著者
川村 和彦
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
pp.NSKKK-D-23-00004, (Released:2023-04-03)

果汁が主原料でかつ10%以上含まれる果実飲料の我国での市場規模は約3,000億円と大きい. その果実飲料について, 原料果汁の状況, 生産・消費の状況, 果汁や果実飲料に関する研究の変遷, 業界団体である日本果汁協会の活動について紹介する.
著者
池田 達哉
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.64, no.3, pp.171-176, 2017-03-15 (Released:2017-03-25)
参考文献数
16
被引用文献数
2 3

Glutenin subunit composition, amylose content, and grain hardness are critical determinants for the end-use properties of wheat. Glutenin composition determines gluten strength, which is important for bread-making. Lower amylose content increases springiness, which is important in white salted noodle production. Grain hardness affects the damaged starch content in flour ; a high damaged starch content increases water absorption and facilitates dough fermentation. These qualtiy attributes are genetically determined. Here, I review these genetic traits based on their allelic variation in imported wheat classes and domestic wheat cultivars. It is thus potentially possible to optimize the allelic compositions of these traits in order to improve the end-use properties of domestic wheat cultivars.
著者
齊賀 大昌
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
pp.NSKKK-D-23-00006, (Released:2023-03-10)

There are a wide range of issues that need to be addressed globally with regard to the agriculture, forestry, fisheries and food sectors, including climate change and the associated increase in large-scale disasters. Japan's agriculture, forestry and fisheries industries are facing a shortage of labor due to the ageing of the population. In order to address these issues, the Ministry of Agriculture, Forestry and Fisheries launched the Strategy for Sustainable Food Systems on 12 May 2021 to ensure a sustainable food system. In this lecture, the key points of the strategy are explained from the standpoint of the person responsible for promoting the strategy.
著者
藤田 信吾 大澤 雅子 稲熊 隆博
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
pp.NSKKK-D-22-00089, (Released:2023-03-07)
被引用文献数
1

スイカ赤肉大玉品種‘祭ばやし777’の熟度における,色,カロテノイド含量,一重項酸素消去活性の変化を調査した.色の変化について,授粉後30日までL*値は低下, a*値は上昇したことから,果肉色は急激に赤黒くなり,授粉後40日から50日にかけてL*値は上昇したことから,やや退色したことが予測できた.カロテノイド含量について,授粉後20日から30日にかけてリコぺン含量は増加し,授粉後30日から40日で高い値を示し,50日にかけて減少した.β-カロテン含量は,授粉後日数に伴い増加し続けた.SOAC法で測定した一重項酸素消去活性について,授粉後20日から30日にかけて上昇し,授粉後30日で最も高い値(12.55 µmol α-トコフェロール当量/ mL)を示し,50日にかけて低下した.カロテノイド含量と色に関する項目(L*値,a*値,b*値,a*/b*値)との単相関分析を行ったところ,リコペン含量とa*値との相関は0.898であった.カロテノイド含量は一重項酸素消去活性と密接な関係が報告されているが,本試験においても同様の傾向を確認した.リコペン含量が減少し,β-カロテン含量が増加する授粉後20日から40日における,a*値と一重項酸素消去活性との相関は0.940であり,回帰式y = 0.9761x-13.626 (R2=0.8838)が得られた.以上の結果から,‘祭ばやし777’において,果汁色の測定から一重項酸素消去活性が予測可能であると示唆された.
著者
鈴木 秀之 藤原 有希 木下 郁心
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
pp.NSKKK-D-22-00096, (Released:2023-02-21)
被引用文献数
1

京野菜の中で, 万願寺甘トウ, 丹波黒大豆系の紫ずきん・京夏ずきん, 宇治緑茶にスペルミジンが多く含まれていることが分かった. 宇治緑茶にはスペルミジンばかりでなくスペルミンも多く含まれていた. ただ, 煎茶や玉露を湯で淹れたのでは, スペルミジン・スペルミンは一部しか抽出されないことが分かった. 人工胃液処理すると茶葉に含まれるスペルミジン・スペルミンはよく抽出されたことから, 茶葉を丸ごと食べる新しい食べ方の工夫が期待される.
著者
佐藤 圭吾
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
pp.NSKKK-D-22-00087, (Released:2023-02-21)

A byproduct of sake production is sake-kasu , which contains abundant nutrients. However, since consumption of sake-kasu is decreasing, we attempted to develop a high-value sake-kasu. We steamed the sake-kasu to remove alcohol (nAS) and then inoculated the nAS with lactic acid bacteria or acetic acid bacteria and incubated the samples at 30°C for 2 days. The sugars, organic acids, amino acids, trace elements, and ferulic acid were measured in the fermented sake-kasu. Lactic acid was produced in the sake-kasu fermented with lactic acid bacteria, while gluconic acid was produced in the sake-kasu fermented with acetic acid bacteria. In the sake-kasu fermented with Gluconobacter oxydans NBRC 3189, seven times as much ferulic acid was produced compared to the non-fermented sake-kasu. Thus, we were able to produce a high value sake-kasu by bacterial fermentation.
著者
松本 雄宇 岩崎 優 細川 恵 鈴木 司 井上 順 重村 泰毅 高野 克己 山本 祐司
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
pp.NSKKK-D-22-00090, (Released:2023-02-17)

腎臓病患者の治療食として使用されている低タンパク米の製造工程で生じるERPの脂質代謝改善効果を検討した. 高脂肪食を与えた肥満モデルマウスにERPを摂取させたところ, 体重および精巣周囲脂肪重量の増加が抑制された. また, ERP摂取により糞中TG量が増加した. さらに, 血中ALT活性と肝臓中脂質量の結果から, ERP摂取は高脂肪食に起因する肝障害を抑制することが示された. 興味深いことに, ERP摂取によりインスリン抵抗性に関連するCerS6の発現量低下も観察された. ERPは主にペプチドと遊離アミノ酸から構成されていること, また一部の血中遊離アミノ酸濃度と精巣周囲脂肪重量との間に負の相関関係が認められたことから, 本研究で観察された効果はペプチドと遊離アミノ酸のどちらかないし両方を介していると考えられる. これらの結果から, ERPは抗肥満食品として有用な素材であることが示唆された.
著者
森田 亜紀 早川 文代 大田原 美保
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
pp.NSKKK-D-22-00084, (Released:2023-02-17)

ベーカリー製品に特化した分析型パネルを評価者として,ベーカリー製品9品目の官能評価の設計や品質情報の伝達の際に参照できるテクスチャー用語体系を構築する一助となる調査と解析を行い,以下の結果を得た.(1)ベーカリー製品9品目のテクスチャー描写に使われる用語のデータを得ることができ,そのうち69語が「ベーカリー製品の主要なテクスチャー用語」と位置付けられた.(2)ベーカリー製品と用語を集計し主成分分析を適用したところ,ベーカリー製品のテクスチャーは、「かたさに関連するテクスチャー」,「空気を含んだやわらかさに関連するテクスチャー」に加え,「油脂由来のテクスチャー」や「咀嚼中に口腔内で感じる水分に関連するテクスチャー」が重要であると解釈できた.(3)官能評価の設定や情報伝達に利用できるデータベースが作成でき,ベーカリー製品毎の代表的なテクスチャー用語とその語彙特徴が明らかとなった.
著者
福田 靖子 中田 徳美
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.46, no.12, pp.786-791, 1999-12-15 (Released:2009-05-26)
参考文献数
13
被引用文献数
3 2

スライスアーモンドとゴマ種子の焙煎条件(温度と時間)が抗酸化性に及ぼす影響について4種の抗酸化試験を用いて評価し,以下の結果をえた.(1) 白洗いゴマ,スライスアーモンドの加熱温度はゴマは170℃,185℃,200℃,アーモンドは155℃,170℃,185℃(各加熱温度±1℃)で,時間は30分とした.これら2種の試料を6種の溶媒条件(ヘキサン,ヘキサン-酢酸エチル7:3,酢酸エチル,酢酸エチル-メタノール7:3,メタノール,水)で非極性溶媒から順次抽出した.アーモンド,ゴマ種子とも焙煎温度による6種の溶媒抽出量に大きな差は認められなかった.(2) 酢酸エチル-メタノール,メタノール抽出区分は両試料とも,著しく着色していた.この着色度を420nmの吸光度で測定した結果,どちらの試料も加熱温度が高くなるほど,着色度も高くなった.(3) 着色度の高かった酢酸エチル-メタノール,メタノール区分について抗酸化性を調べた結果,ロダン鉄法では両試料とも,焙煎温度が高くなるほど,リノール酸からの過酸化脂質生成を抑制していた.特に,200℃焙煎ゴマ種子の抽出物の活性は約1/2量のBHAに相当する活性を示した.DPPHラジカル消去能では,同様に両試料とも焙煎温度が高くなるほど消去能が高く,酢酸エチル-メタノール区分が顕著に消去していた。スーパーオキシドラジカルの消去能でも両試料とも高温焙煎で高く,ゴマの酢酸エチル-メタノール区分の消去率は200℃焙煎で,75.00%であった.リノール酸から生じる細胞毒性の高いHNEの生成抑制作用ではリノール酸のみが1450nmol/mlに比べ,ゴマの185℃,200℃焙煎の酢酸エチル-メタノール区分はそれぞれ300nmol/ml,250nmol/mlであり,著しくHNE生成を抑制していた.
著者
久能 昌朗 神岡 太郎
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
pp.NSKKK-D-22-00092, (Released:2023-02-10)

社会の持続性と人類のWell-beingの危機に向かい合うことは「社会の共通善」となり, それらの解決策は「顧客価値」になり, 企業の研究開発の対象となってきている. つまり, 社会課題を解決することが, 投資回収の対象にできるようになってきている. この機会に食品領域の産官学の研究開発が「経済性と社会性の両立」を狙いどころとして, 社会課題の解決のために協働を進めていけば, 我が国の食品産業は, 持続的成長のための新しい「勝ち筋」を創出できるのではないか.
著者
小宮山 誠一 本田 博之 池谷 聡 阿部 珠代 中道 浩司 佐々木 亮 竹内 薫
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
pp.NSKKK-D-22-00054, (Released:2023-02-07)

試料搬送用コンベアを備えた近赤外分光装置を構築し,テンサイのショ糖含量を連続的に非破壊迅速評価する機器を開発した.コンベア速度を毎分20m,サンプル間隔50cmとすると,毎分40個の測定が可能である.主要品種を供試して(205個),各試料のスペクトルデータ(2次微分処理)約1nm毎の吸光度を説明変数,ショ糖含量実測値を目的変数としてPLS回帰分析により検量線を作成した.検量線精度評価用試料(183個)のスペクトルからショ糖含量の推定値を算出した結果,実測値と推定値の相関係数r,予測標準誤差SEPおよび二乗平均平方根誤差RMSEは,それぞれ0.918,0.65%および0.65%と良好であった.検量線の精度は,評価指標であるEI値で17.5%と精度・実用性ともに「高い」判定となった.検量線評価用の全サンプルのショ糖含量の平均値を「実測値」と「推定値」で比較すると,両者は同等の値となることが確認された.評価用サンプルから無作為にサンプルを抽出し(2~100個),それらの平均値を求め(1000反復),実測値と推定値の差を算出した結果,1回の抽出個数が多くなる程その差は小さくなった.50個以上抽出した平均値は,概ね0.1%以内の差で推定できた.以上の結果,本法は非破壊,簡易・省力,迅速なショ糖含量評価手法として活用の可能性が示された.
著者
稲熊 隆博
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
pp.NSKKK-D-21-00114, (Released:2023-02-03)

令和元年における農業総産出額は, 8兆8 938億円となったが, その農業総産出額のうち, 多い順位として, 畜産が第1位であり, 第2位に野菜, 第3位に米となった. そして, 果実は第4位と続いた. その産出額は8 339億円であり, 農業総産出額の約1割を占めることになった. 主要品目はうんしゅうみかん, りんご, ぶどうであり, それらの産出額の合計は, 果実産出額の50 %を超えている。近年、異常気象による台風や大雨、大風、それらによる川の氾濫などにより、うんしゅうみかんやリンゴの産地や地域に大きな被害が出ているとの報道がなされている. 果実の生産は, 果実生産の農家だけに負担させるのではなく, 果汁生産業者や果汁消費者まで含めたエシカルな生産・消費が求められているのかもしれない. 果実生産の産地や地域の現状を直接, 現場の方にお聞きした. 日本における果実生産の現状を知り, 今後果実生産への協力や応援につながれば幸いである.
著者
首藤 正彦
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
pp.NSKKK-D-21-00105, (Released:2023-02-03)

2018年7月の西日本豪雨による土砂崩れや洪水により,愛媛県の柑橘栽培は大きな被害を受けた.被害は柑橘の樹体の流失に止まらず,農道,モノレール運搬車,潅水設備などの農業インフラにも及んだ.災害から3年が経過し,小中規模の土砂崩れの復旧工事が進み,苗木の新植も始まっている.しかし,植付け後,収穫が始まるのは5年,もとの収量に戻るには10年を要する.大規模な土砂崩れの復旧工事はまだ始まっておらず,完成は10年後の予定だが,この間の農業収入の確保が課題となっている.それでも,若い農家のグループでは将来の復旧工事の完了に向けて,苗木の育成を始めている.
著者
竹内 正彦
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
pp.NSKKK-D-23-00007, (Released:2023-02-03)

近年,地球温暖化による農産物への被害,影響が懸念されている.リンゴでは高温により,着色不良や内部褐変の発生や冬場の高温により耐寒,耐凍性が低下した状態での急激な低温,霜による被害が発生している.また台風,秋の長雨による落下や冠水被害の発生も見られる.長野県では多様な品種により7から12月までの長期に渡るリレー方式の栽培がなされている.災害の時期により各品種の生育度合いが異るため,熟度,加害の度合いも異なる.加害果は大半が未熟果であり安全性や食味で多くの課題がある.一方,未熟果には機能性の成分であるポリフェノールを多く含み,機能性の素材として期待される.気象変動に関し,予測,予防,品目,品種,栽培技術面での対策は進んでいるが,被害を受けた農産物の利用法に関する検討は進んでいないのが現状である.今後,国,地域や産地および加工業者が一体とあり安全面の整備,利用法について取り組む必要がある.

1 0 0 0 OA n-6/n-3比

著者
鈴木 平光
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.42, no.6, pp.469, 1995-06-15 (Released:2009-05-26)
参考文献数
1
著者
中村 善行 増田 亮一 藏之内 利和 片山 健二
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.59-65, 2017-02-15 (Released:2017-03-01)
参考文献数
18
被引用文献数
5 6

β-アミラーゼ活性の異なるサツマイモ6品種の塊根を蒸した後の肉質と残存デンプン含有率との関係を調べた.活性の比較的高い品種「べにはるか」および「ひめあやか」の蒸した塊根では加熱前のデンプンの約47%が残存したが,活性が中程度の品種「高系14号」および「タマユタカ」,活性を殆ど持たない品種「オキコガネ」および「サツマヒカリ」のデンプン残存率はそれぞれ約62%,約93%であった.蒸す前後のデンプン含有率の差は蒸した塊根のマルトース含有率から見積もった塊根重量当たりのデンプン分解量とよく一致した.また,デンプン分解率(蒸した塊根のデンプン含有率/未加熱塊根のデンプン含有率×100)と未加熱塊根のβ-アミラーゼ活性との間に高い正相関が認められた.これらのことから,蒸したサツマイモ塊根におけるデンプンの減少はβ-アミラーゼによるデンプン分解に起因し,蒸したサツマイモ塊根にはβ-アミラーゼによって糖化分解されなかったデンプンが残存すると考えられた.蒸した塊根の肉質は未加熱より蒸した塊根のデンプン含有率との関連が深かったことから,デンプン含有率とともにβ-アミラーゼ活性が蒸した塊根の肉質に関わると考えられた.β-アミラーゼ活性極低品種が同程度のデンプン含有率でβ-アミラーゼ活性を有する他の品種に比べ,蒸した塊根の肉質が粉質傾向であるのは,蒸してもデンプンが殆ど分解されないためと推察された.