著者
北野 泰奈 中村 祐美子 卾 爽 畠山 雄有 山本 和史 坂本 有宇 都築 毅 仲川 清隆 宮澤 陽夫
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.182-190, 2015-04-10 (Released:2015-05-31)
参考文献数
53

我々は最近,1975年頃の日本食は現代の日本食に比べて健康有益性が高いことを示した.1975年日本食の特徴のひとつに肉類の摂取量が低いことがあげられる.そのため,肉類を他の食品と置換することで,健康有益性の増加が期待できた.そこで本研究では,現代の日本において広く食べられている「ソーセージ」を伝統的な日本の食品である「かまぼこ」に置換することによる効果を,ラットを用いて検討した.凍結乾燥·粉末化した「ソーセージ」または「かまぼこ」を通常飼育食に重量当たり20%混合し,SD系ラットに4週間与えた.その結果,「ソーセージ」群に比べて「かまぼこ」群において,血漿と肝臓における脂質量と過酸化脂質量が低下した.次に,「かまぼこ」のタンパク質·脂質·炭水化物のエネルギーバランスと塩分を精製飼料のみを用いて再現した「mimicかまぼこ」を作製した.これを通常飼育食に混合し,ラットに4週間与えた.その結果,「mimicかまぼこ」群に比べて「かまぼこ」群で脂質量と過酸化脂質量が低下した.以上より,「ソーセージ」を「かまぼこ」で置換することは脂質量と過酸化脂質量を低減するために健康有益性が増加することが示され,この効果は「かまぼこ」のエネルギーバランスのみに依存しないことが示唆された.
著者
氏原 邦博 吉元 誠 和田 浩二 永井 竜児 広瀬 直人 照屋 亮
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.6, pp.343-349, 2009-06-15
参考文献数
15
被引用文献数
1 4

黒砂糖の色調,栄養成分,機能性成分および食味等に搾汁機のローラーの材質およびライミング処理が及ぼす影響を調査し,以下の結果を得た.<BR>(1) 市販黒砂糖の暗色化の原因は,搾汁機のローラー由来の鉄とライミング処理によるものであり,これらがアミノカルボニル反応を促進することで着色が進み,暗色化していることが明らかとなった.搾汁機のローラーの材質をステンレスに換え,ライミング処理しないことにより,黒砂糖の色調は明るくなった.<BR>(2) ステンレス製ローラーで搾汁し,ライミング処理しない黒砂糖は鉄製ローラーで搾汁し,ライミング処理した黒砂糖よりも鉄含量とカルシウム含量は少なかったが,スクロース含量,アミノ酸組成,カリウム含量,マグネシウム含量および機能性成分であるポリフェノール含量は同程度であった.<BR>(3) ステンレス製ローラーで搾汁し,ライミング処理しない黒砂糖の明るい色調は消費者に好まれ,食味は苦味,えぐみ等が改善されたことにより評価が優れ,料理への適性も高いと考えられた.
著者
川村 純 琴浦 聡 奥山 孝子 古本 真理 府中 英孝 三明 清隆 杉山 雅昭 大西 正男
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.5, pp.218-224, 2013-05-15 (Released:2013-06-30)
参考文献数
25
被引用文献数
1

廃鶏表皮を原料として脱脂乾燥鶏皮粉末(DCS)を調製し,その摂取がヒトの肌に及ぼす影響を確認する目的でヒトによる二重盲検並行群間試験を実施した.その結果,DCS摂取群において皮膚水分量の増加傾向が認められ,特に皮膚の乾燥が重度な被験者においてはプラセボ摂取群と比較して有意に増加した.また,DCSの摂取後では皮膚弾力性が摂取前と比較して有意に増加していた.本試験の結果から,DCSの摂取は皮膚の乾燥が重度な人の皮膚保湿性を改善させ,加齢により低下した皮膚弾力性を改善する可能性が示された.
著者
辻田 隆廣 高久 武司
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.102-108, 2008-03-15
参考文献数
17
被引用文献数
4 5

カンキツ類の未熟果,成熟果果皮及びじょうのう膜に含まれる脂肪分解活性を測定し,比較検討した.未熟果と成熟果の果皮及びじょうのう膜に脂肪分解活性が認められたが,果汁には認められなかった.未熟果の活性が最も高く,じょうのう膜は果皮の約30%であった.果皮ではフラベドがアルベドより約3倍高い活性が認められた.田中の分類によるダイダイ区(イヨカン,アマナツ等)やミカン区(ウンシュウミカン,ポンカン等)のカンキツには強い脂肪分解活性が認められたが,ライム区(タヒチライム等),シトロン区(レモン等)及びザボン区(土佐ブンタン,グレープフルーツ等)のカンキツには強い脂肪分解活性は認められなかった.以上のことより,カンキツの種類により脂肪分解活性は大きく異なり,未熟果,果皮及びじょうのう膜でもその傾向は同じであった.未熟果のシネフリン含量と脂肪分解活性の間には正の相関関係が認められた.<BR>以上のことより,カンキツジュース製造過程の廃棄物である搾汁粕(果皮やじょうのう膜)は,抗肥満作用やコレステロール低下作用を有する機能性食品素材としての利用が考えられる.
著者
春日 敦子 青柳 康夫
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.6, pp.229-235, 2011-06-15

大豆の浸漬水温の違いによる吸水時間と吸水量の関係を明らかにし,浸漬水温,浸漬時間,加熱時の昇温速度がイソフラボン含量に及ぼす影響を検討した.<BR>(1)平衡吸水量に到達するまでの時間は水温が60℃ではおよそ2時間,40℃では6時間,20℃では17時間であり,5℃では24時間の浸漬でも吸水量が平衡に到達しなかった.<BR>(2)浸漬水温がイソフラボン組成に与える影響は,浸漬時間が12時間では,5, 20, 30℃では浸漬によるイソフラボン組成の変化は浸漬前と比較してほとんど認められなかったが,40℃ではマロニル化配糖体が13%減少しアグリコンが僅かに増加,60℃ではマロニル化配糖体が54%減少し,アグリコンのダイゼインは10倍,ゲニステインは12倍に増加した.さらに60℃ではアグリコンの生成以外に,グリコシド配糖体であるダイジンとゲニスチンが浸漬前と比較してそれぞれ2.5倍に増加した.浸漬時間が24時間と長くなると,さらに前述の増減が著しくなった.<BR>(3)60℃ 1時間加熱と昇温2℃/minのイソフラボン組成は,加熱前と比較してマロニル化配糖体が僅かに減少し,その分アグリコンが増加していた.一方昇温速度が9℃/minと30℃/minは,マロニル化配糖体が加熱前と比較して昇温9℃/minでは38%減少,昇温30℃/minでは40%減少し,グルコシド配糖体はいずれも加熱前の2倍に増加した.<BR>以上のことより,「低温で充分吸水後に,60℃程度の低温加熱を保持」することでアグリコンを多く生成させることが可能となる.さらに「昇温速度を速くする」加熱がマロニル化配糖体を少なくする方法と思われる.
著者
内田 あゆみ 陶 慧 荻原 淳 松藤 寛 太田 惠教 櫻井 英敏
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.11, pp.549-558, 2008-11-15 (Released:2008-12-31)
参考文献数
23
被引用文献数
4

イヌリン含量の高いジャンボリーキの生理学的機能を調べるため,ストレプトゾトシン(STZ)誘発糖尿病ラットの血糖値および血液生化学的指標とアセトアミノフェン(AAP)投与により発生する肝障害に対するジャンボリーキの凍結乾燥粉末(イヌリン含量60%)(PSII)の影響を検討した.最初の実験ではPSIIをラットのSTZ(60mg/kgbw)処理の1週間後から,2週間投与した.糖負荷試験は7日目と14日目に行った.血液の生化学的指標は14日目に測定した.2番目の実験では2週間,PSIIを投与した後にAAP(500mg/kgbw)を投与し肝障害を発生させた.投与24時間後に肝障害の指標である血中ASTとALTの活性を測定し,また摘出した肝臓の病理組織学的検査を実施した.最初の実験の糖負荷試験において,1日あたり8.3g/kg(イヌリンとして5.0g/kg)のPSIIの投与により食後血糖値の上昇は抑制されることが確認された.血液の生化学的指標において,総コレステロールとトリグリセリドはSTZ処理により上昇したが,PSIIの投与によりSTZ無処理の値以下に低下した.またASTとALTの活性に低下傾向が観察された.第二の実験において,ASTとALTの活性は低下し,肝臓の壊死と空腔は抑制され,PSIIの肝障害保護作用が確認された.
著者
金 哲 宿野部 幸孝 種谷 真一
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.10-17, 1997-01-15
被引用文献数
1

回転膜ろ過システムで,連続的に酸カゼインをプロテアーゼMにより加水分解を行い,その分解物を膜ろ過し,運転条件を把握した.<BR>(1)酵素プロテアーゼMによる加水分解物の膜透過液は,運転時間(0~6時間),および(基質濃度S/酵素濃度E)比に関係なく,分子量300~600のペプチドが多い.<BR>(2)反応槽中に酵素液を入れ,その酵素が濃縮される途中の酵素濃縮液および透過液の酵素活性を調べた結果,漏れはごくわずかであった.また透過流束の変化から酵素の膜面付着を調べたが,付着は微量であった.<BR>(3)回転膜ろ過システムでの反応速度が,ミハエリスーメンテンの理論式に従うとすると,ミハエリス定数は2.94%,最大反応速度は33.56%・h-1であった.<BR>(4)透過流束は圧力とともに,増加するが,圧力200kPaで,S/E=3.0%/0.25%,およびS/E=5.0%/1.0%では,運転時間が長くなるほど,透過流束は減少する傾向があった.透過流束量の減少の少ないS/E=3.0%/1.0%が最も良好であった.<BR>(5)反応槽の固形分濃度に対する透過液固形分濃度の割合を基質変換率と定義した.基質変換率は圧力の増加に対して低下する傾向をもち,またS/E比にも関係し,S/E=3.0%/0.25%で低く,S/E=3.0%/1.0%およびS/E=5.0%/1.0%では同じ傾向を示し,35kPaの圧力で最大基質変換率0.85を示した.<BR>(6)平均滞留時間は,圧力の増加につれて減少する.35kPaではS/E=5.0%/1.0%で35kPaのとき13.5hの最高値,S/E=3.0%/1.0%で200kPaのとき1.82hの最低値を示した.<BR>(7)膜回転数に関係するテーラ数と透過流束との関係から,圧力100kPaの場合,透過流束はテーラ数450(1000rpm)で最も低く,678(1500rpm)で最大になり約30.5kg・m-2・h-1の高い値を示し,その後は減少した.<BR>(8)酵素重量に対する膜透過分解物の重量割合で表す生産性からみて,S/E=3.0%/0.25%が最も良好な生産性を示した.
著者
志堂寺 和則 都甲 潔
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.1-8, 2007-01-15 (Released:2007-10-04)
参考文献数
7
被引用文献数
6 4

食品の見た目のおいしさについて検討するために,ケーキの写真を見た際に生じる印象について,SD法によるアンケート調査を実施した.その結果,3ないしは4因子を抽出することができた.この結果を参考に,4種類の初期モデルを構築し,共分散構造分析を実施した.モデルを修正しながら,ケーキ写真毎にアンケート調査データと適合性を検討した.最も適合すると考えられたモデルは以下のものであった.ケーキ写真から色彩に関する印象と形態に関する印象が生じる.両者には相互に因果関係があり,両者からケーキ写真についての全体印象が生じる.見る人の甘味に関する嗜好は色彩に関する印象に影響を及ぼす.また,甘味に関する嗜好とケーキ写真についての全体印象から,ケーキ写真についての評価が定まり,見た目のおいしさが決定される.
著者
神山 かおる 畠山 英子 小林 知子 八城 正典 東 輝明 境 知子 鈴木 建夫
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.47, no.11, pp.822-827, 2000-11-15
被引用文献数
5 6

おやつ昆布の咀嚼機能食品としての特性を明らかにするために,引っ張り試験機による破断測定,官能評価,咀嚼筋筋電位ならびに咀嚼圧計測を行った.今回用いた4種の昆布では,破断応力は変化しないが,厚みが異なるため,破断荷重は異なった.官能評価では,破断に大きな力を要したものが噛みにくいと判断された.筋電位計測では,噛みにくいと判断された試料では,咀嚼時間や咀嚼回数,全咀嚼筋活動量が大きくなった.昆布のように咀嚼圧よりも高い破断応力をもつ試料の力学特性は,ヒトの嚥下までの咀嚼挙動に影響し,破断荷重の高い試料を,ヒトは咀嚼回数を多くし,長時間をかけて咀嚼し,噛みにくいと感じることが示唆された.一方,一回目の咀嚼に要する咀嚼圧や感圧面積等には,試料の力学特性の影響は観られなかった.
著者
西堀 すき江 並木 和子
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.144-148, 1998-02-15
被引用文献数
6 5

野菜ジュースの<SUB>O2</SUB>-消去能を2種類の測定法(NBT法・ルミネッセンス法)で比較した.<BR>(1) NBT法において実験に供した20種類の生ジュースはいずれもO<SUB>2</SUB>-消去能を有していた.特にブロッコリー・キャベツ・ピーマン・ニラ等は強い活性を示した.しかし,ルミネッセンス法ではニンジンの生ジュースに活性は認められなかった.<BR>(2) 加熱処理によりキュウリ・カボチャ・レタスの活性が最も低下した.1O<SUB>2</SUB>消去能が高いと報告されているカロテノイド系の色素を含むトマト・ニンジンも,加熱により活性が低下した.特に,加熱後のニンジンはほとんどO<SUB>2</SUB>-消去能が認められなかった.タマネギ・モヤシ等のフラボノイド系野菜も加熱により活性が低下した.<BR>(3) クロロフィル系野菜は品種によって幅があるが,比較的加熱後もO<SUB>2</SUB>-消去能が持続した.クロロフィル類縁体の存在比率は,生・加熱に関わりなくクロロフィルaが圧倒的に高く,加熱によってクロロフィルaは減少するものの,1/2~2/3量残存した.逆にフェオフィチンaは1.5~2倍に増加した.<BR>一般的に,野菜の色素の中ではカロテンの活性酸素消去能が高いと報告されているが,実際に野菜ジュースにおいて,特に温野菜においてはクロロフィル系の色素を含む野菜に,活性酸素消去能の活性が持続することがわかった.
著者
清野 晃之
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
pp.NSKKK-D-23-00085, (Released:2023-12-26)

本研究では, ニラの冷凍保存によるメチイン含量の変化を調査するために, 4種類の包装方法を検討した. その結果, ニラ葉の表面の乾燥を防ぐ方法, フリーザーバックやラップではニラを密閉・密着して保存することができるため, 冷凍後のニラのメチイン含量に影響はないことがわかった. 一方で, 新聞紙を用いた場合, 包装時の厚みにより, メチイン含量に影響が見られた. これはニラを薄く新聞紙で包んだ際に, ニラからの水分蒸発が新聞紙外の空気まで移動したことで乾燥が進み, それに伴いニラの組織や細胞が劣化したことで, エタノールによるメチインの抽出効率が向上したのではないかと考えられる.
著者
大野 智生 蒲野 悟史 古田 真優 三島 周平 岩橋 均
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
pp.NSKKK-D-23-00093, (Released:2023-12-25)

深部発酵法米酢における細菌群集構造の変化を, 発酵開始から終了まで調査した. 細菌組成の調査により, 酸度の異なる2種類の深部発酵米酢の両方において, エタノール濃度が減少し始めるタイミングにおけるKomagataeibacter属酢酸菌割合の急激な増加, 増加後の高割合での優占の維持が確認された. また, 植菌源に対するメタゲノム解析の結果から, 深部発酵米酢において発酵を行う酢酸菌については, 深部発酵で一般的にみられ, 高酢酸濃度に対する耐性を持つ, Komagataeibacter europaeusであることが示唆された. また, この菌株はヨーロッパで生産される深部発酵酢から分離された株と近縁であると推定された. これらの結果から, 深部発酵による米酢醸造における微生物組成の安定性が確認され, 発酵において主要な働きをする細菌が他の深部発酵酢と同様であることが示唆された. 本研究は米酢深部発酵の微生物に関する基礎的な情報を提供するものであり, 米酢醸造における発酵過程の最適化に役立つ可能性がある.
著者
Handa Akihiro
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
pp.NSKKK-D-23-00099, (Released:2023-12-08)

卵白タンパク質は, 加熱により構造が部分的に壊れ, 非共有結合および共有結合を介して凝集しネットワークを形成してゲル化する. 卵白加熱ゲルの物性は, 卵白を使用した食品の食感に大きな影響を与えるので, その制御技術やメカニズムが広く研究されてきた. 卵白の加熱ゲル化には, 従来から知られている疎水的相互作用やジスルフィド結合のほかにランチオニン結合やリジノアラニン結合が深く関与していること, さらには乾燥卵白の乾熱処理による卵白タンパク質の可溶性凝集体の形成にもそれらの共有結合が関与していることが近年明らかになった. 卵白の加熱ゲル化性を制御するには, 卵白タンパク質の可溶性凝集体形成を制御することがキーファクターと考えられ, メイラード反応や電気化学反応など様々な方法による凝集体形成とそのゲル化性の研究が行われている.
著者
松永 一彦
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.64, no.7, pp.385-388, 2017-07-15 (Released:2017-08-18)
参考文献数
9
被引用文献数
1

Kagoshima no Tsubozukuri Kurozu was registered with the Japan Geographical Identification (GI) system on December 22, 2015. Kagoshima no Tsubozukuri Kurozu is a type of rice vinegar from Kagoshima Prefecture in southern Japan that is produced using a traditional method that has been handed down from one generation to the next. Tsubo and Kurozu are translated as earthen pots and black vinegar, respectively. The origin, history, and quality of GI-certified Kagoshima no Tsubozukuri Kurozu are reviewed herein.
著者
山﨑 有美 河野 愛未 松本 朋子 大島 達也 山﨑 正夫
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
pp.NSKKK-D-23-00084, (Released:2023-11-22)

きんかんを加工し機能性成分である-クリプトキサンチンの含有量を比較したところ, ペーストにより多くのβ-クリプトキサンチンが含まれ, ペーストと麹菌発酵乳飲料を混合しても, -クリプトキサンチン含有量は変化しなかった. また, きんかんペースト添加麹菌発酵乳飲料を65°C 及び 85°Cで殺菌処理したところ, 65°C試験区において多くのβ-クリプトキサンチンが残存することが示された. きんかん由来β-クリプトキサンチン-麹菌発酵乳飲料混合物のβ-クリプトキサンチン腸管吸収能を評価した結果, β-クリプトキサンチン単独区と比較し, 麹菌発酵乳飲料混合区の腸管吸収量は約14倍に上昇することが明らかとなった.
著者
斉藤 司 椎橋 裕子 明賀 博樹 原口 賢治 増田 唯 黒林 淑子 南木 昂 山崎 英恵 中村 元計 伏木 亨
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.61, no.11, pp.519-527, 2014-11-15 (Released:2014-12-10)
参考文献数
22
被引用文献数
5 7

かつお荒節超臨界二酸化炭素抽出物の香気分析を行った.GC-MS分析,AEDA法によって,重要香気成分を絞り込んだ結果,グアイアコール,5-メチルグアイアコール,2,6-ジメトキシフェノール,4-エチル-2,6-ジメトキシフェノール,2,6-ジメチルフェノール,4-プロピルグアイアコール,バニリン,フラネオール®,(2E,7Z) -trans-4,5-エポキシデカ-2,7-ジエナール,(4Z,7Z) -トリデカ-4,7-ジエナール(以下TDDとする.)の10成分が同定された.この中で(2E,7Z) -trans-4,5-エポキシデカ-2,7-ジエナールとTDDは,かつお節の香気成分としては未報告の成分であり,特にTDDは,食品の香気成分として初めて同定された成分であったため,かつお節の香りにどのような影響があるのか,官能評価を行った.官能評価に用いる用語は,かつお荒節超臨界二酸化炭素抽出物を用いて6種(くん液,木材,魚肉,金属,生臭い,カラメル)を選定した.かつお荒節超臨界二酸化炭素抽出物中の定量値を用いて,TDD以外の重要香気成分9成分と,TDDを加えた10成分の匂い再構成液を作り,各風味項目ついて比較した.その結果,「木材」の項目がTDDの添加により,有意に増強された.このことから,TDDはかつお荒節超臨界二酸化炭素抽出物の香りを構成する新規重要香気成分であることが示された.さらに,料理人の官能評価によって,TDDを含むかつお節フレーバーは,かつおだしをより好ましい風味にさせる効果があることが示された.
著者
中西 謙二 田村 啓敏 杉沢 博
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.259-266, 1996-03-15 (Released:2009-05-26)
参考文献数
8
被引用文献数
1 1

生タケノコ及び水煮タケノコの揮発成分を明らかにするため,ヘッドスペース法(HSV法)と溶媒抽出法により揮発成分を分離濃縮し,GC及びGC-MS分析を行った.得られた濃縮物は,HSV法が軽い広がりのある香り,溶媒抽出法が濃厚な重い香りを示し,いずれもタケノコの特徴を呈していた.HSV法では生タケノコから23種,水煮タケノコから31種の化合物を,溶媒抽出法ではそれぞれ70種,60種の化合物を同定又は推定した.生タケノコの主要な揮発成分は低沸点部では直鎖状C6アルコール及びアルデヒド類であり,高沸点部ではサリチル酸エステル類であった.水煮タケノコについては,低沸点部が硫化メチル,3-メチルフランで高沸点部が芳香族のアルデヒド,アルコール及び窒素化合物であった.
著者
甲斐 彰 斎藤 幸雄
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
pp.NSKKK-D-23-00055, (Released:2023-10-31)

炊飯米から製造するペーストについて, 一般的な高速せん断加工とは異なる押出加工による製造方法を試みた. 従来は困難であった加工直後の米ゲルの物性評価に, 塗装や油脂の調整などで用いる簡易的な工業計測の適用を試みた. そして, 次の結果が得られた. (1) ポートホールダイスを用いて均質なペーストを短時間に得ることができる. (2) ポートチャンバー部で剪断力を与えることにより, 炊飯米の硬い部分もクリアランスより小さい粒子に破砕することができる. (3) コンテナ径およびダイスの仕様により, 人力によるペースト加工が可能となる. (4) 必要荷重が大きくなるが, 硬めに炊飯した米でもペースト加工が可能である. (5) ペーストに含まれている粒子の大きさの評価にグラインドゲージが利用でき, 加工直後の高温条件であっても迅速に評価ができる. (6) ペーストの柔らかさの評価にちょう度計が利用でき, 加工直後の高温条件であっても迅速に評価ができる. (7) 炊飯米から加工したペーストには肉眼で判別可能な白い塊が見られ, これは触感では粒状には感じない程度に容易に塑性変形する.
著者
増田 秀樹 深尾 奈央 小林 里穂 蜂須賀 祥子 森 紀之
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.200-210, 2017-04-15 (Released:2017-04-29)
参考文献数
46
被引用文献数
1 1

官能評価(試験1,2)により,刺激的な香味が軽減された液状ウィンターセイボリーエキス(WSL)の用量(0.25g ; カルバクロール(CAR)含有量 : 0.075mg,チモール(THY)含有量 : 0.015mg)とWSLの濃度(0.25% ; CAR濃度 : 0.75ppm,THY濃度 : 0.15ppm)を決定した.次いで,試験1,2で定めた用量と濃度のWSL含有飲料(DK1) 100mLの摂取試験を行なった(試験3).その結果,上肢(手首,手指),下肢(足首,足指)の体表温低下が有意に抑制され,首の体表温が有意に上昇した.さらに,口腔·咽頭内での刺激が体温変化に関与しているかどうか明らかにするため,ウィンターセイボリーエキス粉末(WSP)(80mg ; CAR含有量 : 0.075mg,THY含有量 : 0.015mg)のカプセル(CP)摂取試験を行なった結果,上肢のみに有意な体表温低下抑制効果がみられた(試験4).次いで,口腔内刺激の強弱を決定する因子となるCAR,THY濃度が重要であるのか明らかにするため,試験3と同用量のWSLを含有し,希釈媒体量を100mLから20mLに低減することでCAR,THY濃度をDK1の5倍に高めたWSL含有飲料(DK2)の摂取試験を行った(試験5).その結果,DK2摂取群(上肢,下肢に有意な体表温低下抑制 ; 額,首に有意な体表温上昇 ; 鼓膜温(深部温)の有意な上昇)は,DK1摂取群(上肢,下肢に有意な体表温低下抑制 ; 首に有意な体表温上昇)に比べ体温に影響がみられる部位が増加した.DK1摂取群とCP摂取群の比較,DK1摂取群とDK2摂取群の比較から,体温変化に,CAR,THYによる口腔·咽頭内の神経刺激が関与していることが示唆された.本結果から,ウィンターセイボリーが手軽に飲用し得る冷え抑制効果素材として有用なことが分かった.さらに,体温変化をもたらす同様な成分についても,口腔·咽頭内刺激を利用することにより,効果が増強される可能性があると考えられる.
著者
大石 恭子 足立 里穂 米田 千恵 大田原 美保 香西 みどり
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.67, no.10, pp.360-367, 2020-10-15 (Released:2020-11-02)
参考文献数
30

1.コシヒカリおよびあさひの夢を試料とし,マイタケ抽出液を用いて飯を調製した.官能評価では,水で炊飯した飯に比べてコシヒカリのマイタケ飯は粘りが強く,あさひの夢では軟らかく,つやおよび粘りが強いと評価された.物性測定ではいずれの品種においても粒全体の硬さが低下した.コシヒカリを試料とし,浸漬のみのマイタケ抽出液の利用でも飯の物性向上が見られ,浸漬および加熱の両方でマイタケ抽出液を用いることで冷蔵後の物性も改善した.2.米をマイタケ抽出液に50℃で1時間浸漬すると,米からの溶出タンパク質量が増加し,プロテアーゼ阻害剤のぺプスタチン添加により溶出が抑えられた.浸漬液のSDS-PAGE分析では,マイタケの金属プロテアーゼによるグルテリン酸性サブユニットの部分分解が認められた.さらに遊離アミノ酸の分析において疎水性アミノ酸が多く遊離していたことから,エンド型,エキソ型両方の金属プロテアーゼが炊飯時の米のタンパク質を分解し,飯の物性変化に関与していることが示唆された.