED IN 1977-1979. DESPITE THE DEMARCATION BETWEEN UPA AND UCA, HOWEVER, DISORDERLY BUILDING-UP (SPRAWLS) CONTINUED AND THE DEVELOPMENT PROJECTS WERE NOT PROMOTED IN UPA AS WE HAD EXPECTED. IN ORDER TO SOLVE THIS PROBLEM, 'SAITAMA METHOD', THE FLEXIBLE OPERATION OF THE CITY PLANS OF UPA AND UCA WAS INTRODUCED AT THE TIME OF THE SECOND MODIFICATION OF DEMARCATION BETWEEN UPA AND UCA, IN 1984-1987. THIS STUDY AIMS TO EXAMINE ITS RESULTS AND EFFECTS AS THE MEANS OF URBANIZATION CONTROL.</p>
著者
児玉 寛希 樋口 秀 中出 文平 松川 寿也
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.505-510, 2011-10-25 (Released:2011-11-01)
参考文献数
12
被引用文献数
2

地方都市では、昨今の財政難や今後の人口減少に伴い、税収が減少に転じている。持続可能なまちづくりを行うためには、税収の確保が求められるが、中心市街地・既成市街地の衰退により、都市全体の固定資産税収を減少させている。本研究では、長岡市・松本市・上田市・高知市を研究対象として、固定資産税収動向を市街地区分別に把握するとともに、どのような市街地指標が固定資産税収に影響するかを検討した。その結果、市街地指標と固定資産税収には関連性が見られ、市街地指標が優位な都市では固定資産税指標が高く、低位にある都市では固定資産税収の減少が大きくなっていることが明らかとなった。固定資産税収を確保するためには、評価額の低下を防ぐ必要があり、中心市街地やその周辺の既成市街地へ開発を誘導することが重要といえる。
著者
三矢 勝司 秀島 栄三 吉村 輝彦
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.303-308, 2013-10-25 (Released:2013-10-25)
参考文献数
14
被引用文献数
2 1

公共施設の整備を巡っては、設計段階にとどまらず、管理運営段階における市民参加が課題となってきた。本研究では、地域密着型中間支援組織に着目し、公共施設整備における市民参加の支援において、その組織に求められる役割と成果を考察する。岡崎市図書館交流プラザLibraの例では、地域密着型中間支援組織が、公共施設の設計段階から開館直後にいたる過程において、その組織の特性を活かした支援を行うことが明らかになった。その支援手法は、1)市民と行政の議論の場づくり、2)参考事例等の調査研究、3)市民サポーターの拠点となる空間の設置運営、4)市民サポーターの活動支援、組織化支援、5)施設周辺まちづくりの支援、6)人と人をつなぐ関係づくり支援、である。
著者
森本 章倫
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.739-744, 2011-10-25 (Released:2011-11-01)
参考文献数
24
被引用文献数
7 8

本研究では都市のコンパクト化の評価指標として財政面と環境面に着目し、地域の現状をできるだけ反映した推計モデルの構築を行なった。また、宇都宮市を対象として分析を行なった結果、コンパクト化は財政面、環境面の双方において有利に働くことが確認された。特に、都市構造の変化の影響を受けやすい財政面における効果は大きいことが分かった。しかし、従来から効果が期待されていた環境面については、財政面ほどの効果が発現していない。これは交通分野の低炭素化は、都市のコンパクト化だけでは困難であることを示しているといえる。地方都市の交通部門のCO2排出量の大半は自動車交通であり、自動車交通の総トリップ長の減少がそのカギを握っている。個人の交通行動がより環境にやさしいモードへシフトするような施策の実施や、通過交通量の多い道路の道路円滑化など、総合的かつ広域的な施策が不可欠である