著者
石原 伸治 川田 あゆみ 井上 美保 渡辺 敏郎 辻 啓介
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.9, pp.412-414, 2007-09-15
参考文献数
8
被引用文献数
2

正常ラットにおけるカキドオシ抽出物の経口糖負荷試験では,ショ糖負荷30分後から60分後にかけての血糖値で,カキドオシ抽出物群は対照群と比べて有意(<I>p</I><0.01)な上昇抑制効果を示した.また,ストレプトゾトシン糖尿病ラットにおける経口糖負荷試験では,ショ糖負荷60分後から90分後にかけての血糖値で,カキドオシ抽出物群は対照群と比べて有意(<I>p</I><0.05)な上昇抑制効果を示した.さらに,カキドオシ抽出物を固相抽出カラムでシリカゲル担体吸着画分と非吸着画分に分けたところ,非吸着画分に血糖値上昇抑制作用が認められた.
著者
松村 康生
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.66, no.8, pp.271-289, 2019-08-15 (Released:2019-09-12)
参考文献数
35
被引用文献数
1

Food emulsions are thermodynamically unstable systems due to destabilization processes such as flocculation, creaming and coalescence. Thus, the maintenance of kinetic stability is critically important to obtain high-quality commercial products. Our group has been studying the adsorption behavior and interaction at the interface of several components in oil-in-water emulsions, particularly, the two major components, i.e., proteins and low-molecular weight surfactants (emulsifiers) to understand the factors governing quality of food emulsions. In this review, I show the main results of our studies on food emulsions over the past 30 years. The topics are as follows: 1) the interaction of proteins and emulsifiers, particularly the displacement of proteins from the interface by emulsifiers; 2) Fat crystallization as a cause of partial coalescence of oil droplets; 3) Emulsion formation and stabilization by adsorption of fine particles; 4) Rapid evaluation of long-term stability of emulsions.
著者
大澤 克己 松井 淳一 丸田 正治 森田 祐子 斉藤 信博
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.62, no.12, pp.585-590, 2015
被引用文献数
1

長野県木曽地域の伝統食品である無塩乳酸発酵漬物すんきから植物由来乳酸菌を分離し,ヨーグルト製造に適した乳酸菌を選抜を行い,その乳酸菌を用いたヨーグルトが開発できた.初発菌数1.0×10<sup>8</sup>cfu/ml,発酵時間24時間以内で良好なカードが形成でき,牛乳以外に他の乳酸菌増殖用添加物を使用しないで商業ベースでヨーグルトを製造することを可能にした.
著者
田幸 正邦 武田 真治 照屋 武志 玉城 志博
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.12, pp.495-502, 2010-12-15
被引用文献数
1 2

著者らは沖縄県で約300年間食されている褐藻類の1種のナガコンブから複数のフコイダンを分離し,それらの化学特性を調べた.ナガコンブから0.1mol/L塩酸で多糖を抽出し,塩化セチルピリジニウムで部分精製を行った.得られた部分精製多糖を陰イオン交換クロマトグラフィーで分画し,4つの画分(LA-1, LA-2, LA-3およびLA-4)を得た.LA-1, LA-2, LA-3およびLA-4の化学組成比には差異が認められたが,いずれの画分もL-フコースおよび硫酸を有していた.LA-1, LA-2, LA-3およびLA-4の分子量はそれぞれ27.7×10<SUP>4</SUP>, 1.0×10<SUP>4</SUP>, 0.8×10<SUP>4</SUP>および1.9×10<SUP>4</SUP>であった.主要な画分であるLA-2とその脱硫酸化物の<SUP>1</SUP>H-NMRスペクトルを解析した結果,(1→3)-結合α-L-フコピラノシル残基を主鎖とし,主鎖の一部のα-L-フコピラノシル残基のC2位に(1→2)-α-L-フコピラノシル残基が結合し,さらにこれらのα-L-フコピラノシル基のC4位が硫酸化されている構造が示唆された.画分LA-3とLA-4はフコイダンとガラクタン硫酸が混在したものであることが分かった.
著者
山中 美穂 大田 忠親 福田 哲生 西山 一朗
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.51, no.9, pp.491-494, 2004-09-15
被引用文献数
1 8

マタタビ属果実の品種/系統特性ならびに有効な利用法を検討するため,果汁中に含まれるアクチニジン濃度およびプロテアーゼ活性について調査を行った.用いた12品種/系統のうち,'さぬきゴールド'および'Ananasnaya'では,主要な経済栽培品種である'ヘイワード'と比較して,アクチニジン濃度やプロテアーゼ活性が有意に高値を示した.一方,'ファーストエンペラー','ティアドロップ'および'紅鮮'の果汁では,アクチニジン濃度やプロテアーゼ活性が有意に低値を示した.特に'紅鮮'果汁のプロテアーゼ活性は,'ヘイワード'のわずかに13%であった.
著者
丸 勇史 大西 淳 山口 信也 小田 泰雄 掛樋 一晃 太田 泰弘
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.146-149, 2001-02-15 (Released:2010-01-20)
参考文献数
7
被引用文献数
4 6

We examined an estrogen-like activity in the pomegranate (Punica granatum) juice. The juice or its methanol eluate from C18 cartridge competed with 17β-estradiol for estrogen receptor (ER) binding and also stimulated proliferation of human ER-positive cell (MCF-7) in vitro. Furthermore, they effectively increased uterine weight in the ovariectomized rat. On the basis of these data, we concluded that the pomegranate juice contained estrogen-like compounds.
著者
樋渡 一之 成澤 昭芳 保苅 美佳 戸枝 一喜
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.40-43, 2010-01-15
被引用文献数
1 9

γ-アミノ酪酸(GABA)含有米糠発酵エキスを配合した飲料の血圧上昇抑制作用を検証することを目的として,高血圧自然発症ラットを用いた実験を行った.ラットの体重1kg当たり10.1mgのGABAを含む飲料を1日1回強制経口投与し,8週間飼育した.GABAを含む飲料を摂取した群は対照飲料を摂取した群に対して3週目から低値を示した.試験7週目の血圧は,対照群の234mmHgに対して GABA摂取群は218mmHgであり,有意な低値であった.以上の結果より,GABA含有米糠発酵エキスを配合した飲料は,血圧上昇抑制作用を示すことが明らかとなった.
著者
後藤 昌弘 橋本 和弘 山田 喜八
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.50-54, 1995-01-15
参考文献数
5
被引用文献数
4 10

フランスから導入された新しい調理法である真空調理についてその特性を明らかにするため,野菜,果実,肉類などを用いて調理を行い,従来の調理法(普通調理)とアスコルビン酸残存率,テクスチャー,食味のちがいなどを比較した.<BR>1)野菜類では真空調理は普通調理に比べ,アスコルビン酸の流出が少なかった.また,キウイのフルーツソースでは,緑色が保たれた.<BR>2) 肉類の調理では歩どまりがよく,軟らかく仕上がった.<BR>3)香ばしさを出したり,生臭さをなくしたりする必要のある料理は官能検査の評価が低く,適さなかった.<BR>4)肉じゃがや果実のコンポートのように調味液をしみ込ませる料理では官能検査の評価が非常に高く,最も適していると思われた.
著者
星 幸子
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.67, no.8, pp.292-297, 2020

<p>The superiority of domestic fruits, seaberry, <i>Hippophae rhamnoides </i>L., which was launched in 2005 in domestic commercial cultivation, was verified by analyzing component data and oil component data etc. and comparing with foreign seaberries.</p>
著者
坂本 彬 井上 博之 中川 致之
出版者
日本食品科学工学会
巻号頁・発行日
vol.59, no.7, pp.326-330, 2012 (Released:2013-10-08)

(1)日本国内で市販されている世界各地で生産された紅茶12銘柄を購入し,その化学成分などを分析,測定した。12銘柄はスリランカ4,インド3,中国2,日本1である。(2)タンニン,カテキン類8項目,没食子酸,テアフラビン類4項目,L-グルタミン酸,L-テアニン,γ-アミノ酪酸,遊離糖類3項目の含有量は変動が極めて大きかった。グルタミン酸,テアニン,また総アミノ酸については並級煎茶に匹敵する量を含む銘柄もあった。またγ-アミノ酪酸を60mg%以上含む銘柄もあったが発酵過程で増加したものであるかは判別できなかった。(3)4種のテアフラビンを個別に定量した結果,テアフラビン-3,3'-di-0-ガレートが最も多く,ついでテアフラビン-3-0-ガレート,次ぎに遊離のテアフラビンでテアフラビン-3'-0-ガレートが最も少なかった。また,テアフラビン合計値と赤色彩度を示す表色値aの間に相関が認められた。(4)遊離の糖類のうち,蔗糖,ブドウ糖,果糖,麦芽糖を分析したが麦芽糖は含まれず,検出された3種のうち蔗糖,ブドウ糖が多く,糖類合計として平均1.6%であった。(5)紅茶に含まれる有機酸のうち,シュウ酸を分析した。12銘柄平均含有量は0.54%であったが,シュウ酸特有のエグ味として影響する量ではないように思われた。(6)pHは緑茶同様にほぼ一定範囲に収まり,ほぼ5.00~5.4の範囲であった。
著者
大島 誠 杉浦 実 上田 佳代
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.114-120, 2010-03-15
参考文献数
22
被引用文献数
6

軽度脂質代謝異常を有する肥満男性26名に対し,β-クリプトキサンチンを強化させたウンシュウミカン果汁(強化果汁介入群)と通常量のβ-クリプトキサンチンを含有するウンシュウミカン果汁(対照果汁介入群)を1日160g,8週間連続摂取させ,介入前と介入4週間および8週間後の血清β-クリプトキサンチン濃度,脂質代謝および肝機能指標値の変化について検討した.<BR>果汁投与後の血清β-クリプトキサンチン濃度はいずれの群においても介入前に比べて有意に上昇し,この上昇は強化果汁投与群においてより顕著であった.強化果汁介入群における8週後の血中ALT値およびγ-GTP値は4週後に対して有意に低下していた.血清β-クリプトキサンチンと肝機能指標値との関連について横断的な解析を行ったところ,いずれの肝機能指標値も介入前には血清β-クリプトキサンチン濃度と有意な相関は認められなかったが,介入4週および8週後ではそれぞれ有意な負の相関が認められ,これらの負の相関は8週後においてより顕著であった.一方,強化果汁介入群では,投与8週後のHDLコレステロール値およびLDLコレステロール値の低下がみられたが,対照果汁介入群とは有意な差は認められなかった.<BR>これらの結果から,β-クリプトキサンチンを豊富に含むウンシュウミカン果汁の摂取は肝機能障害の改善に有効である可能性が示唆された.
著者
金沢 和樹
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, 2008-04-15

フコキサンチンは,炭素数40のイソプレノイド構造を骨格とするテトラテルペン類で,自然界に600種類余り存在するカロテノイドの一つである.カロテノイドのうち,化学構造に酸素を含むものをキサントフィルと細分類するが,フコキサンチンは褐藻が特異的に生産するキサントフィルで,1914年に発見,1969年に化学構造が決定された(図1).よく知られているキサントフィルに鮭のアスタキサンチン,マリーゴールド色素のルテイン,柑橘のβ-クリプトキサンチンなどがあり,いずれも鮮やかな黄色から橙色なので,古くから食品の着色料として利用されているが,フコキサンチンも鮮橙色である.<BR>褐藻は日本人が好んで食する海藻である.フコキサンチン含量は,生褐藻の場合,新鮮重100gあたりおおよそ,コンブ19mg,ワカメ11mg,アラメ7.5mg,ホンダワラ6.5mg,ヒジキ2.2mgである.日本人は干し海藻にすることが多いが,乾物にするとコンブ2.2mg,ワカメ8.4mg,他は検出限界以下となる.つまり酸化に不安定であるが,これは化学構造にアレン結合があるためと考えられている.褐藻を餌とする貝類のカキやホヤもフコキサンチンを多く含み,さらにアレンが安定なアセチレンとなったハロシンチアキサンチンを含んでいる.<BR>注目を浴びているフコキサンチンの生理機能の一つは発がん予防作用<SUP>1)2)</SUP>である.フコキサンチンがヒト前立腺がん細胞にアポトシースを誘導する作用は,カロテノイド類の中ではもっとも強い.また,結腸がんモデル動物に経口投与すると,前がん病変形成を有意に抑えた.作用機序は,p21<SUP>WAF/Cip1</SUP>というタンパク質の発現を促すことで,その下流のレチノブラストーマタンパク質をリン酸化するサイクリンDとキナーゼ複合体の活性を阻害し,レチノブラストーマタンパク質からの転写因子E2Fの遊離を抑えることであった.結果として,腫瘍細胞の細胞周期をG<SUB>0</SUB>/G<SUB>1</SUB>期で停止させ,腫瘍の増殖を抑えた.<BR>もう一つは宮下和夫らによる興味深い発見,肥満予防効果<SUP>3)</SUP>である.食餌フコキサンチンは,白色脂肪細胞に,ミトコンドリア脱共役タンパク質1の発現を促す.このタンパク質は,本来はATP生産に用いられるミトコンドリアの電気化学ポテンシャルを体熱として放出させる.結果としてフコキサンチンは,脂肪細胞の脂肪を体熱として消費させることで肥満を防ぐ.<BR>フコキサンチンは栄養素ではなく非栄養素である.栄養素は体内に加水分解吸収されて肝臓でエネルギー代謝されるが,非栄養素は加水分解吸収後,まず小腸細胞内で代謝を受ける.小腸細胞内代謝で官能基がグルクロン酸や硫酸抱合を受け,生理活性を示さない化学形態となり,多くは管腔側に排泄さる.したがって,非栄養素がヒト体内で機能性を発揮するか否かは,小腸細胞内でどのような代謝を受けるかによる.フコキサンチンの体内吸収率は数%であるが,小腸細胞吸収時に図1の右環のアセチル基がアルコールのフコキサンチノールに加水分解されるだけで体内吸収される.体内では一時的に脂肪細胞にとどまり,数十日ほどの体内半減期で尿に排泄される.また一部は肝臓で,左環がアマロシアザンチンAに代謝される.長尾昭彦らによると,この2つの代謝物が生理活性の本体である.フコキサンチンを生昆布量に換算して日に100kgを4週間与えても,その動物に異常は認められていない.他のキサントフィルにも過剰摂取毒性は今のところ報告されていない.フコキサンチンなどのキサントフィル類による,ヒトの生活習慣病予防に大きな期待が寄せられている.
著者
早田 邦康
出版者
日本食品科学工学会
巻号頁・発行日
vol.61, no.12, pp.607-624, 2014 (Released:2015-03-26)
著者
原田 修 桑田 実 山本 統平
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.6, pp.261-265, 2007-06-15 (Released:2007-10-04)
参考文献数
13
被引用文献数
3 8

開発した高圧熱水抽出装置を用いてイワシ鱗からゼラチンの抽出を行い,ゼラチンの抽出挙動および抽出ゼラチンの性状について検討した.本方法による抽出では抽出管のフィルターに目詰まりは認められず安定した抽出を水だけで行うことができた.抽出管出口温度が温度領域143-153℃以上において加水分解反応が顕著になり,抽出管入口温度225℃ 8分間(抽出管出口温度156-202℃)の抽出でほとんどのイワシ鱗コラーゲンが溶出することが分かった.抽出物中のタンパク質はほぼゼラチンであり,数パーセントのアパタイトと考えられる灰分が含まれていた.またアミノ酸の顕著な熱分解は認められなかった.抽出されたゼラチンの分子量はGPC曲線のピーク地点で443kDa付近から6.5kDa付近となっており,抽出温度が高くなるほど低くなった.入口温度225℃で400-1000mLの画分では,分子量分布の狭いペプチド領域のゼラチンが得られた.
著者
増田 亮一
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.218-219, 2017

<p>大豆を磨砕し水に分散させた豆乳は最近,いわゆる "豆乳" とは違った加工素材としての利用が発展している.2015年大会の研究小集会大豆部会では,豆乳ベースの素材開発の背景となる大豆成分の分離技術の原理とその応用を扱った.長年,豆腐凝固過程の解明に取り組まれてきた小野先生には,豆腐用と飲用では豆乳の加熱処理条件が異なり,豆乳コロイド分散系の凝集に関わるタンパク質,オイルボディや共存する凝固剤や各種成分の働きに相違が生じる現象を解説して頂いた.次いで,食品工学的な観点から豆乳を解明し,脂質·油滴に着目されている藤井先生には,豆乳コロイド分散系の構造と凝集過程の挙動の解説,さらに豆乳中の安定なオイルボディをプロテアーゼと加熱処理によって変性させるとクリーム様素材となる実例を示して頂いた.</p>
著者
村田 容常
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.1-12, 2020-01-15 (Released:2020-01-27)
参考文献数
100
被引用文献数
2 2

Food chemistry studies on enzymatic browning and the Maillard reaction were reviewed. Enzymatic browning can broadly be categorized into immediate and delayed types. We investigated the mechanisms and regulation of enzymatic browning of apple as an example of the immediate type, and browning of lettuce and mung bean sprout as the delayed type. The Maillard reaction is the major cause of non-enzymatic browning. However, melanoidins, which are the major brown pigments formed by the reaction, are large, heterogenous, high-molecular-weight compounds with chemical structures that are difficult to elucidate. We therefore focused on the low-molecular-weight pigments formed by the Maillard reaction. We identified various novel pigments in model systems and foods based on instrumental analyses.
著者
星 幸子
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.67, no.8, pp.292-297, 2020-08-15 (Released:2020-08-26)
参考文献数
14

The superiority of domestic fruits, seaberry, Hippophae rhamnoides L., which was launched in 2005 in domestic commercial cultivation, was verified by analyzing component data and oil component data etc. and comparing with foreign seaberries.
著者
鈴木 誠 渡辺 敏郎 三浦 麻子 原島 恵美子 中川 靖枝 辻 啓介
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.49, no.7, pp.507-511, 2002-07-15
参考文献数
20
被引用文献数
13 18

本実験ではFolin-Denis法の抽出溶媒の比較検討をおこなった.抽出溶媒には,蒸留水,各種濃度の含水メタノール,含水ェタノール,含水アセトン,およびDMSOを用いた.<BR>結果は各試料ごとに異なり,赤ワイン抽出物では含水エタノール,緑茶抽出物では含水メタノール,イチョウ葉抽出物では含水アセトンが高い値を示したが,DMSOで抽出すると,いずれの試料を用いた場合でも最も高い値を示した.また添加回収実験では,DMSOで抽出した場合に添加した(+)-カテキンが最も効率よく回収できた.このことより,Folin-Denis法における抽出溶媒にはDMSOが最も適していることがわかった.
著者
金子 成延 児玉 偉丈 神山 紀子 渡辺 寛人 早瀬 文孝
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.8, pp.439-442, 2013-08-15 (Released:2013-08-31)
参考文献数
17
被引用文献数
4 5

押麦加工した大麦に加水後加熱して生じる揮発性化合物を連続水蒸気蒸留法で抽出してGC,GC-MSで分析し,炊飯した大麦の香気成分についてアルデヒド11種,アルコール11種,ケトン9種,カルボン酸1種,フラン化合物2種を同定した.AEDA法により最大のFDファクターを示したアルデヒド4種(hexanal,(E,E) -2,4- nonadienal,(E) -2-nonenal,(E,E) -2,4-decadinenal) が炊飯大麦の香気の特徴に関与していることが明らかになった.
著者
中澤 洋三 坂 尚憲 山﨑 雅夫 佐藤 広顕
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.64, no.9, pp.476-482, 2017-09-15 (Released:2017-09-22)
参考文献数
20
被引用文献数
2

エミュー肉は,アメリカやオーストラリアにおいて,健康的な食材として流通しているが,その加工特性は不明な点が残されている.本研究は,エミュー肉を使ったフランクフルトソーセージ製造のための化学的および加工特性を明らかにすることを目的とした.豚もも肉と比較し,エミューもも肉は,高タンパク質であるが,コレステロールを含む脂質の量が顕著に低かった.また,エミューもも肉は豚もも肉よりも6倍多くの鉄を含んでいた.エミューのひき肉に塩を加えたところ,塩溶性タンパク質の溶出が低かったが,得られた加熱ゲルは高いゲル強度を示した.発色剤によって発色されたエミュー肉糊の色は,豚肉のそれと比較し,加熱に対し安定性を示した.これらの結果を基に,最適化した方法で調製したフランクフルトソーセージは,良好な物性と色調だけでなく,高タンパク,高鉄分,低脂質,低塩分および低カロリーを示す製品であった.