著者
松浦 健治郎 巌佐 朋広 浦山 益郎
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.41.3, pp.917-922, 2006-10-25 (Released:2018-06-26)
参考文献数
24

本研究は、39道県庁所在都市を対象として、明治・大正期における官庁街の立地特性及び都市デザイン手法を明らかにするものである。明らかとなったのは、1)近世城下町都市では城郭地区内に官庁街が形成され、それ以外の都市では主要街路沿い又は主要街路沿いに位置する商業地区の裏手に形成されること、2)城郭地区立地型・主要街路沿い立地型で主要街路を活用した4つの都市デザイン手法がみられたこと、3)主要街路から直交する引き込み街路を活用した4つの都市デザイン手法が商業地区裏手立地型で多くみられたこと、4)主要街路又は引き込み街路のアイキャッチに官公庁施設を置く都市デザイン手法は官庁街の立地特性や都市の成立起源に関わりなく、明治・大正期に広く用いられた都市デザイン手法だったこと、である。
著者
清水 肇 中村 友美
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.1267-1274, 2018
被引用文献数
1

沖縄県読谷村のK集落は、第二次世界大戦末期の沖縄戦による破壊の後、軍事基地建設のための土地接収により強制的な移転を余儀なくされた。旧集落の物的環境の多くは失われたが、集落跡地への関係者の出入りが制約のもとで許されている。 歴史的資産の多くが消失あるいは改変された状況において、戦前に戦後にかけての集落の姿と暮らしに関わる地域の記憶の継承の方法を検討した。記憶の継承に有効な歴史的資産を抽出し、それらの特質を分析することにより、消失や改変を経た歴史的資産の特質に対応した記憶の継承の取り組みが必要であるという認識を得た。 K集落住民による旧集落跡地から現集落の範囲までを対象とする記憶継承活動が企画、実施され、活動を通じて記憶の継承活動の課題を検討した。物が消失して空白に見える場所の扱い、重層的な記憶の扱い、場所への関わりの継続、領域を示す資産の扱いが重要であることを示すことができた。
著者
竹内 啓 對間 昌宏 城所 哲夫 瀬田 史彦
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.172-178, 2018-10-25 (Released:2018-10-25)
参考文献数
24
被引用文献数
1

イノベーションを効率的に起こすには「フェース・トゥ・フェース」のコミュニケーションを通して知識を複数の主体間で共有することが不可欠であることから、イノベーションは地理的に集中する傾向にあるとこれまで論じられてきた。本研究は日本国内の特許データを用いて、共同発明者同士のネットワークの空間的分布を調べた。また、分野毎の比較も行うため、機械・情報通信の二分野で分析をした。結果、以下の点が示された。1)発明者同士のネットワークは地理的に集中しているが、その空間的傾向は分野間で異なる。2)発明者間の時間距離が小さいときに共同発明が進みやすいものの、そうした傾向は近年弱くなっている。3)ネットワークは都道府県境や経済産業局の管轄区域を越えて広がっている。以上を総合すると、将来イノベーション・ネットワークはより地理的に広い範囲に広がる可能性があり、都道府県や各地方をまたいだ政策の必要性が示唆される。
著者
村上 佳代 西山 徳明
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.1188-1195, 2015

フランスで誕生したエコミュージアム概念が、日本で独自に発展し、山口県萩市の「萩まちじゅう博物館」というエコミュージアム概念に基づいた文化資源マネジメントによる開発手法が確立した。独立行政法人国際協力機構によって全くコンテクストの違うヨルダンに技術移転された、エコミュージアム観光開発技術が、特に保守的なサルト市の地域社会において、エコミュージアムの「コア博物館/サテライト/ディスカバリー・トレイル」のシステムにより、来訪者に見せていきたいもの、見せたくないものの判断が地域側にあり、コントロールできる点、来訪者に地域の文化を尊重してもらうための仕掛けがある点においては適用できたと考える。このように、遺産の保護、地元に利益が還元される観光開発といった点において、エコミュージアム概念に普遍性があり、最適なシステムであると言えよう。しかしながら、ヨルダンと日本の社会構造が違う中で当然であるが、博物館として備えるべき機能を十分に持つことに関しては課題が残る。今後は、大学やサルトの歴史家との連携を強化し、サルトの地域住民自身が学芸員となれるような取り組みを行なっていくことによって解決していきたい。
著者
八尋 和郎 外井 哲志 梶田 佳孝
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.37-42, 2011

近年、都市に人を集める産業としてプロ野球観戦が注目されており、その特性を把握することは有益であると考えられる。本研究では、福岡ソフトバンクホークス(野球チーム)の観戦者に対するアンケート調査によって、観戦者の特徴と観戦者がもたらす経済効果を分析し、以下のことが明らかになった。(1)遠方からの来場者や、1人で来た来場者は消費単価が高い。(2)試合観戦前後に、来場者は福岡ドーム(野球場)以外の場所にも立ち寄っており、都市の賑わいに貢献をしている。(3)プロ野球観戦に直接関係がない産業にも大きな需要が創出されている。(4)交通費は集客に対して大きな影響を与えている。以上より、福岡ソフトバンクホークスは都市に無視できない大きな影響を与えていることが分かった。
著者
石山 慧 樋口 秀 中出 文平 松川 寿也
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.1001-1007, 2016-10-25 (Released:2016-10-25)
参考文献数
6

本研究は新潟県長岡市の旧長岡地域に残る、公有地上に立地するという独特の特徴を有する雁木および雁木通りの現状と雁木通りに係わる人々の雁木通りに対する意向を明らかにし、雁木通りの今後のあり方を検討することを目的とする。雁木通りと人々への調査の結果、長岡のまちなかには1503棟、総延長10,959mの雁木が存在した。また、雁木が設置された通り(雁木通り)は201本で、そのうち84本は設置率や連続性が高く、残すべき通りである。しかし、全体としては、雁木の老朽化や低未利用地による雁木の断続の問題を確認した。今後は、雁木通りを限定しながらも、存続を図ることが必要と考える。そのためには、長岡市民が雁木通りを長岡の財産と認識することが重要である。
著者
増井 徹 高岡 伸一 嘉名 光市 佐久間 康富
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.129-134, 2013
被引用文献数
1

本研究は大阪駅の南側に位置する約6haの計画地に、大阪駅前第1ビルから第4ビルまでの4棟の高層ビルを建設した大阪駅前市街地改造事業を対象に、1961年から20年以上に渡った事業の変遷を整理し、各計画段階で目指された空間像がどのように変容していったかを明らかにするものである。結論としては、当初は「類型の反復という美学」に基づく統一性の高い計画であったが、事業過程で高層化が重ねられ、仕上げも変更されるなど、低層部の当初方針は堅持されたものの、高層部の統一性は失われた。また当初の計画にはなかった広場的空間が変更によって加えられ、その重要性が増していった。そして低層部屋上への公開空地の設置などによって、階による明確な歩車分離という当初の方針が損なわれたといったことが明らかとなった。
著者
増井 徹 高岡 伸一 嘉名 光市 佐久間 康富
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.129-134, 2013-10-25 (Released:2013-10-25)
参考文献数
18
被引用文献数
1

本研究は大阪駅の南側に位置する約6haの計画地に、大阪駅前第1ビルから第4ビルまでの4棟の高層ビルを建設した大阪駅前市街地改造事業を対象に、1961年から20年以上に渡った事業の変遷を整理し、各計画段階で目指された空間像がどのように変容していったかを明らかにするものである。結論としては、当初は「類型の反復という美学」に基づく統一性の高い計画であったが、事業過程で高層化が重ねられ、仕上げも変更されるなど、低層部の当初方針は堅持されたものの、高層部の統一性は失われた。また当初の計画にはなかった広場的空間が変更によって加えられ、その重要性が増していった。そして低層部屋上への公開空地の設置などによって、階による明確な歩車分離という当初の方針が損なわれたといったことが明らかとなった。
著者
土久 菜穂 山本 明
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.321-326, 2013

本稿は、中世都市における山稜景観をケーススタディとして、フラクタル次元を援用した山稜景観の形態的特性の定量的な記述手法を提案し、その有用性を検証するものである。その結果、各都市の主要施設の立地特性に関する既知の諸事実について、山稜景観の形態的な側面から検証できた。さらに、主要施設を視点場とする山稜景観の形態的特性を、次の通り定量的に記述することができた。・平安京では、多くの稜線による複雑な遠景が一様にもたらされていたが、平坦な市街地中心部に立地する御所邸宅と、市街地縁辺部に立地する宗教施設からの山稜景観には差異があった。・中世平泉では、平安京的な遠景の山稜景観の土地に京文化が輸入されたことから、山を借景とする浄土空間が形成されていった。・谷戸地形を活かした中世鎌倉では、山稜を遠景として望むことが稀であり景観的な複雑さは乏しいが、幕府に庇護され山裾や谷戸周辺に立地する禅宗・新義律宗の寺院と、迫害され平地や海岸線周辺に立地する日蓮宗の寺院からの山稜景観には差異があった。
著者
田中 雄大 菅野 圭祐 佐藤 滋
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.305-312, 2016

本研究の目的は、山形県鶴岡市を対象として、城下域の取排水系統や、水路網の取水・分水・集水地点などの伝統的水系構造を解明し、景観構成との関係を明らかにすることである。本研究は以下の手順で行う。第一に、城下絵図や明治地籍絵図、現代の地番図などの地図資料の比較を基にArcGISを用いて藩政期における城下域の流路を復元する。第二に、微地形の分析や地図史料を用いて流水方向を特定し、地区ごとに記述する。第三に、各地区の記述に基づき、城下域全体の取排水系統を把握する。また、各系統が配水する地域における土地利用の特徴を考察する。第四に、城下域全体の取排水系統における、取水・分水・集水地点を特定し、各地点に確認される水路形態の特徴を把握する。第五に、水系上に確認される山当て景観と借景の分布実態を把握し、取排水系統の違いによる分布の差異や、取水・分水・集水地点との位置的関係を分析する。
著者
斎尾 直子 真藤 翔 石原 宏己
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.933-938, 2014-10-25 (Released:2014-10-25)
参考文献数
12
被引用文献数
4

近年、少子化に伴う18歳人口減少傾向とは逆行した大学数の増加、それによる大学全入時代への以降、そのような動きと並行して、大学教育やキャンパススタイルの多様化、2002年工場等制限法廃止以降の都心キャンパス整備拡大の動き等、大学経営の観点からキャンパスの新設・撤退と拡大・縮小の動きが活発におこなわれてきた。このことは、大学キャンパスが長年立地してきた自治体や、キャンパス周辺地域にとっては都市の衰退・再生に大きく影響する変革であり、その動向の特長と課題を把握しておくことは重要であると捉えられる。本研究は、首都圏に立地する全4年制大学382キャンパスを分析対象とし、過去30年間の新設・撤退の年代ごとの傾向・変化を把握。その動向を踏まえ、特に撤退事例に着目し、撤退後の跡地利用の実態及び課題抽出をおこなっていくことにより、今後の大学キャンパス立地・移転計画、大学と地域との連携施策のための基礎的知見を得ている。
著者
山本 幸 柿本 竜治 山田 文彦
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.45.3, pp.553-558, 2010-10-25 (Released:2017-01-01)
参考文献数
11
被引用文献数
1

本研究の目的は、筆者ら提案する災害リスクマネジメントのフレームの汎用性を検証することにある。山都町菅地区での山間地域の防災力向上への取り組みにPDCAサイクルに基づく災害リスクマネジメントのフレームを適用することで、8回に亘る継続的なWSと2回の避難訓練の運営を効率的に行うことが出来た。また、PDCAサイクルを巡回させることで、防災学習の取り組み内容を地域全体の防災から災害時要援護者の支援へとスムーズに発展させることが出来た。WSを通して、地域の災害リスクの認知、世帯カルテの整備、災害時要援護者の確認、地域のソーシャル・ネットワークの確認が行われ、災害時に地域や行政が特に配慮しておくべき世帯等が絞られた。避難訓練を通して、地域の防災連絡体制の強化と集落間の協力関係の強化が図られ、避難時間が40分短縮されるなどの効果が見られた。また、WSでの議論により、地域ニーズと地域特性に応じた雨量観測システムと安否確認システムが構築され、実装された。最後に、本取り組みを通じて、地域防災学習のWSを継続していくにあたっての留意点を明らかにした。
著者
中島 直人
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.42.3, pp.403-408, 2007-10-25 (Released:2017-02-01)
参考文献数
25

本論文は石川栄耀による都市計画の基盤理論の探求の特徴を把握することを目的としている。石川の主著書である『都市計画及び国土計画』は1941年に初版が出版された後、1951年に改定版、1954年に新訂版が出版された。先ず、初版出版に至るまでの過程の分析により、石川が都市計画の基盤理論構築のための都市学の確立を強く望んでいたことが明らかになった。石川は『都市計画及び国土計画』では、独自の基盤理論である「都市構成の理論」で都市計画を体系化してみせたのである。また、2度の改訂内容の分析からは、石川が「生態都市計画」と呼んだ新しい都市計画の姿を目指して、「都市構成の理論」に都市動態の理論を組み込もうとしていたことが明らかになった。こうした都市計画の基盤理論を探求する姿勢は、石川の同時代の誰よりも先進的であり、かつ現代的意義も有している。
著者
長谷川 淳一
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.517-522, 1999-10-25 (Released:2018-03-01)
参考文献数
33

The 1940s has been regarded as an epoch in the history of British town planning. Among other things, many imaginative plans were prepared by famous planning consultants, such as Tomas Sharp and Patric Abercrombie. Behind the scenes, however, there was a growing concern among these planners and the government about the present as well as the future of planning and planners. This led to the setting up of the committee on qualifications of planners, which aimed to introduce a new breed of planners, with little avail.
著者
秋本 福雄
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.41.3, pp.887-892, 2006-10-25 (Released:2018-06-26)
参考文献数
50

1910年代、地域計画という用語がイギリスに登場し、間もなくアメリカに紹介され、1920年代、両国で広範に普及した。最近の研究は、地域計画運動の初期の段階について焦点をあてるようになった。しかし、地域計画の概念がどのように形成されたか明らかになっていない。この論文は、19世紀の末から1920年代までの、ハワードの社会都市、パトリック・ゲデスの地域調査、パトリック・アーバークロンビーの地域調査、トマス・アダムスの地域計画、ルイス・マンフォードの地域都市を含む、都市計画家の考えを解析し、地域計画の概念の諸要素がどのように形成されたかを明らかにし、それらの対立点を吟味している。
著者
秋本 福雄 阿部 正隆 梶田 佳孝
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.44.3, pp.871-876, 2009-10-25 (Released:2017-01-01)
参考文献数
31
被引用文献数
4

地域計画は英国に登場し、1920年代、アメリカ及び英国で都市計画法の中に制度的に組み込まれた。日本へは、飯沼一省が1923年の米欧外遊の後、紹介したが、都市計画法は、今日なお、地域計画に関する条項を持たない。この研究の目的は、その理由を日本における地域計画の導入期を解析することにより明らかにすることにある。飯沼は、地域計画という用語にアメリカで遭遇し、英国で地域計画の概念を把握し、ハワードの田園都市、C. B. パーダムの衛星都市の図式の強い影響を受けた。飯沼は都市計画法の都市計画区域を批判したが、都市計画法を根本的に組み立て直すには至らなかった。
著者
宮脇 勝
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.32, pp.691-696, 1997-10-25 (Released:2018-05-01)
参考文献数
16

The history of Italian Master Plans can be analized from the the activities of the planner and their generation. The first generation, L. Piccinato (1899-1974) and P. Marconi (1893-1974), created the foundation for the modern city planning. The second generation, G. Sasmona' (1898-1983), the urbanization and applied the city planning theory to many cities. the third generation, G. C. Venuti (1926-) modificated the plans and proposed sustainability as the Landscape Plan by Galasso Act.
著者
坪原 紳二
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.125-136, 2012-10-25 (Released:2012-10-25)
参考文献数
19
被引用文献数
1

自転車は環境にやさしい乗り物として注目される一方、日本では歩行者・自転車間の事故が増加しており、自転車の走行空間を整えることが大きな課題となっている。そこで本論文は、そのための知見を得るために、自転車先進国と言われるデンマーク及びオランダの自転車走行空間の計画論を、両国で出されているデザインマニュアル、及び自治体(オーデンセ市とフローニンゲン市)の計画書を通じ分析した。その結果、両国の相違点として、オランダの方が自転車走行空間の整備手法を包括的・具体的に検討しており、また、自転車走行空間のネットワークを形成することをより重視していることが判明した。一方、日本にとって参考になる共通点として、両国とも、自転車が並走できるだけの幅員を確保しようとしていること、日本で一般的な歩道と同一平面を走らせることには慎重なこと、さらに歩行者専用商店街で自転車の走行を認めることに積極的なことが分った。
著者
藍谷 鋼一郎 有馬 隆文 高山 達也 松山 加菜古
出版者
The City Planning Institute of Japan
雑誌
都市計画論文集 = Papers on city planning (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.589-594, 2012-10-25
参考文献数
10

阿波踊りは、もともとは徳島に伝わる盆踊りであったが、今では徳島市から徳島県全域に広がるだけでなく、関東圏を中心に商店街の振興イベントや町おこしの起爆剤として全国的に拡がっている。祭りは一時的な賑わいを生み出し、都市の重要な要素となっている。徳島市においては開催期間の4日間に、延べ130万人もの来訪者があるという。来訪者の数においては本場徳島を凌ぐ勢いのものが関東の三都市における阿波踊り、高円寺阿波踊り、南越谷阿波踊り、神奈川大和阿波踊りである。本研究では、四都市における阿波踊りの運営組織や運営方法を比較分析し、それぞれの運営方法と祭りの空間特性や持続性について明らかにし、継続的なイベントとして成功させる知見を見いだす。
著者
中川 貴裕 笠原 知子 齋藤 潮
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.43.3, pp.535-540, 2008-10-25 (Released:2017-01-01)
参考文献数
13

横浜旧居留地である中区山下町に位置する、横浜中華街は、その隣接地区と対照的な都市景観を形成している。建物用途と敷地規模は都市景観を特徴づける基礎的な要因であり、この2地区の差異を形成していると考えられる。そこで、本研究では、両地区の空間的差異の形成過程を明らかにする。1916年から1960年における山下町の土地台帳を用いて、土地所有や敷地分割・統合の変化を追跡した。その結果、2つの事柄が2地区の空間的差異を形成したことが明らかになった。第一に、関東大震災後の土地区画整備事業である。これによって土地の分割が進んだが、現在の中華街の外側である、山下町北部の海側で見られ、ほとんどが法人所有地や官有地となった。第二に、第二次大戦後の接収を中華街が免れたことである。これによって、中華街の辺りで土地の分割と個人所有化が進んだ一方、接収を受けた隣接地区は敷地が凍結された。これによって、空間的差異の原型が形成された。