著者
七海 絵里香 大澤 啓志
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.97-102, 2017 (Released:2018-03-15)
参考文献数
21
被引用文献数
1

万葉集及び勅撰和歌集において松が詠まれた歌からその生育立地の推定を行い,年代毎の変遷を明らかにした。計 22集の和歌集には 1,493歌で松が詠まれており,内 1,147歌(77 %) で生育立地の特定が可能であった。生育立地は臨海部が 22~35 %と変動しつつも概ね一定の割合を占めており,中でも海浜のクロマツ林を詠んだものが多かった。本格的な海浜域での造林が始まる以前より,クロマツ林が広く存在し,その植生景観に価値が置かれてきたことが示された。内陸部は年代が下るにつれて割合が増加し,1200年代以降は浜以上の割合で山の松が詠まれるようになった。これは山に関連する用語の種類の多様化,「名もなき山」や「聴覚としての山の松」の嗜好の広がりによるものと考えられた。
著者
崎尾 均
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.465-471, 2015 (Released:2016-04-19)
参考文献数
93
被引用文献数
3 5

ハリエンジュは日本に導入されてから,山地砂防,海岸林や鉱山煙害地の緑化を目的として植栽されてきた。近年,これらのハリエンジュは河川流域を中心に分布を広げ,河川生態系に大きな影響を与えている。ハリエンジュの分布拡大には生活史特性が大きく関わっている。種子には休眠種子と散布後すぐに発芽できる非休眠種子がある。上流域のハリエンジュから散布された種子は洪水によって中下流域に散布され,新たに出現した河川の砂礫地で発芽し定着する。一旦定着したハリエンジュの実生の生長速度は早く,数年で開花結実する。この速い生長速度は高い光合成能力に依存している。ハリエンジュの実生は急速に伸長した水平根から根萌芽を発生させ分布を拡大している。このように,日本に導入されたハリエンジュは,その特異的な生活史特性によって急速に河川流域に分布を拡大してきた。
著者
中島 敦司 山本 将功 大南 真緒 仲里 長浩 廣岡 ありさ
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 = Journal of the Japanese Society of Revegetation Technology (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.26-31, 2011-08-31
参考文献数
10

本研究では,キンモクセイの2度咲き現象が近年の温暖化,高温化の影響である可能性を検討する目的で,花芽分化期の夏季から開花期の秋季にかけて野外の気温に対して3℃ 加温したグロースチャンバー内で育成する実験をおこなった。その結果,加温処理によって開花の開始は遅れ,開花期間は長期化した。また,花ごとの開花日数は,開花期の後期に開花した花で短縮化された。さらに,加温によって開花期に複数回のピークのある2~3度咲き現象が引き起こされた。この2~3度咲き現象には,1)集団内での個体ごとの開花時期のばらつきによる見た目の上での2~3度咲き,2)同一個体内での枝,花芽の着生部ごとの開花時期のばらつきによる見た目の上での2~3度咲き,3)同一箇所の花芽の着生部に複数の花芽が形成され,それらが段階的に開花する2~3度咲き,4)それらが複合された2~3度咲きの4パターンあることが分かった。
著者
近藤 哲也 竹内 清夏
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.495-502, 2004-05-31
参考文献数
25
被引用文献数
2 8

ムラサキモメンヅルは「北海道レッドデータブック(2001)」において希少種に位置づけられているが,渡島支庁の渡島大島では,局内の各所に大規模な個体群が確認され,造成によって裸地化した場所にもいち早く定着している。このことは,本種は北海道での希少種であると同時に自生地周辺の植生回復材料としても有望であることを示唆している。本研究では,本種の保護と植生回復材料としての可能性を探るために,種子の発芽条件とその後の生育に間する実験を行った。種子は硬実休眠を有しており,無処理の種子は10%以下の発芽率であった。硬実休眠は凍結・解凍処理によっては打破できなかったが,濃硫酸に20〜90分間浸漬することで播種後6日以内に100%近い発芽率を得ることができた。電子顕微鏡による観察によって,濃硫酸処理は種皮に穴や亀裂を生じさせていることが示された。休眠を打破された種子は10〜30℃の温度で播種後10日以内に90%以上の発芽率を示し,14ヵ月間貯蔵後でも90%以上の発芽率を維持した。野外のセルトレイに5月25日に播種し,発芽した実生を圃場に移植した結果,翌年の10月には10個体のうちの6個体が開花結実した。
著者
大澤 啓志 横堀 耕季 島村 雅英
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.453-456, 2020

<p>トンボ池創出後の園芸スイレンの繁茂に対し,除去効果を検討した。スイレンに覆われた水域に15m<sup>2</sup>のスイレンを除去した開放水面区画を設け,トンボ類の飛来回数を非除去区画と比較した。初夏から秋季にかけての計10回の調査により,3科9種の計127回の飛来を確認した。それぞれ飛来数の多くなる繁殖期間で比較すると,シオカラトンボ(開放水面区:平均1.5~4回,繁茂水面区:平均0.3~0.7回)とギンヤンマ(同:平均2~3.3回,同:平均0.7~1回)が開放水面区に有意に多く飛来していた。確認数は多くはなかったが,クロスジギンヤンマは非確認であった繁茂水面区に対し,開放水面区に飛来する傾向が認められた。一方,必ずしも繁殖に広い開放水面を必要としないアオモンイトトンボでは,条件間で飛来回数に有意差は認められなかった。繁茂スイレンの除去はトンボ相修復に対して一定の効果が期待されるものの,飛来が期待されたかつての生息記録種の飛来は多くはなく,対象水域周辺地域のトンボ類の生息状況も影響していると考えられた。</p>
著者
入山 義久 飯塚 修 高山 光男
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.169-172, 2002 (Released:2004-08-27)
参考文献数
5
被引用文献数
3 4

国内に自生する草本性の在来種4種について, 収集した種子から育苗定植した株及び収集した母株を供試し, 開花期間及び採種性の調査を行った。種子採種が可能となる所要年数は, 種子から育苗定植した場合は, カワミドリ及びエゾミソハギで育苗定植当年, オミナエシ及びオトコエシで翌年, 一方, 収集母株を移植した場合は, 4種ともに移植当年であった。採種量は, オミナエシ及びオトコエシは年次経過に伴い増加したが, カワミドリは減少し, エゾミソハギは年次により変動した。10 a当りの期待採種量は, 最大でカワミドリ25 kg以上, エゾミソハギ40 kg前後, オミナエシ30 kg以上, オトコエシ30 kg前後と試算された。供試した在来種4種は, 圃場での種子の大量生産が可能であることが示唆され, また緑化に利用可能な有望草種と判断された。
著者
正月 公志 福永 健司 橘 隆一
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.143-146, 2011 (Released:2012-03-14)
参考文献数
9
被引用文献数
2 1

ポット底面の空気根切り処理の違いが,苗の根系成長に与える影響を明らかにすることを目的とし,コナラとネズミモチの稚苗を底面の通気及び排水性の異なるポットに鉢上げしてから,615日間育成した。その結果,コナラについては,主根のルーピング防止効果が認められた。また,ネズミモチは,ルーピングの完全な防止効果は認められなかったものの,抑制効果は認められた。このことから,ポット底面の形状の違いがコナラおよびネズミモチの根系成長に対して顕著な影響を与えたと推測され,空気根切りを用いた苗木育成のルーピング防止または抑制に対する有効性が認められた。
著者
稲垣 栄洋 稲垣 舜也 加藤 百合子 河合 眞 砂川 利広
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.183-186, 2017 (Released:2018-03-15)
参考文献数
20
被引用文献数
1

農道法面や畦畔法面の草刈り管理に代わり,踏圧により畦畔雑草を抑制するロボットを開発する基礎として,踏圧処理が畦畔の植生に及ぼす影響について調査した。その結果,踏圧処理により,匍匐性のシロツメクサが優占する植生となり,斑点米カメムシの発生源として問題となるイネ科雑草のネズミムギが抑制された。また,その効果は週に 1度,自重 4 kgの園芸用台車を走行させるという低頻度の刺激で可能であった。
著者
松江 正彦 長濱 庸介 飯塚 康雄 村田 みゆき 藤原 宣夫
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.318-324, 2009 (Released:2010-07-27)
参考文献数
10
被引用文献数
6 11

温室効果ガスの主要な構成要素であるCO2 を減らすためには,排出量を減らすことと併せて,植物による吸収・固定を推進させることが必要である。都市緑化等の推進は,その対策の一つとして重要な役割を担っており,その効果を定量的に明らかにし,京都議定書の報告等にも活用可能な算出手法の開発が求められている。本研究では,木質部重量の増加量からCO2 の固定量が算定できることに着目し,我が国の街路樹や都市公園などに多用されている樹木の部位毎の乾燥重量測定・樹齢判読等を行い,胸高直径を基にした樹木1 本当たりの年間CO2 固定量の算定式の作成を試みることとした。これまでに,樹齢20 年前後の6 樹種を対象に同様の手法で研究・報告を行っているが,今回はその内の5 種に新たな1 種を加え,樹齢30 年から50 年前後の樹木を調査対象とし,先行研究のデータと合わせて解析した。その結果,樹齢50 年前後までを適応範囲とする年間木質部乾重成長量の算定式とそれを基にした年間CO2 固定量算定式を作成した。今後さらなる研究を進め,都市緑化樹木のCO2 吸収・固定効果を明らかにすることで,都市緑化の促進に貢献するものと考えられる。
著者
村上 健太郎 前中 久行 森本 幸裕
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.15-20, 2003 (Released:2005-09-16)
参考文献数
21
被引用文献数
4 4

京都市内の孤立林22箇所および京都盆地周辺にある山林内において, 生殖様式や受精様式,染色体の倍数性の異なるシダ植物の種数,優占度を調べた。山林と孤立林における二倍体種,高倍数体種の種数および被度を比較した場合,孤立林において二倍体種の種数,被度は減少した。孤立林の林床では,山林に比べて,高倍数体無配生殖種の割合が高かった。これは無配生殖種が,必ずしも水分を必要としない,より簡便な生殖法を持っていることが影響していると考えられた。自家受精ができない二倍体種は,十分な湿度と他の個体から生じた複数の胞子がある場所でしか更新することができないので,孤立距離の増大や林床の乾燥化とともに移入率が低下すると考えられ,高倍数体無配生殖種や林床性の二倍体種の割合は都市化の指標となりえることが考察された。
著者
佐伯 いく代 飯田 晋也 小池 文人 小林 慶子 平塚 和之
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.115-120, 2012 (Released:2013-04-16)
参考文献数
30
被引用文献数
1 1

ワレモコウ (Sanguisorba officinalis) は,里山の半自然草地を主たる生育地とするバラ科の多年生草本である。このような里山の草原性植物は,弥生時代以降,刈取や火入れといった人為的攪乱に乗じて生育範囲を拡大させてきたといわれている。本研究では,こうした歴史が本種の遺伝的変異のパターンに影響を与えたのではないかとの仮説をたて,検証を試みた。全国から 179個体のワレモコウの葉を採集し,葉緑体 DNA の地理的変異を解析した。その結果,17 種類のハプロタイプが検出されたが,ハプロタイプの分布には強い地理的なまとまりがみられなかった。SAMOVA によって遺伝的境界の探索を行うと,グループ数を 6 としたときに Fct 値 (0.55) がプラトーに達した。このときに同一のグループに分類された集団の中には飛び地になっているものがみられ,複数のハプロタイプが広域かつ離散的に分布する種であることが明らかにされた。この特徴は,ハプロタイプの分布に明瞭な地理的まとまりをもつことの多い日本産木本植物などとは異なるものであり,里山における人為的な利用がワレモコウの遺伝構造に影響を与えた可能性が示唆された。
著者
山田 壽夫
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.293-298, 2006-11-30

世界の森林・林業を取り巻く状況は,依然,厳しいものがある。森林の劣化・減少は様々な問題を引き起こし,また,こうした問題が,更に,森林の減少・劣化に繋がる悪循環を生んでいる。我が国は世界で森林分野の課題に対する様々な国際協力を展開してきており,中国に対する協力に関しては1998年の日中首脳会談以降,積極的に取り組んでいるところである。協力に際しては様々な手法が試みられており,政府関係機関の事業においては,我が国で長年培われてきた優れた技術のみならず,現地で研究・開発され,育まれた技術が駆使され,さらに他のプロジェクトへ応用されている例もあり,一方,非政府組織の協力として小渕基金による草の根レベルの活動も大きな広がりを見せている。中国が環境問題への取り組みを引き続き行うこと,また,木材需要の急激な増加に適切に対処することを支援するためにも,今後も,こうした様々なスキームを用いて同国の緑化事業に対して協力を行うことが重量であると考える。
著者
稲本 亮平 田中 健一 竹波 信宏 松本 淳一 土居 幹治 藤島 哲郎 河野 修一 江崎 次夫 全 槿雨
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.162-165, 2013 (Released:2014-04-02)
参考文献数
4
被引用文献数
1 3

エチゼンクラゲや食用クラゲなどのクラゲ類を脱塩・乾燥しチップ化したクラゲチップは,自重の約 8 倍の水を吸収するという保水性に優れ,保水機能の低下後は微生物などによって分解され,化学肥料並みの窒素含有量を含むなど肥料効果が認められる。さらに製材の際にでるオガクズも分解のやや遅い有機質の保水材として着目し,この両者の保水性と遅効性の肥料効果を活かして種子吹付工の資材に組み込んだ有機緑化資材を開発した。林道切取りのり面での半年間の実験の結果,植生の発芽や生育状況が無施用区に対して,有意な差を示し,その有効性が確認された。今後,周辺環境に対する負荷の少ない有機質のり面緑化用資材としての活用が期待できる。
著者
野々村 敦子 増田 拓朗 守屋 均
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.3-8, 2006-08-31
参考文献数
12
被引用文献数
1 2

研究対象地域である香川県直島は,1976年から現在までに山火事が7件発生していることから,山火事が発生しやすい環境下にあるといえる。樹木による被覆を失った裸地面では,森林本来の機能を失うため,土壌浸食を受けやすく,土壌劣化の可能性が高い。よって,健全な緑地環境を保全するためには,山火事による被害を最小限に抑えることがきわめて重要である。本研究では,2004年1月13日に発生した山火事において,現地調査の結果と衛星データを用いて,山火事による植生被害及び火災後の回復能力という点について火災前の植生との関係を解析・評価した。その結果,活性度が高い植生には延焼防止効果があること,さらに活性度の高い植生は高い回復能力を持つことを明らかにした。本研究を通して,今後の森林の育成および管理に関する基礎データを得ることができた。
著者
小林 恭子 勝野 武彦 藤崎 健一郎
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.197-200, 2001-08
参考文献数
6
被引用文献数
2 3

コケシートとは乾燥させたコケ(蘚類)をネットに挟んでシート状にしたもので, 屋上や壁面へのコケ植栽に使用されている。本研究は, コケシートからコケが良好に生育する条件を明らかにすることを目的とし, コケの種類, 灌水および光条件の違いによる生育の差違を, 緑被率と新芽の数などから比較したものである。灌水頻度を変えた実験では無灌水区の生育は良く, 実験地の気候条件においては自然の降雨のみで充分な生育が可能と判断された。寒冷紗等により光条件を変えた実験ではコケの種類による違いが見られ, スナゴケは相対照度(光量子, 日射もほぼ比例)50%以上の方が旺盛に生育したのに対し, ハイゴケは50%以下の方が生育良好であり, トヤマシノブゴケは20%以下の方が良いという傾向がみられた。
著者
大山 ゆりあ 相澤 章仁 小林 達明
出版者
JAPANESE SOCIETY OF REVEGETATION TECHNOLOGY
雑誌
日本緑化工学会誌 = Journal of the Japanese Society of Revegetation Technology (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.97-102, 2012-08-31
被引用文献数
1

都市域の小・中規模緑地を含む「地区スケール」における鳥類群集の種組成の構造的特徴を明らかにすることを目的とし,千葉県松戸市を対象として鳥類調査を行った。各地区における β 多様性の高低および群集の入れ子構造の有無から調査地区は β 多様性が低く入れ子構造がある 1 地区,β 多様性が低く入れ子構造がない 3 地区,β 多様性が高く入れ子構造がある 2 地区,β 多様性が高く入れ子構造がない 2 地区に分類された。nMDS 法を用いた各調査地点の群集構造と環境要因の分析から,地区の鳥類種組成構造が地形や土地利用の多様性などの景観要素と関連していることが示唆された。
著者
入山 義久 飯塚 修 高山 光男
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.169-172, 2002-08-31
被引用文献数
2 4

国内に自生する草本性の在来種4種について,収集した種子から育苗定植した株及び収集した母株を供試し,開花期間及び採種性の調査を行った。種子採種が可能となる所要年数は,種子から育苗定植した場合は,カワミドリ及びエゾミソハギで育苗定植当年,オミナエシ及びオトコエシで翌年,一方,収集母株を移植した場合は,4種ともに移植当年であった。採種量は,オミナエシ及びオトコエシは年次経過に伴い増加したが,カワミドリは減少し,エゾミソハギは年次により変動した。10a当りの期待採種量は最大でカワミドリ25kg以上,エゾミソハギ40kg前後,オミナエシ30kg以上,オトコエシ30kg前後と試算された。供試した在来種4種は,圃場での種子の大量生産が可能であることが示唆され,また緑化に利用可能な有望車種と判断された。